概要
タミシオカリス(学名:Tamisiocaris)とは、古生代カンブリア紀に生息した、ラディオドンタ類の節足動物の種類(属)の一つ。
グリーンランドのシリウスパセット動物群に属する「タミシオカリス・ボレアリス(Tamisiocaris borealis)」のみ正式に命名されるが、アメリカにも同属と思われる未命名の化石が発見される。
学名はラテン語の「tamisium」(篩)と「caris」(カニ/エビの意味だが、水生節足動物全般に常用される語尾)から。これは後述の生態に因んでいる。
ラディオドンタ類の中では「タミシオカリス科」に分類される。この科は本属の他にオーストラリアと中国からも数種類が見つかっているが、発見例が少なく、本属含めてどれも触手しか知られていない。
2010年に命名されているが、後述の詳しい特徴や生態が知られるようになったのは2014年の再記載以降である。
特徴
腕(前部付属肢)とごく一部の甲皮だけ化石で見つかり、残りの胴体部分は完全に不明。
他のラディオドンタ類の比率を基に推算すると、体長は少なくとも中型の約30cmであるとされる(フルディアやペイトイアと同級)。
腕は細長いブラシのような形で、数多くの節ごとに1対の長い羽毛状の棘がぶら下がる。タミシオカリスはこの腕を上下に振ると、棘の密集した毛が海中から微小なプランクトンや有機物を篩い分けて、それを口まで運んで食べていたと考えられる。
タミシオカリスが知られるまででは、ラディオドンタ類は全てがアノマロカリスやペイトイアのような肉食動物と考えられた。そのため穏やかな濾過摂食者と思われるタミシオカリスは、従来のラディオドンタ類への認識を覆し、その食性の多様性を示唆する大きな発見である。
この研究は発表当時(2014年)でも各ニュース記事に取り上げられたため、タミシオカリスは体のほとんどが不明であるにもかかわらず、ラディオドンタ類としてそこそこの知名度がある。
余談
2013年にて、思弁進化のアーティスト John Meszaros により「Cetiocaris」という名前の架空の濾過摂食ラディオドンタ類が描かれていた。これは偶然にも直後の2014年に発表されタミシオカリスそっくりで、まるでタミシオカリスの存在を予言していたのようである。
関連タグ
エーギロカシス:同じ濾過摂食と思われるラディオドンタ類。こっちは胴体まで見つかっている。