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マニュアルトランスミッションの編集履歴

2021-08-29 02:14:34 バージョン

マニュアルトランスミッション

まにゅあるとらんすみっしょん

自動車、バイク、農機などで運転手が変速比を手動で選択操作する変速機。

概要

ドライバーが変速比を自ら選択する自動車(四輪車・二輪車)の変速機(トランスミッション)。一般的にMTと略される。


オートマチックトランスミッションに対して、従来の方式を指す言葉として生まれたもの(レトロニム)である。


初心者にとってはクラッチ操作が鬼門になるが、クラッチ操作(特に登坂時)さえ慣れればあとは大して難しいものではない。自転車に乗るのにいちいちバランスをとることを意識しないように、MT車に乗り慣れれば特段意識しなくてもクラッチを操作できるようになる。普段からMTの感覚に慣れきっている人間にとっては、ATのクリープ現象やキックダウンなどは逆に思うように動いている気がしない為、時に恐怖ですらあるという。


メカニズム

マニュアルトランスミッションは、変速の際、人の手動(一般的な自動車の場合は足踏み式ペダル)クラッチによる動力断によって、歯車のスムースな噛み合わせを可能としたものである。


常時噛合式とシンクロナイザー

一般向けの自動車の図解では選択されたギアだけが噛み合っている(選択摺動式)構造図が多いが、実際にはいちいち歯車を噛み合せたり離したりするのは高度な技術を要する。現在のマニュアルトランスミッションのほとんどは常時噛合式と呼ばれるもので、簡単に言うと、


  1. 各々の段のギアは常に噛み合って回転している。
  2. 軸はギアと直結しておらず、ベアリングを介して自在に回転している。
  3. シフトレバー操作は軸と一緒に回転している“スパイダー”という爪をスライドさせる。
  4. 選択されたギアにスパイダーが噛み合い、エンジンと駆動輪がつながる。

というようになっている。


が、これでもクラッチが惰性で回転しているためスパイダーとギアがうまく噛み合わないことも多かった。そこでクラッチとトランスミッションの入力側の軸をすべり継手のようにして摩擦力で解消するシンクロナイザーが開発された。これを組み込んだマニュアルトランスミッションをシンクロメッシュと呼ぶ。


常時噛合式は自動車普及の早い時期に採用されたが、シンクロメッシュの普及は1960年代後半に入ってから。当初は耐久性の問題からトラックやバス、作業機械には採用されなかったが、1980年代後半頃からこれらにも採用されるようになり、現在のマニュアルトランスミッションのほとんどは「常時噛合式・シンクロメッシュトランスミッション」である。


ドグミッション

主に競技用車両に使われているギアにはシンクロメッシュ機構がないドグミッションと呼ばれるものがある。

回転を合わせるシンクロメッシュ機構がないのでギアチェンジの際にはドライバーが回転数を合わせて切り替える必要があるが、回転数を合わせる機構を持たないので部品テンスが少なく大きなギアを用いた強度の高い構造とすることが出来る。

ドグと呼ばれる凹凸があり、これが噛み合うドグクラッチと呼ばれる機構で断続を行う。

回転数を合わせてギアチェンジを行うので、クラッチ操作をなしでのギアチェンジも可能となる。


2ペダルMT

変速の操作は手動で行うが、クラッチ操作は電子制御によって自動で行うMT。

足でのクラッチ操作が不要なため、クラッチペダルがない。

クラッチを持つがATの一種の為、AT限定免許でも運転可能。


MTの特徴

従来、MTはトルクコンバータによる損失と重量増のあるATに比べて燃費が良いとされてきた。しかし2000年代の燃費競争により伝達効率に優れるCVT車が台頭。変速制御には燃費重視のセッティングが施され、トランスミッションそのものの伝達効率もめざましく向上したのに対し、成熟した技術であるMTは燃費を伸ばす余地が少なかった。日本の燃費基準であるJC08モードでは、同一車種でも軒並みMTの方が燃費が悪く出ていた。そのため、MTは燃費が悪いという従来とは全く逆のイメージが生まれている。


実際のところ、MTはギア比とアクセル開度の両方をドライバーが調整しなければならないために燃費は運転者の技量によるところが大きい。これに対し、AT車のドライバーが選べるのはアクセル開度のみなので、AT車の燃費はあらかじめプログラムされた変速パターンによるところが大きい。特にJC08モードでの変速パターンは著しくMT車に不利に設定されていて、MTならJC08モードのカタログ値を上回る燃費を簡単に出せるのに対し、ATでカタログ値並みの燃費を出すのは極めて難しかった。新しい国際的な燃費基準であるWLTCモードでは、この問題はほぼ是正されており、それでも同一車種の同等グレードで比べるとMTよりCVTの方が燃費に優れるモデルが多いものの、アルトHA36型)ではMTとAGSがほぼ同等(いずれもCVTには劣るが)、スイフトスポーツ(4BA-ZC33S型)やジムニー/ジムニーシエラ(JB64/JB74型)ではATよりMTの方が良い値が出ている。


近年の日本ではMTは貨物車や大型車(重機バス)かスポーツカーというイメージがあるが、変速する速度は機械の方が当然早いのだから、速さを求めるならATの方が有利である。ましてエンジン1基だけでもそれ以上の出力を扱う鉄道・船舶用の変速機は、自動車で言えばすべてオートマチックに該当する。フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーにはMT車がなくなり、ポルシェに至っても911で一部の限定モデル等しか存在しなくなった。日本のトヨタ スープラやホンダ NSXも、多段トランスミッション採用のためにATのみとなっている。


日本車におけるMT

今や、日本国内で販売されている乗用車と普通車以下の貨物車の98%以上がATであり「MTは絶滅危惧種」と言われるほど。それでも三菱以外の日本車メーカーはMTのモデルを残している。各メーカーの2020年夏時点の登録車のラインアップは次の通り(OEM除く)。


マツダは最もMTの設定に積極的で、CX-8以外の全ての自社生産車種に設定している。コンパクトカー(MAZDA2)やオープンスポーツ(ロードスター)をはじめ、ミドルセダン/ワゴン(MAZDA6)やクロスオーバーSUV(CX-3CX-30CX-5)でもMTが選べる。もちろんMAZDA3もMTを設定している。


トヨタヤリス(GRヤリス含む)、86カローラ(カローラスポーツ、ツーリング含む)、C-HR(1.2Lターボガソリンエンジン搭載の2WD車のみ)の各車種に設定。スズキは軽自動車ではMTの設定が多いが登録車はスイフトスイフトスポーツ含む)とジムニーシエラだけである。ホンダシビック(ハッチバック、タイプR)のみ(フィットは先代モデルまで設定があったが新型では廃止されてしまった)。日産フェアレディZノートNISMO S、マーチNISMO S、NV200バネットの各車種だが、スポーツ志向のモデルとライトバンだけで普通の乗用車のMTモデルが無い。スバルBRZのみに設定されているが、現行モデルのBRZとしての製造は終了(トヨタ向けの86としては継続されている)しており、在庫車のみの販売になっている。ダイハツグランマックスがMTを選べる(ただしインドネシア製の逆輸入車である)。


軽自動車では、MTを設定している乗用車はアルトワークス含む)、ワゴンRジムニーコペンS660の5車種。あとは軽トラN-VANなどの貨物車のみ。特に雪国向けが主体と考えられる4WDの軽トラは、変速機が嵩張ることから2WD仕様ならAT車が存在する車種でもMTしかないケースが多かった。


ただ、ややこしいのが軽キャブバンで最上位のグレードとなると「登録上は貨物車、実質乗用車」なのだが、例えばエブリィは5ナンバーのエブリィワゴンはATのみの設定だが、4ナンバーのエブリィバンはすべてのグレードにMTが設定されている。ハイゼットも同様にクルーズターボSA IIIは2WD/4WD共にMTが設定されている。一方で、ホンダのN-VANと三菱のミニキャブの最上位グレードにはMTがない。


日本ではすっかりマイナーになってしまったMT車だが、信頼性や故障時のメンテナンス性を求める新興国では今なおMTの方が主流。日本車各メーカーも日本国外ではMTのモデルを多くラインアップしている。


ここまでマイナーになってしまった背景として考えられるのが、日本車(こと排気量2,000cc未満)の極端なまでの「高出力を謳い文句にした長年の販売戦略」である。このサイズの日本車は最大トルク域を多くは4,000rpm以上という、四輪車用としては極端に高回転域(しかもあまり使わない)に持ってきており、結果カタログ値では排気量1L当たりで100PSを凌駕するものが多い。しかしトルク最大域はそんなに幅が広いわけではないので、低中速回転域か、高回転域のどちらに置くかの二択となる。ほとんど全部が後者を採った結果、発車時の低速回転ではトルクが細くなるため、クラッチの扱いが難しく、簡単にエンストする運転のし辛い代物になってしまっていた。20世紀末に売られていたホンダ・ロゴは実用域のトルクを太くしたレアケースである。

AT車に存在するトルクコンバーターはこうした細いトルクでも、どうにか繋いで起動ができたのである。1980年頃以降、従来よりは性能の良くなったAT車に押されて、販売台数の98%がAT車という今日に至っている。

なおオートバイでは、車体制御の要素の1つにクラッチ操作があり車体も数十kg単位(車体重量の20%程度)で軽いため、むしろマニュアル車のほうが運転しやすいとされている。


先進国でも、ヨーロッパ(EU圏)では2010年代でもなお4割がMTであり、ATでもMTをベースにクラッチ操作を自動化したDCTやセミATの比率が高い。アメリカは……アメ車って言うとデカいAT車というイメージがつきまとう。実際、普及率だけ見ると8割超がAT車で、日本ほど極端ではないにしろATが圧倒的だ。ところが、アメ車のMT設定率は意外と高い(本国では)。というのも、消費者の権利意識が高いアメリカでは、消費者の選択肢が充分に用意されていない商品は“足元を見られる”からである。

  • ちなみに日本国内でもマツダとスズキが割合MT設定率が高いのは、主な輸出先がヨーロッパと東南アジアであることにも起因している。他社はだいたい北米がメイン。またトヨタは「MTしか運転したことがない」という高齢者需要のため、カローラの全ボディタイプにMTを堅持している。

将来

「MT車は全車速対応ACCや衝突被害軽減ブレーキの搭載が難しい」と言われることがある。MT車はトップギアのまま速度を落とすとエンストしてしまうので全車速対応ACCは難しいと思われるが、衝突被害軽減ブレーキに関しては動作時にエンストしても構わないのであり、技術的困難はないはずである。実際にホンダやマツダはMTモデルにも衝突軽減ブレーキを搭載している。スバルがMTにEyeSightを設定したことがないのは、現行MT車がいずれもスポーツモデルのみだから(嗜好性を重視する層には「余計なもの」と先進安全技術を嫌う人が多い)という可能性が高い。ただし日本では衝突被害軽減ブレーキの装着が義務化されるため、次期型では採用されるだろう。


自動車の電動化により「MTは絶滅する運命」としばしば言われる。実際に電気モーターはすべての回転数で最大トルクを発生するので、電気自動車(EV)にトランスミッションは必須ではないが、高速域での効率改善のため変速機を搭載することもある。実験車両ではEVにMTを組み合わせた例があり、自動車からエンジンが姿を消してもMTが生き残る可能性がないわけではない。


鉄道の場合

鉄道車両では、気動車ディーゼル機関車の変速方式の1つの機械式がマニュアルトランスミッションにあたる。日本で戦前以来使われていた変速機は概ね3速程度の必要最低限の仕様で、1・2速が1960年代以降の液体変速式の「変速段」に、3速が「直結段」にあたる。国鉄レールバスキハ01にも採用されたが、鉄道車両の場合、総括制御ができない、および大出力エンジンへの対応が困難(日本の場合DMH17系エンジンで150〜180psが限度。キハ01の場合60~75ps)という欠点を抱えていたために機械式は1950〜60年代には日本からほぼ絶滅し、現在の営業車はなく、動態保存車は南部縦貫鉄道の2両のみである。更には機械式だったキハ07でも、一部は長編成用に液体式に改造されていた。一方、ドイツでは機械式気動車用の総括制御装置を積んで1990年代まで現役であった例がある。


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