概要
生物分類学において「とりあえず似たような見た目だから」あるいは「既存の分類に入らないから」と、表面上だけ似たような生物たちを適当にまとめたものである。いろんな系統のいろんな生物が適当に詰め込まれた、まさにゴミ箱状態になったグループである。
DNAなどによる分類手法が進歩すると、多くの生物の系統が正確に把握できるようになり、現生の生物に関してはほぼ解体されている。
代表例
- ベンド生物…ディッキンソニア、カルニオディスクスなど、エディアカラ紀に特有のよくわからない生物をとりあえず詰め込んだグループ。
- 原生生物…真核生物のうち、菌界にも植物界にも動物界にも属さない生物の寄せ集め。
- モネラ界…細菌、古細菌、のちに細菌に含まれることが確定した藍藻(シアノバクテリア)の寄せ集め。
- 初期のメガロサウルス属…19世紀までに知られていた肉食恐竜がとりあえずまとめられていた。
- コンプソグナトゥス科…大型テタヌラの幼体の寄せ集め。
- 無脊椎動物…脊椎動物以外の全ての動物の総称。 脊椎動物と同じ脊索動物に属する頭索動物(ナメクジウオ)と尾索動物(ホヤ)も含まれている。
- 食虫目…モグラやトガリネズミのような見た目の小型哺乳類の総称。なぜかヒヨケザルまで入っていたことがあった。現在の分類体系ではバラバラに解体されている。
文化
分類困難な概念や本来は全く別物の文化的現象などが混同されて雑に同じ名前でくくられるようになり、カオスになっているものがゴミ箱分類群呼ばわりされることがある。
- カレー…インド料理のサンバール、サグ、コルマ、ダールなど香辛料を使った煮込み料理をごっちゃにしたもの。キーマ、サブジなど煮込みではないものもしばしばカレーと呼ばれ、「インド料理にカレーは無い」とよく言われる。果てはタイ料理のゲーンやミャンマー料理のヒンなどもタイカレーとかミャンマーカレーなどと呼ばれたりするが、これらは一部を除きインド料理とは直接の関係はない料理である。
- カースト…ヒンドゥー教における身分制度である「ヴァルナ」と、インド社会の共同体の単位である「ジャーティ」をごっちゃにしたもの。ただし、植民地時代にインド社会にカーストの概念が逆導入され、ヴァルナとジャーティが密接に結びついた。こうしたインド社会の身分制度は専門的には「ヴァルナ・ジャーティ制」と言い換えられる。また、インド以外の身分制度などもしばしば「カースト」と呼ばれる。
- 日本語の副詞…通称「品詞のゴミ箱」。ほとんど「その他の品詞」と同義になっている。
ゴミ箱分類群ではないもの
門外漢にはカオスにしか見えないが、専門的にはきちんとした理由があってくくられているもの。
- 恐竜…首長竜や魚竜や翼竜、果ては単弓類といった恐竜ではない生物としばしば混同される。逆に一見すると恐竜ではないように見える鳥類は分岐分類学的には恐竜に含まれる。
- 鯨偶蹄目…牛や羊は、馬より鯨に近い。というよりは、むしろ鯨の方が偶蹄類から分かれた生物である。
- ペガサス野獣類…名称がカオス。
- 現代アート…素人目線ではしばしばわけのわからないものの代名詞になっているが、現代アートは作品(表現)そのものよりもコンセプトがキモである。明確なコンセプトさえあればゴミにしか見えないもの…というか、ゴミそのものでもアートになりえる。