マキシマム(ダイの大冒険)
だいのだいぼうけんのまきしまむ
「一度、出撃した我が軍団が敵を全滅しなかった事は全くない!! 戦えば勝つ!! それが我輩のポリシーなのだ!!!」
概要
超金属戦士たちを配下に持つ、大魔王バーンの本拠地バーンパレスの「(自称)最大最強の守護神」。敵幹部の中では竜騎衆と同じく、そのエピソードでのゲスト的な敵役となる。
外見はハドラー親衛騎団に似た超金属の戦士だが、彼等のように禁呪法で生まれた存在ではなく、生きた駒(リビング・ピース)と呼ばれる金属生命体。生まれて間もない親衛騎団とは違い、かなりの高齢である。
登場時は親衛騎団と同じようにバーンが禁呪法で生み出したキャラクターと思われ、禁呪生命体は制作者の性格が反映されるのにバーンとマキシマムは性格が全く違う事を疑問視されていたが、連載終了時に上記の「生きた駒」設定が発表された。これが若き大魔王バーンの禁術法で生み出した若気の至りに満ちた黒歴史を打ち消す後付けか、当初からの設定だったのかは不明。
指揮能力に長け、配下の超金属戦士を使役するも、弱った敵しか狙わないためミストバーンからは「大魔宮の掃除屋」と蔑まれている(オフィシャルファンブックでも職業は掃除屋扱い)ため仲が悪い(ヒムからは「き、汚ねえッ!!!まるで盗賊かハイエナじゃねえかっ……!」(※2020年版では「まるで盗賊かハイエナじゃねえか」の部分がカットされている)と呆れられ、ヒュンケルからも「おまえはクズだ…!!生かしておく値打ちもないっ…!!」と吐き捨てられていた)。
悪魔の目玉から収集した現在までの戦果を頭脳に蓄積し、さらにキングスキャン、スーパースキャンも駆使・検索して相手の能力を暴く。
チェスにおける「キング」にあたる駒であるため、近接戦闘においては超金属オリハルコンの硬度を利用した腕力での打撃を駆使する。しかしチェスにおいてはその能力以前に「取られてはいけない駒」なので前線に本来自ら赴いてはいけない存在であり、彼一人が倒されたら他の駒が自律行動できず軍団が瓦解する。なぜなら、配下の超金属戦士はハドラー親衛騎団と違って生命を持たず、命令しなければ「意思のないただの道具」でしかない。
大きな問題として、非常に虚栄心が強いうえに物事の見通しが甘いため、肝心の指揮能力やスキャン能力を使いこなせているとは言い難い。
死力を尽くして戦い抜き消耗しきったヒュンケルとヒムの前に止めを刺しに現れ、超金属軍団で襲わせるも、戦いの場数を踏みオリハルコン兵士に対する対処を会得したヒュンケルに無刀陣を利用したカウンターで部下を次々倒される。
最後の手段として動けないヒムをバーンパレスから突き落とす人質作戦で隙を誘い出そうとする。ボラホーンと戦ったデータを参考にしたため逆王手さながらにうまくいくと思われたが、その寸前に復活したラーハルトの槍さばきで残存の兵士と共に切り刻まれた。
肉体がオリハルコンなので実力はそれなりに高いが、それでもキングの駒という事もあって親衛騎団には遠く及ばず、実際ラーハルトの動きをヒムは目視できたが彼には無理であった。加えて性格上の問題もあり、自分をスキャンするなどの方法で状況判断する頭が回らず、結果として事態を把握できなかった彼はラーハルトとヒムの「動けば命の保証がない」「物凄いスピードで全身を斬り刻まれている」との警告を心理的トラップと勘違いする。半端に頭が回ったため、正真正銘の警告を自分の動きを封じる罠だと深読みしてしまい、間抜けに笑いながら撤退しようと飛び上がった直後、切り刻まれた箇所が開き、空中で爆散・死亡。
そのマヌケな最期はヒム曰く「正真正銘の馬鹿」。
もっとも、例え斬り刻まれていなくとも手持ちの駒を全て失ったキング=負けが決まったチェスの駒という役立たずをバーンが生かしておくはずがないので、例え逃げ帰ったところで地上でザボエラがミストバーンに宣告されたとおり、処刑されるのがオチだっただろう。恐らく自分がバーンからもっとも信頼されている=処刑されるわけがないと考えていたのかも知れない。
加えて、ヒム自身本来はオリハルコン兵として生み出された1体が、大本となるポーンの駒8体から無選別でバーンに選ばれ、この幸運に恵まれなければマキシマムの駒として雑に使われるだけの人生であったことを改めて理解して「オレ、ハドラー様の部下に生まれて良かった」と胸を撫で下ろした(それに加え、2020年版では「オレ、あっち側(※マキシマム側)のポーンの可能性があったのか!?」と台詞が追加され指折り数える描写も)。
言ってしまえば堀井雄二や三条陸が担当したダイの大冒険の登場人物でも珍しい成長の糧にもならないその場限りのやられ役。しかも、大魔王バーンが禁術法で生み出した黒歴史設定すらなくなったので単にジャンプ連載の尺を伸ばしただけのキャラで終わった。本作に登場する敵幹部の中でもフレイザードや竜騎衆を超える早期退場者となった。敢えて言えば久々の再登場となったラーハルトの復帰戦とヒュンケルとの交代を飾るためだけの存在だったと言える(それなら魔界のモンスターで十分だよね)。あるいは「ハドラーに与えられなかった残りのオリハルコンの駒はどうなるのか?」という点での伏線回収が、彼のおかげで出来た、ともいえるか…。
戦い方について
自分はミストバーンやキルバーン以上に重要な役割を持つ大魔宮の最大最強の守護神を自称しながらも、実際は弱った相手から確実に倒すことしかしない。消耗した敵を狙いリンチのような奇襲を仕掛けること自体は間違いではないが、彼の場合は上述通り保身優先で弱った相手にしか戦いを仕掛けないため、勝って当たり前とも言える戦いしかしなく、ザボエラを彷彿とさせる汚い戦法である。ミストバーンのように正面から戦う気もなければキルバーンのように正面から戦っても強いが、合理性や自分の悦楽も予て罠で確実に息の根を止めるということもしない。要するに手柄の横取りしか考えていない。
それでも、自分の役割を理解して、確実に敵の戦力を削ることに徹した仕事屋であったのならかなりの脅威となり得たが、マキシマムはその虚栄心から来る隙が大きすぎて、軍団の全滅と戦死に至ってしまった。
挙げ句の果てにミストバーンがダイの仲間達と戦っているのを知っていながら、わざと加勢を遅らせてその上で自分達がダイ達を倒せば自分が勇者一行を全員倒したなどと考える=上述通りミストバーンの手柄を横取りしようとする始末。そうした意味でもミストバーンからは『掃除屋』であるだけでなく、『手負いの獣の始末とネズミ狩りの区別もつけられない』、『自分がバーン様に買われていると思い込んでいる』と馬鹿にされた。
この場合、「手負いの獣」とはヒュンケルのことである。彼の知能では「鑑定能力」を生かし、ヒュンケルの不死身ぶりや異常ぶりを見抜いての戦略的撤退、あるいは戦略の変更すらできなかったようだ。
キングスキャンで相手のHPとMPを調べ(弱った相手から狙うため)、スーパースキャンで身体の状態まで詳細を知ることができる。更には悪魔の目玉から収集されたデータを瞬時に検索(アクセス)することも可能(尚、アニメ版ではマキシマムの頭脳内で検索時にマキシマムのミニ顔アイコンがぴょこぴょこ動くギャグ調の演出まである凝り様)。
これだけの能力を持ちながら自分が爆散するという未来までは視ることができなかった。
ただ、オリハルコン軍団は普通に考えれば敵として物凄く厄介な相手であり、やられてはいけないキングとはいえマキシマム自身もオリハルコン製なので、本来ならマキシマムとオリハルコン軍団のスペックは全く馬鹿に出来ない。余裕でオリハルコンを破壊できるようになった終盤だったためにこんな扱いになったが、仮に序盤から出てきていればマキシマム一人でも六団長やハドラー以上の脅威になりえた可能性も大いにあり得る。
作中でもミストバーンのおこぼれしか始末してこなかった事が見受けられ、そもそもバーンパレスに侵入してくるような敵がダイ達以前にどれほどいたのかという事を考えればマキシマムは実戦不足で能力が磨かれず、仮にそうした場面があっても、性格からして戦おうとしなかったことは想像に難くない。
実際に名乗り出た印象も「お前か」、アニメでは更に「好きにしろ」程度にしか言われておらず、本人はそれを全幅の信頼故に口数が少ないと思っていたようだ。
が、実際にはザボエラ並の性格の悪さに加えて能力の低さと頭の悪さから全くあてにされておらず、元のオリハルコン軍団から3分の1(キングであるマキシマム自身を除いた15個の内、キング以外の種類の駒を各種1個ずつの計5個)しかもチェスの形式再現を踏まえても、1つしかないクイーンまでハドラーに与えていた事実からも、元からハドラーや軍団長達に比べて期待されていなかったのは明白。要は、ハドラーのように最悪の場合は捨て駒にするという価値も、ミストバーンやジャミラスやバーンパレス管理者ゴロアのような『大魔王の有能な道具としての価値』も無かったといえよう。
加えて、ヒュンケルとの戦いでは最初に放ったポーンが一体倒されたら、即座にナイト、ビショップ、ルークと上位の駒を手当たり次第に動かしては全て撃破され、残りはポーンのみという最悪の状況に自ら陥れた。チェス………それもキングの駒のくせにアルビナスが言っていた『チェスの基本戦術』自体分かっていなかった。
オリハルコンの駒が劇中に初めて登場したシーンではバーンは実際にオリハルコンの駒を使ってチェスを指しており、直後にハドラーにオリハルコンの駒を与えた際にはキルバーンがバーンに対し「バーン様も今回は随分と奮発なされましたねぇ」と声をかけ、バーンも「よいではないか」と笑いながら答えている。この様子をみるに恐らくはマキシマムと彼に属するオリハルコンの駒はバーンにとっては希少性などから保持していた一種の趣味的なコレクション、文字通りの「珍しい高価な玩具」(キルバーンが玩具に喩えたが要塞という戦闘兵器としての面を持つ鬼岩城と異なり、こちらは本当にチェスの駒のセットという玩具である)でしかなかったと思われる。
二次創作において
二次創作にも登場するが、その凄まじいまでのバカさ加減を強調され、ギャグキャラにされることが多い。
余談
チェスのキングとしての能力
日本では、チェスは将棋に似たゲームであるという認識から誤解されがちだが、単独の駒としてキングはかなり強い駒である。
将棋と違い、チェスには金と銀に該当する駒がないので相対的に全方位に動けて小回りの利くキングは個性も汎用性が高く、将棋以上に複数の駒が連携しなければ追い詰める事が困難であり、特にビショップ(将棋で言う角)に至ってはチェス自体が盤の一辺が偶数であるため絶対に踏み込めないマスが存在し、将棋で言う成りがない事もあいまって絶対にキングを討てないこともあり得る。
しかしその性能を真に発揮できるのは「取られてもゲーム続行できる駒であった場合」。あくまでキングは取られたら終わりであるリスクを最優先に考えなければならない。
豊富な知識と分析力を持ちながら上手く活用できず散ったマキシマムも、同じ道を辿ったと言える。
小話
小物マキシマムを演じた玄田哲章氏は、様々な作品に参加している大物ベテラン声優であり、ドラゴンクエストの関連作品だけでもCDシアターシリーズでは『ドラゴンクエストⅠ』でのだいまどうや宿屋の店主、『ドラゴンクエストⅣ』のトルネコ(『トルネコの大冒険』でも続投)を、『ドラゴンクエストヒーローズⅡ 双子の王と予言の終わり』ではオレンカ王を、『ドラゴンクエストライバルズ』ではパパスを演じている(なお『ドラゴンクエストヒーローズⅡ』でもトルネコは登場するが、こちらでは茶風林氏が演じてる)。
関連タグ
ザボエラ:卑怯で卑劣で自分自身では戦わない同僚。ただしこちらの頭脳は本物であり、軍師や参謀としては優れている。
ジャミラス:原作に登場するモンスターだが、『ダイの大冒険』ではバーンから密命を受け、重要な役割を担っていた。守護者という点ではマキシマムと同じだが、ジャミラスの方がバーンの信用が厚かったのは間違いない。ジャミラスの方も自身が死ぬことを承知で与えられた任務に臨んでいる程にバーンに忠誠を誓っており、その点でも自己保身が全てのマキシマムとは対照的である。
ゴロア:バーンパレスの管理人であるが、重力波でダイを行動不能にしたり、魔力炉と融合して玉砕覚悟の攻撃を仕掛けたりしている。最も九死に一生を得た代わりに力を失った後は戦意を失い逃亡したが…。
あくまのめだま:愚王マキシマムがお人よしのヒュンケル相手にずる賢い人質作戦を思いついたのは有能な悪魔の目玉が収集した情報のお陰である。
他作品の関連項目
ジャハガロス:『ドラゴンクエストⅧ』の登場人物。一人称が吾輩、主に強い忠誠心を持つ、言動が小物臭く知性に欠ける、「パワーこぶし」という拳打を使う、などなどマキシマムと類似点がある。またハドラーとの類似点も散見される。
…そんな
不確実な情報に
踊らされる我輩では
ないわあっ!!!
ではっ!!
さらばだっ!!!
また会おうぞぉ―――――っ!!!
ショアッ!!!
ドッカァアァン
ちなみに連載当時のアオリ文にはこう記されている。
「スーパースキャンで自分の体を調べればよかったものを……!バカ王(キング)、まさに自滅!!」
……ごもっとも。
なお、アニメ版では爆散する直前、原作準拠のアホ面とともに、「あれ?」とこれまたマヌケな断末魔を残した。