「ようこそお越しくださいました!」
(水泳ゴーグルを外す)
「申し訳ございません。このような格好で」
演:黒田勇樹
概要
「ディエンドの世界」の住人にして、仮面ライダーグレイブの変身者である男性。
他のディエンドの世界のライダー達と同様に、彼も映画『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』を原典とするリ・イマジネーションライダーである。
・・・のだが、元となった志村純一とは演者を同じくしつつも、一方ではその演者である黒田の怪えn・・・もとい熱演により、後述する数々の癖の強い名(迷)言や挙動を生み出しており、それ故に原典の志村の存在感を半ば喰うような格好ともなった。視聴者の中には、純一が『ディケイド』初出のオリジナルキャラクターであると信じ、リ・イマジネーションキャラクターであることを知らないという者までいたほどである。
同時に、そのインパクトある名言や一挙手一投足は、後述の通り視聴者の間で思わぬ人気を呼び込むことにも繋がり、放送からかなりの時間が経過した今なお根強い支持を得ているキャラクターの一人として数えられている。
人物
純一は、ディエンドの世界を支配する「エリア管理委員会」の次官にして、この世界を統べる謎の存在・フォーティーンの側近という、枢要な立場にある人物である。
原典における志村の人となりを意識してか、初対面である士達に対しても物腰柔らかかつ爽やかな姿勢で接する好人物・・・なのだが、一方で常に笑顔――それも貼り付いたかのような不自然なそれを絶やさずにいるところは、見る者にそこはかとない違和感を覚えさせる要因の一つともなっている。
しかしそれ以上に重要なのが、本作の2号ライダーである仮面ライダーディエンドこと海東大樹の実の兄という点に尽きる。弟である大樹との関係性は、この世界を通りすがった門矢士達が巻き込まれた一連の騒動、ひいては大樹がライダーになるきっかけにも、少なからぬ影響を与えているのである。
過去と弟との因縁
前述した肩書や立場は、元々純一が手にしていたものという訳ではない。
かつての純一は、ディエンドの世界に真の平和を取り戻すべく、三輪春香や禍木慎といった他の仮面ライダー達と共に、フォーティーンによる支配体制へのレジスタンス活動に日々明け暮れていた。原典である『MISSING ACE』と同様に、本作でもやはり純一は3人のライダーのリーダー格を務めており、仲間である春香や慎からも強い信頼や尊敬を集める、頼もしき存在であった。
そんな、現在とは真逆の立場にあった純一に変化をもたらす原因を作ったのが、他ならぬ海東大樹その人である。大樹にとっても、やはり純一は尊敬すべき兄であったようだが、一方では「社会の秩序」を守るという情熱に燃えていたことから、現在の純一と同様にフォーティーンに側近として仕える立場にあった。
純一はそんな弟に対し、真っ向からぶつかり合うことこそなかったものの、フォーティーンによる「作り物の平和」を維持することが本当に良いことなのかと問いかけるなど、その行動や姿勢に疑問を投げかけているが、一方で自身がライダーであることまでは伏せていたらしく、このことが後に悲劇を招くこととなってしまう。
それから程なくして、大樹の指揮によってライダー達が奇襲を受ける中、仲間を逃がすべく一人踏みとどまったグレイブはローチ達の猛攻により変身解除に追い込まれ、そのまま囚われの身となるのだが・・・大樹はここで初めて、兄が社会の秩序を乱す仮面ライダーの一人であり、知らず知らずのうちに兄と敵対関係にあったという衝撃の事実に直面することとなる。
しかし衝撃はこれだけに留まらず、大樹が考案したという「教育プログラム」や犯罪者更生のための「特別施設」が存在せず、彼が守ろうとしていた「社会の秩序」が全てフォーティーンによる洗脳の産物でしかなかったことを、純一に対しての洗脳処置を見せつけられるという形で突きつけられてしまう。
この事実を前に、自らの理想を打ち砕かれる格好となった大樹がディエンドの世界を去っていったのと入れ替わりに、洗脳処置によって豹変した純一は大樹に代わる新たなフォーティーンの右腕の座に収まり、かつての仲間達とも敵対するに至ったのである。原典とは異なり、(脳改造されている以外は)普通の人間である純一だが、一方ではグレイブの姿で手をかざすことにより軽い爆破を起こしてみせたりと、単に洗脳されただけとも思えない超常的な能力を行使することもある。
以上の経緯ゆえに、大樹は現在のディエンドの世界においては「全世界指名手配」「超危険人物」として扱われ、また一方で春香や慎といったライダー達からも、純一が敵方に回る原因を作った張本人として憎悪の念を向けられるなど、四面楚歌も同然な状況に置かれている。
作中での動向
ディエンドの世界へと戻ってきた大樹の情報を得るべく、その「友人」である士達をとある施設へと招いたのが物語上での初出であり、前述した異常なまでの警戒ぶりを疑問に思う士達に対し、大樹がこの社会を壊そうとした反逆者であるからと説明している。
その後は小野寺ユウスケに対し、自身が受けたのと同じ脳改造処置を受けさせ、また逃走を余儀なくされていた、春香や慎といったかつての「仲間達」にローチ達を差し向ける一方、自らは単身大樹と接触。
かつての経緯を振り返りつつ、今の立場に至るきっかけとなった大樹に感謝の言葉を投げかけ、ライダーとなった弟の実力を試さんとグレイブに変身してみせるが、純一の本当の狙いは同行していた光夏海の確保にあったようで、後から現れたローチ達に士や大樹が苦戦する間に首尾よく彼女の身柄を抑えると、早々にその場を後にしたのであった。
やがて、士から大樹と夏海の身柄交換がフォーティーンの元に持ちかけられるや、純一はそれを罠だと看破するものの、フォーティーンの意向で取引は実行に移されることとなり、純一もその場へと同行。案の定、取引に託けてフォーティーンとの対決に臨もうとした彼等を前に、決着をつけるべくグレイブに変身して応戦するが、乱戦の末にフォーティーンはディケイドの手により敗北。
これにより、純一も洗脳状態から解放され、元通りに戻った…かに思われた。
純一の「真意」
フォーティーンの呪縛が解け、純一も元の兄に戻った。そう信じていた大樹たちだったがしかし、駆け寄るかつての仲間達を待ち受けていたのは、純一からの容赦ない一撃であった。
「馬鹿め、俺は自分の意志で動いていた。昔から、お前と同じだったんだ。自分の意志でフォーティーンの元で働いていた」
上記の台詞にもあるように、純一は当初からフォーティーンの陣営に属する人間であった。
レジスタンスの側に身を置いていたのも、仮面ライダーに味方する者――即ち反乱分子をおびき寄せるための「エサ」を演じるためでしかなく、春香や慎、それに大樹はずっと純一の掌の上で踊らされていたと言ってもいい状況にあったのである。
そしてフォーティーンが斃れた今、純一は自らが第二のフォーティーンとしてこの世界を支配するという秘めたる野望を明かし、それを止めようと必死で向かっていった大樹とも再び刃を交えるのだが…。激しい攻防にケリをつけようと繰り出された互いの一撃は、いずれも相手に決まることはなかった。
「後悔するぞ、俺を倒さなかったことを」
こうして決着の付かぬまま、変身を解除し立ち去ろうとする純一であったが、そんな彼に対し士は、純一がフォーティーンにはなれないと断じつつ、
「海東大樹は今、自分を信じ、自分の意思で動いている!
そんな弟をお前は倒せなかった。
それは…お前が人間の中の自由な意思を認めているからだ!」
と、いつもの調子で喝破してみせるのであった。その士の言葉に、純一は明確な答えを返すことも、そして大樹と分かり合う素振りを見せることもなく、独り静かにその場を後にした。
その後の純一の行方、そしてフォーティーンという主を失ったディエンドの世界がどうなったか、作中では終ぞ語られることはなかった。
ファンからの反応
初登場の際、前述した純一の張り付いたような笑顔と、それとはミスマッチとも言える好青年然とした台詞が、お茶の間の視聴者に軽いトラウマを植えつけ、一方で某所では独特なキャラクター性が人気を呼びお祭り騒ぎとなった。
後にこのような顔文字(^U^)も作られた。例の張り付いた笑顔を端的に表した秀逸なモノであり、真ん中のUは演者の黒田の特徴的な大きい鼻を再現している。
第23話にて、例の張り付いた笑顔の直後に変身して無言で生身の大樹に腹パン(3.0t)を見舞ったことから、ファンの間では海東純一=無言の腹パンという方式が成り立っており、MADやイラストではちょくちょくネタにされている。
「試してあげよう、お前の力を(^U^)」という純一のセリフに対して、腹パンされた大樹が返した「僕の力は兄さんと戦うためにあるんじゃない…兄さんを救うためだ!!」というセリフが上記のセリフに続いていく。
そして・・・
2015年12月より、ニコニコ動画にて本作の公式配信がスタートした際、純一の登場する第22・23話の前後編も翌年5月上旬に配信が実施されているが、案の定配信後は彼のシーンにコメントが集中しており、放送から5年以上が経過したこの時点でもなお根強い人気があることがうかがえる。
一方で5月8日に配信された第23話では、人質交換を話し合うシーンにて、まさかの音声バグが発生。結果、翌週の5月16日に当該箇所を修正の上で改めて配信されるという珍事も起きている。
これ以外のライダー作品の公式配信、またそれ以外のライダー関連の動画でも、「兄さん」の単語が動画内で出るたびに例の顔文字やセリフの段幕が出てくる。
Webサイト『仮面ライダー図鑑』では、名台詞がキャラ紹介で掲載されている。
ニーサン語録
- 「ようこそおいでくださいました!申し訳ございません。このような格好で」
- 記事冒頭にも示した台詞であるが、これは初登場の際にプールから上がるとともに、士達に対して発したもの。このような格好とは海パン一丁のことを指す。
- 「ではあなた様方は、海東大樹と様々な世界を旅していらっしゃったということですね?」
- 「コソ泥、ですか…。アイツらしい。」
- 「アイツはこの社会を壊そうとしたんです。いわば…反逆です」
- 海東の罪状は何かと問われた際の答え。ここで満面の笑みがドアップが映る。
- 「申し遅れました。私はエリア管理委員会次官、海東純一と申します」
- ここも先の「テカイ」と同様に、次官の部分が「チカン」に聞こえるとネタにされることもあるが、ここでは「じかん」とハッキリ言っているため、若干無理矢理感がある。
- 「会いたかったよ、大樹(^U^)」
- 「本当にそうかな?」
- 回想シーンにて、「仮面ライダーは世界の秩序を乱す存在だ」という大樹に対しての言。
- 「私はお前に感謝しているんだ。私はお前のおかげで真っ当な人間になれた。」
- ファンの間では「MADな人間」だとネタにされているが、実際その通りなのだから困る。
- 「聞くところによるとお前も仮面ライダーの力を手に入れたらしいね。試してあげよう、お前の力を。変身」
- このシーンでは、例の張り付いた笑顔で微動だにせず変身しており、不気味さを増す形となっている。
- 「いい台詞だ、感動的だな。だが無意味だ」
- 「ケリを着けてあげましょう大樹。変身」