【嗚呼、私は振り返らない】
プロフィール
概要
『ギルド』の主神であるウラノスに仕える謎の魔術師(メイジ)。ギルドの人間にもその存在を知らされていないが、時折ギルド本部で目撃情報があることから、ギルド職員の間では『幽霊(ゴースト)』として噂されている。
その正体は800年程前に魔法大国《アルテナ》に所属していた最高位の魔術師で、『神秘』のアビリティを有史以来最も極めたことで、永遠の生命をもたらす『賢者の石』の生成にただ一人成功した『賢者』の成れの果て。現在は『世界の中心』であるオラリオで時代の趨勢を観測している。
作中ではウラノスの右腕として暗躍しており、表沙汰には出来ない案件やモンスターでありながら知性や感情を持ち合わせた『異端児(ゼノス)』との連絡役などを引き受けている。
人物像
容姿
全身を黒衣で包んでいるので、容姿はおろか性別すらも判断できないが、その黒衣の下の体には肉がなく、骸骨の姿となっている。フェルズがこのような姿になってしまった理由は、無限の知識を求めるあまり永遠の命に執着し、「不死の秘法」を編み出したが失敗に終わり、寿命こそなくなったがその代償に肉と皮が腐り果てた為である。この出来事が切っ掛けで自らの愚かさに気づき、『愚者』を意味する「フェルズ」と名乗る様になる。
性格
不気味な見た目とは裏腹に人間臭さや面倒見の良さを持ち合わせた人物で、『メモリア・フレーゼ』のイベントでは結構ひょうきんな一面も見せており、読者からは「ボケもツッコミもシリアスもこなす有能なキャラ」と称されている。
上述の通り骸骨の体であるフェルズだが、自分の体が骨である事は結構気にしており、周囲から骨と呼ばれるたびに「骨と呼ぶな」と叫んでいる。もっとも、自身の体が骨であることを活かして、スカルジョークを言うことも時折あるが。
かつては『賢者』と呼ばれていた事もあって非常に聡明で、神々同様ダンジョンについても何か知っている模様。咄嗟の悪知恵も働き、虚言、弄言といった、舌戦もやり慣れている。一方で、戦闘時における指揮能力はさほど高くないが、これはフェルズの能力が「武官」ではなく「文官」に分類していることが原因。
また、長い人生の中で多くの生き様を見て来た故か「『偽善者』と罵られる者こそが、『英雄』になる資格がある」という持論を持っている。無論、フェルズがここで言う『偽善者』とは、「善行を働くがその本質は自分の損得のために行う者」ではなく、異端児編のベルの様に「自分の信念に従い行動するが周囲からは理解されず自己満足だと罵られる者」の事を指す。
人間関係
主神。数百年来の付き合いもあって、強い信頼関係で結ばれている。
『異端児』の協力者たち。当初はウラノスの命もあって嫌々『異端児』と関わることになったフェルズだが、今では彼らのことを大切な友人と思っている。人類との共存を望む『異端児』の夢についても理解しており、フェルズ自身も彼らの夢を叶える為に尽力している。
『異端児』を巡る騒動で行動を共にするが、どれだけ自分が傷ついても最後まで『愚者』を貫いた彼の姿を見て絶大な信頼を置くようになる。また、真面目で純粋故に『偽善者』と罵られて酷く気に病んでいた彼に、上述の持論から「偽善者こそ英雄になる資格がある」「どうか君だけは愚者でいてくれ」と諭しているが、この言葉はベルに多大な影響を与えている。
作中の活躍
外伝3巻では、24階層の食料庫における騒動の調査をアイズに依頼した。
本編9巻では、ウラノスの命を受けて、【ヘスティア・ファミリア】の主神であるヘスティアを半ば強引に連れて行く形でウラノスと引き合わせ、自分は異端児の隠れ里で、人間でありながらウィーネを保護したベルたちに異端児の詳細について話す。
【イケロス・ファミリア】に殺されたラーニェたちの復讐とウィーネの救出のため暴走し、18階層のリヴィラの街を壊滅に追い込んだ異端児を【ガネーシャ・ファミリア】を中心に組まれた討伐隊に紛れ込んだベルと共に追い、【イケロス・ファミリア】の拠点にしてダンジョンの第2の出入り口である人造迷宮クノッソスに乗り込む。
異端児の騒動がオラリオ中に及んだ際は【ヘスティア・ファミリア】と共に事態の解決のために奔走する事になる。しかし、ダイダロス通りの攻防戦の終盤では、ヘルメスの神意に踊らされてしまい、異端児達を窮地に追い込んでしまう。
自分やウラノスと同様に異端児の存在を知り、協力する姿勢を見せていながら、本心では人類と異端児の共存を「絵空事」と見下し、ベルを自分の神意通りに動く『神工の英雄』にするために異端児達の良心に付け込んで『犠牲』を強要したヘルメスには本気で怒りを見せるも、同時にベルが神の思惑通りにはならない「決断」を取ると信じる事を選択。事実、ベルは最後までフェルズの期待通り『異端児』を守るという信念を貫き、アステリオスとの死闘を以って『異端児』を巡る騒動の最中に渦巻いた全ての悪意と神意を覆す事に成功した。
異端児を巡る騒動が収束後は、異端児の望んでいた「人類との共存」は遠のいてしまったかもしれないと嘆きつつも、ベルがオラリオ中を敵に回してでも異端児達を守る為に戦い抜いた姿を見た事で、彼に対して信頼と希望を抱き、主神のウラノスと共にベルに全てを賭ける事を決意する。
異端児を巡る騒動から数日後、ベルに戦う理由を与える為に「ダンジョン最下層の攻略を成し遂げなければ人類と異端児の共存はあり得ない」と教えている。その際、彼から「ダンジョンとは何なのか?」「最下層に何があるのか?」と聞かれた際は、「結ばれた誓約…そして、決着だ」という意味深な発言をしている。
また、フィンからクノッソスの本格的な攻略をするべく協力関係を持ちかけられ彼の提案を承諾。ウラノスとロキとの間でも協力関係が成立し、自身は異端児達を率いて18階層から進攻する。
クノッソス攻略の『第二進攻』では、各部隊が六体の精霊の分身と交戦する中、フィンの指示で単独で行動。クノッソスを覆う祭壇の魔力回路を破壊し、後続部隊を阻む障壁を排除した。
本編19巻では、ロイマンが推奨するダンジョンに大規模な移動用の通路を作る『立坑(シャフト)計画』に対し、ウラノスがそれを認めたことで、ロイマンの増長を許すとウラノスに苦言を述べた。また、『ギルド』の所有物となった『クノッソス』を自身の魔工房にするべく改造に勤しんでいる。
アストレア・レコード
本編7年前の『闇派閥』との戦いが書かれた『アストレア・レコード』では、文字通り不眠不休で行動し、秘密裏に闇派閥の一団を殲滅したり、オラリオ中の冒険者と一般人を陰から治療していた。
能力
戦闘では主に自作の魔道具を駆使して戦う。後衛を担当する魔術師だが、Lv.4なので単純な腕っぷしだけでも大抵の冒険者は簡単に制圧できる。強力な回復魔法も所持しており、並行詠唱も当然習得済みなので移動中でも他者の傷を治せる。
聡明な頭脳と『神秘』のアビリティを歴史上最も極めていることもあって、規格外の魔道具を制作することが可能。その腕前はオラリオ屈指の魔道具製作者であるアスフィをも上回る程で、彼女もフェルズが作る魔道具の性能に驚嘆している。
このように『賢者』と呼ばれていただけの能力を有してるが、現在の骸骨の姿になってからは『神の恩恵(ファルナ)』が刻まれている背中の肉を失ったので、ステイタスの更新をすることは出来ない。その為、フェルズがこれ以上強くなることは事実上不可能となっている。
ステイタス
Lv.4
力 | 耐久 | 器用 | 敏捷 | 魔力 |
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? | ? | ? | ? | ? |
発展アビリティ
- 神秘
神の十八番、『奇跡』を発動させ魔道具の制作が可能となるレアアビリティ。フェルズはこのアビリティを歴史上最高まで極めたとされている。その為、強力な魔道具の数々の発明や、永遠の生命をもたらすとされる『賢者の石』の生成にまで至っている。
- 魔導
魔法の効果を向上させるアビリティ。こちらのアビリティも最高位まで極めているらしく、フェルズの扱う魔法は「奇跡」とも言える強力な物となっている。
魔法
- ディア・パナケイア
詠唱式:【ピオスの蛇杖(つえ)、ピオネの母光(ひかり)。治療の権能をもって交わり、全てを癒せ】
全癒魔法。対象の疲労や負傷、そして呪詛(カース)の呪いすらも、完全に癒す事が出来る。全ての回復魔法の中でも最上位の効果を持つ。
- ディア・オルフェウス
詠唱式:【未踏の領域よ、禁忌の壁よ。今日この日、我が身は天の法典に背く】【ピオスの蛇杖(つえ)、サルスの杯。治癒の権能をもってしても届かざる汝の声よ、どうか待っていてほしい】【王の審判、断罪の雷霆(ひかり)。神(しゅ)の摂理に逆らい焼きつくされるというのなら、自ら冥府へと赴こう】【開け戒門(カロン)、冥界(とき)の河を越えて。聞き入れよ、冥王(おう)よ。狂おしきこの冀求(せんりつ)を】【止まらぬ涙、散る慟哭(うたごえ)。代償は既に支払った】【光の道よ。定められた過去を生贄に、愚かな願望(ねがい)を照らしてほしい】【嗚呼、私は振り返らない】
蘇生魔法。フェルズの全魔力と引き換えに死者を蘇らせる事が出来るという、下界の理をも捻じ曲げる禁断の魔法。但し、この魔法は成功率が極めて低く、800年間で成功したことは一回もなかった。その為、フェルズはこの魔法を「魔法数(スロット)を埋めるだけの無駄な魔法」と恨んでさえいたが、ウィーネを蘇らせる際に初めて成功したことで、「意味はあったんだなぁ」と言葉を漏らし報われる事となった。ちなみに、ウィーネに対して【ディア・オルフェウス】が初めて成功した理由に、発展アビリティ『幸運』の所有者であるベルがいたからではないかという考察がある。
フェルズが製作した魔道具
- 魔咆手(マジック・イーター)
フェルズが主に戦闘で使用する攻撃用魔道具。『魔力』を弾代わりにして、衝撃波を放つことが出来る。詠唱を必要としないため速攻性もあり、ベルの持つ速攻魔法『ファイヤボルト』の魔道具版とも言える代物。ただし、あちらと違い燃費は悪いらしい。
- リバース・ヴェール
アスフィが制作した漆黒兜(ハデス・ヘッド)と同様に、透明状態(インビジビリティ)になる効果を持ったマント。あちらとの違いは、装備すると強制的に透明になるのではなく、通常状態と透明状態を使え分けることが出来る両面仕立(リバーシブル)という点。使い勝手はいいが、こちらの魔道具もあくまで姿のみを消すだけなので、五感が超人レベルになっている上級冒険者(特に嗅覚などが鋭い獣人)などには気づかれてしまう事がある。そのため、完全に気配を消すためには複数の魔道具を使う必要がある。
- 黒霧(ブラックミスト)
煙玉。割ると黒煙が噴出して目眩しになる上に、対象に絡みつく効果がある。【ロキ・ファミリア】を相手にして窮地に陥っていた異端児達を救出する際と、ダイダロス通りでの攻防戦で使用されている。第一級冒険者と言えど、簡単には対象の位置を把握出来ない程。
- 幻想花
記憶された物体の幻影を、花粉を吸い込んだ者に幻視させることの出来る、青と赤の花弁。ただし、『耐異常』の発展アビリティ所有者には防がれてしまう。
異端児事件にて、ベル達に協力したナァーザが使用し、上記の欠点から下級冒険者や『耐異常』を持たない冒険者をターゲットに幻影を見せ、撹乱作戦を行った。
- 探索者の粉(シーカー・パウダー)
大瓶に詰まった白い粉末に血を垂らし、赤く染まった粉を地図に振りかけることで血の提供者の名前や位置が表示されるという効果を持つ。ただし、フェルズが地図作成した地図でなければ使用できない。そのため、異端児帰還作戦時はフェルズが自らの足を使って完成させた『ダイダロス通り』の地図・『名工の遺産(ダイダロス・レガシー)』と共に、ヘスティアに支給された。
- 眼晶(オクルス)
掌に収まる程度の大きさの双子水晶で、片方の水晶が捉えた光景と音声を別の水晶に映し出すことのできる、通信型魔道具。現在、作中で唯一登場している遠距離交信可能なアイテムでもあり、非常に重宝されている。オラリオ随一の魔道具製作者であるアスフィも、その存在を知って血が騒いだと言わしめるほどの作品。その利便性もあって作中では度々活躍している。
- 人形兵(ゴーレム)
3M近い大きさの、全身が超硬金属(アダマンタイト)で構成された金属の戦士。
『魔力』を短杖で飛ばすことで遠隔操作も可能だが、基本な自動制御で簡単な指示をこなすことが出来る。第一級冒険者ですら容易に破壊出来ない強度を誇り、その性能と素材から一体作るのに総額で10億ヴァリス以上という莫大な資金が必要で、フェルズのみしか未だ至る事の出来ない至高の魔道具の一つであり、そのフェルズをして一生取っておきたかった隠し玉とする一品でもある。『怪物祭(モンスターフィリア)』の事件を受けて地下水路に配備されていたが、【ロキ・ファミリア】相手に境地に立たされた異端児達を救うべく、緊急で使用した。やたらテンション高くなりながら使用した事からも、フェルズにとっては相当な自信作であった事が窺えるが、Lv.6のティオナには全く通用せず一刀両断された。その光景を目にしたフェルズは、渾身の作品を呆気なく破壊された事でしばらく硬直し、空笑いしながら【ロキ・ファミリア】幹部メンバーの怪物っぷりを再認識する羽目となった。
余談
- 『賢者』の昔話
フェルズのかつての主神だが、どうやら自分の眷族をおもちゃにして楽しむロクデナシの部類だったらしく、せっかく生成した『賢者の石』を目の前で砕き、その事にショックを受けたフェルズの姿を見て腹がよじれるほど笑い続けたとのこと。この時の『賢者』の話はどうしようもないオチが待ち受けている昔話として現代まで伝わっており、本編2巻でエイナがこの話をベルに教えている。
- 女性説
既に肉体がないため性別不明なフェルズだが、
・独白がどこか女性的
・担当声優が小松未可子氏
・魔道具を保管している場所の合言葉が「アルテラの猫は不老不死の夢を見るか」となっているが、猫(黒猫)は魔女の使い魔とされている
・『メモリア・フレーゼ』のイベント『ナイトメア・スクールライフ』にて、強力な結界内に無理矢理入った影響で、何故か幼女の姿になる(公式曰く、幼少期の本人の姿ではないらしい)
といった理由から、読者の間では実は女性なのではないかという憶測も出ている。
- 吟遊詩人オルフェウス
フェルズの蘇生魔法【ディア・オルフェウス】の元ネタだが、名称や効果からもギリシャ神話に登場する吟遊詩人オルフェウスで間違いないと思われる。
自分の妻を生き返らせるために冥府へと向かい、冥界の王ハーデースと「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件で、妻を生き返らせてもらえる事を約束したが、冥界からあと少しで抜け出すというところで後ろを振り返ってしまい、妻を生き返らせることに失敗した一人の愚者の名前。
【ディア・オルフェウス】の詠唱文もオルフェウスの逸話が基になっており、特に最後の【嗚呼、私は振り返らない】という一節には、オルフェウスと同じ過ちを繰り返さないという意味が込められている。
関連タグ
ブルック:フェルズと同じ様に肉体が無くなり、骨のみで現世に生きているキャラクター繋がり。また異形の姿をしていながら非常に人間臭く、義理堅い性格なども似ている。ちなみに、フェルズは他者の命を生き返らせる事が出来るが、ブルックは自分の命を一回だけ生き返らせることが出来るなど、二人とも蘇生能力を有しているという共通点もある。