CV:仲村秀生(旧アニメ)、草尾毅(PS2版) 、千葉翔也(2019年アニメ)
原作
主人公・百鬼丸の生き別れの弟であり、醍醐景光の嫡男。推定13歳だがかなり大人びている。
景光の帝王学を受け継いでおり、両親思いな好青年であるが、領民に対しては一かけらの良心も持っておらず、ばんもんを越えようとした人々を躊躇いなく殺害していた。
富樫領に入ってきた百鬼丸とどろろを敵国のスパイと勘違いし殺害するよう命じられるが、景光が百鬼丸の素性を知ると掌を返し招聘するように言ったことを訝しむ。何かと百鬼丸を気にかけるような素振りを見せる父の姿に、嫉妬を抱いていた様子。
やがて領民たち(どろろ含む)がばんもん越えを行おうとするとこれを全滅させるために兵士たちを率いて襲撃。脱走者たちを血祭りにあげ、どろろを射殺そうとするが寸前で百鬼丸に邪魔される。多宝丸は今度こそ決着をつけるべく、百鬼丸に決闘を挑む。
いざ刃を交えんと多宝丸が切りかかった瞬間、戦乱を長引かせていた張本人たる九尾の狐が「お前の父は景光であり、多宝丸は弟だ!!」と百鬼丸に吹き込んだ。その言葉に動揺しながらも、百鬼丸は反射的に多宝丸を斬り捨ててしまう。息も絶え絶えとなった多宝丸はそのまま地に倒れ、百鬼丸の腕の中で息を引き取った。
旧アニメ版では真実を告げる百鬼丸に唾棄しながら事切れた。
この出来事が起きる直前まで、景光は百鬼丸が我が子である真実を伏せたまま士官を勧めようとしたり、多宝丸と決闘を始めたと知った際には二人が実の兄弟である旨を部下に口走りながら血相を変えて止めようとするなどの意外な一面を見せたが、この一件以来、百鬼丸と景光の確執は決定的なものとなってしまう。
2019年アニメ
キャラクター設定が大きく変更。
兄の存在を知らされないまま、景光の後継者として、何不自由なく育てられる。当初から失明もしていない。
安江姉弟の兵庫(CV:松田健一郎)と陸奥(CV:棟方真梨子)を従者として連れている。
かつて地獄の如き様相だった国を立て直した父を尊敬しており、その期待に応えるべく強くあろうとする。一方で母の心が自分に向いていないと思い込み、「多宝」という名とは裏腹の、満たされない想いを抱き続けている。
次期領主としての器量を持つ人物で、領民に対し無慈悲であった原作・旧アニメとは異なって民思いであり、領民を害する妖怪を退治せんと立ち向かう。その知略と統率力で妖怪を追い詰めるが形勢を逆転され、あわや作戦失敗となる寸前で百鬼丸に助けられる。
その後百鬼丸が鬼神に捧げられた自分の実兄だと知って景光を非難するが、鬼神との約定を破棄して百鬼丸を救い国を滅ぼすか、百鬼丸を犠牲にして国の繁栄を取るかを迫られ、後者を選択。
ばんもんで百鬼丸と交戦し、右目を斬られる。その後も災厄を止めるために百鬼丸を亡き者にしようと執拗に追い続けるが……
2019年舞台
アニメの設定を継承。
景光の密命を帯びて「16年前に川に捨てられた赤子」を探す隠密を捕らえて尋問。自分に兄がいた事、その兄を犠牲にする形で国が繁栄した事実を知って苦悩する。両親を前に「それでも親ですか!」と激昂するが、ほかならぬ自分が兄の犠牲の上にあって不自由なく育った事を思い知らされる。
ばんもんでは兄と知らずに百鬼丸と遭遇、妖怪を相手に共闘。しかし百鬼丸を鬼神の贄に捧げても国を守ろうとした父の覚悟を聞かされ、領地を守る為にも百鬼丸が鬼神を殺して体を取り戻すのを止めなければならないと考える。
終盤、自らも鬼神と約定を結び、力を得て百鬼丸と対決。しかしその真の願いは……
実写映画
本作では「多宝丸」の名は本来長男(後の百鬼丸)に与えられる名であったとされ、偶然その事を知ってしまい、百鬼丸に対し異常な憎悪と嫉妬を抱くこととなる。
徒党を組んで百鬼丸を殺しに向かうが、戦いのさなかに百鬼丸が叩き折った部下の刀が喉に刺さり、半ば事故のような形で死亡する。
しかし、その死骸に四化入道が取り付き、「蘇らせて欲しくばお前の肉体全てを寄こせ」と迫った事で魔が差した景光により、景光の命と引き換えに蘇生した。
両親の死に伴い百鬼丸を国主として推薦するも、「魔物を全て倒さない限り人の上には立てない」と言った百鬼丸に拒絶された為、「百鬼丸が全ての身体を取り戻す日をいつまでも待つ」と答え、景光の愛刀を授けた。
全媒体で一番ましな顛末を迎えた多宝丸と言える。
手塚スターシステム
『ブラック・ジャック』でも2回ほど登場。どちらも医師役だが、腕前と性格は天と地ほど差がある。またどちらも家庭内に問題を抱えている。
関連項目
2019年アニメでの最期
12体目の鬼神によって失った右目と額の傷に百鬼丸から奪った目を与えられ、右瞼の上に三つ目を持つ鬼神となる。陸奥と兵庫を喪い、怒りと悲しみに燃える多宝丸は炎に包まれた醍醐の居城で百鬼丸と壮絶な決闘を繰り広げる。戦いの最中、多宝丸は自身の寂しさや嫉妬の入り混じった胸中を百鬼丸にぶつける。百鬼丸の目に映る彼の魂の炎は胸にぽっかりと穴が空いたものだった。
最終的に決闘は百鬼丸の勝利となったが、百鬼丸は多宝丸を「同じ人間」だとして殺さなかった。ことここに至って多宝丸は百鬼丸と和解し、人間に戻ったのだった。
怒った12体目の鬼神が百鬼丸の目を通して多宝丸を苛み、約定の履行を迫るが多宝丸は鬼神に与えられた目を抉り出し、百鬼丸に返す。
百鬼丸は12体目の鬼神を倒したが多宝丸も倒れてしまう。駆けつけた寿海と縫の方によって百鬼丸は脱出するが、鬼神の力を失った多宝丸にはもはや立ち上がる力も残っていなかった。縫の方は多宝丸に寂しい思いをさせてきたことを詫びる。
多宝丸、縫の方、寿海はそのまま燃え落ちる醍醐の城と運命を共にしたのだった。