還るべき地へ舞い降りた主は
裏切りの給仕こそ闇の化身であったと知る
薙ぎ払い 悉くを討ち果たし
今ここに 奪還の狼煙を上げる
概要
『モンスターハンターライズ:サンブレイク』のメインモンスターであるメル・ゼナの特殊個体。
2023年6月8日のボーナスアップデートで追加された、モンスターハンターライズ:サンブレイク最後の追加モンスター。
タイトルアップデート第5弾の紹介映像にて、一部が裂かれたロードマップにはメル・ゼナとよく似た独特の形状の淡い藍色の翼が映し出されていたが、正体はこの特殊個体と化したメル・ゼナだった。
容姿の様々な部分で差異が見られる。
カラーリングは爵銀龍の別名通りの銀に加えて金がメインであることは変わらないが、黒っぽい部分が見られなくなった。翼膜は青をベースに薄い紫色の紋様が見られる。元のメル・ゼナの赤色の部分はほぼ無くなり、かなりシンプルなカラーリングとなっている。
デザインの差異としては、元のメル・ゼナにあった羽毛のような部位が無いことと、甲殻の発達具合が大きな差異となっている。翼と肩はかなり重厚な甲殻に覆われ、角や爪はより鋭利に、頭部は角ばって嘴が隙間なく閉じられるようになっている。
総じて、神秘的な雰囲気を感じさせる、屈強で精悍な騎士といった感じのデザインとなっている。
ちなみに、メインモンスターが看板を飾った作品と同一作品内(IBやSBなどの大型拡張コンテンツを別作品扱い)で亜種や特殊個体が登場したのは、モンハン2の錆びたクシャルダオラ以来の16年ぶり2体目であり、マスターランク(過去作でのG級)の作品ではメル・ゼナが初である。
生態
その生態は、キュリアに侵される以前の原初たる姿だとされている。
当然ながら、戦闘においてもキュリアを用いることは一切ない。…当初は。
重厚かつ鋭利な甲殻と、発達した膂力による肉弾戦を主軸とする。
特に翼を起点とした連続攻撃が多く見られる。重厚に発達した甲殻に覆われた翼は、振るうことで剣槍の如く敵を貫き薙ぎ払い、広げて構えることで盾の如く敵の攻撃を弾き返す、まさに攻防一体を体現する武器となる。
相変わらず尻尾も強力な武器であり、翼で敵を地に叩きつけてから尻尾による追撃を見舞うなど、翼との連携も行う。まるで熟練の騎士の剣技の様な連撃は、文字通り一度の読み違えで勝負が決してしまうほどの脅威である。
現在確認されている個体は、戦闘中にキュリアの侵食を受ける様子が見られる。
この状態になると戦法が一変、キュリアを使役するかのように獲物を追い詰める。この状態は『血氣覚醒状態』と呼ばれ、元のメル・ゼナと似た状態になり、攻撃が苛烈になる。更にその侵食が進むと『血氣烈昂状態』へと変化し白い甲殻は黒くなり、翼膜は紫色へ変化してより攻撃が激しくなる。此方は元のメル・ゼナの『血氣活性状態』に近い状態となり、キュリアの力を利用した技であるダークロードブリス(瞬間移動)も行う。
またキュリアによる侵食が極限に達した時、メル・ゼナは『血氣蝕烈状態』となり、全身が殆ど黒く染まり、怒涛の連続攻撃を行い、圧倒的な力を振るう。怒涛の連続攻撃の回数はなんと11連続にも及ぶ(ダークロードブリスも含むと14連続)。この極点に達したこの力を抑え込む術はなく、絶命するまでこの状態となる。
しかし、その身を爆発的なエネルギーが蝕んでいるためか、時折その力に抗っているかのような仕草を見せる。
「深淵の悪魔」のおとぎ話の続き
「人々の心が闇に染まり国が乱れるとき、
深淵の悪魔が国を喰らい尽くす」
これが深淵の悪魔のおとぎ話として伝わっている話のあらすじだが、新たに見つかった続きがある。
「悪魔は"鬼神"を呼ぶ。
『爵』を冠する鬼神は彼方より現れ、
『白銀』の槍でもって大地を灰燼となす滅浄の裁きを下す」
時代に合わせて形を変えるのはおとぎ話ではよくある話なのだが、この話はなんと悪魔の次に鬼神が控えていた。「爵」「銀」はまさにメル・ゼナを指している。
バハリ曰く「この話のとおりなら、王国を危機に陥れるほどの被害が想定される」との弁。
余談
- 原初を刻むメル・ゼナから得られる素材は怨嗟響めくマガイマガド同様(いにしえの龍秘宝を除き)なんと全て専用の素材となっている。その他、この個体から得られる「刻を穿つ矛尾」の説明から古代に冥淵龍と激闘を広げたメル・ゼナは、この原初たるメル・ゼナの姿であったこともほぼ確定だろう。また、狂淵の噛生虫なる素材も手に入るが、その説明からこの個体を侵食するキュリアは傀異化を起こし続けた、進化の到達点にあるキュリアであると思われる。
- メル・ゼナは吸血鬼及びドラキュラをモチーフとしているが、原初を刻むメル・ゼナは「原初」というネーミングから吸血鬼の「真祖」を意識した名称なのではないかという見解がある。ただし、原初を刻むメル・ゼナはキュリアに蝕まれる以前の状態、つまり吸血鬼になる以前の姿であり、真祖とは真逆といえるのだが。
関連タグ
イヴェルカーナ…前作のメインモンスターで「ドス古龍骨格」「気品と優雅さを感じさせる風格」「鋭い尻尾を主体に戦闘する」という点が共通している。
アマツマガツチ…無料タイトルアップデート第5弾の大目玉である復活古龍種モンスター。あちらがライズのストーリーの集大成だとすると、原初を刻むメル・ゼナはサンブレイクのストーリーの集大成とも言える。
以下、討伐後のネタバレ注意!
緊急クエスト「滅浄の裁き」では、原初を刻むメル・ゼナとの戦闘中、フィオレーネが「このメル・ゼナからはキュリアへの憎悪を感じる」「ここでの討伐は、本当に正しいのか…?」「メル・ゼナは…キュリアとの共生を拒んでいるというのか…?」などと意味深な発言をする。実際、キュリアと共生関係になったメル・ゼナはその力に抗っているかのような仕草をする場合がある。
そして、猛き炎とフィオレーネは共に原初を刻むメル・ゼナの撃退に成功する。
しかし、撃退された原初を刻むメル・ゼナは未だ倒れずに、戦闘中共生関係を築いたキュリアを剥がしてそのまま飛び立ち、城塞高地の東の14番エリアへ向かう。
14番エリアでキュリアの群れに囲まれるメル・ゼナ。再び共生関係を築き、此方に襲い掛かる……かと思いきや、こちらには目もくれずなんとキュリアに対して牙を向ける。
なんと、深淵の悪魔のおとぎ話の鬼神がもたらす滅浄の裁きの対象は、王国ではなくキュリアだった。
「いま 我々にとって真の敵は
メル・ゼナではない!
討伐対象を変更する
キュリアを駆逐し……メル・ゼナを救うぞ!」
死力を尽くし、キュリアを駆逐した皆。
メル・ゼナはその後こちらに敵意を向けることなく、朝焼けの海へと飛び立っていく。
「王国に安寧の焔をもたらす騎士が…帰還した」
「深淵の悪魔」のおとぎ話の真相
現れた鬼神ことメル・ゼナが「深淵の悪魔を追い払った」(厳密には引き分けたことで王国が護られた)という解釈が正しく、かつての人々からしてみればメル・ゼナは救国の騎士であり、畏敬の念からおとぎ話が作られた。当時の滅浄の裁きの対象は間違いなくこの深淵の悪魔(キュリア)だったのだろう。
そして今回もメル・ゼナと王国騎士の活躍によってキュリアの拡大は食い止められ、王国は救われた。
しかし、メル・ゼナによる被害が過去のみならず今回も出たというのもまた事実。メル・ゼナは己の縄張りを護ったにすぎなかった。
エルガドは縄張りを護っているのではなく、王国にいる人々の安寧を護っている。その点においては人間とモンスターとの決定的な違いがある。
更なる余談
原初を刻むメル・ゼナの追加は「ボーナスアップデート」と位置付けられており、サンブレイク発売当初は予定になかった(アマツマガツチで終了予定だった)とされている。
つまり、当初の予定ではキュリアによる傀異化モンスターの事変の結末・終息が描かれる予定は無かったようである。
無責任にも思えるかもしれないが、過去のモンハンではMH4Gでの狂竜ウイルスとそれによる極限状態モンスターの発生、MHX・MHXXでの獰猛化モンスターの発生は、続編の時系列ではいつの間にか終息していたので、そういうものなのだろう。
また、このメル・ゼナが最後の追加モンスターとなったことで、ライズ系列は本編モンスターハンターシリーズでは初となる禁忌のモンスターが一切登場しない作品となった。
メル・ゼナのモチーフであるドラキュラ伯爵のモデルであるヴラド3世だが、熾烈な政策からワラキア公国内外から恐れられて(ただし残虐行為などの伝承は政敵や敵国などからのプロパガンダによる捏造も多数あったとされる)吸血鬼の題材とされたと同時に、国内の統制を勧めたりオスマン帝国からの侵攻を食い止め続けたりした「護国の英雄」であり、原初を刻むメル・ゼナの「救国の騎士」という面は英雄としてのヴラド3世=ドラキュラを意識したものと考えられる。
おとぎ話での扱い「鬼神」だが、現実世界の出鬼神は国や地域などで伝承や扱いに差異があるが、原初を刻むメル・ゼナの場合は日本での鬼神のイメージで多い「仏教での守護神としての鬼神」をモチーフとしたものと見られる。
仏教での鬼神は金剛夜叉明王や多聞天(毘沙門天)配下の夜叉や羅刹などのように「かつては悪鬼だった存在が仏門に入ることで善に目覚め、荒ぶる気質は残しながらも悪を罰する存在となった」とされており、人間にとっての悪である深淵の悪魔(ガイアデルム)とそれが従える闇の化身(キュリア)に裁きを下した鬼神にメル・ゼナを例えたのであろう。
また、鬼神という明らかに東洋的な表現から、ライズのように日本・東洋の要素もメル・ゼナに付加した形ではないかという見解もある。
キュリアと共生関係を築いていない普段のメル・ゼナは尻尾や翼を巧みに扱い、騎士の様に立ち振る舞うのみで、古龍らしい「天災を彷彿とさせる特殊な能力」を持たない古龍であるようだ(最古参のラオシャンロンを始め、特殊な能力を持たない古龍は少数ながら存在する)。
縄張り争いは通常種と同じでルナガロン、怨嗟響めくマガイマガドとは全く同じ展開(使い回し)である。ただし通常種のそれがモロにキュリアを用いる縄張り争いだったためか、イヴェルカーナとは新規の縄張り争いが追加されており、肉弾戦主体で激しい戦いを繰り広げる。
イヴェルカーナ戦では原初を刻むメル・ゼナ側に一切ダメージが発生しない仕様であり、扱いとしてはメル・ゼナ側の勝利という形となる。……にもかかわらずルナガロンとの戦いでダメージを受ける点はユーザーからよく突っ込まれるが、通常種の縄張り争いと内容を比較する限りでは相性差による完封といったところだろう。
ともあれ通常種同様に怨嗟響めくマガイマガドと完全に互角の戦闘力の持ち主であり、大型モンスターの中ではトップクラスの実力者と言える。
原初を刻むメル・ゼナは「蘇る伝説」という異名を持つ。
「原初を刻む」という名はこの個体が「(キュリアと共生する前の)原初の姿を保ちながら、現代まで刻まれてきた時を超えて出現した」ことに由来するため、かつて御伽噺に語られていた鬼神が現代に蘇ったことを示す異名だろう。
裏設定では多くのメル・ゼナがキュリアに襲われた結果共生関係を築いたとされており、原初の姿を保ったまま生き残っているメル・ゼナは希少かもしれない。
通常種の危険度★8に対し、原初を刻むメル・ゼナは二段跳びで★10となっている。
通常種より大人しいとされている本種の気質には似合わない危険度だが、今のところ確認されている個体は最終的にキュリアに侵食されて暴走するため、それが考慮された結果だろうか。
また、こちらの個体がキュリアを纏う前の本来のメル・ゼナということもあり、キュリアと共生関係を築いている現代のメル・ゼナの方が特殊個体と言う意見も散見される。一方、こちらの個体も戦闘中にキュリアによる侵食を受ける上、暴走気味の異常な形態へ変化するという点は、間違いなく特殊個体の性質と言える。本来ならば通常個体に該当し、さらに本来の意味で特殊個体と呼ぶべき状態にもなるという稀有な存在である。
また、真のラスボスという立場でありながら、ストーリー上では討伐される事無く本当の敵を倒すべく共闘するという異例の結末を迎えたモンスターとなった。緊急クエストで流れるムービーでは「還るべき地へ舞い降りた主」と語られるため、緊急クエストの個体こそが過去に深淵の悪魔を退けた個体なのかもしれない。
ストーリー終了後は普通に討伐できるようになるが、これは「討伐するしかないほど危険な個体」とされており、ストーリーに登場した個体とは別の個体となっている。
また、これまでのメル・ゼナや傀異化モンスターは討伐するとキュリアが飛び去って行くが、この個体を討伐した際、キュリアが飛び去ることなく力尽き、落下する演出が見られる。
更なる関連タグ
ガイアデルム…深淵の悪魔と呼ばれし大型古龍でサンブレイクのラスボスであり、キュリアの真の宿主。キュリアを使役しメル・ゼナの弱体化を図ったが、逆に共生関係を結ばせてしまった。挙句の果てにはフィオレーネに「キュリアに頼って身を潜めていた臆病者」などと罵倒される。
原初を刻むメル・ゼナにとっては何度かに渡って縄張り争いを繰り広げた因縁の相手。
キュリア…サンブレイクのストーリーの全ての元凶で謎多き寄生生物。宿主だと思われていたメル・ゼナの精気すらも永く吸い続けていた。真の宿主であるガイアデルムが滅んだ後もしぶとく生き残り、数多のモンスターを宿主として強大な力を得つつ、宿主を無理矢理強化・暴走させる"傀異化"の現象を巻き起こした。しかし、一部の古龍種はこの傀異化を克服し、"傀異克服"たる現象も起きた。
ちなみに、一部のキュリアは武器や防具の素材として使うことができる。…大丈夫なのだろうか。