概要
「炎の蜃気楼」は、桑原水菜による小説。1990年11月から2004年にかけてコバルト文庫から刊行された。
本編全40巻。番外編全7巻。
また、400年前の上杉夜叉衆の出会いを描いた邂逅編(全13巻)と幕末の京都での闘いを描く幕末編(全2巻)を刊行。
さらに邂逅編の完結に伴い、本編での景虎と直江の関係性を決定的づけた30年前の事件に至るまでを描いた昭和編が刊行された(全11巻)。
昭和編の完結により、炎の蜃気楼シリーズは環結した。
アニメは、2002年1月7日から4月8日までキッズステーションで放送。全13話。
OVA「炎の蜃気楼~みなぎわの反逆者~」は、2004年に発売された。全3巻。
また2014年から2018年にかけて昭和編が舞台化された→ミラステ
ストーリー
戦国時代、天下統一を果たすことなく無念の想いで死んでいった武将たちは現代に甦り、闇戦国として現代で戦いを繰り広げていた。これを終結させるべく、悪霊となり果てた武将たちの魂を浄化し冥界へ送る「調伏力」を使う者たち、軍神・上杉謙信により使命を与えられた、冥界上杉軍と呼ばれる彼らはその使命の元、400年の間、死ぬたびに他人の体を奪い(換生)、体を変えることで魂をこの世に残し続けながら生き続け、生きる者たちのために戦ってきた。
長野県松本、そこに住む高校生・仰木高耶の身辺では怪現象が頻発していた。それは、親友・成田譲の奇妙な言動をはじめ、日常では起こり得ない現象ばかりだった。更に、怪現象が現れるのと時を同じくして、高耶の前に直江信綱と名乗る男が現れた。直江は、にわかには信じられないような、高耶と自分の正体、そして課せられた使命を語る。
同性愛を主軸に置いた作品でありながら、実在した歴史人物たちをモデルに、彼らの心の裡の悩み、葛藤、喜びなどを巧みな心理描写で書き出している。
当時の少女向け小説にはめすらしかった壮大なストーリーと、予想を超える展開、さらに歴史上の名だたる戦国武将や無名の雑兵たち一人一人の決着を描く大河ロマンの様な展開が若い女性たちを中心に人気を博した。
物語は第一部から第四部まで分けられ、第一部では、高耶と直江の出会いとその関係性の変化、愛憎へとつながっていくまで物語。第二部ではその愛憎を乗り越え二人が結ばれるまでの過程。第三部においては上杉を離れ、赤鯨衆という組織に所属する中で生じた、高耶の生者と死者に関する考えの変化。そして、なぜ闇戦国が起きたのか、また生と死のあり方についてこれまでのすべてを解明する第四部で成り立つ。
登場人物
上杉夜叉衆
敵対勢力
第一部登場人物
- 成田譲(CV:松野太紀)
- 森野紗織(CV:矢島晶子)
- 武田由比子(CV:折笠愛)
- 伊達小次郎(CV:神谷浩史)
- 伊達政宗
- 片倉小十郎(CV:立木文彦)
- 北条氏照(CV:田中秀幸)
- 風魔小太郎(CV:宮本充)
- 荒木村重(CV:郷田ほづみ)
- 下間頼竜(CV:森川智之)
- 狭間繁治(CV:石井康嗣)
第二部登場人物(熊本編)
第三部登場人物(赤鯨衆)(四国編)
第四部登場人物(那智編・伊勢編)
小説シリーズ一覧
第一部
第1巻:炎の蜃気楼
第2巻:緋(あか)の残影
第3巻:硝子(ガラス)の子守歌
第4巻:琥珀の流星群
第5巻:まほろばの龍神
断章:最愛のあなたへ
第6-8巻:覇者の魔鏡(前・中・後編)
第9巻:みなぎわの反逆者
第10-12巻:わだつみの楊貴妃(前・中・後編)
第二部
第13・14巻:黄泉への風穴(前・後編)
第15-19巻:火輪の王国(前・中・後編/烈風編/裂濤編)
第20巻:十字架を抱いて眠れ
第三部
第21巻:裂命の星
第22巻:魁の蠱
断章:砂漠殉教
第23-28巻:怨讐の門(青海編/赤空編/白雷編/黒陽編/黄壌編/破壊編)
第四部
第29巻:無間浄土
第30-36巻:燿変黙示録I〜VII
第37巻:革命の鐘は鳴る
第38巻:阿修羅の前髪
第39巻:神鳴りの戦場
第40巻:千億の夜をこえて
番外編
Exaudi nos アウディ・ノス
群青
真紅の旗をひるがえせ
炎の蜃気楼メモリアル
赤い鯨とびいどろ童子
主題歌
アニメ
オープニングテーマ
「Blaze 2002」
作詞 - TRACY ROSE / 作曲 - SAM PROJECT / 編曲 - 亀山耕一郎 / 歌 - KATHY SHOWER
OVA
オープニングテーマ
「A Vision Of Flames」
作詞 - Suzi Kim / 作曲 - 中村望 / 編曲 - 梅堀淳 / 歌 - 山根麻以
エンディングテーマ
「Tears Of Indigo」
作詞 - 山根麻以&Suzi Kim / 作曲 - 山根麻以 / 編曲 - 江口貴勅 / 歌 - 山根麻以
余談
2015年時点で放送開始27年目を数える日本最古参のアニメ情報専門ラジオ番組の1つ『ウキウキ放送局』(FM山口)では、県内はおろか近隣県を巻き込んで『炎の蜃気楼』の人気を強力に後押しした約9年の歴史がある。
本編第一部の執筆が始まってまだ間も無い1993年12月7日の放送回収録の際、とあるウキナー(本番組リスナーの呼称)から寄せられた「炎の蜃気楼って何ですか?」の投書に対して単独パーソナリティを務める水谷寛が「30字以内で纏めて送って。」と返した一件がきっかけとなり、一回限りの特設コーナー『炎の蜃気楼 30字シアター』が企画された。
毎週火曜日深夜1時台の地方局放送でありながら県内を中心に電波受信地域で異例の高聴取率を誇る人気番組であった事も手伝って、30字以内の説明をコーナーで紹介するためにまずは本を手に取ったウキナー、次にウキナーから本の存在を知らされたその友人、さらにその友人へと徐々に伝播して『炎の蜃気楼』を購読する者が増えていった。
翌年4月の番組編成改変後、先述の単発企画が意外な成功を収めた事で『炎の蜃気楼 30字シアターFX』に改称した常設コーナーに昇格した。BGMには『炎の蜃気楼』イメージアルバムから選んだ『戦国残影』を用い、時にBL展開を巧みに織り込んだ替え歌まで投稿され、『わだつみの楊貴妃』が出版された第一部終盤の頃には当時の購読者電話サービス『コバルトときめきテレフォン』で流されていた桑原と直江の対談音声にリクエストが殺到し、直江による殺し文句「本気が見たいんでしょ?大人の本気を、教えてあげる。」を聞いてラジオの前で身悶えするなど、ウキナーの息遣いが伝わる一大名物コーナーへと変貌を遂げた。
また、『わだつみの楊貴妃』には毛利氏の本城である萩城(指月城)が登場する事からウキナー同士で「防長聖地巡りオフ会」の呼び掛けが盛んに行われるようになり、一時期は主要歴史観光人口の一角を若年層の女性が占めただけでなく、日本各地の戦国武将の名前が記された萩焼の湯呑みが飛ぶように売れ、中学校や高校の図書委員を務めるウキナーがその権限を利用して「歴史小説」の名目で積極的に図書室に導入する珍事が発生した。
今でも往時のウキナーは、「ウキウキ放送局と言えば?」と聞かれれば『究極超人あ~る』『パタリロ!』に続いて『炎の蜃気楼』を容易く連想するほどに骨身に染みている。
※ウキナーの間では新旧に関わらず、年末最後の放送曲に『帰ってきてしまった、はっぴい・ぱらだいす』(究極超人あ~る)を、年始最初の放送曲に『クックロビン音頭』(パタリロ!)をリクエストする慣習が根付いているため。