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小説侍戦隊シンケンジャー

さんどめのしょうき

小説仮面ライダーシリーズの派生として講談社キャラクター文庫より出版されている、小説スーパー戦隊シリーズ第一作目。サブタイトルは三度目勝機-さんどめのしょうき-
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概要編集

著者は大和屋暁、協力は松井大

TVシリーズの番外編的な内容の小説(詳細は後述)。


講談社キャラクター文庫のレーベルから発売されている小説仮面ライダーシリーズから派生した、小説スーパー戦隊シリーズのトップバッターとなる作品。


小林靖子氏がメインライターを務める本編以上に、作風ははっきり言って非常にドロドロとしたドシリアスである。そして今回の敵は外道衆だけにあらず、暴徒と化した人間や第三勢力として海外の軍隊なども登場する。

本編では直接的には描かれていないような出血、殺人描写、暴力シーンも明確に描かれている他、人間のエゴや心理を皮肉った描写も非常に多く、内容ははっきり言って相当人を選ぶものとなっている。同じシリアスでもTVシリーズのシンケンジャーのそれとは完全にテイストが違うものであり、正直TVシリーズで慣れ親しんだシンケンジャーをイメージして読むとかなりびっくりする。


作中描写を見る限り、単純な被害規模や話のスケールはTVシリーズ終盤以上のレベルとなっており、シンケンジャー側での実質的な主人公となる丈瑠と源太の視点で主に話は進む。


また、シンケンジャーと日本政府との関係についても言及されており、シンケンジャーの活動が国家公認である事が明言されるなど、本編の一部設定を補完するような内容にもなっている。


詳細な時系列は不明だが、作中で2009年の夏の話である事が書かれており、加えて第二十幕に登場したウタカサネの名前やエピソードが出て来た事や、スーパーシンケンジャーインロウマルが登場しない事から、第二十幕からスーパーシンケンジャーが登場した第二十三幕までの間の話、おそらくは二十幕の直後の話だと思われる(ウタカサネの次の回がディケイドとリンクしている)。


本編との繋がり編集

上記した通り2009年の夏の話である事が明言され、作中でも本編の事件を匂わせるワードやアヤカシの名前なども出てきていて、それらを総合するとおそらく第二十~二十三幕の間の話だと思われるのだが、その一方で本編とは明らかに整合性が取れていない矛盾した描写も目立つ。


TVシリーズでは第二十~二十三幕の時期は、夏になった事で膨れ上がった自身の力を抑える為に動けなくなっていたドウコクが、問題なく活動できていた上に人間界に直接自身が攻め込む気まんまんでいたり、ドウコクから追われる身となって三途の川にも戻れなくなっていた十臓が、普通に三途の川で活動していた上に何故かドウコク達をシンケンジャーの攻撃から守ったり、TVシリーズと比較すると首を捻らざるを得ないような描写が要所で見られる。ちなみにウタカサネ討伐の鍵になった海老折神も登場せず、海老折神無しでどうやってウタカサネを倒せたのかは不明。


また、主人公である丈瑠の内心の思いや葛藤を掘り下げた心理描写は当然ながら多いのだが、何故かTVシリーズ終盤で明らかになった彼の正体に関する言及や、それに対する丈瑠の葛藤などの心理描写は一切ない。さらに丈瑠の心理描写に関しても「丈瑠には死ぬ間際の父の記憶しかない」など、明らかにTVシリーズとは矛盾した描写もある(TVシリーズの丈瑠には幼少期に父に紙飛行機で遊んでもらった記憶などもちゃんとあり、むしろその時の父との会話が丈瑠を支える大きなモチベーションの一つとなっていた)。


このように、TVシリーズと完全な地続きの作品としては疑問点も多く、その中盤に挟まれるストーリーとしてはあまりにもスケールや被害規模が大き過ぎる内容といい、実質的にはシンケンジャーを題材にしたオリジナル作品の趣が強い。公式でも本作の話が正史とは明言されていない。


その為、単体の作品として見る分にはそれなりの完成度なのだが、仮面ライダー(特に平成2期シリーズ)の小説や後継のハリケンジャーの小説のような、完全にTVシリーズと同じテイストの作風で地続きの作品を期待して読むと、正直前述した人を選ぶ内容といい肩透かしを食らう可能性がある。実際に本作のファンからの評価は賛否両論で決して高いとは言い難い。


ちなみに本の帯には「外道衆との最終決戦」などという紹介の見出しが書かれているのだが、これはぶっちゃけ完全なる広告詐欺なので注意(本作はTVシリーズの中盤の時間軸に位置する話なので、当然ながら最終決戦でもなければ外道衆との決着などつく筈もない)。


登場人物(今作オリジナルの人物のみ記載)編集

  • 蒲田康彦博士

エネルギー工学の権威。

出会った当時まだ構想段階にあった源太の電子モヂカラに興味を示し、以来彼とは電子モヂカラの研究を肴に熱き議論を交わしあう仲となる。

源太の電子モヂカラのシステム完成の手助けをした功労者であり、作中の事件においても彼の発明が意外な形で世界を救う事になる。

愛犬はジャックラッセルテリアの『シックスパック』。


  • 西村毅

精神科医。科学が介在しない外道衆の能力に科学的な観点から切り込んだというスーパー戦隊史上珍しいタイプの人物。

事件解決に大きく貢献した人物その2。


  • 湯郷美佳・岩淵正義

刑事。一般人視点での主役格に当たる。

ある事件を調べており、影の功労者と言える人物達。

最終決戦には暴走した市民をSATを引き連れ麻酔銃で眠らせるなど、クウガの一条さん並に活躍する。

おそらく作中の警察官ではまともな人達。


今回の敵にして敵側の主人公とも言える存在。当初はただのアヤカシかと思われていたが、今までのアヤカシとは明らかに行動やシンケンジャーへの対応も異なっており、アヤカシというより人間に近いと指摘される。

そして劇中中盤において人の道を外れた所業を行い、生きたまま三途の川に堕ちてアヤカシとなった存在=はぐれ外道である事が判明する。

人々の精神に働きかけるウィルスを使って世の中を混乱に導こうとした。

ごく最近の事件によって外道に堕ちた、言わば「新参者」にあたるが、生前から日本でも1、2を争う程の剣道の実力者であった為に、その実力はシンケンレッドの剣の腕をしのぐ。

戦闘では、シンケンジャーに戦うチャンスを3回与え、時間が経つと撤退する厄介なルールを敷いている。


  • 各国首脳陣

一番まともじゃない人達。

ウィルス感染が自分達の国に拡大しないようにと渡航禁止措置によって日本を隔離、さらに一部の国はウィルスの軍事利用を企み、アメリカに至っては日米安保条約を破棄して軍事制圧を目論んでいた。

オンドゥルルラギッタンディスカー!!

終盤では日本のシンケンジャーのスペックと自らの軍との実力差を危惧し、ウイルスよりもシンケンジャーを潰す事を目論んで、本当に核兵器を撃とうとしてきた(しかも本題であるウィルスそっちのけで、である)。まだウィルスに感染していない分タチが悪い。本当に自分達が置かれている状況が分かっているのだろうか。そしてやはりというか何の制裁も食らわずに終わる。

ちなみにシンケンジャーの存在は最初から把握していたにもかかわらず、彼等が保有する折神やロボといった肝心の戦力はアメリカ以外は全く把握していなかったり等、物語的にも突っ込みどころがかなり多い人達でもある。しかもシンケンジャーを潰す為に核を撃とうとしたのに、シンケンジャーがウイルスの浄化に成功すると手の平を返して攻撃を止めたりと、結局何がしたかったのかもよく分からない。

ぶっちゃけこういった海外との政治や軍事等のいざこざの話自体が、そもそもシンケンジャーの作風からはかなり浮いており、本作でも特に賛否が分かれた要素の一つである。


  • 暴走した市民達

謎のウィルスの影響で精神に異常をきたした人達。

人殺しをする者もいれば、略奪をする者、自殺をしようとする者、自分の殻に閉じこもろうとする者などその症状は千差万別。おかげで「精神に異常を来した」というだけで収監せざるを得ない状況に日本政府は追い込まれてしまった。

悲しいかな、中には騒ぎに便乗して略奪殺人をする一般人もいる始末である。

彼等にはある秘密が隠されていて…。


  • 逃げ出した動物達

動物園から何者かによって逃がされた動物達。

キリンハシビロコウなどが確認されており、キリンとハシビロコウは丈瑠に近寄ってしばらくするとどこかへ去っていった。作中では世の中がこんな状況なので、面倒を見切れなくなった動物の殺処分を避けて放すのはやむを得ないと肯定的に描写されていたが、マジレスするといくら世が世紀末状態とはいえ、流石に動物を逃すのは環境的な観点から見ても大問題である。


関連タグ編集

侍戦隊シンケンジャー 講談社キャラクター文庫

 哀しき悪役 人間のエゴ
























ネタバレ注意

ここから先は物語のネタバレが含まれます!!閲覧の際にはご注意ください!



その正体は剣術の達人として名を馳せた警視庁の刑事「九条修」。

2008年6月27日に起こった『堅木市倉庫大量殺人事件』の犯人で、木刀や日本刀で被害者たちに暴行を加えて殺害した。殺害した相手は暴力団関係者、家事手伝い、市議会議員、弁護士と職業もバラバラだったのだが、これには法則性が存在していて、かつて刑事時代に暴力団の抗争に巻き込まれ、逃走を試みたが、衝突事故で同乗していた娘二人を無くしてしまったという悲しい過去があり、上記の人物は全てその事件の関係者である(順に主犯、傍観者、事件を政治活動に利用しようとした人間、裁判で弁護を担当した者となる)。

そして逮捕から三日後に外道に堕ち、留置所から姿を消したというのがこれまでの経緯である。


しかしながら、湯郷の恩師であり正義感が強く模範的な警官であったらしく、その目的は「腐った人間をこの世から一掃する」事にある。なので真っ向からシンケンジャー達とやり合う気はさらさらなく、三回チャンスを与えるというのもでまかせであり、シンケンジャー達は直接三途の川に乗り込む決断を迫られた。


シンケンジャーとの決戦でも優れた剣術で優位に立ち回るが、シンケンレッドの捨て身の攻撃が腹部にクリーンヒットして兜五輪弾を受けて敗北する。だが、はぐれ外道であるにもかかわらず、二の目が発動。イカシンケンオーを相手に戦うも、攻撃の手応えが全く無かった。修羅の二の目の正体とは二の目そのものではなく言わば残留思念であり、コイツを成仏させなければ事件は解決しないという状況に追い込まれた。

丈瑠達に世直しをするという大義名分で、自分が味わった苦しみを人々に強いているという本質を突きつけられ、悪人の蔓延る世界でも最善を尽くそうとする者達がいる事、大切なのは失った人々の『思い』を忘れない事だと諭された事で、ようやく己の間違いを認めて消滅した。


この後、丈瑠達はイカシンケンオーで六門船の撃沈を試みたのだが、腑破十臓に裏正で「槍烏賊一閃」を受け止められて失敗(正直この描写はやり過ぎだとファンからは突っ込まれた)。時間制限により現世への帰還を余儀なくされた。


彼は決して非力な者などでは無かったが、一番大切な者を守れなかった為に、力を持つ事自体が無意味だと考えている珍しいタイプの敵キャラである。


  • ウィルス

修羅がばら撒いたウイルスのようなもの。正確には「呪い」といった方が正しいらしく、本作の鍵を握る要素。

その実態は人々の過去のトラウマや苦しい記憶(さらに深掘りするなら「恐怖」)に働きかけて概要にあるような効果を齎す。なので、苦しむ程の過去やトラウマが無いであろう8歳以下の子供には全くと言っていい程に症状は見られない。西村が丈瑠に与えた脳科学の知識と『思』のモヂカラの力によってタネが発覚した。

つまり、これをばら撒いてさえおけば心が荒廃した人間が、連鎖的に次々と勝手にこの世を滅ぼしてくれるという訳である。


  • 蒲田康彦博士

実はウイルスの感染者であり、外道衆に殺された妻に逢う為に、電子モヂカラで隙間の向こうに行く為の装置を開発していたが、彼のモヂカラでは隙間の向こうへの扉は開く事はできず、無論行けた所でシンケンジャー世界の三途の川とは、生者でも死者でもないアヤカシだけが棲む世界であり、死者の魂が渡る場所ではないので、最初から妻に逢う事などできる筈もなかった。

しかしながら、独自の観点からモヂカラを解析して自力で装置を開発できたあたり、かなりの天才なのは間違いない。

装置は電子モヂカラを基盤にしている為、源太を含む科学者達の協力によって通常のモヂカラを取り込んで増幅する装置を増設され、6人のモヂカラを集結させる事でようやく三途の川への隙間を開く事に成功した。

しかし、強引に隙間をこじ開けている状態の為、一定の時間が経過して装置が限界に達すると2度と現世に戻ってこれなくなるという欠点を抱えている。

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