概要
古代王朝の時代から日本各地でその存在が伝来されており、狛犬、鳳凰、八岐大蛇の伝説の元となった陸海空を司る三匹の怪獣、婆羅護吽、最珠羅、魏怒羅の事。
彼らは退治された後にその霊魂を慰めるために神として祀られ、新潟県の妙高山、鹿児島県の池田湖、富士樹海の氷穴にそれぞれ封印され「護国聖獣」と呼ばれるようになった。これが後に同胞を殺した敵を神と崇め祀る日本独特の風習になったらしい。もはや神獣か霊獣か土地神のような存在であり、彼らの復活は口寄せや召喚に近い。
聖獣達が封印された三つの場所は「聖地」と呼ばれ、それぞれ地蔵のような石像が立っており、これが壊される、もしくは倒されるといった危害が加わると聖獣たちが復活するが、石像が封印の鍵となっていたのかどうかは不明である。この石像(やその破片)には倭人たちの魂が宿っており、「くに(国家を意味する国ではなく、山や川といった大自然を含んだ国土のこと)」をゴジラの脅威から救うために霊魂を解放し、聖獣に憑依させることで対抗したと推測されている。
聖獣達が守っているのはあくまで「くに」であるため、それらを荒らすものは例え人間だろうと容赦なく襲い掛かる。そのため妙高山の石像を壊した暴走族はトンネルごと生き埋めにされ、池田湖の石像で犬を湖に沈めようとした不良大学生たちは湖に引きずり込まれて殺されている(犬は無事に保護された)が、富士樹海の石像を踏み台にした自殺願望者は、魏怒羅が目覚めていなかったことと悪人ではなかっために殺されなかった(もっとも、本人からすれば殺された方が本望だったのかもしれないが)。
謎の老人の伊佐山嘉利はこれらの伝説を独自に調べ上げ、「護国聖獣伝記」という書物にまとめると同時に怨霊の集合体であるゴジラを倒すには聖獣達の力を借りるしかないと語っている。
そして何より、これらの聖獣達を自力で封印した古代王朝は、もしかしたらゴジラ以上の脅威かもしれない。推測でしかないが聖獣を討伐し、その魂を封印し続ける地蔵を作ったり古代の倭人の魂を石に封じ込めたりなどこの世界の古代王朝には特殊な力や技術があったと思われる。また婆羅護吽は大陸からの侵略者に対する防衛として妙高山に封印していたので、未来で大陸から侵略者が来ることも想定していた可能性もある。
そして、上記の通り、怨霊の塊であるゴジラに対抗するために祖霊を聖獣たちに憑依させたと思われ、裏で糸を引いた伊佐山嘉利自身もこの世の者ではない可能性が作中の終盤で示唆された。
一覧
婆羅護吽
陸を司る地の神で、狛犬のモデルとなった聖獣。新潟県の妙高山に封印されていた。
最珠羅
水を司る海の神で、鳳凰のモデルとなった聖獣。鹿児島県の池田湖に封印されていた。
当初は幼虫の状態で復活したが、繭を作ることで成虫となった。
魏怒羅
空を司る天の神で、八岐大蛇のモデルとなった聖獣。富士樹海の氷穴に封印されていた。
本来の休眠から覚めてしまい、未熟な状態で出撃したが、婆羅護吽と最珠羅のエネルギーを受けることで千年竜王キングギドラとなる。
余談
- 初期設定ではモスラとキングギドラの代わりにアンギラスとバランが登場する予定だったが、「ネームバリューに欠け地味だったから」という理由で変更された。バラゴンの熱とアンギラスの冷気で気流を発生させてバランが飛行する、主人公達を救って散るバラン、湖から出現してキャンプを襲うバラン、など、バランの役割がモスラに変更された感がある。
- アンギラスはゴジラの最初のライバル怪獣でありながら、2023年現在作品タイトルに登場したことはない。(もっとも、バラゴンも本作のタイトルには登場していないが)
- 監督を務めた金子修介はそれ以前の構想段階でカマキラスを出すつもりだったそうだが、飲み会で友人に話したところ「カマキラス? 何それ」と言われ、起用を断念したとのこと。
- それ以前の最初期での構想ではある父娘の父が宇宙飛行士が変化した怪獣となってゴジラと戦う予定だった。
- あくまで余談だが魏怒羅以外は復活した際にそれぞれ死者を出しており、伊佐山教授に聖獣覚醒のために生贄にされた可能性もある。自殺しようとした男は魏怒羅はまだ眠っていて無事だったとされているが、後に伊佐山教授が自ら魏怒羅の元にやってきていたので、魏怒羅が覚醒した際には伊佐山(霊魂)自らその魂を生贄にしたと思われる。
- 心なしか、聖獣達は霊体でできているためか、防御力は普通だが「HP」が少ない感がある(どの聖獣も、戦闘を継続可能と取れるような描写があるが熱線で爆散したため)。本来の予定では、ゾンビの様に全身がボロボロになりながらも戦い続けるバラゴンが見れたらしい。
- また、同じ技を何度も使用しようとして逆にゴジラに返り討ちにされてしまうなど、今作のゴジラが意地汚く狡猾なのと相まってどこか単純で機械的な印象も感じられる。
- 『怪獣黙示録』にてバラゴン・バラン・アンギラスはセットでゴジラと対峙していた。更に、2019年に福島県須賀川市にて開館した「円谷英二ミュージアム」においても、狙ったかのようにこの三体のフィギュアが一纏めに展示されている。