登場話数:第45話「壊滅!! 超力基地」、第46話「地球最期の日!!」
概要
マシン帝国バラノイアが、地球人類との戦いに決着をつけるべく送り込んだ、最強にして最後のマシン獣。物語序盤に登場した個体と同様に、自我や人語による意思疎通能力までは持ち合わせておらず、扱いとしては自律型兵器のそれに近い。
5つの球形の胴体を数珠繋ぎに連結させた、百足や芋虫を彷彿とさせるフォルムをしており、各胴部から生えている合計6本の足で歩行を行う。この胴体は任意に分離・合体し、各々が自立稼働することも可能となっている。胴体の先頭を構成するユニットにはドラゴンのような頭部も備わっており、そこから放つ赤色の破壊光線を武器とする。
他のマシン獣以上の体格と、人型でないが故のトリッキーな動きを生かした戦闘スタイル自体も厄介なものであり、オーブロッカーとレッドパンチャーの二体がかりでも翻弄を余儀なくされたが、それ以上に凶悪とも言えるのが、口から渦のように放出する「暗黒素粒子」である。
暗黒素粒子は、生物にこそ害は無い一方で「どんな機械も狂わせる」という特性を有しており、さらに質量ゼロにして光の粒子よりも微小なため、風に乗って広範囲に伝播し、その機能に異常を来させやがては不全に追い込む。その効果の範囲は、日常の家電製品から自動車・新幹線、それに発電所等を始めとするインフラに至るまで多岐にわたっており、機械への依存度の高い現代社会にとってはまさしく致命的な事態を引き起こすものである。
当然ながら、最新鋭の科学の粋を集めたオーレンジャーの各種メカニックも例外ではなく、彼らもまた暗黒素粒子の前に無力化、未曾有の窮地に追い込まれることとなる。
後述の通り、倒され方こそ呆気ないものではあったが、本作はおろか「スーパー戦隊シリーズ全体でも屈指のチート兵器にして、シリーズでも一二を争う史上最凶の敵」であり、「スーパー戦隊シリーズ初となる悪役の勝利」という偉業に貢献したという事実は揺るがないと言えよう。
作中での動向
等身大の状態で深夜の地上へ降り立つと、手始めに暗黒素粒子を無差別に放出。これにより街中の機械が軒並み暴走を開始、さらには東京全域も停電状態に見舞われるなど、社会全体を混乱に陥れる。
そしてこの混乱に乗じ、バラノイアが艦隊を率いて大規模攻撃を開始する。この時点で暗黒素粒子の影響が超力基地にまで及んでいたことから、三浦参謀長は「オーレンジャーの巨大ロボを機能不全に追い込むのが敵の狙いである」と看破し出撃に待ったをかけるが、最終的に吾郎達は参謀長の静止を振り切りオーブロッカーで出撃するに至る。
案の定、オーブロッカーが現れたのを受けてカイザーブルドントは巨大化したバラミクロンを出現させ、オーブロッカーを窮地に追い込む・・・のだがオーレンジャーも全くの無策で出撃した訳ではなく、時間差で投入されたオーグリーン操縦のレッドパンチャーに虚を突かれ、二対一という数的不利の前に今度はバラミクロンが一転して劣勢に立たされる。
もっとも、それすらも束の間のものでしかなく、前述した分離機能を活かした戦法によって数の差を覆し、二大ロボを散々に翻弄した末に暗黒素粒子を見舞うことで、これらの機能を狂わせることに成功する。制御不能となった二大ロボは、アチャがBGMにと流した「Body Feels EXIT」(安室奈美恵)に乗って踊り狂った末に機能を停止。さらには辛うじて脱出し反撃を試みるオーレンジャーをも一蹴し、暗黒素粒子によって変身不能に追いやった。
この時点でも既にオーレンジャーを詰み同然の状況に追い込んだバラノイアであるが、その攻勢はなおも留まる事を知らず、オーブロッカーの解析によって得られたデータを元にオーレンジャー基地に総攻撃をしかけ、これを壊滅せしめることに成功したのであった・・・。
その後、バラノイアの猛追により捕らえられたオーレンジャーの処刑場を護衛しており、彼等を救出すべく乱入してきたキングピラミッダーを無力化、そしてキングレンジャーをも変身不能に追い込むなど引き続き猛威を振るったが、ここで思わぬ番狂わせが起こる。
リキを守ろうとするドリンの祈りに応え、「超力の故郷」から突如クリスタルが飛来。その力はキングピラミッダーの機能を回復させ、吾郎達を地球から脱出させたのみならず、無敵と思われたバラミクロンを一撃のうちに消滅させたのであった。
しかしバラミクロンの撃破をもってしても、最早この時点でバラノイアの優勢が揺らぐことはなく、ドリンもこの直後にマルチーワの攻撃により消滅。その影響で地球からは超力が失われ、バラノイアによる地球征服を阻むものはほぼなくなってしまったのである。
総評
結果として、オーレンジャーから決定打となり得る攻撃を受けることもなく、またその機会も与える事なく、終始これを圧倒し手も足も出させないという実力の高さを見せつけた。のみならず人間社会全体に致命的な混乱と破壊を引き起こし、地球征服作戦の成功を決定的なものとしたのも併せて考えれば、バラノイアにとっては間違いなく殊勲賞ものの功績を残したと言えよう。
唯一の汚点と言える呆気ない最期にしても、裏を返せばそれだけの超展開を用意しなければ、オーレンジャーによる頑張りだけでは最早どうにもならなかった、という事実を暗に示していると解釈できなくもない。
もっとも、暗黒素粒子という切り札を除けば、性能としては普通のマシン獣に毛の生えた程度なので、早々に必殺技を叩き込むなど相手からの攻撃の隙を与えぬような戦法を取っていれば、あるいはオーレンジャーにも勝てる要素はあったかもしれない。実際オーブロッカーとレッドパンチャーが破れた際、オーレンジャーにもまだオーレンジャーロボとタックルボーイが無傷のまま残されており(これらは超力基地壊滅に際し、三浦参謀長の手により基地の地下深くへと隠匿された)、反撃の余地自体は完全になくなっていた訳ではない。
実際には前述の通り、オーレンジャーにせよキングレンジャーにせよ、巨大ロボが倒された途端に白兵戦を挑むという無謀な行動に出ており、さらにいえば前者が反撃に用いたのが、第2話の時点で既に巨大マシン獣にはほとんど効き目が無かったキングスマッシャーだったりもするのが痛いところである。「せめてオーレバズーカ(もしくはビッグバンバスター)を使えよ・・・」と思った視聴者は多いはず。
それでもその脅威の戦果の為、スーパー戦隊シリーズのファンからは『最強の一般怪人』と評されている。
海外版
『オーレンジャー』の英語版ローカライズ作品『パワーレンジャー・ZEO』では、第45話「Another Song and Dance」にて、1話限りの怪人であるメカタピラーとして登場。
ここでも原典と同様に、スーパージオメガゾード(オーブロッカー)とレッドバトルゾード(レッドパンチャー)の機能を狂わせるも、後から現れたピラミダス(キングピラミッダー)の必殺技で即座に倒されている。まさに前述した理に適った攻略法を実践した展開である。
・・・しかし、シリーズ全体で見れば別の意味で恐ろしい存在と化している。というのも、原典たるスーパー戦隊シリーズで無機生命体的な存在として扱われていた巨大戦力((守護獣、気伝獣、三神将、爆竜等々、そして大神龍)が、『パワーレンジャー』シリーズでは純然たるメカニックとして位置付けられているためである。
つまり、本来の設定であれば通用しないはずの暗黒素粒子が効果を発揮する対象が、『パワーレンジャー』においては大幅に増えており、相対的に脅威度が桁違いに増している訳である。クロスオーバー作品などに出ようものなら間違いなくジョーカーポジションだろう。
もちろん全ての巨大戦力が一律に設定変更されている訳ではなく、星獣>とパワーアニマルは『パワーレンジャー』でも、原典と同様に無機生命体のままとされている。
備考
デザインは阿部統が担当。複数人が中に入るスーツであること、それに分離合体するということは早い段階で固まっていたようで、それを受けて球体が連結しているイメージでデザインされている。また、各球体部の下面に施されたチェック模様については「サーカスの怖可愛い雰囲気を狙っていたのではないか」と、後年のインタビューで振り返っている。
関連タグ
光戦隊マスクマン :物語最終盤にて「暗黒粒子」が登場。こちらは地上世界を闇の世界へと変える目的で用いられた
ムカデ人間 :執事アチャ役の肝付兼太が物語のキーパーソンを演じたシリーズ完結編の「3」に登場したムカデ人間が、物語の舞台であるアメリカ某州の荒野にある男子刑務所の囚人500人を全員繋げたことによってバラミクロンを彷彿させるジャンボサイズとなっていて、肝付が演じた物語のキーパーソンが刑期満了と共に刑務所を出なければならない囚人達への配慮から考案した独自の改良案によって着脱可能になっている
月光蝶:文明を破壊する性質は暗黒素粒子と類似
オミクジワルド:同じく最強の一般怪人。下手をしたらバラミクロン以上の強さを誇る。
本編最後の一般怪人