概要
国見(くにみ)には、以下の語義がある。
(1) 為政者が自らの国や自ら統治する地域の地勢や景色や人々の生活状況を高い場所から望み見ること(※a1~2)。国を支配する者の支配の象徴的行為(※a1~2)。「望国(くにみ、ぼうこく)」ともいう(※c)
(4) 日本語の固有名詞。名字の一つ。
定義1
古代日本の文献には「廻望国状」「望国」などと記されている(※a4)、共同体的性格を帯びた集団儀礼であった(※a4)。当時の日本において「見る」行為は離れて所有することに通じており、係る儀礼は、演劇空間的緊張関係が生命力を豊かにするという「タマフリ信仰(魂振信仰)」に依って立つ(※a4)。
もともとは、民間で春の初めに族長を中心にした為政者集団が高所に登り、遠くを望んで農耕の場を求め、クニタマを予祝して豊穣を祈念していたもので(※a4)、共同の飲食や歌舞や性的解放などの遊びをも含めて、歌垣(うたがき|cf.)とも関わっていたと推定されている(※a4)。
しかしやがては、中国の皇帝や王の巡行・郊祀(こうし)などの支配観念にも刺激されてか、王権儀礼的に政治化されていった(※a4)。
そうして、大王(おおきみ、天皇)や地方の首長が行う早春の農耕儀礼に変容し、一年の農事を始めるにあたって農耕に適した土地を探し、秋の豊穣を予め祝うものになった(※a2)。
「大和には 群山あれど とりようふ 天の香具山 登り立ち 国見をす けぶり かまめ あぎつれば 国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国そ 蜻蛉島 大和の国は(大意:大和〈やまと|日本〉には数多くの山があるが、中でも特に美しくとり装う天の香具山(あまのかぐやま|cf.)に登って国見をすると、広い国土には飯炊きの煙が盛んに立ち上っているし、海原には鴎〈かもめ〉が飛び交っている。素晴らしい国だ、蜻蛉島〈あきつしま、あきづしま|cf. 秋津島〉なる大和の国は〈※e: c~d参考〉。)」は、『万葉集』巻2所収の和歌(※a2,b)。題詞には「高市岡本宮に天下(あめのした)知らしめす代の天皇(舒明天皇)が香具山に登って望国した時の御製歌」とある(※b)。
国見を謳う和歌を「国見歌(くにみのうた、くにみうた)」(※b~d)または「望国歌(くにみのうた、ぼうこくか)」という(※c)。また、土地柄や国土を讚美することを「国誉め / 国ほめ / 国ぼめ」といい、国誉めの国見歌は特に「国誉め歌」という(※b)。
定義2
本来は、国誉めを行う早春の農耕予祝儀礼であったが、儀礼的意味が薄れ、民衆の行楽に変容していった。
「村眺望 打出て国見をすれば大和路や 里もむら山 幾重ともなし」は、室町時代の私家集『草根集』(cf.1,cf.2) 巻10所収の和歌。
既存記事および主立った既存のpixivタグは、目下のところ該当なし。
定義3
既存記事および主立った既存のpixivタグは以下のとおり。
定義4
既存記事および主立った既存のpixivタグは以下のとおり。
pixivでは
pixivに投稿される作品は、名字でタグ付けされているものが圧倒的に多い。
定義1(為政者の国見)でタグ付けされている作品は、銀茄子/Agnus「国見」(2023年10月15日投稿)の1点のみ(2023年10月時点)。R-18指定につき、リンクを張るにとどめた。
脚注
出典
※a1 「国見」 コトバンク > 小学館『精選版 日本国語大辞典』
※a2 「国見」 コトバンク > 小学館『デジタル大辞泉』
※a3 「国見」 コトバンク > ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
※a4 「国見」 コトバンク > 平凡社『世界大百科事典』第2版
※b 論文「天の香具山登り立ち国見をすれば」(小野寛)。学習院学術成果レポジトリ。PDF。
※c 「大和には群山あれどとりよろふ天の香具山登り立ち 舒明天皇 万葉集2首目の和歌」-「和歌のこと」、2022年8月14日作成。
※d 「大和には群山あれどとりよろふ天の香具山」-「たのしい万葉集」、2019年5月13日更新。
※e 「巻一・二番の舒明天皇の香具山での望国歌について(坂本信幸)」- 高岡市万葉歴史館。2023年7月20日作成。