概要
アニメ『機動戦士Ζガンダム』の外伝的な物語。ティターンズ・テスト・チーム(T3)に所属するパイロットが主人公の物語「ティターンズの旗のもとに」と、30バンチ事件の記録映像を手に入れた士官候補生が主人公の物語「刻に抗いし者」の二種類が展開されている。
両作共に「足を失った元ジオン軍MSパイロットがザンジバルの艦長に納まる」「主人公は物語初期はジム改の系列機に乗り、物語進行と共にガンダムに乗り換える」という共通点がある。
ティターンズの旗のもとに
著者は今野敏氏。コミカライズはみずきたつ氏が担当。
グリプス戦役会戦前~終戦までを描いた「T3部隊編」と、グリプス戦役後に行われた主人公エリアルド・ハンターの軍法会議を描いた「法廷編」で構成されており、この二つのエピソードが交互に展開する事で物語が進んでいく。
ガンダムシリーズにおいては初めて本格的な軍法会議の内容を描いた作品であり、ガンダムの小説作品やホビー雑誌掲載の小説としては若干の異彩を放っている。
(ただし漫画版に関してはエリアルドのティターンズ入隊からグリプス戦役終結までしか描かれていない。とは言え、こちらは漫画版オリジナルキャラクターを加えて人間関係がより明確に描かれているのが特徴)
また、Ζガンダム劇中で登場したティターンズのMSの系列を整理するという側面も見られ
本作で登場したMSの一部パーツの技術が後に他のMSやMAに転用され使用される、という設定が多く見受けられた。
ティターンズ側のテスト兵器名は全てイギリスの児童文学「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」が出典であり、機体のマーキングもうさぎにちなんだものが描かれている。
主な登場人物
ティターンズ
- エリアルド・ハンター
本作の主人公。地球至上主義を掲げるティターンズでは稀なスペースノイド。
真面目で正義感が強いが、同時に甘さと純粋さも併せ持つ。T3部隊へ配属され、ティターンズの掲げる正義と仲間を純粋に信じて戦い続けた。
小隊ではサブ前衛を担当。
グリプス戦役後はティターンズ時代に犯したとされる四つの罪状により、軍事裁判にかけられることになり、コンラッド・モリスがその弁護にあたる。
- カール・マツバラ
エリアルドの同期であり、良きライバルである戦友。
白人主体のティターンズでは珍しい日系人であり、その事をコンプレックスに思って髪を染めている。
明るく素直だが少し皮肉屋の気質があり、一見悩みなどない軽い人物に見えるが、内心ではしっかりと物事を考えている。
小隊では長射程火器を用いて後衛を担当。
なお、ヘイズルなどTRシリーズに描かれているウサギをモチーフにしたエンブレムは彼の手によるもの。
- ウェス・マーフィー
T3部隊所属のマーフィー小隊の隊長。
ティターンズ設立以前にはエイパー・シナプス大佐の直属の部下だった経験があり、シナプスがデラーズ紛争の全責任を負わされ処刑されたことに強い不満を持ち、それがきっかけでT3部隊に回されてきた。
ウサギ好きという意外な一面もあり、小隊の部隊章にはウサギを元にしたデザインを選んだ。
扱いづらい機体の性能をフルで引き出すほどの卓越した操縦技術を持ち、小隊では前衛を担当する。
- オードリー・エイプリル
マーフィー小隊の紅一点。
エリアルド達より2年先輩で、時にはエリアルドたちを叱責するなど、前向きで意志の強い性格をしている。器量もよく、カールからは美人と評される一方でメカ・フェチの一面があり、メカニック達からも一目置かれている。
動物が嫌いで、マーフィーが部隊章にウサギのデザインを提案した際には最後まで反対した。
マーフィー小隊では4番機を担当するが、部隊発足当初は予備要員としてアスワンで待機し、オペレーターを担当することが多かった。
- オットー・ペデルセン
アレキサンドリア級アスワン艦長。階級は大佐。
大局的な視点を持った、時勢や戦局を的確に把握出来る有能な指揮官であり、部下思いで人情に厚い。スペースノイドに対する偏見を持っていないため、バスク・オムのやり方には反感を持っている。
ティターンズ上層部の欺瞞と劣勢に傾きつつある戦局を察しながらも、あくまでエリアルド達の信じた正義を守るべく、アスワンの艦長でありつづけた。
グリプス2を廻る戦闘でエリアルドに「ある命令」を下し、戦死した。
- ヘンドリック・ネス
アスワンの整備主任。階級は大尉。
高齢ながら、T3部隊のメカニックを任されるだけあってその腕は一流。
マーフィーのよき理解者であり、その苦労を心配して何かと声を掛けていた。
- トーマス・シュレーダー
サラミス改級イズミール艦長。階級は大佐。士官学校時代のあだ名は「氷柱(つらら)」。
一年戦争末期に20代の若さでサラミスの艦長になり、今まで部下を一人も死なせた事が無いことで連邦軍内では一種の伝説となっている人物。部下を生かすためならば平気で憎まれ役を引き受ける大きな器を持つ。
エゥーゴ(ジオン残党軍)
- ガブリエル・ゾラ
乗機に「ジオン・アライブ」のマーキングを入れるジオン公国軍元大尉。
一流のMSパイロットであり、ザンジバルを乗艦としてゲリラ活動を行っていた。後に乗艦ごとエゥーゴに移籍する。
無口で無表情、無愛想だが、その腕前と信念の強さから周囲の信頼は篤い。
当初はジオン再興に執念を燃やしていたが、混迷を深める戦いの中で繰り返される各勢力の政治抗争に辟易し、次第にその興味を失っていく。その一方で度々T3部隊に苦汁を舐めさせられたことで、グリプス戦役終盤には完全にティターンズのガンダム(=T3部隊)打倒の妄執に取り付かれる事になる。
- カザック・ラーソン
ジオン公国軍元大尉。
ゾラとは一年戦争時からの戦友で、彼と共にゲリラ活動を行っていた。
当初はモビルスーツパイロットとしてゲルググに搭乗していたが、T3部隊との戦闘で左足を失い、その後ザンジバルの艦長に就任する。
地球連邦軍
- コンラッド・モリス
もう一人の主人公。
軍人でありながら弁護士を勤める、地球連邦軍法務局所属の法務官。階級は少佐。
元はMSパイロットだったが、一年戦争のソロモン攻略戦で左足を負傷してパイロット生命を絶たれ、歩行杖が欠かせない体となった。
前線を知らない「政治家」達が指揮を執る現在の連邦軍の体質に辟易しており、その体制への反発心から、「絶対に勝ち目のない」と評されたエリアルドの弁護を受け持つ。
- ジョアンナ・パブロア
コンラッドの秘書官。階級は中尉。ロシア系の美人。
秘書としての能力は高く、コンラッドの忠実な右腕として活動する。元は広報部門の出身であり、何人かのジャーナリストともコネを持っている。
- マキシム・グナー
デラーズ紛争時のマーフィーの戦友。階級は大尉。
高機動型ガルバルディβと新型武装のテストのためにアスワンへ赴任するが、本人は30バンチ事件などの真実を知っており、それが原因で部下を自殺に追い込んだ事を悔いていた。そのため連邦軍の正義に疑問を抱き、アスワン赴任直後に機体ごとエゥーゴへと寝返った。
小説版ではその後は語られていないが、漫画版ではグリプス2攻防戦でマーフィーと対峙している。
刻に抗いし者
著者は神野淳一氏。
30バンチ事件の証拠映像を偶然手に入れてティターンズから追われる身となった主人公ヴァン・アシリアイノとその幼馴染であるマクガイア兄妹がそれぞれ敵味方に分かれて物語が展開される。
本編の一部を模型写真と共に電撃ホビーマガジンに掲載し、本編の完全版をWebサイトにアップロードするというメディア展開を行っており、模型雑誌の制約に囚われない文章表現が特徴。本編の掲載期間は一話あたり三ヶ月。
前作と異なり反地球連邦勢力側から物語が語られており、主に地上での戦闘を描いた「地上編」と宇宙での戦闘を描いた「宇宙編」に大別される。
また、「ティターンズの旗のもとに」とは世界観を共通するのみで、互いに独立した物語となっている一方で、T3部隊で培われた技術をフィードバックしたカスタムMSが登場したり、T3部隊によるアッシマーのテストが行われていた事が語られるなど、「ティターンズの~」から反映された描写が見受けられる。
主な登場人物
ケラウノス
- ヴァン・アシリアイノ
地球連邦軍の士官学校へ通う士官候補生。本作の主人公
休暇を利用して帰省した際に、ジャーナリストであった父親の知り合いから30バンチ事件の証拠映像を渡された事が切欠でティターンズから追われる身となり、反地球連邦活動へ参加する事になる。
ダニカ、アーネストとは兄弟のような間柄であり、二人からは弟のように扱いを受けていた。
ティターンズへ入隊したアーネストと刃を交える事に苦悩する穏やかな性格の持ち主で、あまり好戦的とは言えない。
パイロットとしては新兵同然であったが、次第にエースとしての頭角を現すようになる。
また、高いG耐性を持ち、戦闘機動時に高Gが発生するような高機動型モビルスーツを操る。
- ダニカ・マクガイア
ヴァン同様に地球連邦軍の士官学校に通う士官候補生。沈着冷静な性格で、幼少時の経験から感情をあまり表に出さない。
実兄であるアーネストとは折り合いは良くないが、同い年であるヴァンに対しては姉のように接する。
ティターンズからヴァンを逃がす事を条件にパイロットとして反地球連邦運動に参加するが、それ以前から環境保護のデモ活動などにも参加していた。
料理はジャーマンポテト以外作れない。
- フォルカー・メルクス
反地球連邦組織「ケラウノス」リーダー。ザンジバル級機動巡洋艦艦長。元ジオン軍少佐。ゲルマン系。
一年戦争時の撤退戦で足を失い、部下のルシアンに隊長の座を譲り地上に残り酒びたりの生活を送っていたが、ルシアンの説得で反地球連邦活動に身を投じる。
普段は艦長としての任に専念するが、人手が足りない時は自らMSに乗り戦場へ赴く事もある。
- ルシアン・ベント
ケラウノスのMS部隊の隊長。元ジオン軍中尉。アングロサクソン系。
フォルカーとは一年戦争当時からの付き合い。一年戦争終結後も故国へ帰らず、地球で結婚して娘を授かっている。
腕利きのMSパイロットであり、砲戦用MSであるジム・キャノンⅡで格闘戦もこなす。
ヴァンやダニカにとっては公私共によく面倒を見てくれる良き上司。
ノーマルスーツのヘルメットには、愛機であるジム・キャノンⅡと同じダズル迷彩のペイントを施している。
- ロープス・スグル・アキヤマ
ケラウノスの主任整備士。
ロックミュージシャンのような風貌で、寒いオヤジギャグを連発する。
リストラに遭った元地球連邦軍の整備兵であり、軍在籍時の階級は軍曹。妻子を養う為にアナハイム・エレクトロニクスの仲介でケラウノスに所属する事になった。
ヴァンに思いついたことは端末ではなくペンで紙に書いてみるようアドバイスする。
エゥーゴ
- ソウイチ・オビノ
元ティターンズ少尉。
ライネスの部下としてケラウノス追撃の任にあたっていたが、ルシアンに撃墜され病院送りとなる。
その後、ライネスに30バンチ事件の記録映像のコピーを託された事を切欠にエゥーゴに参加。
真面目な性格の持ち主で、ティターンズを外から正すべく戦う。
同僚のエーヴィを憎からず思っている。
- エーヴィ・アルヴァ
階級は軍曹(エゥーゴは軍隊ではないが、軍曹相当の給与を貰っているという意味で名乗っている)。
アナハイム・エレクトロニクス系列企業の令嬢だが、地球圏の実情を憂いエゥーゴへ志願し、ラビアンローズ級ドック艦「ロサ・ギガンティア」でテストパイロットを務める。
明るく人見知りをしない性格で、オビノに何かと突っかかる。
- クリスティアン・カーク
サラミス改級デルフォイ艦長。階級は少佐。
ヴァン達が通う士官学校の教官だったが、元々ティターンズに対して懐疑的であり、密かにカラバに内通していた。その後、本格的にティターンズに反発してエゥーゴに参加する。
一年戦争経験者であり、当時は「ソーラ・レイ」によるレビル艦隊消滅を目の当たりにしている。
理詰めの作戦を得意とする。
ティターンズ
- アーネスト・マクガイア
本作におけるもう一人の主人公であり、ダニカの兄。宇宙世紀以前から続く名門軍人家系の長男で、現当主。
幼少期から文武両道に長け、友人や同僚からの信頼も篤い。
ダニカの実兄だが、反りが合わずむしろヴァンを弟のように可愛がり面倒を見てきた。
自らの正義の信じティターンズに志願するが、その直後にヴァンとダニカが反連邦活動へ参加し逃亡した事を知らされその追跡の任に就く。ただし二人の逃走の真相については知らされていない。
強化人間の少女ロスヴァイセと出逢い、互いに想いを寄せていく事になる。
- ロスヴァイセ
オークランド研究所で調整された強化人間の少女。階級は軍曹。
感応波レベルが期待値に達しておらず、また感情障害を持つ為に研究所では「UF(UnFinished Cyber Newtype、未完成品)」と呼ばれていた。
感情障害とは別にコミュニケーションが苦手で、ティターンズ所属当初はアーネストや、彼女付きの技術者に依存する形で他の小隊メンバーとコミュニケーションを取っていた。
- ジゼル・アンジェリク・アルベール
へヴィ・フォーク級ニコシア艦長。階級は少佐。
きつい感じの美貌の女性将校。非道な行いは好まないが、必要とあれば躊躇わない。
ヴァンの手に渡った30バンチ事件の証拠映像の回収任務に就くが、それによってティターンズ本部からマークされる。
ライネスとは士官学校時代の同期で、一年戦争、デラーズ紛争を経てティターンズで再会した。
- ヒューイット・ライネス
ティターンズ所属の大尉。
一年戦争を生き抜いた生粋のエース。実直な性格の職業軍人だが、第二次大戦機好きが高じてパイロットを目指した元戦闘機乗り。
ケラウノス追跡任務でアーネストの上官となるが、ヴァンから回収した30バンチ事件の証拠映像を密かに録画していた事で、ティターンズ本部からマークされる事になる。
アルベールとは士官学校時代の同期。
- エセルバート・ヒンカピー
アーネストの同僚のティターンズ少尉。
ライネスの部下でアーネストの同僚。偵察、索敵能力に長け直接戦闘に参加することは少なく、後方支援に徹する。
如何なる時もジョークを欠かさない能天気な性格の持ち主だが、その情報収集・処理能力は高い。
ロスヴァイセの兄貴分を自称する。
グリプス戦役時には既に旧式化しているザク・フリッパーを近代化改修して乗り続ける。
- ユーイン・バーダー
グリプスから地球へ派遣されたティターンズ主流派。階級は少佐。
30バンチ事件の真相を知るアルベールとライネスの監視役として派遣された。
良識の欠片も無いサディストで、味方を犠牲にする事すらいとわず、享楽的に戦う事から「愉快犯」と呼ばれるが、彼と同じ性質を持つ部下からの信頼は篤い。
一年戦争時から戦い続け、デラーズ紛争時には連邦の鹵獲したビグロでシーマ艦隊に攻撃を仕掛けている。
フォルカーの足を奪った張本人だが、その際に自らも腕を失い、義手となっている。
メカニック
ティターンズ
RGM-79Q ジム・クゥエル
RMS-179 ジムⅡ
RMS-106 ハイザック
RX-108 マラサイ
RMS-154 バーザム
MS-06E-3 ザクフリッパー
ティターンズテストチーム
RX-121-2A ガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル]
YRMS-106+BL-85X バイザックTR-2[ビグウィグ]
NRX-044(R) プロトタイプアッシマーTR-3[キハール]
RGM-79CR ジム改高機動型
RGM-79SR ジム・スナイパーⅢ
YRMS-106C ハイザックキャノン
RMS-117 高機動型ガルバルディβ
ニコシア
RX-106E ハイザック「ヴァナルガンド」
NRX-044 アッシマー「ダンダチャクラ」
RX-110C ガブスレイ「フギン」
RX-110NT-1 ガブスレイ「ムニン」
RX-136-1 ラクシャサ
ORX-007 ハティ
ORX-009 ガンダム「スコル」
ジオン残党軍
MS-06F2 ザクⅡF2型
MS-09R リック・ドム
MS-14B ゲルググ
MS-06F2 ザク[シュトゥッツァー]
MS-09R リック・ドム[シュトゥッツァー]
MS-14B ゲルググ[シュトゥッツァー]
MSM-07 ズゴック
MSM-04 アッガイ
エゥーゴ
RMS-099 リック・ディアス
RGM-79R ジムⅡ
MSA-003 ネモ
MSA-005 メタス
RX-178 ガンダムMk-Ⅱ
FXA-05D Gディフェンサー
RX-178+FXA-05D Mk-Ⅱディフェンサー
RMS-099 リック・ディアス[シュトゥッツァー]
MSA-003 ネモ・カノン
ケラウノス
RGM-79C ジム改 ケラウノス所属機「ワグテイル」
MSK-003 ワグテイルII
RMS-106 ハイザック ケラウノス所属機「アイリス」
RMS-106 ハイザック[エピデンドルム]
RGC-83 ジム・キャノンⅡ ケラウノス所属機
RGC-83 ジム・キャノンII[ホワイトコーラル]
MSA-003+FXA-05D ネモ・ディフェンサー
MSW-004 ガンダム「ケストレル」