概要
兵庫県第2の都市である姫路市において、1946年から市営バス、ロープウェイ、モノレールを運営していた公営企業。
晩年は市の水道局に吸収され姫路市企業局交通事業部となるが、2010年3月26日をもって廃部し現存しない。
この記事では、市営バスとロープウェイについて説明する。モノレールについては姫路市営モノレールの記事を参照されたし。
姫路市営バス
運行開始は1946年。この年、姫路市は当時の飾磨市、飾磨郡広畑町、揖保郡網干町などを合併し、瀬戸内海(播磨灘)に面するようになったが、このベイエリアにやがて日本製鐵(当時は、富士製鐵)の広畑製鐵所や、山陽特殊製鋼、合同製鐵などが進出して一大工業地帯となり、市営バスは国道2号線以南を主なエリアに路線を広げることになる。
また姫路港への路線もあり、家島諸島や小豆島へのフェリーの利用者に重宝された。
その過程で、先発の神姫バスとの競合が著しくなったが、モータリゼーションが進むと、両社局の共倒れを避けるべく、1972〜73年にかけて神姫バスとの路線交換を実施。神姫バスは姫路城を境に北側に幅広い路線網を維持するものの、飾磨・広畑方面の路線網が大幅に削減され(一度は撤退した)、こちら市営バスは国道2号線より北側の路線網が姫路駅〜書写駅(ロープウェイのりば)線など3路線4系統だけになっている。
2000年代に入ると、市営バスの運行環境はさらに厳しさを増していき、2007年度末までにも姫路駅〜書写駅、姫路駅〜青山ゴルフ場(揖保郡太子町)、JR網干駅〜下余部〜山電網干駅などの路線を神姫バスに移管していたが、2008年度に残っていた姫路駅〜姫路港、姫路駅〜山電飾磨駅〜姫路火力発電所など16路線34系統もついに移管の対象となる。
そして2010年3月26日を最終運行日として神姫バスに全面移管され、姫路市営バスは姿を消した。
2008年度に残存していた路線
(○○/○○)はどちらか一方のみ経由、(○○)は経由しない便があることを、(○○→/○○←)は上下で経由地が異なることを示す。
バス停は、神姫バス移管後の2022年4月現在での停留所名に倣った。
●2010年3月27日移管
- 四郷線/姫路駅(北口)〜(京口駅→/姫路商工会議所前←)〜市川橋西詰〜山脇〜見野古墳群前 ※神姫バス移管後、大半の便が市川台を経由するようになった
- 荒川線/姫路駅(北口)〜(十二所神社前→/白鷺橋←)〜西土山〜(県立姫路循環器病センター〜)荒川農協前〜姫路商業高校前 ※循環器病センター止めもあった。同センターが2021年度末で閉鎖・移転(県立はりま姫路総合医療センターに改称)したため、現在は当然のことながら同センター跡を通らない
- 東蒲田線/姫路駅(北口)〜(十二所神社前→/白鷺橋←)〜姫路赤十字病院前〜(西蒲田→/←高畑南口)〜東蒲田
- 日出町線/姫路駅(北口)〜(姫路商工会議所前→/東駅前町←)〜(市之郷/すこやかセンター前)〜日出町 ※出入庫を兼ねた路線。すこやかセンター前経由便は、県立はりま姫路総合医療センター開院にともない、現在は阿保車庫発着になっている
- 構線/姫路駅(北口)〜(十二所神社前←/白鷺橋→)〜土山〜構〜思案橋 ※神姫バス移管後しばらくして、一部の便が思案橋から姫路港に延伸された
- 英賀保新日鉄線/姫路駅(北口)〜(十二所神社前→/白鷺橋←)〜土山〜(西町坪/総合スポーツ会館前)〜英賀保駅〜広栄橋〜夢前川駅南(〜日本製鐵) ※日本製鐵発着便は西町坪経由のみ。現在は、総合スポーツ会館経由便が平日2往復するだけとなっている
- 姫路港線/姫路駅(北口)〜手柄〜飾磨中部中学校前〜須加〜姫路港 ※姫路駅北口の再開発事業に際し、一時、姫路駅南口発着に変更されていた時期があった。また、須加とはかつて播但線の起点駅だった飾磨港駅の最寄りバス停で、現在は飾磨港駅跡地に建てられたNicoPaドームの最寄りバス停である
●2009年3月移管
- 市役所線/姫路駅(南口)〜姫路市役所南 ※2km足らずの路線で、市営バス時代は数少ない黒字路線でもあった
- 飾磨中央線/姫路駅(南口)〜姫路市役所前〜山電飾磨駅 ※神姫バス移管後しばらくして、飾磨区阿成にある早川神社経由便が加わった
- 火力線/(姫路駅(南口)〜姫路市役所前〜)山電飾磨駅〜山陽特殊製鋼前〜姫路火力発電所前(〜姫路検査場) ※検査場行きは山電飾磨駅発のみ、検査場発は姫路駅(南口)行きのみ。土休日は、姫路駅南口〜姫路火力が1日数本のみの運行で、これは神姫バス移管後も変わらない
- 白浜線/姫路駅(南口)〜阿保橋南〜北原〜白浜海岸(〜宇佐崎南) ※「灘のけんか祭り」期間中は運休。宇佐崎系統の北原以南は神姫バス移管後しばらくして、北原→東山→白浜海岸→北原の外回り一方循環になった
- 東山線/姫路駅(南口)〜阿保橋南〜北原〜東山(〜山電八家駅〜(的形西→/木場←)福泊) ※東山以南は「灘のけんか祭り」期間中は運休。福泊・木場地区内に狭隘区間があるため、福泊系統は小型車もしくは中型車限定
- 大津線/姫路駅(南口)〜姫路市文化センター前〜英賀保駅〜姫路南高校〜下太田車庫(〜下太田住宅)、姫路駅(南口)〜姫路市文化センター前〜英賀保駅〜はりま勝原駅〜大津北〜JR網干駅 ※神姫バス移管後しばらくして勝原東部地区のルートが両者で入れ替わり、下太田系統がはりま勝原駅を、JR網干駅系統が姫路南高校を経由するようになった。下太田系統の一部はJR網干駅へも向かう
- 南北循環線/姫路駅(北口)〜(十二所神社前→/白鷺橋←)〜土山〜手柄山中央公園前〜姫路市役所前〜姫路駅(南口) ※現在は廃止。神姫バスが独自に運行を開始した手柄山ループバス(姫路駅(南口)→姫路市役所前→手柄山中央公園前→姫路市文化センター前→姫路駅(南口)の一方循環)で代替されるも、これも現在は休止中
- 庄田線/姫路駅(南口)〜姫路市役所前〜堀川町〜庄田〜(姫路駅(南口)/姫路駅(北口)) ※午前は市役所を、午後はその裏側の庄田を先に経由する。姫路駅北口発着便は神姫バス移管後しばらくして廃止された
- 大津南線/JR網干駅〜大津〜山電天満駅北〜夢前川駅南 ※現在は平日1往復のみ
営業所
営業所は現在のJR東姫路駅近くにのみ置かれ、神姫バスが姫路東出張所として使用していたものの、老朽化により2021年度末に閉鎖し、東姫路駅を挟んで反対側の大字阿保へ移転した。新・姫路東出張所の最寄りバス停は阿保車庫である。
車両
いすゞ自動車、日産ディーゼル、日野自動車、三菱ふそうのすべてを採用し、晩年はほとんどの車両がノンステップバスとなっていた。市営バス亡き後は、神姫バスで引き続き使用されている車両が多いが、中には富山地方鉄道や芸陽バスに旅立った車両もある。
その他
●運賃は特殊区間制が採用され、これは神姫バスにも受け継がれている。
●優先座席のことを、姫路市営バスでは「グリーンシート」と称していた。
●前後と側面には番号が表示されていたが、行先番号でもなければ系統番号でもなく、単に幕番号を示していたため、上下で番号が異なる系統が多かった。その一例を示す;
(イ)姫路港線(現・神姫バス【94】)
【37】(姫路駅→)手柄→須加→姫路港
【38】(姫路港→)須加→手柄→姫路駅
(ロ)市役所線(現・神姫バス【99】)
【54】市役所〜姫路駅南口
ロープウェイ
天台宗の古刹・書写山円教寺へのアクセス路線として、1958年3月19日に開業。
2006年4月1日からは姫路市観光交流推進室に運営が移管され、神姫バスの受託による運行となっており、同社所属の女性ガイドが添乗する。
カゴは2024年4月の時点で4代目。
もと市営バスだった、神姫バスの【10】姫路駅〜書写駅線は、姫路駅発の場合、行先に「書写山ロープウェイ」と表示するが、同名のバス停はなく、終点は飽くまでも「書写駅」である。
関連タグ
神戸市交通局···こちらは現在も盛業中だが、路線によっては阪急バスや神姫バスに移管されたものもある。
明石市、尼崎市···共にかつて市営バスが存在した兵庫県下の自治体。明石市営バスは山陽バスと神姫バスに、尼崎市営バスは阪神バスに移管された。