概要
正式なタイトルは『侍戦隊シンケンジャー 銀幕版_天下分け目の戦』。
シンケンジャー初の映画作品であり、同時上映は『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』で、キャッチコピーはディケイドと並んで「最強決戦、夏の陣!」。
本作品以降スーパー戦隊シリーズの劇場版は、35mmフィルムからテレビシリーズと同様に「レッド・ワン」によるデジタル撮影に切り替わった。さらに戦隊では初の3D映画版も制作された。
本作の特徴としては従来の戦隊映画以上に、TVシリーズ本編と地続きである事が強調して描かれている事であり、TV本編で本作の件に関する言及がある他、後に本作で登場した恐竜折神やハイパーシンケンジャーや、クサレ外道衆の残党も登場する。映画で登場したロボや装備がTV本編で再登場する事はよくあるものの、映画で登場した敵勢力(その残党)までがTV本編で再登場する事は戦隊ではかなり珍しく、加えてTV本編の第三十一幕は事実上本作の後日談となっている。
TV本編で丸々一話を使って、映画の後日談の話が描かれる事も非常に珍しい。
時系列は、2009年の夏である事が冒頭で明言されている事に加えて、梅盛源太と腑破十臓が互いの正体を既に知っており、さらに第二十六幕で裏正を折られて一時退場する十臓が、まだ裏正と共に活動している事から、本編第二十四幕と二十五幕の間の話である事が分かる。
ただし、第二十三幕で歴代シンケンレッドを祀る墓を一同が参拝した場面で、映画で登場する烈堂の過去のシーンのワンカットが挿入されて先行登場する。これについては作中キャラではなく、映画の前振りのイメージ映像という、完全に視聴者へ向けたメタ的な演出となっている。
本作のボスキャラクターである脂目マンプクの声優には大和田伸也氏、初代シンケンレッドこと志葉烈堂役には合田雅吏氏がそれぞれキャスティングされ、日下部彦馬役の伊吹吾郎氏と並んで水戸黄門において、歴代の格さんを演じた俳優3名が勢揃いした事も話題を呼んだ。
ちなみに合田氏はかつて『超力戦隊オーレンジャー』でオーブルーを演じた経歴があり、二重の意味でシンケンジャーの大先輩である。この戦隊OBと現役戦隊の競演も見所の一つ。
上映時間は21分とテレビ本編1話分(約23分)よりも若干短く、21世紀の戦隊夏映画の中では最短。なので展開は非常にスピーディーで前半はナレーション込みのダイジェストで、本編では「夏になって増水した三途の川の水がマンプクの封印された場所に達して復活した」という設定も言及はなかった。非常にテンポが良い一方で撮影期間は逆に従来より長く掛ったそうである。
平成仮面ライダー10周年の追い風もあり、公開2日間で興行収入4億7,747万9,400円を記録し、10日発表の映画観客動員ランキングで初登場1位を獲得。公開2日間の興行成績は前年のゴーオンジャーの夏映画の約2.5倍という好スタートとなり、最終的には19億円を記録している。
あらすじ
2009年夏、夏の時期にドウコクの力が増幅された影響で三途の川が増水し、クサレ外道衆の頭目・脂目マンプクが封印された場所が偶然浸水した影響でマンプクは復活。そしてマンプク率いるクサレ外道衆が約1万の大軍勢で侵攻を開始する。迎え撃つシンケンジャーの6人だったが、次々と迫り来る大軍勢による三日間にも及ぶ圧倒的な物量戦を前にして劣勢に立たされてしまう。
軍勢が水切れで一時撤退した事で、なんとか休息と体制の立て直しの時間は得られたものの、メンバーはモヂカラも体力も消耗し、幾つかの折神も力を使い果たして使用不能になる程の窮地に追い込まれる。その為、この強敵を倒すには行方不明になっていた、300年前の初代志葉家当主にして初代シンケンレッド/志葉烈堂が、マンプクの封印に使用したとされる“初代秘伝ディスク”が必要だと判断される。
日下部彦馬と黒子達がその所在を突き止める事に成功するが、場所は何とクサレ外道衆が制圧して拠点にした幻竜神社だった。何とか敵の陣地に潜り込んだシンケンジャーは初代秘伝ディスクを手に入れたものの、ディスクに残っていたのは烈堂からの謎の伝言だけだった。
落胆する一行だったが、その時神社に忍び込んできた幼い姉弟の両親の無事を願うお参りを偶然聞いた事で、改めて覚悟を決めマンプクのいる本陣に直接切り込む事で反撃を開始する。
登場キャラクター
本作で登場したキャラクター
- 志葉烈堂/初代シンケンレッド…演:合田雅吏:志葉家初代当主。かつてモヂカラを発見して組織を興したシンケンジャーの始祖で、クサレ外道衆と戦いその頭目であるマンプクを封印した。そして封印に使用した初代秘伝ディスクを自身の伝言と共に後世に遺していた。
- 姉妹:初代秘伝ディスクが隠されていた幻竜神社にお参りに来た幼い姉弟。地元の子供であるらしく、シンケンジャーのある作戦によって酒で酔っぱらったクサレナナシ達の隙を付いて神社に侵入し、両親やみんなを守るようにとお願いをした。これを初代秘伝ディスクに残されていた伝言の意味が分からず、落胆していたシンケンジャー達は偶然神社の中から聞いた事で、マンプクとの決戦に挑む覚悟を決めた。最終的にマンプクを倒したキョウリュウシンケンオーを影から見届け、シンケンオーに合わせて一緒に勝利の三本締めを行った。
TV本編からのキャラクター
- 志葉丈瑠/シンケンレッド…演:松坂桃李
- 池波流ノ介/シンケンブルー…演:相葉弘樹
- 白石茉子/シンケンピンク…演:高梨臨
- 谷千明/シンケングリーン…演:鈴木勝吾
- 花織ことは/シンケンイエロー…演:森田涼花
- 梅盛源太/シンケンゴールド…演:相馬圭祐
漫画版
当時『テレまんがヒーローズ』にて本作のコミカライズ版が収録された。作者は一式まさと。
後に、単行本の『スーパーヒーローズ』に収録されており、本誌のテレまんがヒーローズの時は前半で切られていたのだが、単行本では後半の流れも全て書き下ろされた。
大まかな流れや結末は劇場版順守なのだが、細かい部分が多少変更されており、最大の変更点は終盤の決戦の際に十臓が介入してこないので、源太=シンケンゴールドが十臓の足止めの為に戦う必要性が無くなり、本作ではシンケンゴールドが先陣を切って突入し、兜、舵木、虎折神を使って奇襲をしかけるという展開になっている点である。その為に、これらの折神の活躍や見せ場は増えている一方で、十臓を初めとした外道衆サイドの描写は一切なく彼等の動向は不明である。
他にも、劇場版ではあくまで初代秘伝ディスクに記録された伝言だった烈堂が、本作ではモヂカラと共に残留思念も宿っているかのような演出がされており、マンプクとの最終決戦では現代のシンケンレッドである丈瑠と同化して共に戦っているかのように描かれるなど、かなり熱い展開になっている。
余談
前述した通り第三十一幕ではクサレ外道衆の残党のアゼミドロが登場。映画に登場した恐竜折神も再登場するなど、事実上本作の後日談のエピソードになっている。後に登場する筋殻アクマロもこの戦いの事を把握していたらしく、彼はこの戦いを「夏の陣」と称していた。
そのアクマロ、アゼミドロ共に最期は恐竜折神で倒されたのだが、アゼミドロはキョウリュウマル天地一閃とダイカイオーミナミの海老刀大名おろしの連撃、アクマロはキョウリュウサムライハオーの十二折神・大侍斬りと、いずれもマンプクの時を遥かに超える戦力と必殺技で倒されている。
加えると時系列上は、本作の時点でスーパーシンケンジャーやダイカイシンケンオーは既に完成済みだったのだが、冒頭の三日間の消耗戦で海老折神と烏賊折神が大ダメージを受けてモヂカラも使い果たし使用不能になった事で、必然的にこれらも使えなくなってしまった為に劇中では未登場である。同時にゴールドもロボが使えなくなったので最終決戦では巨大戦には参加していない。
その為、逆にクサレナナシ連中による物量戦ではなく、最初から万全の状態のシンケンジャーがマンプク自身と相対できていた場合は、普通にこれらの戦力で倒せていた可能性も高い。そういった意味では、マンプクの大軍勢で消耗させるという作戦自体は極めて適格だったと言える。
また劇中で、十臓がマンプクに挑もうとする丈瑠に、横槍を入れる形で無理矢理にでも決戦をしようとやけに焦っていたのも、第二十四幕で再度の果し合いの約束を丈瑠としたにもかかわらず、丈瑠が先にマンプクにやられる事を懸念したからだと思われ、その事を予想していた丈瑠は十臓が介入してきた場合の足止め要員として予め源太を配置していた。このようにTV本編との繋がりも要所に見られる。
ちなみに後日談という性質上、第三十一幕は完全に本作を見ている事が前提の話となっているので注意。本作を見ていないと分からない設定や用語もいくつか登場する。
前作の映画に出演した方菊池美香は以前の戦隊シリーズ、特捜戦隊デカレンジャーに出演し、本作ではオーレンジャーに出演した合田雅史が出演した。本編映画に以前の戦隊シリーズに出演した方は現在、本作と前作、タイムスリップ!恐竜パニック!! ゲース・インダベーの逆襲のみである。
関連タグ
オールライダー対大ショッカー:同時上映された『仮面ライダーディケイド』の劇場版。
スーパー戦隊単独映画
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