「私の目に狂いは無かった。世界を救うためには、やはりあなたの力が必要なんだ」
「あなたの目的は神を生み出す事だ。私ならそれを叶える事が出来る。呉島貴虎には無理な事だ」
演:鳥羽潤
概要
戦極凌馬の前任者で、ユグドラシル・コーポレーションの研究所の責任者を務めていた男。過去の禁断のリンゴロックシードの暴走事件ですでに死亡しているはずだったが……?
なお、この事件自体が(おそらく)プロジェクト・アークに支障をきたすと判断した呉島天樹の手によりもみ消されたため、呉島貴虎は彼の存在を把握していなかった。
以下物語の核心に迫るネタバレにつき注意
ロックシードの起動実験が失敗した時に死んで消えたと思われていた彼だが、実際には肉体が消滅しただけであり、彼自身は戦極ドライバーを媒介にオーバーロード、そして黄金の果実に近い存在となっていた。(本人曰く「より高位の存在に生まれ変わった」)
精神のみとなって迷い込んだ『武神の世界』で『蛇』を名乗る男に導かれ三千世界を巡り戦いの歴史を見続けたために、黄金の果実として完成し世界を救済するという野望に取りつかれ『黒の菩提樹』を結成。
ヘルヘイムの森の実を密かに栽培したり、自身が神へと至るための協力者として凌馬を試す目的で、後述のザクロロックシードで洗脳した一般人を使って自爆テロを引き起こすなどの暗躍をしていた。
始まりの女と同質の存在になっており、神出鬼没に現れたり、適応者は皆無に等しいが適応者をオーバーロードに変える機能を持つ『ザクロロックシード(この進化用の物はオリジナルのザクロロックシードと違ってナンバリング表示がない)』を無作為に複数の一般人の手元に出現させ、それを通じて自身の精神とシンクロさせる事で、自身の支配下に置く能力を使えるようになっている。
劇中、事件の調査を密かに推し進めていた凌馬の手により潜伏先を特定されると、「これが最後の試練だ」と称し、ゲネシスコア付きの戦極ドライバーと、ザクロ、ブラッドオレンジロックシードで仮面ライダーセイヴァーに変身。
2人に襲い掛かり、貴虎すら把握していないドライバーシステムで、貴虎の変身する仮面ライダー斬月と、かつて貴虎と共にヘルヘイムの森の調査で使用していた戦極ドライバーを用いて凌馬が変身した仮面ライダーデューク レモンアームズを圧倒するが、二人の連係攻撃に敗北。斬月の『無双斬』で切り刻まれ消滅した。
というのは見せかけであり、実際には自身の体をこの世界に留めている本体とも言うべき戦極ドライバーとザクロロックシードが健在であったため滅んではおらず、すでにそれを予測していた凌馬は密かに彼が潜伏していた廃工場へと向かう。
そして凌馬の前に再び姿を現した彼は自身の目的を語り、上記2段目の台詞と共に凌馬に協力を仰ぐが、肝心の凌馬は
「冗談はよしてくれ。三流の分際で……」
彼を「三流」と称してバッサリと拒否した。
新たな世界を創る存在こそが神であると考える凌馬にとって、創造する事の出来ない供界という男は神たりえなかったのだ。
さらに凌馬は続ける。
「貴虎の事は残念だよ。彼は私の理解者ではなかった。今でもただの邪魔者にしか過ぎない。……それでも僕が認めた男だ。だが君は違う。君には何の可能性も感じない!貴様みたいなつまらない男が、神になどなれるものか……!」
それを聞いた供界は怒りを露わにし、
「戦極凌馬アァァァァァッ!!!!!!!!」
と大絶叫。
激怒した彼は、自身の障害にしかならない凌馬を排除せんとセイヴァーに変身して襲いかかるが、ドライバーのスペックの差と、貴虎をなじられた事により怒りに震える凌馬の実力には到底敵わず、最期はデューク レモンエナジーアームズの『ソニックボレー』で自身をこの世界に繋ぎ止めている戦極ドライバーとザクロロックシードを撃ち抜かれ爆散。
首尾よくゲネシスドライバーとエナジーロックシードの性能実験用のモルモットとして排除されてしまったのだった。
これにより供界は完全に滅ぼされ、『黒の菩提樹』も壊滅したかに思われていたが……。
更なるネタバレ(閲覧注意!)
媒介となる戦極ドライバーさえ製造されれば復活は可能で、支配下にあった黒の菩提樹によって蘇った後にシュラにブラックバロン専用のバナナロックシードを渡していたのである。
ここから『鎧武外伝 仮面ライダーナックル』、『小説 仮面ライダー鎧武』の物語に繋がっていくのだが、この後に死ぬ事になる凌馬は、供界の復活を予見しリンゴロックシードの研究ファイルにビデオレターを遺していた。勿論、光実か貴虎がファイルにアクセスする事も見越した上で。
『小説 仮面ライダー鎧武』では世界各地の黒の菩提樹のアジトでザクロロックシードを製造し、マフィアやストリートギャングに提供、おまじないとして一般人にも広める事で配下を増やしていた。
その真なる目的は、全人類を自身と同じ肉体という枷から外れた存在に昇華させる事。
支配下に置いた人間をエネルギー源としてセイヴァーシステムを起動する事で巨大な菩提樹を形成し、戦極ドライバーを持たない全人類を支配下に置いた。
計画を妨げる斬月と龍玄にイナゴ怪人やウツボカズラ怪人を差し向け、さらには武神の力を利用し菩提樹と一体化した『蓮華座偽神セイヴァー』となって相手取るが、斬月 ジンバーメロンアームズの猛攻に敗れ消滅した。
……かに見えたが、支配下に置いた人間のエネルギーが充分に菩提樹へと供給されていたため、すでに戦極ドライバーなしでも不死の存在、黄金の果実そのものとなっていた。
黄金の果実としての力で全人類の肉体を消滅させるが、精神のみとなって自身と同じく三千世界を巡り、
『不死なるもの』
『吸血鬼の如きもの』
『百八の人工生命体』
これら『無数の世界の、無数の物語を繋ぐ悪意と敵意という一本の鎖』『戦いによる生と死の輪廻、破壊と再生が繰り返される円環の牢獄』を目撃したはずの光実が、胸の中の譲れない『何か』によって救済を受け入れなかった事を受け、
光実がこれまでに戦ってきた、そして戦う事になったかもしれない者達との戦いを幻視させ、精神を闇へ飲み込もうとする。
しかし、消えかけた光実の精神に通りすがりの『ライダー』の声が届いた事で、紘汰との誓いが呼び起こされ、光実は再び胸の中の『英雄』を燃え上がらせた。
これら『無数の世界の、無数の物語で繰り返される戦いの中で人々を守り続けるヒーロー』に気付いた光実は、供界の精神世界にありながら供界の支配から完全に解放された。
生きる事を諦めず戦いを選ぶ光実に対し、供界は戦いの記憶から創り出した仮面ライダーデューク=光実が勝てなかった男の複製を戦わせる。
しかし、ただ能力だけを複製した、心を持たない偽物が光実に敵うわけもなく、逆に「本当に凌馬に勝てなかったのは供界自身」と喝破される結果に。
光実が凌馬のビデオレターからフレーズを取って放った「三流」という言葉(奇しくも生前、凌馬が供界に語った言葉と同じであった)が逆鱗に触れ、怒りに任せインベスや黒影の軍勢を差し向けるも、光実と同じく支配から脱した斬月、ナックル、ブラーボ、グリドンによって阻止される。
自身の救済から全員が脱したという理解を超えた展開を受けて救済を諦め、黄金の果実としての力を解放した形態・ゴールデンアームズとなって粛清しようとするも、連携に敗れ爆散する。
しかし世界そのものとなった供界に滅びはなく、メッキの剥がれたダークネスアームズとなって再生を繰り返し、何十、何千もの敗北の末に黄金の果実としての力も失う。
追い詰められた供界は、生死を越える中で創造を持ち得なかった故の『停滞』=自身の真実である『死』と、初めに自身を導いた『蛇』のイメージから一つのロックシードを創り出した。
自身の本質そのものといえる中身のない骸骨を思わせる魔蛇アームズとなり、5人を追い詰めるが、異なる世界が混ざり合う空間が故に、人々の想いに呼び起こされた英雄の可能性……バロン、黒影、マリカ、シグルド、そしてデュークの攻撃を立て続けに受けついに崩壊。
精神世界が崩れ始める中、自我を失いかけながらも骸骨恐竜として再生を遂げる。
そして、自身の前に現れた最後の英雄にして真の黄金の果実を前になお、救済を唱え続けるが、
「本当に救いたかったのは何か」という一人の人間としての鎧武の問いに「わたし、を……た、すけて……」と吐露し意識を失う。
そう、彼が成し遂げたかったのは人類の救済などではなく、三千世界に融けて消えてなお死ぬ事の出来ない自分自身が救済される事を望んでいたのだった。
その後、空っぽの怪物となり暴れる骸骨恐竜も鎧武によって倒され、消えゆく中で理性を取り戻す。
生きている限り、人々を守り続けるために戦い続けようとする鎧武に「生きて、死ね」という呪いとも祝福とも取れない言葉を残してようやく完全に消滅した。
余談
死亡したアーマードライダーが手を貸すという点では同じ「魔蛇」という存在がキーパーソンとなったファイナルステージと似ているが、「死者を蘇らせ傀儡としようとした」「ライダー達の希望が生み出した」という決定的な違いがあるので偶然だろうか。
関連タグ
仮面ライダーセイヴァー・・・彼が変身するアーマードライダー。