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概要編集

東宝としては初めて零式艦上戦闘機にフィーチャーした映画作品。

昭和18年の南方戦線を舞台に、荒くれ者の搭乗員と謎の飛行隊長が激闘を繰り広げる空戦版『独立愚連隊』ともいえる作品。

ストーリーはフィクションだが脚本の関沢新一が南方戦線で伝え聞いたラバウル航空隊のエピソードをモデルにしており、劇中で用いられた戦術は実際に行われていたとされる。

森谷司郎の初監督作品である。


同時上映は福田純監督の『怒濤一万浬』。


あらすじ編集

昭和18年、連合艦隊司令長官山本五十六が戦死し、最前線のブーゲンビル島・ブイン基地では激戦が続いていた。

長官の弔い合戦とばかりに付近の島々から飛来する米軍機と激戦を繰り広げる八生隊の荒くれ者たち。そこに新隊長として経歴不明の謎の搭乗員・九段中尉が赴任する。

古参搭乗員のまとめ役である加賀谷飛曹長は若々しい雰囲気の九段に不満をあらわにするが、連日の激しい訓練を経て次第に九段を信頼するようになる。

九段は取り扱いの難しい三号爆弾を使って定期便のように連日飛来するB-17爆撃機を迎撃する作戦を進言。作戦は見事成功するが九段と共に赴任した新任の搭乗員前田二飛曹を援護するべく故障した機体で出撃した菊村上飛曹が戦死する。

九段は反攻作戦としてルッセル島の米軍機をニセの暗号を使っておびき寄せ、その隙にルッセル島を強襲する作戦を上申する。

作戦は見事成功するが深追いした前田が戻ってきた敵機に襲撃され戦死してしまう。

失意の中帰投する九段と加賀谷だったが、その道中でガダルカナル島に巨大な電探基地が建設されているのを発見する。

その頃上層部はガダルカナル島への逆上陸作戦を計画。敵情視察のため指揮官の神崎中将と草川参謀がブインを訪れた。

電探基地の存在を知った九段は作戦に反対する。神崎からの作戦支援要請を断ろうとするが、加賀谷は滑走路の脇に落ちている敵の不発弾を電探基地にぶつける作戦を進言。九段は稼働全機をもって作戦を敢行する。


スタッフ編集

製作:田中友幸武中孝一

脚本:関沢新一斯波一絵

音楽:佐藤勝

特技監督:円谷英二

助監督:山本廸夫

監督:森谷司郎


キャスト編集

九段中尉:加山雄三

加賀谷飛曹長:佐藤允

航空隊司令:千秋実

草川参謀:中丸忠雄

整備班長:谷幹一

新谷中尉:久保明

重政飛曹長:江原達怡

菊村上飛曹:土屋嘉男

寺田中尉(暗号班長):太刀川寛

武村飛行長:玉川伊佐男

神崎中将:藤田進

竜田参謀:綾川香

前田二飛曹:小柳徹(大映)

滝一飛曹:東野孝彦

小坂一飛曹:波里達彦

佐藤一飛曹:宇仁貫三

金友上飛曹:大木正司

整備班員・荒木:荒木保夫

ブイン基地監視哨:権藤幸彦篠原正紀

ブイン基地従兵:鈴木治夫

整備班員・加藤:加藤茂雄

整備班員:中西英介越後憲三


(以下ノンクレジット)

艦隊の士官:渋谷英男大川時生

艦隊の参謀:伊藤実緒方燐作佐藤功一

整備班員:今井和夫黒木順川又由希夫


余談編集

企画段階のタイトルは『零戦決死隊』。監督は福田純を予定し、三橋達也夏木陽介がキャスティングされるなど作戦シリーズの影響がうかがえる企画だった。

その後黒澤組助監督で脚本を自ら執筆するなど監督昇進に前向きだったがなかなか企画が進まずくすぶっていた森谷司郎に交代。『竜馬がゆく』が製作中止になりスケジュールが空いていた加山雄三が主演に抜擢された。

ところが脚本の関沢新一は黒澤組出身の森谷の監督デビュー作が自分の娯楽映画では悪いだろうと難色を示した。「おれの書くのは活動大写真なんだ」と反発する関沢に「それが私は大好きだ。それで結構です」と森谷は説得。『ゼロ・ファイター 零戦決死隊』へと改題し脚本が完成した。

森谷は終戦当時中学2年生で従軍経験がなかったため、南方戦線での従軍経験を持つ関沢を求めたのではと言われている。

関沢は南方戦線では陸軍照空(サーチライト)隊に所属しており、劇中でも照空隊の活躍がクローズアップされる場面がある。


完成作品では冒頭の八生隊出撃は離陸前に敵襲に遭って新谷中尉と佐藤一飛曹が戦死しているが、脚本第1稿では出撃に成功、洋上で敵機の待ち伏せに遭ったところを新谷中尉が部下をかばって戦死するという展開だった。

さらに九段も死蔵していた浮遊魚雷を抱えたまま敵の電探基地に体当たりして戦死するという結末になっていた。

完成作品では九段は敵の電探基地に不発弾を叩きこみ、最期まで生還を諦めない結末となった。


終盤で加賀谷飛曹長が損傷した零戦をつぎはぎで復旧した岡山報国号で出撃する描写は関沢が南方戦線で聞いたラバウル航空隊のエピソードに由来する。


空中戦のシーンは本編班の搭乗員と特撮の戦闘機のカットのつながりに細心の注意が払われ、過去作品よりもスムーズなカットバックとなっている。特撮ではハイスピードカメラも導入され、基地爆破シーンやラストシーンなどに使用されている。

零戦の模型はアップや着陸シーン用に1/3スケール(一部資料では実物大と記載)の巨大な物が作られた。

佐藤允は操縦席のセットでの撮影は臨場感のあるものだったと語っている。

また佐藤允の息子である佐藤闘介は生前父が遺した最後の言葉が「生きて帰る」と聞こえ、本作のラストシーンを想起したと語っている。


関連タグ編集

東宝 戦争映画

零式艦上戦闘機

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