※注意
この項目は単行本未掲載の内容です。
背景情報も含め、呪術廻戦最新刊24巻以降に関する極めて重大なネタバレが含まれます!
原作、本誌未読、及び単行本派の方はブラウザバックを推奨します。
概要
「南へ」とは、漫画『呪術廻戦』第236話のサブタイトル。
そして、14話に渡った五条悟と両面宿儺の呪い合いの結末が描かれるエピソードである。
前話(235話)までのあらすじ
新宿にて勃発した「現代最強」五条悟と「呪いの王」両面宿儺の直接対決。
領域の押し合いによるラウンド1、互いに領域が使用不可になってからは術式を交えた肉弾戦によるラウンド2と、これまでの既存情報と技を駆使した長きに渡る死闘も、いよいよ終わりの時を迎えようとしていた。
闘いの中で計四度の黒閃を決めた事で五条のボルテージが上昇し、消耗で落ちていた呪力出力を取り戻す。
その気迫は、歴戦の猛者たる宿儺に千年ぶりの緊張を走らせるほどだった。
幾重もの攻防の末、五条は自分諸共宿儺を巻添えにする形で無制限の虚式「茈」を発動させる。
決着は相打ちかと思われたが、食らったのが自らの呪力だったためか五条のダメージは最小限に抑えられ、対する宿儺は無下限の不可侵突破に必須な式神・魔虚羅を喪い、領域展延による徒手空拳も、反転術式の回復もままならないほどの重傷を負った。
───最早、両者の力の差は歴然。
───その戦いをモニター越しに見守っていた誰もが、確信した。
五条悟の勝利を。
空港にて(本編あらすじ)
夏油「や」
五条「うっわ」
エピソード冒頭、突如場面は空港のターミナルへと転換する。
そこにいたのは、学生時代の容姿をした五条悟と、その親友・夏油傑だった。
五条「ざけんな最悪だよ」
夏油「失礼だな人の顔を見るなり」
目の前に現れた在りし日の親友の姿を前に、自らの身に起こった事態を即座に飲み込んだ五条。
そして以前生徒に語った言葉を思い返し、その言葉と矛盾する今の状況に苦言を呈した。
「頼むから俺の妄想であってくれ」と。
そんな五条に夏油は「呪いの王はどうだった?」と尋ねる。
五条は宿儺の強さを認めつつ、彼に対する「申し訳なさ」を吐露した。
教師として、強く聡い生徒たちを育て上げる日々。
だが、彼はその中でも満たされなさを感じていた。
心のどこかで感じていた他者との「生き物としての線引き」。
最強ゆえに己と対等の強者を見つけ出せない「孤高の侘しさ」。
五条は決して寂しかった訳ではない。現に仲間たちのことは「みんな大好きさ」と言っており、彼なりに愛情を注いでいた。
しかし一方で、心の奥底では己の力を発露する相手に飢えてもいたのである。
だがここにきて、ようやくその相手──宿儺に巡り合えた。
鍛えた肉体。
身につけた技術。
磨き上げたセンス。
場当たりの発想、瞬発力。
彼は己の全力を出し切り、その全てを宿儺にぶつけることができた。
「…………楽しかったな」
だからこそ、彼は宿儺に対し「申し訳なさ」を抱いていた。
「宿儺は僕に全てをぶつけることができなかった」と。
五条の「強者ゆえの孤独」を満たした宿儺に嫉妬しながらも、「君が満足したならそれで良かったよ」と言う夏油。
まるで親のような態度の友に、五条は
「背中を叩いた中にお前がいたら満足だったかもな」
と返した。
結局のところ、強者との戦闘だけでは、彼の孤独を埋めることはできなかったのである。
夏油「……ははっ」
そんな五条の本心を受けて、夏油は俯く。
彼の目尻からは、僅かに涙が溢れていた。
何にせよ、自分を殺すのが時間や病ではなく自分より強い奴でよかったという五条の言葉に、背後のベンチからストレートな言葉が返ってきた。
「どこの武将ですか」
「到底現代人とは思えない思考だ 気色悪い」
五条「あぁ?」
声の主は渋谷事変で命を散らした五条の後輩・七海建人であった。
七海「まぁだからこそ私よりは長生きできたんでしょうけど」
「誤差の範囲だよ‼︎五条さんと七海は‼︎」
その隣には、高専時代の任務中に死亡した、同じく後輩の灰原雄も座っていた。
七海は五条に対し「ただひたすら自分を満足させるために呪術を行使していた変態」と辛辣な評価を下しながらも、「あなたらしい最期だった」と同情を示した。
歯に衣着せぬ物言いに「オマエ(の最期)はどうだったんだよ」と七海に問う五条。
すると隣の灰原が「僕が出しゃばってしまって…」と申し訳無さげに話すが、それに反し七海は「呪いが人を生かす事もある」と返した。
生前、七海は1級術師・冥冥に移住先について助言を求めたことがあった。
それに対し、彼女はこのように答えた。
「新しい自分になりたいなら北へ」
「昔の自分に戻りたいなら南へ行きなさい」
その助言を受け、彼は迷わず南国を選んだ。
心のどこかで「昔の自分」への未練を捨てきれずにいた七海。
だが、そんな後ろ向きな彼も、最後の最後に未来に賭けることが出来た。
彼はそんな自身の最期を「悪くない最期でしたよ 灰原にも感謝してる」と語り、死の間際に介入した灰原にも感謝の意を示すのであった。
「そっか……」
五条は悟った。
自身も七海も、悔いのない最期を迎えることができたのだと。
この事実を前に、五条はその場に居合わせた夜蛾正道に揚げ足をとるように呼びかけるのであった。
「学長ー‼︎ 呪術師に悔いのない死なんてないんじゃなかったんですかあ⁉」
心からの笑顔を浮かべる五条、夏油、七海、灰原。
生前同様の仲睦まじさを見せる天内理子、黒井美里。その後ろで佇む伏黒甚爾の背中。
生前の予想に反し、大勢に囲まれて“ソレ”を迎え入れる五条はこう零すのであった…。
「これが僕の妄想じゃないことを祈るよ」
───そして。
死闘、その結末
場面は現世、瓦礫の山ばかりと化した新宿に戻る。
そこに映し出されたのは、既に胴体を真っ二つにされ息絶えた現代最強の呪術師の亡骸であった。
───五条悟は敗北したのだ。
何が起きたのか?
勝負の明暗を分けたのは、今しがた虚式「茈」によって破壊されたはずの式神「魔虚羅」の能力であった。
「あらゆる事象に適応する」能力を持つ最強の式神、魔虚羅。だがその能力には更なる秘密があった。
魔虚羅の適応は一度だけで完結しない。一度適応した呪術も解析を続けていく事で、二度目、三度目とより相応しい適応方法へと変化させていく。
宿儺はその性質を利用した。
適応を繰り返した魔虚羅に、無下限の不可侵を破りうる斬撃を習得させて自らの「手本」としたのだ。
宿儺は魔虚羅のサポートに徹しつつ時間を稼ぎ、適応を加速させ続けた。
一度目の適応で魔虚羅は、領域展延のように無下限を中和するよう自身の呪力を変質させた。だが、固有の呪力特性を変えるなど、宿儺ほどの術師でも不可能なこと。
だから待った。己の術式で再現可能な斬撃を魔虚羅が習得するまで。
そして、二度目の適応で魔虚羅は遂に宿儺の期待に応えた。
空間・世界ごと相手を分断する斬撃、所謂「次元斬り」を習得したのだ。
緻密な呪力操作で空間を支配する術式、無下限呪術。その呪術により具現化した「無限」はあらゆるものを阻むため、いかなる攻撃も五条には届かない。
だが、五条が存在する空間・世界・次元もろとも切り裂いてしまえば、無限だろうと関係ない。
事実、二度目の適応直後に見せた斬撃で、五条は右腕を斬り飛ばされた。
──そして、魔虚羅がその斬撃を魅せた時点で、五条の敗北は確定した。
宿儺は魔虚羅の斬撃を手本とし、持ち前のセンスと学習能力で己の斬撃の術式対象を拡張。
魔虚羅の「次元斬り」を見よう見まねで模倣し、五条を一刀両断したのであった。
ただ、結果的に負けてしまった五条も確かな強者だった。現に死闘の末勝利した宿儺は、五条が炸裂させた「茈」によって重傷を負っている。
故に、呪いの王たる彼は、どこか晴れやかな表情を浮かべていた。
「天晴れだ 五条悟」
「生涯 貴様を忘れることはないだろう」
心の底からの賞賛を五条に向ける宿儺。
その言葉を受けた五条の亡骸もまた、それに応えるかのように口元に笑みを浮かべるのだった。
現代最強の呪術師・五条悟の死。
だが、その死を悼む間もなく、新たな戦力が死地へ投入される。
「今は機嫌がいい 頼むから興を削ぐなよ」
その名は──雷神・鹿紫雲一。
反響
このエピソードが公開されたその週ではちょうどアニメでも五条が獄門疆で退場させられる回でもあった為国内外から絶大な人気を誇る五条悟のファンたちから作者とアニメ公式の「五条、封印」という号外新聞を配布するなど狙ってやったとしか思えない退場回に「推しの死」としてTwitterのトレンドにのるほどの話題となり、「芥見先生は人の心とかないんか?」「五条先生、お疲れ様でした。」「先生もうゆっくり休んで幸せになってくれ」など大きすぎる反響を呼ぶ。
この衝撃は国内だけにとどまらず、海外のファンの中にも怒りと悲しみのあまり呪術廻戦の全グッズをゴミ箱に捨てる動画をアップしたり、駅前の巨大な五条悟のポスター一面にファンたちから悲しみとお別れの意を汲んで大量の追悼の手紙や花束が添えられたりするなど大きく話題になっている。
五条が死んだことによる国内外の反応のデカさから悪意ある人間が芥見の元に「殺害予告」や「誹謗中傷」を送らないか一部のファンから心配の声が上がっている。
また話が少し逸れるが236話掲載のジャンプ発売の5日前辺りからフライングでTikTokやYouTubeなどで盛大に早バレする動画が多く挙げられる。
このデカいネタバレを食らったファンたちから転載動画を上げた投稿者やジャンプのセキリュティ管理の甘さ、SNSの杜撰な著作権判定に非難が集まる。
その後はもちろんSNSの著作権侵害で多くの転載動画は削除はされている。
批評
一方で、五条の最期について批判の声も少なからず上がっている。
これは、この話で描かれた五条が、今までファンの中で思い浮かべていた「五条悟という人物像」と解離していた事が起因となっている。
特に言及されているのが宿儺に対する態度で「残してきた生徒達への心配や期待より、教え子の一人の体を好き勝手にしている敵の宿儺への申し訳なさが出てくるのは一体どういう了見なのか」という意見が寄せられた。
他にも「過去の出来事を経たからこそ未来に目を向け、強く聡い仲間達を育ててきたはずじゃなかったのか」「伏黒恵を助けるために戦ってたはずなのに、なんで楽しかったなんて言葉が出てくるのか」等の声もある。
そしてこれらの批判に対しての意見も存在し、ざっくり総括すると「五条悟という最強の呪術師も一人の人間だった」という評価になる。
いくら前を向き、もう過ぎてしまった事だと割り切ろうとしても、それでもやはり一番楽しかったあの頃に思いを馳せてしまうのは人間として何も間違っていない。それは五条も例外ではなく、だから最期に見た光景が、夏油達が待っていた空港だったのかもしれない。
宿儺との戦いが「楽しかった」と言った五条だが、実は彼は初期の漏瑚襲撃時に「楽しくなってきた」と発言したり、過去編にて自身を倒し天内と黒井を殺した伏黒甚爾を特に怒りもせず、むしろ一人の強者として受け入れたりしている節があるなど、最初から自身に届きうる強者を求めていたと解釈できるような描写が存在する。
だからこそ、ほぼ全ての力を取り戻した宿儺との戦いは、五条の全てを発揮できる最初で最後の機会であり、実際にそれが出来たから「楽しかった」という感想を抱いた。
伏黒に関しては、200%の「茈」をぶつけた後で「恵の事はオマエを殺した後で考えればいい」と言っているので、あくまでも五条は宿儺との1対1に拘っていたとも考えられる(虎杖や乙骨の救出作戦を信じていた・呪いの王を相手に出し惜しみをしている場合ではない、といった教師・術師としての判断という見方もできる)
そして肝心の残してきた仲間達への心配と期待だが、これは決戦前に既に虎杖達に言い残す事を言っておいた、または諸々の準備をしていた約一ヶ月の間に彼らの成長を窺えるところを五条が見ており、勝手に「自分が負けても大丈夫」と納得していたという可能性も無くはない(実際に家入には伏黒への伝言を任せている)
……と、五条悟の人間について掘り下げられた話、という風に受け止めて意見を発する読者もいる。
しかし、批判も確かな評価の一つであり、決して否定されるべきものではない。
五条悟という、呪術廻戦を語る上では切っても切れないほどの大人気キャラクターだからこそ起きた批評であると言えるだろう。
余談
- 前回235話の最後のコマにて五条の勝利宣言がなされたのだが、その次の回の冒頭で既に五条が死亡しており死後の世界(?)にて旧友たちと再会しているというあまりに大胆な演出は、多くの読者の度肝を抜いた。
- 今回描写された空港だが、これが本当の意味での「死後の世界」なのか、それとも五条が死の間際で見た「妄想」に過ぎないのかあるいはその他の何かについては明言されていないため不明。
- ただし、この回で登場した七海が五条の知り得ない情報まで知っていたことから、「空港=死後の世界」と解釈する意見も存在する。妄想だとすると七海の最期に関する灰原の発言にも疑問が残る。
- 本エピソードでの五条悟の死を以て、過去編時点で呪術高専東京校に在籍していた学生は(描写される限りでは)家入硝子と伊地知潔高のみとなってしまった。
- 特に家入は同期3人組のうち2人に置いて逝かれる形となったため、ファンの一部からは彼女の精神状態を心配する声があがっている他、彼女の心情を題材とした作品もpixivに投稿されている。
- 同じく彼の死によって日本国内に存在していた4人の特級呪術師は乙骨憂太1人を残して全員死亡したこととなった。(厳密には九十九のみ生死不明だが、状況的に死亡した可能性が非常に高い)
- すでに日本の呪術界は名うての呪術師や高専の指導側にも多数の死傷者、再起不能者が出ており、非常に深刻な人材不足に陥っているが、その問題はさらに加速化したと言える。
- 新旧主人公である乙骨憂太も虎杖悠仁も共に五条悟という師によって呪術師という道を示された結果、自分だけができることで人を助ける生き方を見出し、確固たる自信と希望を持てたこともあってその恩義は厚く、この戦いを見ている面々の中でもとりわけこの二人は五条悟の身を案じたり、優勢な場面で安堵するカットが多く描写されていた。
- 乙骨に至ってはたとえ足手纏いになろうとも何度か五条の助太刀に行こうとしたほどであった。
- そのためこの決着は乙骨にとって最悪以外何物でもなく、非情な決意を込めた表情で刀を握り締め、同じく五条の教え子でもあった同級生の禪院真希はその彼を思いを察しながら、覚悟を決めたように寄り添っていた。
- これによって乙骨の性格上、以降の戦いに大きな思いを背負って宿儺と相対することは間違いなく、また以降の戦い全てに決着がつくまで生き延びても上記のことで事後の対応と日本呪術界隈の立て直しには相当時間を要することは火をみるより明らかであり、分けても最後の特級呪術師となった乙骨はその性格も含めて相当大きな負担を背負わされることが予想されている。
- 五条家当主の戦死の原因が魔虚羅となったのは今回の戦闘で2度目である。
- 今回で宿儺と五条の闘いには決着がついたのだが、次回のエピソードのタイトルは引き続き「人外魔境新宿決戦」となっている。
- このタイトルは人外同士の呪い合いという意味合いだけではなく、宿儺という「人外」と人間たちとの決戦という意味も込められているのかもしれない。
- …だがその次の回からは、新宿決戦の裏側で繰り広げられた髙羽史彦と羂索の一騎打ちのエピソード「バカサバイバー!!」に移行している。
- 己の敗死を自覚したあとの五条の呑気さや父親の事を恵に伝えそこなったことを「硝子に任せたから大丈夫か」と済ませる等、宿儺の力を知ったあとで高専側に勝ち目があるかのような態度を見せた事から、後の切り札の存在を期待する読者もいる。
- その後の宿儺戦にて、「宿儺の持つ『捌』は触れないと発動出来ない」ことが判明。日下部の考察ではあるが、この『捌』は領域展延などでも防御不可能と言われている。
- しかし、無期限呪術を持つ五条だけは防ぐことが可能と思われる。
- 宿儺と五条の戦いは、振り返ってみると「宿儺がいかに無下限呪術を突破するか」とも捉える事ができる。
- 最初に五条が言った「そっちが挑戦者(チャレンジャー)だから」と言う発言が納得できる戦いと結末ではないだろうか。
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