やりたいこと全部やる!
概要
サンデーGX(小学館)にて2018年11月号から連載されている、原作:麻生羽呂×作画:高田康太郎による青春ゾンビ活劇。
単行本は2024年12月時点で18巻まで発売中。
作風
いわゆるゾンビ映画やポストアポカリプスの影響を受けた世界観の作品。知り合った生存者がゾンビ化する等容赦ないハードな面もあるが、特筆すべきは登場人物達が『ゾンビになるまでにやりたい事をやり遂げる』事を目標にしている点であろう。
絶望的な世界で欲望全開にして前向きに突っ走り、全力で青春を謳歌する吹っ飛んだ作風が最大の持ち味であり、骨子のストーリーがシリアスな分、余計に変な笑いが込み上げてくる内容である。
またゾンビ溢れる世界で逞しく生きる人間達のコミュニティも登場するが、悪しき欲望にまみれた人間達と敵対する場合もあり、あらゆる視点から人間にとって『やりたいこと』とは何かを読者に問いかけている。
原作者の麻生羽呂氏も、『俺たちの命があと1日だろうが60年だろうが、やりたいことをやれる時間は余りにも短い』というメッセージを、この作品を通じて伝えたいとコメントしている。
画期的で斬新な作風から、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督からも『笑った。泣いた。考えさせられた。こんな“ゾンビもの”を待っていた。』と絶賛されている。
作中においては、理論を用いて「運」を科学的に説明できたり、自立思考型AIが実現しているなど、現実世界よりも科学が進んでいる。
また、古今東西のゾンビ作品やB級ホラー、果てはサメ映画やZ級映画にいたる幅広いジャンルのパロディが織り込まれており、元ネタを探すのも楽しい作品である。
ストーリー
天道輝24歳。ブラック企業で心をすり減らしながら働く、どこにでもいる社畜である。
何の楽しみも無く、日々死んだ心で働き続ける生きる屍の如き人生に疲れ切っていた輝だったが、ある日突然世界がゾンビパンデミックに襲われた!
爆発的な感染力によって世界中の人間達はゾンビと化し、国家は崩壊し社会秩序は無に帰した。
心が死んでいた輝はそんな事態でも律儀に会社に行こうと考えていたが、ふと気付く。
「今日から会社に行かなくてもいいんじゃね?」
かくして、閉塞しきった人生から解放された輝の新しい人生が始まった!とはいえ世の中はゾンビにまみれ、自分もまた明日をも知れぬ命であることに変わりは無い。
ならばやりたいことを具体的にリストアップしよう。ゾンビになる前に、やりたいことをやるために。
かくして、天道輝の『ゾンビになるまでにしたい100のこと』を埋める旅が始まった!!
登場人物
主要人物
- 天道輝(てんどう あきら)
主人公、24歳。「元」ブラック制作会社社員。
入社3年目で汚部屋でゾンビ映画を観て、「会社に比べりゃ天国だよな」とつぶやく程心身共に追い詰められていたある日、マンションの管理人がゾンビになっているのを皮切りに、世界がゾンビで溢れた地獄絵図を目の当たりにして最初に思ったのが、『今日から会社に行かなくてもいいんじゃね?』。
以後、明日にも噛まれてゾンビ化する脅威を目にした事で、どうせゾンビになるなら悔いの無いよう『やりたい事』をやり遂げたいと考えるに至る。
ノートに「ゾンビになるまでにしたい100のこと」としてやりたい事を書いているが、100まで埋まっていないため旅の中で随時書き足している。
良くも悪くも行動力があり過ぎる為、危機的状況の打開や他人の悩みをブチ壊す傑物。
ちなみに箍が外れた状態だと、今際の国のアリスの世界でもエンジョイしてしまえる、化け物メンタルの持ち主。
ちなみに、実写版で輝を演じる赤楚氏は、ロサンゼルスで開催された「Anime Expo 2023」のステージで「人生でやってみたかったのはゾンビに追いかけられる事」とコメントしている。
- 三日月閑(みかづき しずか)
ヒロイン、26歳。「元」外資系金融マン。
世界規模でのゾンビパニックに対して、『ゾンビにならないためにすべき100のこと』として計画的に行動するプランを練る等冷静沈着なリアリスト。
一方で一代で大企業を立ち上げた父親からの徹底した支配に等しい教育の影響で、高圧的な人間に対して強い嫌悪感を抱く。
当初輝の事を典型的な『リスクヘッジもまともに出来ない人間』、としてLINEの交換も拒否していたが、紆余曲折あって旅の仲間となる。それ以降は感じた事を素直に言える輝を次第に意識し始める。
かつて諦めた医者になる夢を『やりたい事』として思う様になる。
- 竜崎憲一朗(りゅうざき けんいちろう)
愛称はケンチョ、24歳。「元」不動産営業マン。
輝とは大学時代からの友人で、イケメン・コミュ力高め・モテる上に料理の腕も高く、就職後は輝に身の上自慢ばかりしていた。しかし本心は人を楽しませる事の方が好きで仕事に関しては虚しさしか感じていなかった。
ゾンビの脅威に晒されていたところに助けに来た輝によって、本当はお笑い芸人になりたかった本心を吐露。その後輝の最初の仲間となり芸人を目指そうとするが、箍が外れた輝に呆れる事も。
よく脱ぐ羽目に陥っている。
CV:髙橋ミナミ
ドイツ人、21歳。「元」大学生。
幼少期より日本に憧れており、バイト貯金で念願の日本に渡った矢先にゾンビに出くわす。
キャンピングカーを入手した三人が輝の実家を目指していた道中、彼女が乗るトラックがゾンビの群れに襲われているのを発見されるが、甲冑姿で日本刀に薙刀、弓矢で武装した姿で一同を唖然とさせる。
トラックを運転していたのは、本場の寿司を食べる為に寿司職人に魚を運搬中だった為。これを聞いて食い意地を優先した輝が協力した事で以後旅のメンバーに加わる。
AI搭載型ロボット執事。「元」ホテルマン。
AIによる完全無人経営ホテル、『リゾートホテルAI』で接客を担当していた羊頭のロボ。
ホテルのオーナーにしてAI研究の権威、江戸川勝一郎博士が完成させた、心を持っているに等しいレベルで気配りができる最先端のロボットだったが、博士がある理由から暴走した際に輝達を罠に嵌める。
しかし、博士の暴挙に思うところがあったのか、命令は絶対だと言いつつ、ゾンビが侵入したら脱出を優先して行動する事を説明する等、ホテルからの脱出に協力。
ホテルの半壊に伴い、迷惑をかけたお詫びとして輝達の身の回りの世話を申し出たので、旅に同行する。
彼の「AIとして人間にどう関わるべきか」、という信念は必見。
- 南方健(みなかた たける)
アキラ達の大学時代の親友。25歳。「元」フリーター。
根っからのギャンブル好きで、大学中退後は定職に就かずギャンブル生活を送ってきた。
しかし、ギャンブルからの卒業を決意してバーで働いても続かず、自分のダメさ加減を思い知らされる事となり、ゾンビ溢れる世界で一人、大阪でガラクタ漁りをしていた。
そんな時アキラ達と再会し、バー経営が上手くいかずに諦めかけた際、アキラの『楽しむことを忘れている』という言葉に吹っ切れ、ゾン100バーとして再起。
その後缶詰に取り憑かれて自分を見失ったアキラを、全財産かけた一世一代の大博打で目を覚まさせ、そのまま旅の仲間となる。
恐ろしくノーコン。でも人に照準を合わせると、何故か丁度良い所にミラクルショットを叩き込める。
- 戸加下泉奈(とかげ いずな)
ゾンビに感染しない少女。18歳。「元」女子高生。
幼少期は自分の意見を率直に言え、行動力のある性格であったが、父を亡くしてから無理をする母の姿に心を痛め、自分を殺してひたすら生活を支えていた。
そうして高校生になる頃には、常に他人の顔色を窺い自分の意思を抑えていたため、本当にやりたい事が分からなくってしまい、初登場時は常に死んだ目をして無気力になっていた。
そしてパンデミック当日にゾンビに噛まれるも、偶然にも抗体を持っていた為感染せずにすんだが、同時にゾンビになって楽にもなれない事実に絶望。
しかしワクチン開発に命をかける鶴見、そしてアキラ達との出会いを経て、やりたいことへの情熱を取り戻し、旅の一行に加わる。
実は意外な特技がある。
その他登場人物
- 鳳沙織(おおとり さおり)
天道輝が製作会社勤務時代に思いを寄せていた女性。優しい女性だったが、社長の愛人だったこともあり輝は想いを告げられずにいた。
- 小杉権蔵(こすぎ ごんぞう)
輝をこき使っていたパワハラ上司。息をするように罵詈雑言を吐いたかと思えば、次の瞬間には甘言を垂れ流すDV彼氏のような精神性の持ち主。
- 鶴見雄大(つるみゆうだい)
バイオベンチャー企業の元研究員。ゾンビパニックで妻子を亡くし悲嘆に暮れていたが、その後「ゾンビになるまでにしたい1のこと」としてゾンビウィルスに対抗出来るワクチンの開発を決意。ゾンビウィルスに抗体を持つ戸加下泉奈と共にワクチン研究に邁進し、ゾンビの襲撃で仲間を失い研究所を奪われても尚希望を捨てずに抗い続けた気骨の漢である。後に天道一行と出会ったことで窮地を乗り越え福岡にある製薬会社にたどり着き、そこでワクチンの開発に本格的に着手することになる。
用語
ある日突然世界規模で起こった災厄。
噛まれた者は新たなゾンビとなって感染を広げていき、現時点ではもはや世界中に蔓延している。ゾンビになった者は生者を求めてさまよい歩いたり、ある程度生前の行動を繰り返すなどその挙動は一定している訳では無い。運動能力も高く、走ったり飛びついたりハシゴを登ったりとやたらアグレッシブである。
音や臭いに反応するようで、人間を見つけると容赦無く襲い掛かる。更に人間以外の生物もゾンビ化するため、凶暴な野生動物の場合は危険度が更に跳ね上がる。
基本噛まれたらウィルスの毒性によって一日と経たず死ぬのだが、泉奈だけは抗体によって感染しない。現状、ゾンビウィルスに感染した者を救う手段は泉奈の血液から作った血清しか無い。
輝が作ったやりたいことリスト。このリストの存在を基準に物語が進行する。
作中では似たようなリストを作成した人間が幾人か登場する。
そのまんま非常食の缶詰。しかし、大阪では実質通貨に等しい価値となっていた。ゾンビパニックで市場経済が崩壊した日本にあって、大阪では小規模コミュニティでこの缶詰を用いた経済活動を展開していた。
- アンブリエル社
作中に登場する世界的な製薬会社。
泉奈の抗体からワクチンを製作するべく、生き残っている施設を探す過程で立ち寄った。
衣食住が完備されたやけに堅牢な研究施設を所持していたり、私設軍隊を有しているなど、只の製薬会社とは思えない不審な点が目立つ会社である。
というか、名前からお察しください。
アニメ
2023年夏アニメという形で、AT-X、アニマックスばかりか、毎日放送をはじめとするTBS系列局にて第9話までが放送された。
また、AmazonプライムビデオやNetflixなどによる配信も行われた。
しかし、制作側の都合により第10~12話の放送予定が見送られることに余儀なくされた。そして改めて12月末にAT-Xや毎日放送ほかにて残り3話の連続放送を実施している。
スタッフ
原作 | 麻生羽呂・高田康太郎 |
---|---|
監督 | 川越⼀生 |
副監督 | 上田華子 |
シリーズ構成 | 瀬古浩司 |
キャラクターデザイン | 田中紀衣 |
ゾンビデザイン | 福地純平 |
音楽 | 宮崎誠 |
選曲 | 合田麻衣子 |
⾳響制作 | dugout |
アニメーションプロデューサー | 児島宏明 |
アニメーション制作 | BUGFILMS |
アニメーション制作協力 | シャフト(2話-5話) |
制作 | 小学館集英社プロダクション |
主題歌
ED:jon-YAKITORY feat. シユイ 「ハピネスオブザデッド」
実写映画
Netflixの手によって実写化されている。2023年8月3日に全世界で配信開始された。
主演は赤楚衛二で、その他白石麻衣、栁俊太郎、北村一輝、市川由衣、川﨑麻世、早見あかり、筧美和子が出演している。
また、実写版公開記念としてアニメに赤楚、白石、栁が第7話に声優としてゲスト出演した。
スタッフ
原作 | 麻生羽呂・高田康太郎 |
---|---|
監督 | 石田雄介 |
脚本 | 三嶋龍朗 |
音楽プロデューサー | 千田耕平 |
撮影監督 | 河津太郎 |
撮影 | 田中悟 |
編集 | 臼杵恵理 |
製作 | 森井輝(ROBOT) |
製作総指揮 | 高橋信一(Netflix) |
プロデューサー | 森井輝(ROBOT) |
制作協力 | プラスワンエンターテイメント |
企画・制作プロダクション | ROBOT |
関連映像
関連項目
個別 | 麻生羽呂 高田康太郎 サンデーGX 2023年夏アニメ |
---|---|
カテゴリー | ポストアポカリプス ゾンビ |
評価タグ | ゾン100100users入り→ゾン100500users入り→ゾン1001000users入り→ゾン1005000users入り→ゾン10010000users入り |
その他
- 古見さんは、コミュ症です。 / サマータイムレンダ - 本作と同様に小学館集英社プロダクション制作でアニメーションプロデューサーが同じの作品。両者のどちらかに一部スタッフが関わっている。
- モブサイコ100 / 君のことが大大大大大好きな100人の彼女 - 本作と同様にタイトルに『100』が付く漫画作品群。前者はサンデー系統繋がり、後者は後時期にアニメ放送された。
- 青のオーケストラ - 同じくサンデー系統繋がりで本作の裏番組。
- ささやくように恋を唄う - 本作同様制作上の都合で途中で放送を休止したうえで後日残り(こちらは2話)を消化することになったアニメ作品。しかもこちらも(放送局は違えど)全国ネット枠で放送された。