概要
舞台となる生物災害の発生地を徘徊する「動く人間の腐乱死体」めいた存在で、捕食などの原始的な本能に基づいて人間を襲い肉を食らう。
その姿はまさしく、B級ホラー映画の「甦った死体」そのものだが、実態は「ウィルスで知能が低下し、理性を喪失してなんでも食べる様になった」だけで、生物学上は「生きた人間」である。
全身も腐っている様に見えるが鬱血や新陳代謝の異常な増進で、皮膚が生きたまま新しい皮膚が生成され、結果として表面組織が腐っているだけであり、筋肉や筋など重要な部分は機能を残している。
バイオハザードシリーズを象徴する看板雑魚クリーチャーだが、条件を満たせばウイルスの高い変異性によってより強力な存在に変異することもある。
また、後発の作品ではゾンビとは発生経緯も性質も異なるクリーチャーがゾンビの枠に配置される作品も増えており、必ずしも定番の敵というわけではなくなってきている。
種類
T-ウイルスのゾンビ
アンブレラ社が開発した生物兵器、T-ウイルスに感染した人間の成れの果て。偶発的に感染し発生した者、実験などで人為的に発生した者とがある。
バイオハザードでゾンビと言えばまずこのウイルス罹患者たちを指す。
能力
人としての理性はなく飢餓感のみで行動し、感染前に関わりがあった場所を徘徊しながら獲物を探し、他の人間の肉を食らう飢えた獣のような存在と化している。
視覚や聴覚は一応機能しているようでドアの開閉音、発砲音や視認で対象を感知する描写もあったが、上述の通り脳の機能が低下しているためか、そうした刺激に反応しない個体もある。このため後発の作品で導入されたフラッシュグレネードなどは効果があるとされる。
動きは緩慢で、目立った特殊能力などは持たないが掴みかかり、まとわりついて対象を拘束し、噛みつきを行うのが主な攻撃手段。胃液は食べたものを消化するために分泌量も増大しており、強力な酸性を帯びたそれを吐きだすことで攻撃にも転用する。ゲーム上は相手との間に段差があると使用する。
痛覚も失っているため、手足の欠損や心臓を始めとした内蔵損傷でも意に介さず活動可能。ただし脳をはじめとする神経系はだけは別で、ここに決定的な損傷を受ければ即座に活動を止める。
新陳代謝の異常な増進による関係で、栄養を摂取できない個体は体組織の劣化が進行するようで、振りほどかれるだけで腕がもげる個体や、頭を蹴り飛ばされる個体なども散見された。それとは対照的に養分の摂取に成功した個体は強靭化するようで、『1』の時点でもショットガン数発を耐える強個体もおり、『2』では十分なカロリー補給に成功すればリッカーに変異するという設定も生まれた。
- 基本的には生きた人間を優先的に狙うが、他に適当な獲物が居ない場合は死体を捕食し、一時的な休眠状態となることでエネルギーの消耗を抑制する個体も居る(死んだふり)。
- 体内にT-ウイルスを保菌しているため、唾液や血液などゾンビの体液にを体内に入れてしまえば感染は免れず、抗体かワクチンを持たない者は同様にゾンビと化してしまう。かすり傷でも致命傷なのである。
発生した経緯
本作品に登場する企業「アンブレラ社」は、表向きは単なる製薬会社だが、その実態は生物兵器を開発する死の商人だった。
彼らは非道な人体実験を繰り返した末に軍用ウイルス「T-ウイルス」を完成させるも、1998年、アメリカ中西部の「アークレイ研究所」で漏洩事故が発生。感染した職員全てがゾンビ化し、近隣の小都市・ラクーンシティの住民を襲ったことで(当初は猟奇殺人事件と認知)、ラクーン市警特殊部隊の介入を受けてしまう。
これを皮切りに、世界中のアンブレラ関連の施設でのウイルス漏洩事故が暴かれ、人々はバイオハザードの恐怖を知ることになる。
ゾンビ化の過程
T-ウイルスには、感染した生物の遺伝子情報を変化させ、肉体を強靭に作り替える作用がある。
- 最初に起こるのは新陳代謝の異常促進で、筋力が増大、神経伝達等も回復し不随の四肢が動く様になったりもするが、副作用として新陳代謝機能が亢進し新しい皮膚が無制限に生成される様になる(結果全身にかゆみが発生)
- そのため身体から急速に養分が失われ、対応するために内臓の働きが変化。胃液の酸性が増し、食物を効率よく消化、吸収できるようになる。(食欲が増大)
- 逆に他の消化器官や生命維持器官等は不要器官となり機能が停止。心臓に銃弾を受けても致命傷にならず、窒息死さえなくなる。(血流が止まって皮膚がうっ血、徐々に壊死するも、新しい皮膚は生成され続けるため、生成されたばかりの皮膚以外は腐り落ちる)
- 同時に大脳が壊死し、知能が低下。理性ではなく本能に従って行動するようになる。(不定期に意識が混濁)
- そして末期には全身の皮膚が壊死し、理性と意識を完全に失い、ゾンビと化すのである。
ウイルスに感染してからゾンビ化までは個人差があり、早くて即日、遅くても2週間。また遺伝子とウイルスの相性によって一割ほどの者は発症をまぬがれることがあり、1000万人に1人程の確率で完全適合、発症自体はするものの身体能力の向上や再生能力の会得などのメリットだけを最大限に享受し、細胞分裂の暴走や知性の減退、突然変異等を一切起こさないという凄まじい状態になることがある。
その他
- 同じゾンビに対する仲間意識は皆無で、ただ「興味がないから襲わない」だけにしか過ぎない。
- 捕食ができずエネルギー供給が途絶えれば、新しい組織の生成が出来なくなることで本当の意味で身体が腐り落ち始め、自立できなくなり(這って移動するゾンビ)、こうなれば変異はおろか行動のためのエネルギーも無いためそのまま死体となる。
- こうして動けなくなった個体は獲物と見做されるようになるらしく、他のゾンビに襲われて捕食される末路が待ち受けている。
- このT-ウイルスは動物や虫、植物など、人間以外にも伝染性を持ち、同様の「ゾンビ化」を発症させる。
- 洋館事件の現場となったアークレイ山脈のアンブレラの研究所では生物兵器開発の模索の過程で犬(作中で登場した犬種はドーベルマン)や蜘蛛、ヒルなどに人為的に投与・感染させたものもあるほか、ラクーンシティ全域を壊滅せしめた汚染は、アンブレラの地下研究所から市の下水道に漏洩したウイルスにネズミが感染し、そこからネズミの繁殖性・活動力の高さとウイルスの感染力の強さが相俟って、街全体にパンデミックが広がっていったというものである。
- このラクーン事件のパンデミックでは、(生物として元の状態から別物レベルになるまでの「変異」ないし「巨大化」に至っていない、「ゾンビ」の範囲に収まる感染者だけでも)ライオン、ゾウ、ハイエナ、犬、蛇、カラス、サイチョウ、アブ、ラフレシア、ヒル、ワニ(下水道にいた個体ではなく動物園にいた個体)など、多岐にいたる非人間生物の偶発的な感染・ゾンビ化が確認されている。
- なお、このゾンビは本来T-ウイルスの作用によって生み出された、副産物(犠牲者)に過ぎない存在であったが、その驚異的な生命力からラクーンシティに潜入したアンブレラの監視員の観察対象の一つとされており、生物兵器としての利用可能性(死者が蘇るという嫌悪感を利用しての相手の士気の低下、かく乱を用途として、捕虜に少量のウィルスを投与して逃がし、敵陣でゾンビ化させるなど)がある旨の報告がされている。
- また、ウィルスの適合率や消耗度にもよるが、四肢の欠損などの重大なダメージを負った場合、そこに過剰に再生能力が働き、肥大化や攻撃力の増強等異常な状態で再生されることもある。
C-ウィルスのゾンビ
カーラ・ラダメスが開発した新型の生物兵器で、これを空気感染で摂取するとゾンビになる。
このウイルスによって生み出されるゾンビは上記のT-ウイルスのものとは異なり、「身体能力が強化され、知能もある程度残される」という大きな違いがある。
このため、生前以上の俊敏な動きで獲物を追い詰め、扱いは乱雑ながらもそこらの道具を拾って武器にする程度の知能(銃を撃って来る者まで居る)も保持される。
また、人間を襲うにもひたすら掴み掛かって噛み付くという単調な攻撃しかしないT-ウイルスのゾンビとは異なり、「小手先の攻撃で動きを封じる」「相手の攻撃に反応して回避行動を取る」などの効率的な戦闘行動を行う者も居り、人間を明確に「獲物」と見做して狩ろうとする意志の下に行動しており、その戦闘力・危険度は段違いである。
訓練すれば傭兵として的確に敵を殺傷する死を恐れぬ不屈の兵団と化す。
Tウイルス以上の凄まじい変異性を有しており、直接投与で変異するジュアヴォ同様生命の危機に陥った際に急速に別種のクリーチャーへと変異・復活することがあり、腕が捥げるなど重篤なダメージを受けると再生能力が暴走して異常変異することもあるのは相変わらず。
また、空気感染による発症であるためか噛みつきや引っ掻きによって感染することは無く、死亡すると死体が発火・蒸発・消滅して残らないという点でも大きく異なっている。
A-ウイルスのゾンビ
武器商人のグレン・アリアスが開発したウイルス。
ロス・イルミナドス教団の残党と協力して完成させた商品であり、ベースの一つとなった寄生生物のプラーガと酷似した遺伝子構造を持っており、俊敏な動きとある程度の知能を併せ持っているだけでなく、別の感染個体を仲間と認識し、連携して行動をする。
有り体に言えば、「プラーガを上回るウイルスの感染力(感染個体の量産能力)」と「ゾンビを上回る戦闘力を持つガナード」の組み合わせという、両者の良いとこ取りである。
また、ガナードや従来のゾンビには無かった点として、非感染者も含めた敵と味方の明確な区別が可能であることを最大の特徴としている。
ただし、単純な知能や制御性ではガナードに及ばない点も多いようで、言葉を操ることは出来ず、基本的には非感染者に見境なく襲い掛かる点は従来のゾンビと大差はない。
そのまま感染しただけでは発症せず無害で、発症させるにはメインであるA-ウイルスを活性化させる同系統の別ウイルスをトリガーとしており、これに同時に感染して初めて発症するという、独特の分割式発症メカニズムが採用されている。
これによって発症タイミングを調整することが可能となっているが、その仕組みは完全なものではなかったようで、一部地域ではトリガー無しで発症する不具合が発生した。
また、アリアスが事前に用意していたものとレベッカが後に独力で完成させたものの2種類のワクチンが登場しており、発症の防止と感染者の治療が可能なのはどちらも共通しているが、アリアスのワクチンのみ投与者を制御下にない感染個体の攻撃対象から外すという追加効果も有しており、これが敵味方識別の根幹を為すものとなっている。
特に大きな違いとして、このアリアス製のワクチンガスを吸入させることによってなんと、ゾンビ化していても元の人間に戻ることが出来る。このおかげでA-ウイルスによるバイオハザードが発生したニューヨークは多くの犠牲を出しつつもラクーンやトールオークスのような爆撃を受けることなく事態を収束することが出来た。
派生種
Tウイルス系統
実験体ゾンビ
『バイオハザード』に登場。後半研究所内を徘徊しているゾンビで、着衣はなく皮膚が一部欠損している。行動もほぼ変化なし。
ゾンビ改
『バイオハザード2』に登場。ウイルスの実験段階で人為的に生み出されたゾンビで、筋肉組織が剥き出しとなった奇怪な容姿が特徴。通常のものよりも攻撃力が高く、このゾンビがリッカーに変異したものが「リッカー改」になるとされている。
『バイオハザードRE:2』本編中には登場しないが、コンセプトアートにてこのゾンビ改らしき没クリーチャーが用意されていたことが分かる。
リッカー
十分な栄養の確保に成功したゾンビが変異を続けた姿。筋肉組織が剥き出しとなったような姿に鋭い爪と牙に長い舌を備え、視力が退化した代わりに聴力が発達している。運動能力はゾンビとは比較にならず、優れた走力と跳躍力を有し、壁や天井に張り付いたまま難なく移動する。性質も極めて獰猛で、時にゾンビすら捕食対象にする。自然発生したという出自ながら、その高い戦闘力を見込んでB.O.W.に転用された。様々な亜種が後の作品にも登場している。
イビー(RE:2)
原作『2』のイビーとは異なり、ほぼ一般的なゾンビのようなシルエット。
T-ウイルスで変異した植物「プラント43」に取り込まれた人間が変異した姿であり、耐久力が高いという点は共通しているが特性は大きく異なる。
グリーンゾンビ
「アウトブレイク ファイル2」に登場。T-ウイルスに汚染された植物と同化したゾンビで、頭部から花を咲かせている。攻撃を受けると花粉を噴き出し、それに当たると毒状態となる。
クリムゾン・ヘッド
リメイク版『バイオハザード』に登場した変異種。
詳細はリンク先参照。
ペイルヘッド
「バイオハザードRE:2」のエクストラコンテンツに登場する変異種。
詳細はリンク先参照。
Cウイルス系統(ゾンビ変異体)
ブラッドショット
『バイオハザード6』に登場。
赤く染まった部分を持つゾンビを倒すと、その場で変異することがあるクリーチャー。全身の筋肉組織が剥き出しとなった姿は「リッカー」を彷彿とさせ、通常のゾンビの上位種に位置づけられる。弱点は心臓に位置する部分にあるコア。ゾンビよりも更に機敏な動きと強力な攻撃、高い耐久力を備えるが、タイミングはシビアながら、カウンターで容易く倒すことも可能。
シュリーカー
首が膨れ上がって長い袋のように発達した異形のゾンビ。直接戦闘能力は低いが、袋に溜め込んだ空気を一気に放出して特殊な絶叫を響かせて獲物の動きを封じつつ、周囲のゾンビを一気に活性化させるという厄介な性質を有する。しかし、空気を溜め込んでいる袋を破壊されると、周囲のゾンビを即死させる絶叫を放ちつつ死亡するため、群れを一網打尽にすることが可能。
ウーパー
異常なまでに肥満化・巨大化した異形のゾンビ。肥満患者の如くブクブクに太った肉厚なボディには攻撃が通用しにくく、耐久力も高い。身体が大きいのでゾンビお得意の噛み付き攻撃よりも、パワーと質量に任せた肉弾攻撃で暴れ回り、進路を塞ぐ障害物として登場することもある。強敵だが重い身体故に脚への攻撃に弱く、両脚を破壊されるとしばらく動けなくなり、大きな隙を晒すようになる。より巨大化・強化された「ウーパー・シュリーム」という上位種も居る。
その他
ゾンビではないが、他のウイルスや寄生生物によって生み出された雑魚敵の中には、ゾンビに相当するものとして大量に出現する個体が数多く存在する。