現実のボクシングにおいては、ストレートが顔面にヒットすると、打たれた相手は腰から崩れ落ちる。
しかし『リングにかけろ』においては、空中で一回転半して頭部をマットに強打し、血飛沫を上げる。グシャア! という頭蓋骨が陥没したとしか思えない音がするのに、それでも「まだ終わっちゃいねえぜ」などと嘯きながら立ち上がり、迫ってくる。
怪獣とおんなじじゃねーか!
柳田理科雄『空想非科学大全』(メディアファクトリー)より抜粋
概要
漫画家・車田正美氏が原作のバトル漫画(主に聖闘士星矢、リングにかけろ等)でよく見られる手法。端的に言うと、“明らかに即死しそうなヤバい落ち方”をする落下の表現である。
アニメ最新作「聖闘士星矢Ω」でも、頻度は低いがお約束の如く披露された。しかも女性キャラでも容赦無く顔面から落ちており、レギュラーではアクィラのユナが既に数回喰らい、敵とはいえソニアも壁面めり込みを食らっている。
車田作品ではないが、似たような殴り合いガチバトルの多いプリキュアシリーズでもやたら見かける。(なお「聖闘士星矢Ω」はプリキュアのスタッフが多数参加しているという)
また、スーパー戦隊シリーズや平成仮面ライダーでも各シリーズの終盤になり戦闘がハードさを増すと発生することがある(こちらの脚本家陣も幾人か星矢シリーズを担当した者がいる)。
東映系、ジャンプ系以外の作品では同じく鎧を纏うバトルものである戦姫絶唱シンフォギアでも多発する。
プロセス
1.飛翔
廬山昇龍覇やジェットアッパーの様な上向きのアッパーカット系の攻撃や、鳳翼天翔の様な強烈なエネルギーをぶつけて吹き飛ばす攻撃等での発生率が高い。これらの技を受けた相手は、大概の場合に図のように顎が完全に上を向いた状態で上空に“高々と”吹き飛ばされていく(俗に言う『車田飛び』である)
2.落下
これだけでもバトル漫画では珍しい描写であるが、車田作品ではこのまま受け身の態勢など一切無く落下していき、頭頂部からほぼ垂直に(もしくは大の字で)地面にぶち当たるという、普通の人間ならそれだけで即死確実であろうインパクトのある落ち方を見せてくれる。この際の擬音は「ドシャア!!」とか「ズシャア!!」等があるが妙に生々しい。
一応、頭を進行方向に向けるのが人間の体で最も空気抵抗が少ない体勢であり、星矢の設定通り音速の数倍で格闘を行えば頭から落ちるという描写は理にかなっていると言える。
……落下の衝撃で五体が四散しなければの話だが。
3.落下後
さらに石畳、階段などをその勢いで体や顔面でゴリゴリと削って行く。
天井や壁面にめり込んで落ちることもある。
しかしレギュラーキャラの場合、それでも死なずそのまま立ち上がって戦闘を継続し、大抵の場合は逆転勝利を収めるというパターンが多い。どれだけ頑丈なのか。
4.後遺症
但し「リングにかけろ」の続編「リングにかけろ2」ではこのような戦いを繰り返しまくっていた旧作レギュラーキャラ達は後遺症により6人中1人を残して全員30代前半までに死亡(2人は10代後半で)している。
それでも即死はしていないので十分といえばそうなのだが。今のところ聖闘士星矢やプリキュアで致命的な障害を負ったキャラはいないが、今後出そうで怖い。
一応プリキュアやシンフォギアは変身中は防御力が常人よりも上がっており、聖闘士も「要は小宇宙です」でなんとかなる人はなるとも言える。
ゴブスレさんについてはポーションで回復できる世界なので即死しなければ大丈夫かもしれない、多分。
余談
ちなみに聖闘士星矢のペガサス星矢は、相手を背後から掴んで錐揉み回転しながら上昇して、自分もろとも相手ごと車田落ちをするペガサスローリングクラッシュという技を持っており、原作において蜥蜴座のミスティや白鯨星座のモーゼスを打ち破り、ハーデス編では復活したデスマスクに深手を負わせたが、エリシオンでタナトスには脱出されて自分だけが車田落ちをしてしまった。劇場版第二作目ではロキに止めを刺した。