ミステリアンとは、東宝制作の特撮映画「地球防衛軍」に登場する宇宙人である。
データ
- 身長:1.8m
- 体重:80kg
- 別名:怪遊星人
- 出身地:ミステロイド星
- 演:土屋嘉男 中島春雄 鈴川二郎 勝部義夫 海上日出夫 大西康雅
概要
かつて、火星と木星の間に存在していたと言われている第5惑星ミステロイド星からやってきた宇宙人。
5千年前に母星が核兵器によって滅びた為、生き残った一団が火星に移住して生活していたが、元の文明を復興させることが不可能だった為、恵まれた環境と豊富な資源のある地球への移住を計画した。
しかし、その目的は移住ではなく侵略だった。
体格や背格好は地球人とほぼ同じであるが、かつての核戦争の結果、ストロンチウム90の放射線障害による後遺症の為に肉体は激しく衰えており、生殖行為もままならず、ヘルメットの下はケロイドが浮き上がっているという痛々しい素顔をしている。
異常児の割合も多く、生まれてくる子供の80%を捨てているとの事だが、この辺りは当初の地球への移住希望交渉の際の現状説明として口頭で語られたに過ぎず、事実かどうかは不明である。
重力が軽い火星でいくつもの世代を過ごしてきたせいか、地球人より少々動きが鈍いが、2~3人で潜入した地球人を取り押さえることもしており、地球人と同程度の力を持つ。これが元々の身体の筋力なのか着ている服装のパワーアシスト的な能力なのかは不明である。
全身を覆う共通の白い服装と、各員ごとに色分けされたマントとヘルメットを常に着用しており、赤が最高指揮官、黄色が中級指揮官、青が一般戦闘員と、服装の色ごとに階級が決まっている。
高温が弱点であり、地球と比べて冷涼な環境でないと生活できない為、ミステリアンドーム内を低温に保っている。
動きやすいようにか、歩哨に立っている戦闘員はマントをつけていない者もいる。
劇中でヘルメットを自ら脱いだミステリアンは存在しないが、地球大気中でヘルメット無しで問題無く生存可能な種族なのかは不明である。
「ワレワレハ…」といった所謂宇宙人語で話すが、同時に本来の彼らの言語と思しき低音の音声も微かに聞こえるため、各自が地球の言葉(この場合は日本語)を覚えて話しているわけではなく、ヘルメット等に搭載された同時翻訳機を通して話しているようである。この場合、彼らの話す地球語(日本語)は機械音声ということになる。
なお、劇中で日本語音声で会話を行っているのは総統ただ一人である。(ミステリアン同士の会話シーンでの相手の黄色服は地球人のミステリアン協力者であるため)
演出の都合上、総統は地球側に聞かせる必要の無いミステリアン内での指令でも、翻訳機を使用している。(地球人のミステリアン協力者が同席しているのでそのためであるかもしれない)
優秀な子孫を残す為に地球人の女性に目を付け、多数の女性を攫ってミステリアンドームの中に監禁していた。なお劇中ではミステリアンの女性は描かれていないため、彼らの性別および生殖形態に関しては不明であるが、ミステリアン側の要求は地球人女性との「結婚」であったため、遺伝子的に地球人類と共通する部分がある可能性もある。
劇中の活躍
当時の地球文明はまだ宇宙開発が始まったばかりの時代だったため、地球側に特に察知されることもなく地球軌道上に前進基地となる宇宙ステーションを設置し、地球に降り立つと富士五湖の地底に秘密基地を建設。
やがてモゲラを出撃させて付近の村を襲い、続いて地底基地より「ミステリアンドーム」を出現させ自らの存在を地球人類側に示すと同時に、人類に対しドームを中心とした半径3キロの土地の割譲と地球の女性との結婚の自由を要求。
この時点で既に数人の女性を捕らえており、要求が飲めない場合は攻撃も辞さないと迫る。
あまりに急かつ一方的な要求だったため日本政府、防衛軍は要求を拒否し、戦車や戦闘機でミステリアンドームを破壊しようとするも、ドームから発する熱線で全滅させられてしまい、地球側の第一次攻撃は頓挫した。
通常兵器では手も足も出せない為、諸外国からの援助で空中戦艦α号、β号、γ号、そして長距離からのオネストジョン攻撃(※当時配備されていた米軍の地対地ロケット兵器)を人類が決行。
しかし、ミステリアンドームにダメージを与えるには至らず、逆にこれら人類側兵器を易々と返り討ちにするとすかさず市街地に円盤を飛ばし、無駄な争いは望まないという街宣を行う狡猾さも見せた。
そして今度は半径120kmの土地を割譲するように要求を大幅に拡大させるが、要求をはねつけた防衛軍の新兵器「マーカライトファープ」からの攻撃で無敵と思われたドームについにダメージが入っていく。これを見たミステリアン側は急遽モゲラ2号機を地下より発進させたものの、倒れてきたマーカライトファーブの下敷きになり大破してしまった。
当面の打つ手を失ったミステリアン側は直ちに攻撃を中止しなければ報復手段をとると脅すが、地球側は攻撃中止の条件として地球からの即時退去を求めたため、ミステリアンは円盤を使い湖から濁流を発生させてマーカライトファープや付近の村を破壊する。が、彼らの反撃はここまでだった。
ドーム内部に単身潜入した地球人によってドーム内部の機器を破壊され、このスキを突かれる形で地球人のミステリアン協力者の裏切りもあり、攫った女性達に脱走されてしまう。
更に間の悪いことにこのタイミングで到着した第二β号から新兵器電子砲の攻撃を受け、ついにドーム基地は破壊されてしまう。
宇宙に逃れようとした円盤も、電子砲の熱線によって悉く撃ち落とされ、ごく少数の脱出者だけが地球軌道上の宇宙ステーションに帰り着くが、地球側は軌道上を監視する衛星を打ち上げ始めており、彼らはそのままあてもなく逃亡するしかなかった。
こうしてミステリアンの地球侵略は失敗に終わったのである。
ミステリアン事情
ここからは憶測となるが、ミステリアン側の事情を考察する。
彼らの侵略は非常に慎重に行われており、当初は先進各国への人口密集地への空襲や、高威力の兵器を見せつける等の必要以上の威嚇行為はせず、半径3キロの土地の割譲という、最終目標からすれば静かな要求から始めている。(要塞完成後は「ボタン1発で東京を灰にできる」というミステリアン内の会話もあるため、徐々に脅迫に訴える計画はあったようだが)
当初より地球側の核攻撃を思いとどまるよう熱心に警告し、戦端が開かれた後も平和を望む等の街宣を行うなど彼らなりに地球側の人心掌握に腐心しているが、これはミステリアンは核戦争で母星を失ったため総兵力も少なく、放射能による肉体汚染という大変な人的ハンデを抱え、生殖資源として人間の身体を必要としていたため、単純に人類を消し去る絶滅戦争は選択できなかったという彼らの都合もあったと考えられる。
彼らにとって不運だったのは敗戦したとは言え復興途上にあった元列強国であり、半径3kmの土地であっても大問題になってしまう人口過密国、日本を最初の標的にしてしまったことと、馬鹿正直に女性拉致を認めたことで、人類側(特に日本)の心証を著しく悪くし、結局一度も要求を飲ませられないまま交渉決裂に至る結果となった。
もし、日本ではなくどこか人口密度の低い国、または辺境の集落を狙うか、劇中より20年早く侵略を開始するかしていれば簡単に地球内で浸透、定着し、やがては苦も無く地球を乗っ取ることも可能であっただろうミステリアンの地球侵攻作戦は、こうして潰えることとなったのである。