サーキットの狼
さーきっとのおおかみ
池沢さとしが1975年から1979年にかけて「週刊少年ジャンプ」に連載した漫画作品。続編に『サーキットの狼II モデナの剣』、『21世紀の狼』がある。
愛車ロータス・ヨーロッパを駆る主人公の風吹裕矢が、一匹狼の走り屋から始まり公道やサーキットを舞台にライバル達との競争を繰り広げ、プロレーサーへと成長していく物語である。ライバルとしてポルシェやフェラーリ、ランボルギーニ、トヨタ・2000GTなど、世界中の著名なスポーツカーが多数、劇中に登場した。
スーパーカーブームの火付け役ともいえる作品である。
1977年に東映の実写映画、1992年オリジナルビデオ(実写)が存在する。
初期の登場人物は作者の自動車趣味仲間がモデルになっており、後期のモータースポーツ編では実在のレーシングドライバーも登場する。
その一方でライバルキャラの中には苗字や通称しか登場せず、フルネームが一切描写されない人物もしばしば。
- 風吹裕矢(ふぶき ゆうや)
本編の主人公。普段は姉のローザ(ファッションモデル)と二人暮らし。
かつては一匹狼のドライバーとして活躍しており、暴走族の間で「ロータスの狼」の異名で知られていた。
ドライビング面では天才的なテクニックと冷静な判断力、そしてバトル中にドライビング・テクニックを生み出すなど驚異的な適応力を持つ。コーナリングを得意としており、「コーナリングの魔術師」とも呼ばれる。
- 早瀬佐近(はやせ さこん)
主人公最大のライバル。
電機メーカー「早瀬電機」の御曹司で、ポルシェの暴走族「ナチス軍」総統。
- 早瀬ミキ(はやせ みき)
早瀬佐近の妹。春花学園の高校生。自らも女暴走族集団「赤い流れ星」を率い、関東近辺の暴走族を纏め上げている。
- 飛鳥ミノル(あすか みのる)
プロレーサー。かつては神奈川の暴走族「湘南タイガー」のトップであり、街道レーサーのチャンピオンとして君臨していた。
時速230キロから愛車のランボルギーニミウラを直角に曲げるテクニックを持つ。
裕矢のよき兄貴分にしてよきライバルである。
裕矢の姉・ローザとは恋仲で、後に結婚して裕矢とは義兄弟の関係に。
- 谷田部行雄(やたべ ゆきお)
数多くの不良少年を更生させた実績から「青少年の父」の異名を持つ。その関係から警察にも顔が利く。
「年甲斐もないカーマニア」を自称しており、当初は沖田をプロレーサーとして育て上げるため援助を行っていたが、沖田がレース中に病死してからは裕矢に沖田に匹敵する才能を感じ、資金面で裕矢をバックアップした。
- 山岸みのり(やまぎし みのり)
早瀬電機のライバル企業の社長令嬢。幼少期から早瀬を慕っており、自動車の世界に少しでも近づくべくレーサーから訓練を受けて公道グランプリに参戦する。
マシンを失った裕矢のために自分のポルシェ930を貸し出したこともある。
- 沖田(おきた)
秋田県出身の元警察官のレーサー。かつては町工場の工員だったが、トヨタスポーツ800を手に入れてからはスピードに目覚め、合法的にスピードを出すために交通機動隊の隊員になる。交通機動隊ではスピード違反の取り締まりを専門とする特殊部隊「新選組」で新選組の隊旗を模した塗装のパトカーで暴走族の取り締まりを行っていた。
同じ秋田県出身の谷田部からプロレーサーの道に誘われ、フェラーリ・ディーノで公道グランプリに参戦するも、すでに結核で満身創痍の状態であり、ゴールを直前に力尽きる。
原作ではフルネームは設定されていないが、2009年製作のパチンコ「CR新サーキットの狼」で沖田大治郎と設定されている。
1977年8月6日公開。配給は東映。
同時上映は『トラック野郎・度胸一番星』とこちらも自動車をテーマにした映画だった。
実は岩城滉一主演の暴走族映画の流れで企画されたものだったとされている。
当初は『トラック野郎・天下御免』の併映の正月映画の予定だったが正月に暴走族映画は相応しくないと判断され、千葉真一主演の『空手バカ一代』を経て『河内のオッサンの唄』に変更された。
その後スーパーカーブームの拡大から東映まんがまつりより上の世代をターゲットにした夏休み映画として再始動。好評だったようで翌年の『トラック野郎』の併映は『こちら葛飾区亀有公園前派出所』となった。
谷田部(本作では「矢田部」表記)役は無類のスーパーカー好きで知られ後にラリードライバーとしても活動する夏木陽介で、原作者の池沢のほか高橋国光や中嶋悟、星野一義といった当時の著名レーサーが特別出演している。
監督の山口和彦も少年ジャンプを愛読しており、『こち亀』も手掛けている。
東映芸能は撮影のためにロータス・ヨーロッパ、ポルシェ911カレラ、日産フェアレディZの3台を購入したが、これはクラッシュシーンの撮影も想定していたといわれている。