概要
任天堂の据え置きゲーム機。「Wiiリモコン」と呼ばれる空間認識型ポインティングデバイスを標準装備し、シンプルかつ直感的な操作性は老若男女に受け入れられた。
全機種中国生産となり、品質・耐久性は先代より大幅に低下したが、それでも任天堂ハードらしく同世代のライバル機よりは高い耐久性を維持している。
スーパーファミコン以来、久方ぶりにゲーム機トップシェアの座についた機体である
Wiiリモコンのモーションコントロールによる奥深い操作性は、それまで複雑化の一途を辿っていた家庭用ゲーム機のインターフェイス開発に一石を投じた。また、WiiFit等の体感ゲームデバイスを数多く提供している。
供給メディアは12cmのDVD-ROM(厳密に言うとカスタム化した独自規格)。ゲームキューブとの互換性を維持しており、ゲームソフトやメモリーカード、コントローラーをそのまま利用可能。
コンピューターとしての基本設計はゲームキューブをそのまま引き継いだもので、性能的には同世代の競合ハードに比べ大幅に見劣りするものの、その分消費電力や本体サイズは大幅に抑えられている。
スロットイン方式を採用した機器としては珍しく8cmディスクをそのまま入れることができる。
なお、開発用Wiiには光ディスクドライブは搭載されておらず代わりにハードディスクドライブが内蔵されている。
またDSシリーズに続いてWi-Fiコネクションに対応。据え置きハードとしてはNINTENDO64以来となる(第7世代以降はインターネット接続前提でソフトウェア設計を行う方向に各社梶を切る事となる)。
前世代機同様、リージョンコードが設定されており、特殊な改造を施すか専用ツールを使用しない限り海外版のソフトを起動することはできない。
韓国・台湾等のアジア地域は、ゲームキューブまでは日本と同じエリアに設定されていたが、Wii以降はそれぞれ独立したコードが与えられた。
2013年10月22日、生産終了。
2020年2月6日、修理受付終了。
当初は同年3月31日に終了予定だったが、予想を上回る修理依頼で、部品在庫が無くなった為、前倒しで修理受付を終えた。ソース
仕様
CPU | IBM PowerPCカスタム「Broadway」 | ゲームキューブのCPUとの互換性あり |
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GPU | ATI(AMD)「Hollywood」 | MCM構造。グラフィック処理やその他周辺機器の制御を担当する「Vegas」と1T-SRAM(1トランジスタSRAM)内蔵の「Napa」を搭載。 |
メモリ | 1T-SRAM 24MB+GDDR3 64MB | |
メディア | Wii用12cm光ディスク+ゲームキューブ用8cm光ディスク | |
ストレージ | 内蔵フラッシュメモリ 512MB・SDメモリーカード 最大32GB | セーブデータやダウンロードソフトの保存に使用 |
モーションコントロール
Wiiはモーションコントロールを本体に標準装備した、初の家庭用ゲーム機である。
ソニー・コンピュータエンタテインメントのEYETOYや、バックスコーポレーションのパワーグローブなど、モーションコントロール技術を扱った前例はあったが、どちらもゲーム機周辺機器としての小規模な取り組みである(単独ゲーム機としてはスクウェア・エニックスの『剣神ドラゴンクエスト』の例がある)。
発表当初はモーションコントロールに対し、懐疑的な意見が多かったが、それは『Wii Fit』ブームと言う形で払拭された。
追って、ソニー・コンピュータエンタテインメントからプレイステーションMOVE、マイクロソフトからはKinectと、競合他社からもモーションコントロールデバイスが発売され、一般的な技術となった。
例えば現在活躍しているバーチャルYouTuberも、本を正せばモーションコントロール技術を用いて中の人の動きを捕捉して3DCGモデルを動かしている(大抵はサードパーティー向けにシステムを開放していたり、OSとの兼ね合いからKinectが使われている事が多い)。
リモコンストラップによる事故
発売直後、勢いよくコントローラを振った拍子に、コントローラがすっぽぬけ、テレビを突き破る事故が発生した。
その際、リモコンストラップの弱さが指摘され、任天堂は全製品の無償交換を行った。
また、それまでの購入者全員を対象にシリコンクッションでリモコンを覆うためのカバーを配布した。
事故の再発防止のため、任天堂は、ストラップの確実な装着や、周囲の確認などを呼びかけている。
ちなみにおしゃかになったテレビとは対照的にWiiリモコンは事故後も問題なく動いたという。
生活用品としての需要
準体感型ゲームのタイトル数が多い特性上、プレイに際し運動量が多くなる傾向がある。そのため健康器具としての需要も高い。
『Wii Fit』など一連のソフトウェアは、日々の健康管理を行うためのツールとして設計されている。
ゲーム自体は過酷なトレーニングではないが、日々の体調を自動的にデータベース化してくれる機能は、多くの健康志向者に受け入れられた。
またショッピングや情報番組、レンタルビデオなど、生活に根ざしたコンテンツが多く配信されているのも特徴。
これに付随してか本体ROMに住所を保存できる(通常の設定メニューからは呼び出せず、住所情報を取り扱うチャンネルから住所設定を呼び出す仕組みになっている)。
名称
Wiiとは私達という意味のWeをもじった名称。人とのつながりを大切にしたいという意味で名づけられた。…が、実はwiiとは北米でちっちゃな子のおしっこを意味するWeeを連想させる言葉であり、奇抜すぎるネーミングにはアメリカ合衆国ではかなり反発があったようだが(発売前のコードネーム「レボリューション」の印象が良かったため余計に)、最終的には受け入れられた。
ミンナニハナイショダヨ
Wiiリモコンは本体との通信にBluetoothを採用している。よって、有志によって解析されており、パソコン用操作デバイスとして動作するソフトウェアが公開されている。
ただし、任天堂が了承しているわけではないので保証が受けられないことは言うまでも無い。
Wiiリモコンの拡張端子は形状は独自だが信号自体はIIC(I2C)とよばれるIC間の通信では一般的な規格による通信を行っている。
(ただし、無闇な解析や不正な機器との通信ができないように通信開始時に暗号データを送って認証を行っている)
本体については「ローパワーハイパフォーマンス」(少ない力で体力を消費すること)を目指して作られている。
具体的には既存のプロセッサ(ここではゲームキューブのそれを指す)の設計を流用しつつそれを最先端の技術で作り直すことにより、性能を上げるのと同時に大幅な省電力化とチップ面積の縮小化を実現している。
センサーバーは名称こそ「センサー」だがセンサーの類は搭載しておらず、実際は赤外線を常時点灯しているだけにすぎない。このため故障してもロウソクの火で代用が可能。
ちなみに肝心のセンサーはWiiリモコン側に搭載されている。いわばテレビのリモコン(赤外線をセパレート方式にした特殊なテレビ)とはほぼ真逆の構造である。
Xbox360のレッドリングやPS3のYLODなど、大幅な性能向上の引き換えに(主に初期型で)致命的な不具合が発生する可能性があった第七世代の据え置きゲーム機だが、Wiiに関してはそのような不具合はほとんど起こっていない。
この不具合はプロセッサが発する過剰な熱で基板とプロセッサを繋いでいるBGAハンダが溶けたり割れたりすることで起こる接触不良が原因で、プロセッサの設計段階から発熱を抑える設計をしているWiiは(ヒートガンを当てたり通気孔を塞いだりといったイレギュラーな使い方をしない限りは)そのようなリスクが少なく、このような不具合が発生しにくくなっている為だと思われる。
Xbox360とPS3は発売後何度かモデルチェンジを施しているがWiiは最初から最後までモデルチェンジを施していない。
…と思われるが実はWiiも何回かハードウェアの刷新をしており、主にプロセッサのシュリンク(90nmから65nmへ)、ディスクドライブのセキュリティの強化などが施されている。
2008年以降に生産されたWiiのCPUはパッケージ基板含めてゲーム機のプロセッサとは思えない程小さくなっているので興味のある人は調べてみると良いだろう(但し分解は自己責任で)。
Wiiを分解するとディスクドライブを覆う巨大な鉄板が姿を現すが、これは元々最初の設計図では存在しておらず、任天堂の開発部門のスタッフ曰く「誤って踏んだときに壊れないように」勝手につけたとのことである(参考:外部リンク)。
また副次的な作用として、本体の排熱性能の向上と、電磁波の漏れの抑制にも一役買っている。
ちなみにこの鉄板は次世代機のWii Uにも装着されている。
後継機
2012年12月に、高い処理性能と擬似クラウドコンピューティング機能を持ち、リモコンに加え、専用コントローラに「ゲームパッド」を追加した後継機・WiiUが発売。あなたとわたしという意味のWeとYouをもじった名称。
Wiiとの互換機能があるため、Wiiのソフトも遊ぶことができる(Wiiリモコンとセンサーバーは一部セットを除き別売り扱い)。
ゲームキューブとの互換性は排除されており、ゲームはもちろんコントローラなどの周辺機器も一切使用できなくなっている(ただしコントローラについては例外もある)。
廉価版
Wii Family Edition
2011年末より欧州・米国で発売。ゲームキューブの互換機能が排除されている。
Wii Mini
2012年よりカナダ、2013年より欧州で発売。
主な変更点として、ゲームキューブの互換機能・ゲームキューブコントローラ接続用ポート・SDカードスロットが丸ごと排除されている。本体改造でもしない限りインターネットに接続できない。
その他
HomeBrewChannelという任天堂非公認のWiiチャンネルを不正インストールする事で、第三者が作った自作アプリがWiiで動くようになる。
問題はその自作アプリの中に、バックアップディスクの作成やプロテクトチェックをかいくぐってのコピーソフト起動、チートツールなどが含まれている点。
そのため、ソニーと同じくファームウェアアップデートやハードウェアのバグフィックスが行われている。
- ブートローダーのバグフィックス
- 光学ドライブのバグフィックス(DVD Videoが再生不能に)
- ダウングレードでbrick(文鎮化)するように対策。
だが、ゲームソフト側のセキュリティーホール(脆弱性)はそのまま(任天堂はゲーム進行不可になる致命的なバグ以外は修正しない)だったり、アップデートで対策されても新たなセキュリティーホールが発見されるなど、完全にいたちごっこ状態となっており、システムアップデートが止まった現在は完全に野放し状態となっている。(同時にインターネット接続サービスも終了しているが…)
余談だが、PSP、PS3(ただし、PS3のアップデートは継続中)にも同じ問題が起きている。
発売当初、第7世代ゲーム機では後発であったにもかかわらずXBOX360やPS3を大きく突き放して1位になったものの、サードパーティーによるソフトのマルチプラットフォームリリースの対象から外れる事が多かった上、後年はWii専用タイトルの数も大きく減少した。結果的にXbox 360やPS3のラインナップが充実していく中、逆にWiiは新作ソフトが不足するようになり、後継機であるWii Uの登場を前にしてソフトがほとんど発売されないという状況に陥り、2013年10月22日に早くも生産が打ち切られ、第7世代ゲーム機では最も短命に終わった(XBOX360は2016年、PS3は2017年まで生産継続)。ソフトはなんと海外では2020年まで新作が登場し続けた。最後の作品はアメリカ地域ではジャストダンス2020、ヨーロッパ地域ではShakedown:Hawaii、日本ではドラゴンクエストXのver3用拡張ディスク。
だが、Wiiの最大の役割は「ゲーム操作の複雑化」に歯止めをかけ非ゲーマー層を取り込むことだった。第6世代機の時代にはトップシェアのPS2向けのソフトですら販売本数が低調になる傾向があったが、Wiiの投入によって再びゲームソフト販売は活性化された。
任天堂の岩田聡社長(当時)が目指した「ゲーム人口の拡大」は見事に達成されたと言えよう。