「恵まれない子供達に愛の手を! ありがとうございます!」
演:黒田勇樹
変身する仮面ライダー
概要
『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』の登場人物の一人で、仮面ライダーグレイブに変身する青年。
年齢は22歳、三輪夏美曰く射手座のO型。橘朔也の助手として、バトルファイトに潜む謎の研究に従事している。
古代語の研究自体は大学にいた頃から取り組んでいたようで、作中でもこれを用いてアンデッドと会話に及んだこともある。
「好青年」を絵に描いたような性格の持ち主でもあり、作中でも通りがかりに街頭の募金活動に進んで参加し、去り際には財布をまるごと渡してみせたりと、占い師からも「滅多にいない良い人」とまで評されるほどである。
正義感も強く、再び解放されたアンデッドとの戦いに際しては「新世代ライダー」のリーダー格として、臆することなく果敢に戦う姿も見せる。
その一方で、剣崎一真ら「旧世代」のライダー達に対しては、禍木や夏美ほどではないにせよ快くは思っておらず、所詮は過去の人などと冷淡な態度を取ったこともある。
後に発表されたディレクターズカット版ではこの点についてフォローされており、実際に剣崎達の戦う姿を目の当たりにして素直にその力量を認め、非礼を詫びると共に改めて共闘を申し出ている。
このように、「人類の平和を守る」仮面ライダーとしては申し分ない逸材とも言える志村であるが・・・一方で前述した古代語を操れる点を睦月から怪しまれたこともあったり(※)と、その行動の端々にはどこか不穏な影がちらついていたのもまた事実である。
そして物語も佳境に入り、禍木と夏美が相次いで何者かの手にかかって落命した後、志村に隠されていた衝撃の事実もまた明らかとなる……。
(※ この時は橘が前歴について説明し、睦月も一応納得したことでそれ以上の追及を逃れる格好となった)
正体
※ 以下の記述には、物語に関わる重大なネタバレが含まれています。十分にご注意の上閲覧下さい。
「すでに4枚の「K」は俺の手の中にある!」
相次ぐ新世代ライダーの死、そして時同じくして発生した4枚のカテゴリーKのカードの消失により、遺された剣崎達の間ではにわかに疑心暗鬼が生じることとなる。
やがて、アルビローチの大群が再び栗原天音を襲わんと出現し、彼女を逃がそうとした橘までもが不審な動きを見せる中、一人はぐれる格好となった天音に襲いかかろうとしたのは――他ならぬ志村その人であった。
志村の正体は、「ジョーカーを含む53体のアンデッド全てが封印された異常事態」において覚醒する54番目のアンデッド「アルビノジョーカー」であった。
本作の物語が始まる4年前、全てのアンデッドが封印された中で人知れず活動を始めていたアルビノジョーカーは、バトルファイトの勝者に与えられるとされる偉大なる力「巨大邪神フォーティーン」を手中に収めるべく暗躍を開始。カードを完全に封印しようとしていた烏丸所長を殺害に及び、アンデッドを再度解放してバトルファイトを再開させる一方、自らは志村純一と名乗って橘に接近し、新たなライダーシステムを作らせその変身者となることで、改めて全てのアンデッドを封印しバトルファイトの勝者になろうとしていた。
つまるところ志村=アルビノジョーカーこそが、本作における一連の騒動を引き起こした張本人、という訳である。
前述した好青年ぶりも、あくまで橘達の信頼を得るための演技に過ぎず、その本性は自らと対をなすジョーカーに輪をかけて残虐非道、かつ狡猾な策士と言って差し支えない。
剣崎達に対する冷淡な態度も、彼等の介入を警戒してのことであり、人間性に問題があった禍木と夏美の二人を自身の表向きの仲間として選んだのも、旧式のライダーシステムの所有者である剣崎達と協力関係を結べない状況へ持ち込み易かったからではないか、と指摘する意見もある。
志村が自らの正体を現す前に、ジョーカーとしての正体に気付いていたのはギラファアンデッドのみであり、カテゴリーKである彼をも恐れさせたということ実からも、その尋常ならざる危険性が窺い知れよう。
自らの正体を秘匿し、置かれた状況をも巧みに利用することで目的達成に向けての道筋を付けていった志村は、解放されていた2体のカテゴリーKが封印されたのを機に、より本格的な動きに打って出ることとなる。
手始めに用済みとなった禍木と夏美を殺害し、二人から4枚のカテゴリーKのカードを強奪すると、さらにフォーティーンの封印を解く上で重要な存在である天音(※2)までも我がものとすべく、アルビローチを出現させて混乱状態を引き起こし、そのどさくさに紛れる形で天音へと迫った…のだが、ここまで首尾よく行っていたはずの志村の策略は、土壇場で剣崎達の介入を受ける形で破綻を迎え、自らの正体までも露見することとなってしまう。
そのきっかけとなったのは、先に志村が手にかけた2人が残したダイイングメッセージであった。彼等はそれぞれクラブのカテゴリーJとスペードのカテゴリー4のカードを手にしたまま事切れていたが、その様子を知らされた広瀬栞はこのカードが「真犯人のイニシャルを表している(※3)」との推測を立て、それを伝えられた剣崎達もまた真犯人が志村であるとの結論に達したのであった。
剣崎達に正体を知られたことで、その本性を完全に露わにした志村は、アルビローチを差し向けるとともに自らもグレイブに変身、
剣崎の変身するブレイドとの直接対決に臨むが、スペックの上ではブレイドを凌駕しながらも、ジャックフォームに変身したブレイドの反撃の前に敗北を喫する結果となった。
事ここに至り、志村は損壊し用済みとなったグレイブのシステムを捨て去り、アルビノジョーカーとしての姿を剣崎達の前に現す。それは即ち、仮の姿であった志村純一がこの世から消滅した瞬間でもあった…。
以降の作中での動向についてはアルビノジョーカーの記事を参照。
(※2 元々、フォーティーン復活の要である超古代のレリーフの封印を解いたのは、天音の父である栗原晋なのだが、晋自身はレリーフの封印が解かれた直後に落命していたため、アルビノジョーカーはその血縁者である天音を彼の身代わりとして付け狙っていた)
(※3 スペードのカテゴリー4は「4=し」、クラブのカテゴリーJはそのまま「J」を意味しており、両方を合わせることで「志村純一(Shimura Junichi)」を指し示す)
備考
前述した「財布ごと募金箱に入れる」という、度が過ぎるまでの善人ぶりを示す描写について、演者の黒田勇樹は「必要以上に人間の振りをしていたのでは?」と考察するコメントを残している。
劇場公開当時は明かされていなかったが、ディレクターズカット版では橘が志村純一が実在している人物であることに言及する場面もある。
アルビノジョーカーがモデルにしたであろう、この志村純一本人がどのような顛末を辿ったかまでは、ディレクターズカット版や設定上でも特に触れられていないが、後にTVシリーズの第48話に「友情出演」という扱いで黒田勇樹が演じる警察官が登場した際、ファンの間では放送直後を中心に「この警察官こそが本物の志村純一ではないか」「アルビノジョーカーはこの警察官の姿を写し取ったのではないか?」と推測する声も根強く残されている。
一方で、TVシリーズはこの後劇場版とは異なる結末を迎えていることから、少なくともTVシリーズの世界線においてはアルビノジョーカーの出現もなくなり本物の志村も無関係の存在となった、とする意見も見られる。
後年制作された『仮面ライダーディケイド』では、グレイブもリ・イマジネーションライダーの一人として登場しており、同作では「ディエンドの世界」の住人にして、仮面ライダーディエンドこと海東大樹の兄・海東純一が変身者とされている。
演者こそ同じとはいえ、本作に登場する志村とは明確に別人扱いであるこの海東純一だが、一方では作中におけるインパクト大な描写の数々ゆえに、結果として元になった志村純一を喰うほどの強烈な印象を残す格好となった(詳細は当該記事も参照)。
関連タグ
劇場版仮面ライダーボスキャラクター