概要
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場した、地球連邦軍の大型宇宙戦艦。一年戦争後になり建造された戦艦で、MS運用を全廃した代わりに、指揮管制能力と艦砲射撃能力等に重点を置いた戦艦である。
一年戦争後、戦勝を果たした地球連邦軍の象徴または権威としての意味も込めて建造された、当時では最大級の宇宙戦艦。
宇宙世紀0083年4月に進宙しており、ルナツー方面軍第2守備艦隊旗艦として就役を果たした。しかし、デラーズ・フリートの核攻撃を真面に受けてしまった事で、一瞬に蒸発してしまった不運の戦艦である。
建造への経緯
本来であれば一年戦争で教訓とされている筈だったモビルスーツの運用能力を、戦後世に出た艦であるにもかかわらず全く重視せずに設計、建造されたのが、このバーミンガム級である。
MS運用能力の代わりに重視されたのは、艦隊戦における砲火力の強化、及び艦隊指揮管制能力の強化であった。これは一年戦争の苦い経験を生かされていないとの声もあったようで、『時代遅れ』、『大艦巨砲主義の象徴』など、散々な言われ様であった模様。
それも無理からぬことであり、MSが当たり前の時代にあって、1機ものMSを搭載または露天駐機する機能を有さない艦艇は絶好のカモと見られるからである。それは既に一年戦争(特にルウム戦役)で痛いほど痛感していた地球連邦軍には、良く分かっていた筈だった。如何に優秀なレーダー機器と連動した射撃管制システムを持とうとも、ミノフスキー粒子散布下での戦闘では、有視界戦闘に特化したMSに理があるということを。
だからこそ、地球連邦軍は戦争末期になって、ジオンのMSに対抗すべく、露天駐機機能や艦内に格納できるように改良を施した、後期建造型のマゼラン級やサラミス級らを大量建造し、MSを大量に積んでジオンとの決戦に挑んだのである。
しかし、大戦に勝利した地球連邦軍上層部は、自分らに対抗しうる強大な敵がいなくなったことへの慢心があったのか、はたまた別の戦略的思惑があったのか、再び大艦巨砲主義への転換を始めてしまい、バーミンガム級が生まれたのである。
バーミンガム級の思想
だからとて、「バーミンガム級は役に立たない」と安易に決めつけるのも酷である。前述したように、バーミンガム級は艦隊決戦思想に染まった艦ではあるが、そのような思い切った思想で建造したのにもきちんとした理由が存在する。
地球連邦軍の上層部は、艦の役割を完全に分けて運用する事を前提としていたのである。つまり、艦隊決戦に長けた戦闘艦、それを統括して運用し指揮する戦闘艦、MS運用のための戦闘艦、と言う具合に艦種を分けていた。
バーミンガム級は、艦隊の旗艦能力と純生の戦艦としての思想を取り入れて設計・建造された故に、文字通りに指揮管制能力と砲撃戦応力は随一を誇っている。その他、マゼラン改級や、サラミス改級といった改良型戦闘艦を多数建造し、艦隊戦力として運用する。
そもそも、当時のMSに戦艦並みの火力を持たせるのはまず不可能で(サポートユニットによって戦艦並みの火力を持たせる事は一応可能だったが、操縦性等は劣悪だった)、ア・バオア・クーといった要塞攻略には、戦艦による大火力は必要不可欠であった。
事実、一年戦争終盤においても、ジオン公国軍の旗艦であるドロスの撃沈にサラミス級やマゼラン級による砲撃が大きく貢献しており、そういった部分からも連邦側の大艦巨砲主義は一概に馬鹿に出来た物でなく、むしろジオン側の方がMSの力に過度な期待を寄せ、戦艦の火力を軽視していたとすら言える(一年戦争で戦死したガルマ・ザビもまた、MSの力を絶対視する考えを否定し、大型輸送機であるガウや戦闘機、戦車等、地形等を利用した兵器も駆使した戦法で、ホワイトベースに挑んでいる)。
肝心のMS運用能力に関しては、最初からMS運用を前提として設計・建造されたペガサス級強襲揚陸艦やアレキサンドリア級重巡洋艦の存在もあり、これを艦隊に随伴させる事で防空能力を強化させていく狙いがあったと考えられる。特にアレキサンドリア級とは、就航時期や一部砲塔、アンテナ類が共通・類似しており、共同運用する予定であったことが見て取れる。
また全体の指揮を執るための司令設備が最初から完備されており、バーミンガム級自身の指揮艦橋とは別に設置されているなど、指揮管制に重きを置いていることが良く窺える一面である。
当艦の乗艦者であったグリーン・ワイアット大将にしても、膨大な量の艦隊を前にして自信を持っていたと同時に、MSへの運用を軽視していた訳ではない。『MSの無い艦隊がどうなるか・・・』と、MSへの重要性もきちんと持ち合わせていた。
つまり適材適所によって宇宙艦隊を強化していくつもりであったと考えられるのである。こういった思想は決して珍しい話でもなく、現にアメリカ海軍でも指揮能力に特化した『ブルー・リッジ級揚陸指揮艦』や『戦術指揮艦ノーサンプトン』というものが存在している。
そのため、バーミンガム級はMSをも含めた艦隊指揮においては他の追随を許さぬ能力を秘めていたと考えても不思議ではないし、勿論、ミノフスキー粒子散布下での運用も考えられていたと思われる。
また、戦艦を主体とした大艦巨砲主義的な思想も、大火力や強力な指揮能力・継戦能力を有する艦隊でなければ打ち破ることの難しい宇宙要塞の攻略には適しており、0083年当時連邦宇宙軍最大の仮想敵となっていたのがおそらくジオン残党の立てこもる小惑星要塞アクシズであったことを考えれば、バーミンガム級はある意味一年戦争後期の宇宙要塞攻略戦の経験を注ぎ込み、来たるべき戦闘に備えた艦であったとも言えるのである。
なお一年戦争中でのミノフスキー粒子散布中の乱戦でも、大型艦が相互に通信していたりMSの居場所を把握したりといった場面が幅広く見られている(顕著な例ではソロモン攻略戦中、後方にいた旗艦タイタンに前線のホワイトベースから「MSがソロモンに上陸した」という報告が入っている)。
またミノフスキー粒子は電波を使うレーダーは無力化できたが、光を使うレーザーセンサーまでは無力化しきれず(ものすごく濃厚にまけば歪められるともいわれるが、そもそも宇宙空間ではミノフスキー粒子はすぐ拡散してしまう)、センサー類がミノフスキー粒子の登場で全く無意味になったわけではないということも付記しておく。
スペック
- 艦名:バーミンガム級1番艦『バーミンガム』
- 全長:398m
- 全幅:171m
- 全高:129m
- 重量:88,500t
- 武装
・連装メガ粒子砲×5基
・単装メガ粒子副砲×8基
・大型単装メガ粒子砲×1基
・12連装ミサイルランチャー×2基
・対空レーザー砲×12機
- 搭乗者
・グリーン・ワイアット大将
性能
攻撃能力としては大型連装メガ粒子砲5基10門、大型単装メガ粒子砲1基1門、単装メガ粒子砲8基8門と、砲だけでも地球連邦軍最大級の火力を有する。実戦ではムサイ級巡洋艦を一撃で沈めていた。
主砲はマゼラン級と同数だが、単装砲が多く装備されているため、反航戦及び平航戦双方において高い火力を叩き付ける事が可能である。ミサイルはマゼラン級よりも多い24門を持つなど、対艦戦闘能力の高さがうかがわれる。
劇中では核攻撃を受けたのが最初で最後の被弾であり、装甲厚やダメージコントロール能力については一切不明。能動的な対空防御としては12機のレーザ砲を備えて最低限の対MS戦闘は意識されているが、基本的には随伴艦の展開するMSによる防空、護衛を前提とした設計だと言える。
航行性能や航続距離も明らかになっていない。指揮艦として他艦と協同歩調を取る程度の最大速力や機動性は持っているだろうが、いかに無重力で空気抵抗のない宇宙と言えど大型艦の質量や慣性が消えるわけではない以上、メインエンジン級の推進機を全方位に備えているのでもない限り、制動や旋回などの機動性は高くないと考えられる。
指揮管制能力においては、上述した艦隊指揮に特化した設計として司令専用艦橋を備え、艦隊単位での指揮や戦況把握を担う旗艦機能を持つ。
経歴
宇宙世紀0083年4月、ルナツー方面軍第2守備艦隊旗艦として進宙している。乗艦者はワイアット大将だった。バーミンガムは当初、シーマ・ガラハウとの裏取引の為に、人知れずに単独航行していた。この取引でデラーズ・フリートの計画を知り、対策を練ろうという魂胆だったが、あっけなくもそれはエイパー・シナプス大佐率いる強襲揚陸艦『アルビオン』に横やりを入れられてしまい断念する。
もっとも、シナプス大佐から見れば、友軍艦のバーミンガムが、シーマ艦隊に襲われているのでは、という懸念も有ったので何とも言い難い状況ではあった。ワイアットは苦肉の策として、シーマ艦隊の1隻を集中砲火で撃沈、まるで迎撃していると言わんばかりの茶番劇を演じた。シーマもそれを察して、さっさと反転し逃走。貴重な情報を入手すること叶わず、バーミンガムはその宙域を離れる事となった。
なお、この砲撃がバーミンガムが最初で最後の砲撃である。
そして11月、コンペイトウ宙域で開催された観艦式に、バーミンガムも関越艦隊旗艦として参列する。その観閲官グリーン・ワイアット大将を再び司令艦橋に迎える事となった。
この式の最中にデラーズ・フリートの襲撃を受けるが、散発的な侵入の為か次々と撃退していく。そのことに余裕のワイアットであったが、アナベル・ガトーの乗るガンダム試作2号機が来襲。核兵器を搭載しているだけに驚愕したワイアットだったが、時すでに遅し。
2号機は星の屑をコンペイトウの上方より発射した。しかも参列している大艦隊のど真ん中に居たバーミンガムに向けて放っており、核の直撃を受け文字通りに蒸発してしまった。無論、ワイアットもろともである。
その後、建造が予定されていたバーミンガム級・2番艦の計画は中止され、代わりにMS運用能力が付与された改良型であるドゴス・ギア級大型戦艦が就役する事となる。この際に等級もバーミンガム級からドゴス・ギア級に改められているため、バーミンガム級はネームシップの1番艦を最期にその姿を消した。
また本級の「艦単体の指揮所」と「艦隊全体の司令艦橋」の二つを有するという思想は、砲塔の配置を含めて後年の傑作艦カイラム級機動戦艦にも引き継がれている。