概要
1979年の初頭頃から語られるようになり、その噂は夏にかけて日本を席巻し、全国の小中学生を恐怖に陥れた。
ついにはパトカー出動騒ぎや集団下校が行われ、模倣したイタズラも起きるなど社会問題にまで発展する。
しかし8月に入ると急速に沈静化し、風化していった。
「自分たち数人が、塾をさぼりたいがためについた嘘が広がってしまった」と告白する人物もいれば、「子供の寄り道などを防ぐ目的で親たちがでっち上げた創作の存在」とする説もあるなど、真相は定かではない。
設定
夜、外を歩いていると大きなマスクをした若い女性が「ねぇ、私綺麗?」と聞いてくる。そこで「綺麗」と答えると、マスクを外し「…これでも?」と耳元まで裂けた口を見せるのが定番。
※「綺麗じゃない」と言うと刃物で口を切られる、あるいは殺される。
この辺りまではほぼ日本全国共通だが、持っている刃物の種類、その他の細かい設定(口裂け女には姉妹がいる、赤いセリカに乗っている等)は、地域により様々なパターンが存在した。
現在では花粉症・インフルエンザ用の大型マスクが普及していることに加え、2020年以降は新型コロナウイルス感染症が世界規模で感染を拡大している影響もあり、日本に於いては外出の際にマスクを着用することが当然となっているが、当時は小型のガーゼマスク(主に子供・老人が使用)が一般的であり、医療従事者以外、しかも若い女性が屋外で顔を大きく覆うマスクをしているのは奇異な印象を与える事であった。
性格
極めて残忍。
上記の事から自身の顔に絶対的な自信、もしくは強烈なコンプレックスがあり、貶されるとキレる。
地方にもよっては「綺麗」と何度も言われるととても喜ぶという設定もある(ツンデレ)。
こうした性質は濡れ女子(ぬれおなご)と言う日本の妖怪と共通するが、関係は不明。
対処法
地方によって様々なパターンが存在し、伝えられる対処法が全く異なる場合がある。
下記はあくまで一例。
- 聞かれても無視する。
- 甘い声で「綺麗だよ」とずっと言い続ける。(そう答えると家の近くまでついてきてしまい、家の一歩手前で殺されてしまうケースもある。)
- マスクを外した瞬間、口の中にワサビを入れる。
- うまい事メリーさんと会わせる。
- べっこう飴を差し出すと悪さをしない。或いはべっこう飴を嫌って逃げるとも。
- 「ポマード」と三回唱える。
- 顔を見せられた時に「まあまあです」と答えるとたじろぐため、いきなり襲われずにすむ。
余談
- 岐阜県八百津町が発祥地という説が有力である。滋賀県信楽に伝わる民話が元になっているのではないかとも言われている。
- 口裂け女流行の2~3年ほど前の広島で、「私、きれい?」と尋ね「きれい」と答えると、ケロイドだらけの顔を見せて追いかけてくる「整形オバケ」の都市伝説があった。
- 広島を舞台とした漫画の登場人物で顔に大きなケロイドを持ち、初登場時に自分の顔の現状が確認できなかったために「私、きれい?」と尋ねてきた大原夏江を連想させる特徴であるが、関連は不明。
- 口裂け女流行の前年の夏ごろの北海道では、足が速く、双子の兄弟など口裂け女に似たパターンを持つ「耳食いお化け」の都市伝説があり、同年冬ごろには九州北部でも夜遅くまで遊んでいると鎌で耳を切り落としてくるなどの都市伝説として伝播していた。
- 口裂け女の噂は韓国や台湾にまで伝わった。インターネットが無かった時代に、驚くべき伝播力である。
- 角南攻(当時、週刊ヤングジャンプ副編集長)はラジオ局と協力し「ポマードと唱えると逃げる」などの設定を考案し、その噂を伝播させることに成功した。
- ポマード(整髪料)やべっこう飴(名前の由来である鼈甲は櫛の材質として有名)といった弱点は、イザナギが髪飾りと櫛を投げて黄泉醜女から逃げ延びたエピソードがイメージソースと言う説もある。
- その他飛騨川のバス事故での被害者発見時に口の裂けた骸骨が見つかった、岐阜県白鳥町周辺で起きた一揆で死んだものの怨念が口裂け女という話に変わった、とある池に出没するなど岐阜でも美濃国地域のあちこちで噂が立っている
創作での展開
- 『学校のコワイうわさ 花子さんがきた』にも登場するが犬を模したマスクを付けた口裂け女が登場する。
- 『学校のコワイうわさ 新・花子さんがきた』では時代の流れか、老婆と変わり果てた口裂け女が登場している。
- 『学校の怪談(テレビアニメ)』の第三話は口裂け女の話になる予定であったが、口唇口蓋裂(唇に裂け目ができる先天性異常)の団体から抗議が出たため放映中止となった(EDには登場)。前二話を再構成した総集編的なエピソードが流れたが、DVD版ではこちらも未収録。
- 都市伝説の妖怪が解禁されたゲゲゲの鬼太郎第6シリーズでも、人面犬や花子さんが登場する中、口裂け女は未登場である。”刃物を持って追いかけてくる、限りなく人間に近い姿の妖怪”である点も、懸念材料となったことが考えられる。
- ポプラ社版「学校の怪談」ではOVAという事もあってか、マスクを常備して登場している為、条件さえ整えば登場できるようだ。その代わり口を見せられないので、主役のエピソードは来ないに等しい 。
- オカルト的な存在が悪魔と呼ばれて登場するロールプレイング「女神転生シリーズ」では、高校が舞台の『真・女神転生if...』で鎌を持ったコート姿の「悪霊くちさけ」として、『女神異聞録ペルソナ』では複数体でバックアタックからの全体呪殺魔法「マハムド」連発で多くのプレイヤーにトラウマを与えた。
- 『ペルソナ2罰』では天野舞耶が変装でマスクを着けていたことにより生まれた”噂悪魔”として登場した。
- ポプテピピックのOPにもちらっと出ているがマスクは付けたままだった。
- 虚構推理第5話では怪奇や都市伝説が生まれる原理の一例として口裂け女が紹介されており、マスクを外した姿まで披露している。
- 『地獄先生ぬ〜べ〜』にも登場。ぬ〜べ〜の影響で怪奇に慣れた5年3組の男子生徒たちによって口裂け女退治が決行されるが、現れた口裂け女にポマードを投げつけるなどの攻撃をするも逆上して凶暴化し危機に陥る。
- 間一髪でぬ〜べ〜の救援でことなきを得るが、ぬ〜べ〜の霊能力で素顔は絶世の美女であることが発覚。さらに本作では「犬神憑き」の家系の末裔であり、ポマードを嫌うのも生前のトラウマではなく犬神憑きによる嗅覚の先鋭化が原因。ぬ〜べ〜は生徒たちの不躾な行為を叱責してこの事実を明かし、誤解が解けたことで口裂け女はそこから消え去った。
- のちに別のエピソードで三姉妹で登場、以前に登場は三女で呪いのコントロールが出来ないこと、長女は呪いを制御して美しい顔を保てる事が明かされた。世間から好奇心や霊能力者に追いかけ回されることに嫌気が差したため、ぬ〜べ〜に大金を支払う代わりにそれを元手にある豪邸の管理者になってもらい、ようやく安住の地を手にした。
- 東映スーパー戦隊シリーズ第3弾『バトルフィーバーJ』第29話においてこの時事ネタにちなみこれをオマージュした敵組織の怪人『口裂け怪人(声::坂井すみ江)』が登場し冊子でも「この口裂け怪人こそが、口裂け女の正体」と表記されている。甲冑を着た姿を持ち女性DJ香坂静香(演:中田彩子)という人間態に化け(本物は監禁されていたと思われ押し入れから救出され保護された)正体を見せると高速で動き回り包丁を振り回しメンバーの1人汀マリアの抹殺に動く。
なお、口裂け女のためポマードに関しては不明だが、なぜか豆腐が好物という意外な一面も。
戦闘能力は高く100mを6秒で走ってまるで空を飛ぶように移動し瞬間移動しながらのバク転や、木の上を自在に飛び移る等、非常に身軽な能力を持ち、接近戦では手に持った包丁のような剣、離れた敵には口から吐く吐息で植物を凍らせてしまう能力を持つが最大の武器はその歯。特殊金属でできており敵の武器を何でもかみ砕く。仲間とともに追い込むが追い込んでいくがこの危機に対して妹口裂けロボット(等身大の巨大版で作中本作の怪人は兄弟※姉妹と呼ばれている)を呼び出し2人の連携を見せるが、姉妹そろって倒される。
当時の噂の根底には、容姿に障害のある人への蔑視があったと思われるので、現代的にはこれ位が多分ポリティカル・コレクトネス。
映画作品『口裂け女』
ストーリー
ある日の地震を境に町で子供たちが失踪する事件が発生していた。
目撃証言から犯人は「大きなマスクを着けてハサミを持っていた女」で、それはあの口裂け女ではないかと言う噂が立ち始める。
そんな中、町の小学校教師の山下京子は目の前で生徒を本当に現れた口裂け女に拉致されてしまう。
口裂け女2
2008年3月22日に公開された続編。と言っても前作との関連性は薄く、舞台は1978年の岐阜県の小さな町で、当時そこで発生したとされる連続殺人事件をベースにしたと言う。岐阜県の小さな町で暮らすごく普通の少女が顔に硫酸をかけられた事件を契機に狂暴な殺人者である口裂け女となっていく物語と言ういわば口裂け女の伝説のビギンズとも言える作品。
またホラーに加え重い人間ドラマ部分とサスペンス要素が強調されたシリアスな内容となっている。