概要
「SG(Steam Generator)」と略されることが多い。
旅客列車の多くが客車(現在で言う旧型客車)だった昭和時代、客車の暖房は蒸気暖房が主流で、その蒸気は牽引する蒸気機関車から供給していた。
蒸気機関車は文字通り、運用するだけで蒸気を発生させることから、この構造は非常に合理的と言えた。
しかし、近代化により発展した電気機関車は蒸気を発生させる構造ではないため、蒸気暖房の客車と組み合わせると暖房が作動できない問題が発生。
蒸気機関車や、暖房車と呼ばれるボイラーだけの事業用車を増結して対応したが、編成が重くなる、組み換えの手間が増えるなど運用上の非効率が目立った。
そこで、電気機関車にも蒸気暖房用の熱源を搭載することになった。
これが蒸気発生装置である。
最初に搭載されたのは1937年に誕生したEF56で、東海道本線の優等列車のサービス向上に貢献した。
戦後になるとEF58をはじめ、旅客列車向けの機関車に相次いで搭載された。
更にディーゼル機関車にも搭載されるようになった。
蒸気発生装置が搭載された機関車は、車内スペース確保のため長めの箱型車体を持つものが多い。
電気機関車は全てこれに当てはまるが、ディーゼル機関車は元々熱源であるエンジンと燃料タンクを持っているため構造が簡素化され、凸型車体のDD51やDE10にも搭載された。
燃料は電気機関車が重油、ディーゼル機関車が軽油(エンジンの燃料と共用)であった。
1960年代以降になると、今度は客車の進化により電気暖房が主流となったため、機関車への蒸気発生装置の搭載はED76を最後に中止された。
同時に既存の蒸気発生装置も不要になり、一部車両では後に撤去または電気暖房用の機器へ交換された。
これが分かりやすく見た目に表れたのがED72の18~20号機で、床下の燃料タンクや水タンクごと撤去したために床下スペースがスカスカになり、重厚感を欠いた特異なスタイルとなった。
その後は電車や気動車が主流になり、客車列車自体が衰退したことで、蒸気発生装置を搭載した機関車は早々に廃車され、殆どは国鉄からJRへの移行を見ずに生涯を終えた。
蒸気発生装置を搭載した機関車
電気機関車
ディーゼル機関車
余談
- 蒸気発生装置を搭載した機関車は、天井に蒸気排出用の排気管が付いていた。ここから水蒸気をモワモワと噴き上げて走る光景は、客車列車全盛を象徴する光景として鉄道ファンに好まれた。また、機関車の連結部や客車の床下から蒸気が若干漏れているのがお約束であった。
- 機関車の内側から意図的に湿気を発生させるため、機械構造的に良いものとは言えなかった。実際、EF61では排気管周りが湿気で錆びてしまい、屋根が抜け落ちるという特異な故障が起こっていた。漏電やショートによる火災の危険性もあったが、幸いにもそのような事例は確認されていない。
関連動画
蒸気発生装置を作動したEF58。