概要
第83話より登場。地獄巡商事北千住事務所開発部に勤務するシステムエンジニア。髪と目の色はいずれも緑で、後ろで髪を留めている。
エルマの続けていた労働環境改善運動を受けて社長から提示された、小林さんの主任への昇進と社の人員増強を賭けたプロジェクトにて、提案者である彼女ら2人、そして滝谷と共に挑むことになる。この時点ではまだ実力を発揮していなかったが、第105話で登場した時は、エルマ不在の中で、小林さんが称賛するほどの仕事ぶりを見せていた。
物静かな女性であり、滅多に感情を表さない。プロジェクトでの仕様変更の報せを受けて他のメンバーが愕然とした表情や絶叫をする中でも、一人口に手を当てるだけに留めていた。このため職場では地味な印象らしいが、小林さんは地味さでライバル視しており、それを聞かされたある人物は呆れていた。
誰に対しても敬語を使う。
単行本9巻で追加されたオマケの1コマによると、エルマの少し後、中途採用で入社したという。この制度の存在は第55話で小林さんの口から応募者がいないと明かされる形で触れられており、実際に入社したのは同話以降と考えられる。
真の人物像
これより先、原作第12巻以降のネタバレを含むため、閲覧には注意されたし。
実は彼女の正体は調和勢のドラゴン「シャナブレ」。テルネがエルマの監視のために送り込んだスパイである。
しかしエルマは彼女がドラゴンだとは知らなかったばかりか、調和勢の集まりでも姿を見なかったと答えており、勢力内での所属や立ち位置については謎に包まれている。
エルマとは対照的にプログラミングの勉強を積み重ねた上で地獄巡商事へ入社してスパイとしてテルネに情報を送り続け、エルマの政略結婚が決定した際は監視任務の終了に伴う帰還及びエルマの分の仕事の処理を主から命じられていた。しかしながら彼女はこれまで朧塚に移り住んだドラゴンたちと同じく人間との生活を楽しむようになっておりこの一件で主に幻滅(後の第133話では「めちゃくちゃすぎて裏切りたくなりました」と振り返っている)、アーザードと接触して、結婚式の行われる水宮殿の見取り図など調和勢に関する情報を提供し、小林さん達を間接的に支援していた。最終決戦では調和勢に対する人質兼協力者としてアーザード、ファフニールらと共に行く末を見届けたが、アーザードから掛けられた今後の身の安全を危惧する声には特に気にした様子は見せていなかった。
実際、第133話にて主が職場にやって来た際に犯行を自供したものの、許されるという結末を迎えた。
明かされた出自と目的
正体判明後も引き続き地獄巡商事に勤務しており、本人は謙遜していたものの、上司になった小林さんからは「縁の下の力持ちとして頼っているよ」と評されるまでに成長していた。しかし第124話において小林さんとの帰宅途中、彼女の正体と目的を探らんと使命に燃えるトールに出くわすことになる。その場は社交辞令の体で切り抜けられたものの、その後も毎晩、帰宅途中に追及され続けた結果、とうとう正体について口を開いた。
彼女は妖精とドラゴンの間の生まれであり、前者から人間の世話をしたいという本能を受け継いでいたのか、仕事が忙しい程(悪い言い方をすれば職場がブラックであるほど)人間の役に立てるため、居心地の良さを感じるようになる気質の持ち主だった。彼女はその留まり続ける目的を「人間様のお手伝い」と明かしていたが、トールが去った後で滝谷に明かしたところによると、彼やファフニールと同様コミュニティの維持が目的とのことである。
主からは組織内の潜入は得意だと評されており、実際、小林さんと同じ職場になったエルマを嗅覚で気付けたトールが感知できなかった辺り、この能力の高さが窺える。後になって直に対面したトールも「魔力は魔法使いに毛が生えた程度」、「ドラゴン特有の強みの要素も特に見受けられない」と分析しており、本当にドラゴンなのか疑ったほどだった。この性質がスパイとして活動する上で役立ったのは想像がつくが、これがドラゴンとしての能力に由来するものか、それともスパイとしての能力に由来するものなのかは現時点では不明である。更に共に行動していた時間が長く見積もっても2週間程しかなかったにもかかわらず、「ドヴェルグだったあの人」というようにファフニールの正体と本心に気付いたりと、観察眼も優れている要素が見られる他、トールからの殺気を受けたり、テルネから叱責を受けた際も平然としていられるというように意外と豪胆な性格であることを示唆する描写もある。
上記の通り第124話において一応出自がや目的明かされたものの、スパイとしての任務ゆえか中々素性を明かそうとせず、本人は態度を崩さずにいて実力が判然としないというように謎が残される結末となった。
ドラゴン姿
正体判明以降は度々額の右側に一本角を生やした姿で登場している他、第124話では妖精の羽を思わせる鰭らしき器官と一本角を生やした頭部がデフォルメ化されて描かれている。
またテルネからの命令を受けた過去の場面では髪を留めていない上、エルマやテルネと同じく、調和勢としての本来の服装の存在が示唆されている。
スピンオフ
「スマホの時間」にて登場。1コマだけの登場であるが、エルマと同様の夏服になっていた。
第72話にて登場。不在時での仕事の代理の件で返礼をしたかったエルマと共に川越に旅行に行った。彼女からの提案で食べ歩きをする事になるが、途中で金が尽きて中断を持ちかけられるも、本人が満足していないと見抜き付き合うと宣言、更に金が無いと明かされると礼に対する礼として以降は自分が支払うとも宣言し、エルマを感激させた。その後氷川神社にて改めて不在時の仕事を引き受けてくれた件について感謝を受けると、帰り際には川越の土産物とお礼のチョコレートを渡し、その対応ぶりに再びエルマを感激させた。
この回では本編でも描かれていた観察眼や人に尽くすことを望む性格に加え、川越に着いた時点でスーツであったためエルマから着替えるよう提案される、食事についても殆ど取る必要がないため、芋ソフトを食べた感想が「味がします」になりエルマが頭を抱える、氷川神社での占いでエルマが仕事運を高めようとする光景を見て「ワーカーホリックですね...」と評するというように、エルマの発言や描写を介して彼女の人物像が掘り下げられた。
なお、第72話と同じ『月刊アクション』2023年8月号に掲載された本編第133話では辰沢とエルマの関係性についてテルネが思い巡らして、小林さんとトールから一蹴されるという一幕があり、本編とスピンオフで実際の関係性の答え合わせが行われることになった。結果は上記の通りだが。
余談
- 第124話でトールに差し出した名刺によれば、人間としての名前は「辰沢シャナ」である模様。同話で明かされた出自を踏まえると、元ネタはスペインのアストゥリアス地方に伝わる妖精シャナと竜クエレブレであり、本名も偽名も「妖精と竜の間に生まれた娘」という出自を表現したものになっている。
- 第133話にてテルネは裏切りの一件を許した理由を妖精からの嫌がらせを受けかねないからと答えていたが、調和勢内での結びの儀の制度の存在を踏まえるならば、両親の結婚自体が妖精との同盟を組むためのものだった可能性がある。
- また、名刺を差し出した際の彼女の発言から小林さん達の地獄巡商事での配属部署が判明した。
- これまでに登場した異世界出身者は「本来の名前や姿がまず明かされて、この世界で生きていく上での偽名が登場する」という事例が続いていたが、彼女は「人間としての姿や偽名が最初に登場し、その後正体が明かされる」という大変珍しい展開になっている。加えて本人のドラゴン姿に先駆けて両親の姿が判明したというのも珍しい。
- 正体は第106話での小林さん宅の夕食の席にてテルネの口から小林さんに明かされ、小林さん(やエルマやトール)もその時に初めて彼女の正体を知ることになったが、同じく守護者を任されていたアーザードは彼女の正体を以前から把握していたようである(職場の上司であり、初対面以前からエルマの正体も知っていた真ヶ土専務も把握していなかったとは考え辛く、アーザードに守護者を任せたのも地獄巡商事のしがらみに関係ない者が必要だったからなのかもしれない。)
- なお、滝谷は第124話で彼女と帰宅途中に出くわしたトールの口から正体を知らされた。
- 人物像については第9巻のオマケのコマで、テルネに監視を命じられてからアーザードに手を貸すまでの経緯とその後については第12巻の「あとがき」で描かれるというように第124話以前は単行本で明かされた情報の方が多かった。本名もこの「あとがき」で判明した他、第106話ではエルマがいなくなった穴を彼女が埋めると小林さんには説明していたのに対し、実際には彼女もテルネから帰還命令を出されていた事が明かされた。本編では第133話で改めて本人とテルネの口から明かされた。
- シャナブレの名で呼んでいるのは第141話時点ではテルネだけであり、周囲からは正体判明後も「辰沢」の名前で呼ばれている。
- 基本的に表情を変える事が殆んどない彼女であるが、エルマの名を口にしたときは顔を緩めたり、呼びかける際には頬を赤らめたかのような描写が見られる。彼女に対する感情が尊敬や仲間としてのものなのか、それともまた別の感情かどうかは現時点では不明。
- とはいえ、第124話では早合点したトールの頓珍漢な発言に対して滝谷共々呆れ顔を浮かべる、その滝谷をからかった際には得意気な笑みを浮かべて悦に浸るというように上の場面に限らず、物語が進むにつれて感情を表す場面が本編でも増えてきており、時系列としては正体判明後となるスピンオフでも様々な表情を浮かべている。
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