概要
外惑星連合軍とは谷甲州のSF小説航空宇宙軍史シリーズに登場する架空の軍事組織である。
地球-月連合とその軍事組織である航空宇宙軍を仮想敵とした軍事同盟「外惑星連合」に属する各国軍の総称であり、外惑星連合軍という統一された軍が存在している訳ではない。
外惑星連合は第一次と第二次の二度に渡る外惑星動乱において結成され航空宇宙軍と戦った。
地球-月連合と航空宇宙軍を相手に奇襲作戦や新兵器、特殊兵器で戦いを挑み短期的、局地的に優位を獲得する事もあるが、経済力、技術力、軍事力等、あらゆる面で地球側が勝っているため戦術、戦略両方で苦戦を強いられる。
構成国家は第一次外惑星動乱では木星系のカリスト、ガニメデ、エウロパ、イオのガリレオ衛星群と土星系の衛星のタイタン、前方と後方の両トロヤ群の七ヶ国(トロヤ群は小惑星群の総称である為個々の小惑星国家の連合なのか統一政府の様なものが有るのかは不明、作中描写を見る限り代表が居て意思統一はされているようではある)であるが国力等の問題で実質的に戦力になるのはカリスト、ガニメデ、タイタンの三ヶ国のみである。なお、この三ヶ国の中でもタイタンは開戦後3ヶ月程で降伏したためそれ以後は事実上カリストとガニメデの二ヶ国で戦争を継続した。(両トロヤ群もタイタンと同時期かそれ以前に降伏した模様)
約40年後に勃発した第二次外惑星動乱では相変わらずカリスト、ガニメデ、タイタン、イオ、エウロパ、前方後方の両トロヤ群によって構成されているようだ。
カリストとガニメデは先の動乱で最後まで戦った故のダメージと強い経済制裁によって国力が未だに回復しておらず、開戦直後に連合からの離脱と個別に地球との和平交渉を望んだところ主戦派のクーデターを装ってタイタンにより武力制圧され傀儡政権を樹立させられている。イオ、エウロパも積極的ではないようであり、そのため第二次外惑星動乱時の連合はタイタン一国しか居ないと言える。
木星系諸国の国力低迷により両トロヤ群がタイタンに次ぐ戦力となっている様だが、あくまで木星系国家の国力低迷故に相対的にそうなったに過ぎず両トロヤ群が前動乱時の木星系国家に相当するほど国力を高めたという訳ではない様だ。
タイタン一国だけを見ても元々の人口差と学校等における日教組紛いの教師の跋扈が原因で極度の人手不足であり、それを補うために義勇兵(傭兵)の雇用、無人兵器の大々的な使用はおろか、敵味方の死体を蘇生しての再利用や死体の脳をスキャンして構成した疑似人格による無人兵器制御や電子戦等、なり振りを構わない手段を使用している。
SPA
第一次外惑星動乱終戦直後から2123年まで活動していた地下組織。当初は旧ガニメデ宇宙軍のツボウ提督を中心に組織された戦犯追及を受ける恐れのある旧軍人への逃亡を幇助するツボウ機関という組織であったが、内紛によりツボウ提督が排除されカミンスキイ大佐が指導者となり地球と航空宇宙軍に対する武力闘争組織へと再編された。
戦後20年以上に渡り活動し天王星系の衛星エリヌスにおけるクーデターを主導したりした。
なお、第一次及び第二次外惑星動乱同様に木星系と土星系のメンバーで思惑に違いが存在し連携に微妙に難が出ている様である。
エリヌスのクーデターを切っ掛けに航空宇宙軍警務隊により壊滅させられた。
組織名のSPAは外惑星連合の英訳であるSuperior Planet Allianceの略と思われるが、名称以外に公的組織である外惑星連合とは繋がりはなく、作中でも外惑星連合ではなく専らSPAとのみ呼ばれている。
保有艦艇
地球に比べて国力や造船設備の数、マンパワー等で劣る事と、長年にわたって本格的な戦闘艦建造に転用可能な技術の供与や開発を制限されて来たために質、量共に航空宇宙軍に大きく劣っている。
特に宇宙戦闘艦の戦闘力に直結する軍用高性能エンジンの開発や購入は無条件に禁止され、それが外惑星連合の戦闘艦開発に最後まで悪影響を与えた。
商船に武装を施して臨時の戦闘艦としたもの。二度にわたって勃発した外惑星動乱において外惑星連合軍の艦隊戦力の主力として運用された。主な武装は爆雷、機動爆雷(ミサイル)、レーザ砲
かつて地球上において仮装巡洋艦は専ら民間船に偽装して敵国所属の民間船への通商破壊に従事するものであったが、外惑星連合軍の仮装巡洋艦はそれに加えて正規戦闘艦同様の戦闘任務にも従事した。
そのため、戦闘力において航空宇宙軍の主力艦であるフリゲート艦に劣る仮装巡洋艦は少なからぬ損害を出した。
第一次外惑星動乱においては多くの仮装巡洋艦は輸送船を改装したものだが惑星系内で運用されていた小型戦闘艦に航宙性を持たせたものも計画された。
どちらにせよ無理な改装により居住環境の低下は元より作戦中の定期整備にすら困難が発生する状況であり、連続した作戦行動は一カ月が上限とされ、その後は同じ期間を艦の整備と乗組員の休養に充てる必要があった。
仮装巡洋艦への改装元となった船はガニメデでは二〇〇〇トン級汎用船、カリストではCd・5型、タイタンではD・20級であるがこれらの船の基本設計は同じ航空宇宙軍の輸送艦を原型としており、呼び名や細部は違うが同型艦と言えるものである。
保有数はガニメデが14隻、カリストが12隻、タイタンが17隻、前方・後方トロヤ群がそれぞれ3隻ずつである。輸送力を残す必要があるのでこれらの内25隻前後が改装する限度とされたが、実際に仮装巡洋艦へ改装された数は不明。開戦時には20隻を越えていたとの記述が作中に存在する。
第一次外惑星動乱で延べ50隻近くの仮装巡洋艦が投入され、戦争が続くにつれ損耗率は異常に高くなり動乱末期には惑星系内用の低速輸送船や拿捕した地球船籍の輸送船も改装して投入された。最終決戦とも言うべきアナンケ迎撃作戦時には損傷艦等を除けば残った航宙力のある仮装巡洋艦は10隻未満であった。
第二次外惑星動乱では前動乱よりも遥かに慎重かつ熱心に仮装巡洋艦の開発が行われ、搭載兵器も艦本体の性能も航空宇宙軍の予想を遥かに超えるものであった。
宣戦布告前の奇襲攻撃とはいえ地球の衛星軌道上のコロンビア・ゼロ軍港と係留されていた記念艦を一方的に破壊、その後追撃を躱して無傷で離脱した。
この奇襲はSNSで(おそらく意図的に)拡散され地球圏での航空宇宙軍に対する世論の悪化を招いている。
タイタン防衛宇宙軍所属の仮装巡洋艦。艦長はニルス・ヘルナー中佐。乗組員は9人。
第一次外惑星動乱勃発直前までは情報収集船として民間船を装って運用され、開戦直前に仮装巡洋艦に改装される。
開戦時の地球圏奇襲攻撃を含めて12回出撃して帰還するが、13回目の出撃でエンジンにレーザ砲を受けエンジンが暴走し減速不能に陥りシリウスの方向へ向け太陽系外に飛び出す。
艦は推進剤切れで停止したエンジンも含めて無傷であり母港との通信も可能な状態であったが、推進剤も外部から救助する手立ても全く無いため司令部は戦闘詳報の送信を求める等の交信をしつつも事実上戦没扱いとした様だ。
150年後にシリウス星系に展開していた航空宇宙軍カンチェンジュンガ級宙域制圧戦闘母艦3番艦アコンカグアが接近してくるバシリスクを探知し艦載機グルカ107に調査させた。
なお、バシリスクの最終速度ではシリウス到達まで3000年かかるはずであった。
外惑星連合軍が保有する唯一の正規巡洋艦。艦長はシュルツ大佐、所属はガニメデ宇宙軍。
外惑星連合軍にとって高度な戦闘能力を持つ巡洋艦の保有は悲願であり開戦のかなり以前から連合各国共同で開発が進められていた。カリストが武装とセンサ類及び通信システム、ガニメデが船体を、タイタンがエンジンを担当して開発が行われた。
当初は航空宇宙軍のオフィユキ級フリゲート艦辺りを仮想敵としていた様だが、新たに就役した最新鋭艦であるゾディアック級フリゲート艦がそれら従来の艦とは一線を画す性能を持っている事が判明し完成した時点で陳腐化する事を懸念された。また計画の中枢とも言うべきエンジン開発が大幅に遅れる等トラブルが続き就役したのは開戦後の事であった。
しかもエンジン開発担当のタイタンが開戦から3ヶ月後に降伏。そのためエンジンは未完成なプロトタイプ一基が降伏前に納められただけであるため2番艦以降の建造は不可能である。(シュルツ艦長は戦局を打開するためには最低10隻の同型艦が必要だと考えていた)
戦力化を急いだためエンジン以外も未完成な状態で就役しており機器のトラブルが頻発、本来の乗組員を削って武末中佐以下の複数の造船官を乗せて常に修理を行っていなければ航行自体が不可能なほどであった。その為乗組員は特に優秀な者を艦隊戦力が低下するのを覚悟で引き抜き一人で複数人分の働きをする事が期待され、副長も居らず艦長は艦の戦闘運用に関しての相談相手も居なかった。
このような紆余曲折や問題はあったものの、最終的には航空宇宙軍のゾディアック級フリゲート艦に匹敵しうる戦闘力を持つ艦となった。
初出撃で仮装巡洋艦艦隊と共に行った輸送艦隊襲撃で大戦果を挙げ航空宇宙軍に戦略の見直しを迫るほどの損害を与えたが、エンジンの不調とタンカーとの邂逅失敗による推進剤の不足、航空宇宙軍の包囲網により次第に追い詰められていく事となる。
サラマンダーのエンジンは4基のロケットモーターを束ねたもので武末中佐によれば、開発は簡単だが信頼性に欠けるとの事。
最終手段として中立国に表向き商船として抑留されている情報収集船から推進剤の補給を受けられる様に仮装巡洋艦と同様に民間船と同じ種類の推進剤を使っている。(この方法は中立国の中立や主権を侵す事になりかねないので最悪中立国の官憲と戦闘になり、そこまでいかなくても確実に外惑星連合への態度は悪化する)
第二次外惑星動乱では仮装巡洋艦にサラマンダーの運用データが反映されているらしい。
現実の同名の艦種同様機雷を撤去処分する宇宙船、掃雷具(自爆ドローン?)やレーザ砲で機雷を排除する。
終戦後、航空宇宙軍が木星系にばら撒いた機雷の掃海を行っている。人手が必要なためか艦の規模の割に乗組員は多い様だ。
CCR-42
ガニメデ宇宙軍の掃海艇、いつもの様に掃海作業をしていると極秘任務として木星の小衛星にある放棄された秘密基地に航空宇宙軍の士官を連れて行く事になった。
情報収集船
開戦時に中立国に入港していて抑留された外惑星船籍の商船の中には表向き民間船だが実際は軍に属している情報収集船もあり、それらは戦争中は収集した情報を外惑星連合に通報しており貴重な情報源であった。
それ以外にも仮装巡洋艦向けの消耗品が入ったカプセルの放出等もたまに行っており、中立国側も黙認状態であった。
それでも推進剤の補給はさすがに中立違反や主権侵害と判断される可能性が高いため最後の手段とされた。
特殊な艦艇
外惑星連合軍はその質、量共に航空宇宙軍に劣っていた。その劣勢を跳ね返すために開戦劈頭の奇襲攻撃を始め様々な手段が取られたが、これらの特殊な艦艇の開発と実戦投入もその一例である。
実験的に投入されたこれらの艦は短期的局所的には大きな戦果を挙げたが大勢を覆すほどではなかった。
オルカ戦隊
第一次外惑星動乱時に通商破壊のために開発したサイボーグ艦
複数の無人艦載機で戦う宇宙空母、複数の艦が投入されている。
相応の被害を与えたらしく、航空宇宙軍は対抗するために同コンセプトのオルカキラーを開発し投入した。
艦載機以外の武装があるかは不明。乗組員はシャチ一匹(頭脳のみ)
ヴァルキリー
従来の物とは比較にならない長射程レーザ砲と戦術レベルにおいて非常に高い判断力を持つ人工知能を搭載した無人戦闘艦。所属はカリスト防衛軍
機動爆雷のブースターを利用したと推測されるエンジンで100Gもの爆発的加速を行う事が出来、輸送船団を待ち伏せしレーザ砲の射程と威力により5隻の輸送船を2秒で全滅させた。
残った警備艦にも攻撃しようとしたがヴァルキリーの射撃管制システムを逆手に取った方法で躱されたため帰還軌道に乗って離脱した。
終戦直前にヴァルキリーのAIを開発する際に使用された複数の人間の生体脳をクラスタ化して作られたシミュレータ「ラザルス」が宇宙船で脱走したため処分のため出撃。帰還後は機密保持のため痕跡すら残さず解体された。
戦後数十年経っても航空宇宙軍はヴァルキリーの情報を探し続けているらしい。
130年後にプロクシマの反航空宇宙軍武装組織ヴァルハラが同名同一コンセプトの無人戦闘艦を製造し航空宇宙軍輸送艦隊を人質に脅迫を行う。
対抗手段が無いため航空宇宙軍は要求を呑む事になったが、ヴァルキリーのAIは目の前の戦闘を避ける事は将来のより大規模な戦闘を招く事だと考え攻撃中止命令を無視して攻撃を開始した。
第二次外惑星動乱では仮装巡洋艦にヴァルキリーのレーザ砲を再現したものが搭載されている。