重度の聴覚障害を持ちながら、『バイオハザード』、『鬼武者』のBGMや「交響曲第1番《HIROSHIMA》」などを作曲した人。耳が聞こえないという音楽家としては致命的とも言えるハンデをものともしない才覚を称え、人々は彼を『現代のベートーベン』と呼んだ。
それが、何もかも嘘っぱちだったと明らかになるまでは。
時は2014年2月、それらの功績と耳が聞こえないのは全て虚偽・芝居であることが判明。
"堕ちた"現代のベートーヴェンとして、一気に悪名に変わってしまった。
概要
『週刊文春』の暴露記事を発端に、彼のゴーストライターを務めていた新垣隆(本職の人)による謝罪の記者会見が行われた。
またその会見で新垣は佐村河内の聴力が会見時の数年前には既に寛解していること、1996年以降佐村河内名義でリリースされた楽曲のほぼ全てを新垣に制作させていたこと、などを証言。
そして佐村河内の公式SNSや公式サイトが次々に閉鎖、佐村河内名義の楽曲も次々に出版・リリースが自粛、絶版となる。その後、本人自筆の謝罪文が弁護士を通じて発表された。
翌月の3月7日、(メイン画像にあるように)トレードマークであった長髪を切って、サングラスを外した上で、謝罪の記者会見を行ったが、その最中「新垣の主張の中には誤りやウソがある。今後新垣に対し法的手段の行使も辞さない」と宣言。これに対して新垣は「あのときの会見で述べたことに嘘・偽りは一切無い。会見で述べたことが全てであり、これから万が一のことがあれば毅然とした対応を取る」と反論している。
しかし結局のところ表立った法的な争いはなく、代理人を通して「佐村河内名義で発表されていた楽曲の著作権の今後の行方」についての話し合いが行われた様子。
ともあれこの騒動で佐村河内はただのペテン師だと知れ渡った一方、元々本職の音楽家である新垣は引き続き音楽活動を続けている。双方の主張は新垣に分があったようだ。
会見では今後表立ったメディアでの露出は極力控えることを宣言し、その言葉通り以降暫くは表立った出演はなかったが、同年12月になってフジテレビのインタビュー取材に応じた。この時には既に短くしていた髪は以前の長髪に戻り、メガネをかけて登場している。
2014年11月頃に損害賠償請求で訴えられ、後に自宅が差し押さえられて売却された模様。
また2019~20年頃にはなんと彼名義の"新曲"が2曲発表された。
といっても完全新作というわけではなく、『鬼武者』のとあるBGMのベース部分にあたる音楽を「新曲」として発表したもの。
「それもどうせ新垣に作らせたんじゃないの?」と思ってしまうところだが、新垣によれば「完全に彼のオリジナル」とのこと。実質焼き直しではあるが、自力で手掛けた曲なのは本当のようである。
関連イラスト
事件の影響を受けた人物・メディア
- 作曲家、ピアニスト。元・桐朋学園大学非常勤講師(2014年4月付で新垣本人の申し出により退職)。佐村河内の代表曲のほとんどを手掛けていたとされている。現代音楽の作曲家として評価が高く、業界では以前から有名な人物であったが、一般の人々には佐村河内のゴーストライターとして名前を馳せてしまった(現代音楽は一般の人はほとんど聴かないから仕方ないね)。25歳から18年間の付き合いであり、佐村河内名義の作品の演奏の指揮を務めたことがある。
- フィギュアスケート選手。ソチオリンピックのショートプログラムで佐村河内の曲「ヴァイオリンのためのソナチネ」を使用。騒動を受け大会では作曲者の氏名は削除された。ちなみに、新垣氏が会見を開いたのも「このままでは高橋選手までもが佐村河内の嘘を強化する材料になってしまう」と懸念したためであった。高橋本人は「このタイミングで勘弁してよっていうのはありました」と苦笑していたが、それでも楽曲の素晴らしさは変わらない、とも語っている。
- フィギュアスケート振付家。佐村河内についての知識がないまま、上述の高橋に「ヴァイオリンのためのソナチネ」を使用することをすすめてしまった。しかしながら騒動発覚後も「プログラムの内容には自信があります」と公言し、新垣隆から感謝されていた。
- SoundHorizon、LinkedHorizonの主催者。髪を切る前の佐村河内氏に間違えられ、『あなたのCDはもう二度と買いません』と言われたという。風評被害とはまさにこのこと。
- TV出演の多い華道家。大の佐村河内守ファンだった。
- 髪を切る前の彼と見た目がそっくりな人物。2ch等の掲示板で「KBTIT一族の恥晒し」というスレッドが建てられたが一連の騒動とは一切関係ない。見た目が似てるための風評被害。
- 漫画家。2016年より「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で連載されたドキュメンタリー漫画『淋しいのはアンタだけじゃない』は佐村河内を擁護する立場をとる。
- 騒動以前に『聴力を失った作曲家』として名を馳せていた頃に、『金曜日のスマたちへ』にて特集されていたが、上記の疑惑が発覚した後は、一転して佐村河内の虚言壁や経歴詐称に関して報道。しかし、後に佐村河内がこの報道の内容に関して不満を抱き、最終的には法的手続きに踏み入れることを宣言した。その他のテレビ局にも同様の措置を取ると発言した。
- 騒動以前に『あさイチ!』などで佐村河内を取り上げ大反響を呼び、アルバムを各チャート上位へと押し上げた。2013年のNHKスペシャルでは『魂の旋律~音を失った作曲家~』を放送したが、当時気が付くことができなかったとして謝罪した。
- 佐村河内のCDを販売していたレコード会社。騒動を受け、佐村河内関連CDの出荷やネット配信を停止した。今後場合によっては、佐村河内に対して損害賠償を請求することも視野に入れているとのこと。
- 佐村河内の自伝『交響曲第一番 闇の中の小さな光』を刊行していた出版社。この騒動により自伝を絶版にした。
関連タグ
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エルネスト・デラクルス:パートナーに作曲させ自分の曲として発表し高名なミュージシャンを偽った。
麻原彰晃:音楽好きで毛が濃い。オウムソングの多くは弟子のゴーストライターが作曲していた。完全に盲目であったかについては説が分かれている。