GMK
ごじらもすらきんぐぎどら
概要
前後の作品と話のつながりはなく、独立した世界観を持つ初期ミレニアムシリーズの三作目。
第1作『ゴジラ』の初代ゴジラのみが存在し、それからずっと別の怪獣は現れていないという設定。約半世紀ぶりにゴジラが上陸し、日本を恐怖のどん底に突き落とす。
今作のゴジラは悪役としての面が強調され、白目をむいた異形のデザインに加え、約220cmの大きな着ぐるみで迫力を出している。
ゴジラに敵対する護国三聖獣はモスラ、キングギドラ、バラゴンというメンバーで、それぞれの出典作品とは独立した設定を持つ。特に歴代のシリーズで悪役側を演じてきたキングギドラが正義側に回っているのが異彩を放っている。
監督は『平成ガメラ』三部作の金子修介が務め、これによりゴジラとガメラを両方撮った唯一の映画監督となった。その為作風も平成ガメラ三部作に近く、人が死ぬ瞬間のシーンが多く描かれている。モブキャラで平成ガメラに登場した俳優も大勢参加している(こういうのって制作会社的に良いのか?)他、VSシリーズの川北監督等もモブキャラでゲスト出演している。
本作は、観客動員数240万人、興行収入約27億1000万円と、新世紀シリーズでは1番の大ヒットを記録した作品である。そのため、前作までの観客の減少により検討されていた休止宣言は撤回された。
あらすじ
原子力潜水艦がグアム島沖で消息を絶つ。救助に向かった防衛隊が見たものは、ゴジラを思わせる青白い背びれだった。
時を同じくして、バラゴンとモスラがそれぞれ目覚める。BSデジタルQの取材班は、その現象が『護国聖獣伝記』と一致することを突き止めた。伝記を著した伊佐山教授は語る。ゴジラは太平洋戦争で死んだ怨念の集合体である事、ゴジラを止めるため三体の護国聖獣が目覚めている事を――。
登場怪獣
ゴジラ(呉爾羅)
全高 - 60メートル
体重 - 3万トン
武器 - 放射能熱線 / 引力放射能熱線
伊佐山教授いわく「太平洋戦争の怨念の集合体」。
憎悪に狂ったように暴れ周り、人間も怪獣も容赦なく意図的に殺戮する。その目的地は……。
結末も含め、歴代シリーズのゴジラでも特に異質な存在。
護国聖獣
すべて古代朝廷によって討伐・封印され(祀り上げられ)、「くに」を守る守護神として地蔵などに力や魂を封印されていた。後の世では霊獣のモデルになった。敵の到達地点を予知して、真っ直ぐにそこに向かえる。これら護国聖獣はあくまで土地としての"くに"を守る存在であるため、"くに"に仇なす存在ならば悪人の死はいとわない。ただし、善良な動物や人間などは手の届く範囲内なら救おうとする(e.g.不良の犠牲になりかけた犬を救ったり、溺死しかけた人間や、人間の作戦の為に?ゴジラを海中に押し沈める、ゴジラの体内から人間を生還させる?)。
なお、肉体を得てはいるものの、実態的には憑代に降りた霊魂に近い存在であるために(この点では平成ガメラに近いものがある)、血は流すが、強力な攻撃を受けるなどして肉体が限界に達した際には、死体は残らずに粒子化する。事実、三獣は全員、戦闘続行の意思があるにも関わらず肉体が爆散してしまっていた。また、粒子の状態でも行動が可能で、仲間のサポートや合体攻撃など、スタンド化が可能である。
バラゴン(婆羅護吽)
身長 - 30メートル
全幅 - 24.5メートル
体重 - 1万トン
護国聖獣の一体で、地の神。大陸からの敵に対する防衛として、新潟県の妙高山に眠っていた。地震を発生させながら長距離を高速で地中を掘り進み、落とし穴を作って敵を攪乱したり、暴れるゴジラに喰らいつくなど、サイズが問題なだけで格闘戦のポテンシャルは高レベル。ただし熱線と角の発光機能は失った。体躯が二倍、体重が三倍という相手にも臆することなく立ち向かう勇猛さを持つ。鳴き声は昭和とは全く異なるものになっており、あくまで恐竜とされた昭和と違い、哺乳類らしさを強調された、昨今ではめずらしい怪獣。威嚇する時に耳が開く。体重は昭和の40倍にもなった。
ギドラが覚醒する前にゴジラに挑むが、地熱に通じ耐熱能力が高いという設定が何にも活かされないままかませ犬になって死亡(成仏?)。ゴジラには何度かぶっとばされた。ただし、その死が他の聖獣たちを呼び覚ます引き金になったとも推測されることもある。登場が決定していたメンバーでは一番早く当番されていたものの、タイトルからも除外された。
- 地熱に強くても、歴代最強クラスと言われ、小型の水爆クラスで地震も引き起こすレベルの今回の放射熱線の威力の前には、正直意味をなさない。
- 当初は、熱線または角からの特殊攻撃や、放熱攻撃で仲間とのコンビネーションをするなど、地熱に通じるという設定が活かされる予定だったが、ゴジラの凶悪性を表現させるために「あくまでもかませ」となった。
- 生前?に名前で呼ばれることは一度もなかったが、「かわいい」と目撃者に言われたり、リンチされる姿を見たカメラマンが「もう俺撮るの辛いっすよ。」と呻くなど若干マスコット化した(女性の観客にもかわいいと評判だった)。なお、「もう俺~」に対して、「バーロー、怪獣に対して同情してどうする!」と一括したレポーターも、自分では「頑張れ、赤い怪獣!」と応援していた。なお、この後すぐにこの報道陣はゴジラに吹っ飛ばされたバラゴンに当たってご臨終した。
モスラ(最珠羅)
成虫翼長 - 75メートル
成虫胴幅 - 5メートル
幼虫全長 - 30メートル
幼虫全幅 - 5メートル
幼虫全高 - 6メートル
幼虫体重 - 1万トン
繭全長 - 33メートル
護国聖獣の一体で、海の神。鹿児島県の池田湖に眠っていた。イッシーではない。
幼虫から繭になり、成虫へと変身。ギドラとともにゴジラに挑む。繭を生成する際に固形物に頼らない唯一の個体でもあり、水上にて孵化する。繭の大きさも判明している。鱗粉を武器とせず、変わりに毒針をショットガンのごとく発射する。羽ばたける速度からして、胸筋は歴代最強とおおわれる。
- 歴代でも最も攻撃的で狂暴然な見た目であり(意図的に人を殺すことはあるが、最も狂暴ではない)、体毛も最も少なく、蝶や蛾の類よりもスズメバチを思わせる。毒針もその名残である。なお、絵コンテの段階では口から毒酸を吐いた。後に受け継がれることとなる、毛のなくグロテスクな脚も今回が発祥であり、スピード感のある飛行シーンを見せたこともイメージを一新させ、後の作品群にも引き継がれていく。幼虫の姿が全身が見えていない、というか全身が作られていなく、半身のみの使い回しという意味でも唯一。
- 鳳凰のモデルになったとされているし、古文書の姿でも鳳凰然とした成虫の姿が描かれているが、なぜ「海」の神になったのかは不明。古代朝廷は、幼虫の姿で復活させるようにプログラミングしたのだろうか・・・。
- 今作ではインファント島とは関係がなく、小美人も出ない(小美人をイメージした姉妹(平成ガメラからのゲスト)は登場する)。従来のシリーズではゴジラに負けなしのモスラだったが、今回はゴジラが強すぎた。(このモスラ敗北に関して金子監督は、「息子が『モスラ憎たらしいから殺して。』とお願いしてた。」と語っている。)
ギドラ(魏怒羅)
身長 - 50メートル
体重 - 2万5千トン
他の二体より復活が遅く、ゴジラと戦った時点でも完全には目覚めていない。
ゴジラよりも大きなイメージが強いギドラが、ゴジラよりサイズが小さいのはシリーズで唯一。
- 本栖湖の龍神伝説と合致するが、モッシーでもない。
キャスト
立花由里 - 新山千春
武田光秋 - 小林正寛
門倉春樹 - 佐野史郎
江森久美 - 南果歩
三雲中将 - 大和田伸也
日野垣真人 - 村井国夫
広瀬裕 - 渡辺裕之
丸尾淳 - 仁科貴
小早川時彦 - 葛山信吾
防衛軍大佐・崎田 - 中原丈雄
伊佐山嘉利 - 天本英世
立花泰三 - 宇崎竜童
備考
- 当初、監督の金子は対戦相手としてカマキラスを考えていたが、同級生に話したところ「カマキラス? 何それ?」と言われてしまい考え直したという。
- なお、それ以前の最初期での構想では、ある父娘の父が宇宙飛行士が変化した怪獣となってゴジラと戦う予定だった。
- その後、最初に護国三聖獣の構想が固まった際には、アンギラス、バラン、そしてバラゴンの3体で企画が進んでいたが、東宝の偉い人に「そんな地味な面子じゃ客が集まらない」と言われ、知名度を重視して本編の三体になった。企画のまま実現していたら下のイラストのようになったと思われる。
(どうしてこうならなかった・・・。)
- 年々低下する興行成績の対策として、平成では初めて他の映画との同時上映がなされたのだが、その作品が劇場用アニメ『とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』で腰が砕けた者は多い。巨匠・出崎統が監督を務めており決して出来は悪くないのだが、『ハム太郎』を目当てにやってきたちびっ子たちは、白目をむいて暴れまくるゴジラの姿に泣きじゃくり、彼らのトラウマになったことは想像に難くない。
- 劇中、「アメリカにもゴジラと酷似した巨大生物が出現し、『ゴジラ』と名付けられたが、日本の学者は同類とは認めていない」という台詞が出てくる。これは98年版『GODZILLA』を指していると思われ、このことから98年版『GODZILLA』と世界観を共有しているのではないかとする説がある。