「なら、それでよいではないか。私が大総統となって以来、度重なる戦争で異民族は排除され、領土は拡大を続けている」
「だが、それは…全て“賢者の石”を生み出す為…戦争によって、絶望的にさせられた人々は“賢者の石”を求める」
注意・誘導
●原作及び2009年版アニメ(FA)の「プライド」
→プライド(鋼の錬金術師)/セリム・ブラッドレイ【CV:三瓶由布子】
●2003年版アニメの「プライド」=「キング・ブラッドレイ」
→プライド(旧鋼)/キング・ブラッドレイ【CV:柴田秀勝】
●原作及び2009年版アニメ(FA)の「ラース」=「キング・ブラッドレイ」
→ラース(鋼の錬金術師)/キング・ブラッドレイ【CV:柴田秀勝】
概要
CV:柴田秀勝
2003年版『鋼の錬金術師』におけるキング・ブラッドレイ大総統のホムンクルスとしての名前。
原作同様にホムンクルスだが、「ラース」ではなく「プライド(傲慢)」として登場する。
本作におけるホムンクルスは「人体錬成により生み出された産物」という設定が存在するが、彼の誕生の経緯や錬成のベースとなった人物は不明(ベースとなった人物については、後述の映画に登場するフリッツが、現実世界側のその人物に該当する)。
能力は原作と同じく「最強の眼」による動体視力。取り分け「空気の流れが見える」と発言しており、おそらくこれも能力の一つと考えられる。
また、原作のような「賢者の石の力を流し込まれた人間」ではなく、純正のホムンクルスである為に、肉体の再生が可能で歳もとらず、従って身体能力の衰えもない。この為に、03年版アニメでは少しずつ老化したように変身する事で、歳をとったかのように見せかけていた。
また原作と違い、全身に幾何学模様の入った黒い服のホムンクルスとしての真の姿も持っている。
ホムンクルス達の中では最もダンテに忠実な部下であり、彼女自身“傑作”と称する。
アメストリスの事実上の元首に据えられることで、国家権力を以てダンテの目的を代行・遂行する傀儡とされていた。原作のような人間らしさ(人間臭さ?)はなく、冷酷非道な支配者としての面を強調して描かれている。また、中盤ではエンヴィーが変身して登場する事も多かった為に、中盤は本人は殆ど登場していない。その一方で、正体が明かされたのが後半である為に、いかにも好々爺然とした表向きの姿は、原作より長く演じていた(ただしこれも、中盤はエンヴィーだった事もあってか、原作のようなノリの軽いキャラまでは見せていない)。加えて原作と違って正体が発覚した後も、最終決戦でマスタングに追い込まれるまでは、穏やかな言動を崩す事はなかった。
また戦闘時も、ラースではなくプライドである為か、常に何かと苛立ちを身に纏ったり怒りを露わにしながら戦っていた原作とは異なり、穏やかに相手を見下したような言動で戦う。戦闘スタイルも原作のような苛烈に相手を攻め立てるスタイルではなく、遊びや挑発を交えながら優雅とすら言えるような落ち着いた立ち振る舞いで戦う(原作のように身体能力を活かした素早い動きで戦闘をする事はなく、そもそも再生能力があるので、無理に攻撃を避けようともしない)。
後述する最終決戦の際には、マスタングの“神などいない”という言葉に同意を示すなどリアリストなのは原作通りだが、同時に錬金術師は“悪魔”だという見解も述べている。
長きに渡りダンテの忠実な僕として振舞いながらも、内心はダンテを愚かな人間であり、悪魔同然の錬金術師、即ち「蔑みの対象」以上の認識を抱いていなかったという、原作の「プライド」とも異なる形の“傲慢”そのものな性質を垣間見せている。
原作とは違い、こちらでは何も知らない普通の人間の子供であるセリムや、妻に対する愛情など皆無だが、このような人物である為に原作のブラッドレイとはまた違う意味で、「家族ごっこ」や「権力者ごっこ」自体は楽しんでいた模様。
加えて本作のホムンクルスとしては珍しく、原作同様にホムンクルスである事に矜持や意義を見出している為に、他のホムンクルス達のように人間に戻る事に興味は無く、むしろそういう願望を抱く他のホムンクルス達の事も総じて見下している(これは本作のエンヴィーも同様である)。
最終決戦ではマスタングと一対一で対決する。
ブラッドレイをヒューズを殺した者の仲間だったと見抜けなかった事が許せないと語り、その落とし前の為にブラッドレイを暗殺するべく現れたマスタングに対し、ブラッドレイは前述の「空気の流れが見える」と能力でマスタングの焔を物ともせず、「全身を焼かれても再生できるか興味があった」などと余裕を見せる。さらにマスタングの大総統になるという野心を見抜いていた事を打ち明けた上で、「ちっぽけな野心」と嘲笑い、彼を弄びながらトドメを刺そうとする。
しかしそこに、何も知らない息子のセリムが父が“大事な物”として話していた「ブラッドレイのベースとなった人間の頭蓋骨(ホムンクルスの弱点)」を父に渡す為に現れる。
隠していた弱点を持ち出され、激怒したブラッドレイはセリムを突発的に扼殺したが、マスタングに頭蓋骨を奪われ、動けなくなった所を手の甲に自分の血で錬成陣を描き、周囲の火そのものを火種に使ったマスタングによって、体内の紅い石の生命エネルギーが尽きるまで焼き殺され続けた(原作のラストと同じ倒され方である)。そして後に残った液体状の残骸と共に、頭蓋骨も焼き払われた。
その後は、原作と違い遺体が残らなかった為に、公には行方不明扱いとなっている。原作同様に少なくとも中央の国民からは一定の支持を集めていた為に、暗殺の件が公にされる事はなかった。
ゲーム作品『神を継ぐ少女』では、本作の一連の事件を仕組んだ黒幕として、事件の後始末の為に登場する。その事実を知り激昂したエルリック兄弟をあしらい、マスタングやアームストロングの嘆願を受けて「ただの冗談だろう」と笑いながら彼等を見逃した。その後彼の指示で動いていた北方司令部の司令を口封じで抹殺し、それをテロの際に死んだものとして偽装した。
シャンバラを征く者
劇場版『シャンバラを征く者』では、実在のドイツの映画監督フリッツ・ラングが、もう一つの世界側のブラッドレイ(正確にはそのベースとなった人間)として登場した。
ただし、ラングの当時の年齢は32歳であり、60歳のブラッドレイより全然若いのだが、現実で男性だったエッカルトが若い女性になっているなど、劇場版の世界が現実ともやや異なる世界である事を表現している。
ユダヤ系の人種である彼は、作中の独裁者アドルフ・ヒトラー率いるナチスが支配するドイツでは迫害対象であり、妻がナチスの有力者である関係で彼自身は見逃されているものの、そんな現実世界に失望して映画作りに打ち込んでいる。
ブラッドレイが原作・アニメ共に軍事国家を築き、他民族を侵略・弾圧した独裁者自身である事を考えると、かなり皮肉な設定だと言える(そもそもブラッドレイが行ったイシュヴァール人虐殺は、ナチスのユダヤ人虐殺も元ネタになっていると思われる)。
軍事国家を支配する独裁者と、それに虐げられた被支配者層の人間という真逆の立場なので、原作及び2003年版のブラッドレイがリアリストなのに対して、彼の方は現実逃避気味に映画製作に打ち込んでいる人物であるなど、両者の根本的な部分はむしろあらゆる点で真逆である。
そもそも彼は、あくまで「ホムンクルスであるブラッドレイのベースとなった人間の同一人物」である為、厳密にはブラッドレイ自身とは全くの別人である(ホムンクルスと元になった人間はあくまでも別人に過ぎない)。他にもラストのオリジナルの同一人物も映画の最後に登場している。
03年版アニメの終盤は、「右腕を機械化して人造人間を生み出した」というエドワードの行動からか、随所にラングの作品「メトロポリス」のオマージュが盛り込まれている。
映画の舞台である戦間期のドイツという時代も、同作の制作直後であり、恐らくラングの登場もそうしたオマージュ要素の1つであると考えられる。