※注意
原点となった隠神刑部や団三郎狸は、義理や忠義に厚い好漢として愛されているので混同しないように注意 (刑部狸のデザインの由来についても余談を参照)。また、蛟/蛟竜や大なまずも、水神として見なされたり、鯰神として信仰されていたり、地震を起こすだけでなく鯰絵として愛されたり、とくに九州では神として崇められている。
概要
初登場は『ゲゲゲの鬼太郎』の「妖怪獣」。四国最大の神通力の持ち主と呼ばれる巨大な化け狸であり、彼含む八百八狸の勢力は、シリーズでも最強の敵の一角に数えられる。また、その凶暴さは、鬼太郎達を裏切ったねずみ男が、あまりの凶悪さに恐れおののき、再び鬼太郎側につくほどである。
八百八狸と呼ばれる眷属の化け狸軍団を率いており、かつては四国を制圧してさらに日本全国を支配しようと企んでいたが、250年前に天海上人という高僧によって一族もろとも妖怪封じのお札で石に変えられて、四国山中に封じ込められていた。
ダム開発の作業員(アニメ六期では謎の黒ずくめの男)に封印のお札を剥がされて復活。「妖怪大辞典」に記されている「昭和40年代は妖怪の時代」という予言に基づき、日本を支配しようと企む(アニメ六期では「21世紀は妖怪の時代」に変更されている)。
強力な呪術と念力の使い手で、彼の呪術からは鬼太郎ですら逃れる事はできない。手下の狸軍団と、妖怪獣蛟龍や大なまず、さらには巨大な要石すら操り、日本の政権を一時的に奪った。
日本の政権を得た後は人間たちをこき使って東京に巨大な狸城を建設して君臨し、日本中の美女をメイドにして侍らせ、男は皆殺しにしてソーセージにしようと目論んでいた。
だが鬼太郎とその仲間たちの必死の抗戦により蛟龍と大なまずを失い、最後は再び封印されてしまった。
しかし、それと同時に米国のミサイルが到着し、人間達は自分達の力で勝ち取ったと勘違いし、一度政権を奪われた事もあって重傷の鬼太郎を口だけなどと中傷して病院から追い出すという報われない結末になった。
なお、第一期のアニメでは再封印後に狸城が崩れ去っていた為、城と共に運命を共にしたものと思われる。
能力
約束のキス
拉致していた鬼太郎と総理大臣に政権を明け渡す事を条件に解放する際に、約束の印として鬼太郎の頬にキスをする (漫画や3期だと唇同士にしか見えない)。だがそれは呪いであり、鬼太郎が約束を破って八百八狸を封印すると呪術が発動して、鬼太郎は高熱にうなされキスされた頬から毛が生えて、それが全身に広がって狸に変化しはじめた。
この呪いを解くためには刑部狸との約束を果たすしかなく、目玉おやじ達が八百八狸の封印を解くことでようやく鬼太郎は呪いから解放された。
アニメ六期では鬼太郎ではなく、人質にされていた犬山まなが呪いをかけられてしまうが、キスをする場所が頬ではなくて右手の甲に変更されていた(頬にキスしようとしたらまなが咄嗟に手で防いだため)。
要石の呪い
大なまずを封印していた巨大な要石を念力で動かして位置をずらすことで大なまずを復活させて操っていた。さらに要石を元の位置に戻されないように、要石に触れた者は石になる呪いを仕掛けており、要石に触れた鬼太郎を石化させた。
6期では『触れた妖怪を石化させる』と限定的なものになり、人間ならば触ることができるという弱点が発生した(半妖怪のねずみ男も大丈夫だろうと狸達は嘯いていたが、今作のねずみ男は狸達が負けるまで狸側だったため真偽不明)。そのため、刑部狸は前述の約束のキスの呪いでまなを狸妖怪に変化させて操り、例え支配に抗っても妖怪になった事で要石に触れなくさせた。
念力
テレパシーで蛟龍や大なまずをコントロールしていた。さらに念動力で巨大な要石を浮かせて、兵器として使用した。
狸の尻尾
日本の政権を奪った後は、警官や自衛官をはじめ日本中の公務員に狸の尻尾を植え付けてリモコンのように操り、八百八狸に従わせた。アニメ六期では一部の一般人にも尻尾を植え付けて、狸の悪口を言う人間がいないか監視と密告をさせた。
軍事力
八百八狸
化け狸の軍団で、木の棍棒が主な武器。シルクハットを被った狸・着物を着た狸・鉢巻きを締めた狸といった三匹の幹部がいて、彼らの指揮の元に行動する。妖力等は特にないが、首相官邸を制圧して総理を拉致するなど統率力は極めて高い。
六期の団一郎は、過去には玄蕃狸 (げんばだぬき)・シルクハット狸・タキシード狸と呼ばれていた。
お富狸は四期では着物狸・六期では団二郎と呼ばれている。オカマ。というか、八百八狸に雌はいない。原典では、八百八狸は全員が隠神刑部と奥方の子孫であるのだが。
そして団三郎狸である(4期の鉢巻狸)。
原典では佐渡島の狸であり、隠神刑部狸や屋島の禿狸こと太三郎狸や淡路の芝右衛門狸や徳島の金長狸等と共に数えられる日本の化け狸でも屈指の超大御所の一角である。隠神刑部に従うような地位ではないが、共に英傑的な性格を持つ。六期で玄蕃狸とお富狸の名前が団三郎に合わせられたのも納得である (数字の序列がアレだが)。
(ところがどっこい、八百八狸に属する団三郎は…。)
三期のみ着物狸が登場しない代わりに、飛行兵姿の飛脚狸が登場した。
勘違いされることがあるが、竹切り狸は厳密に言えば四期のみ八百八狸との繋がりがあり、本来は万年竹の仲間である。
この中で、刑部狸と竹切り狸と団三郎狸は味方として登場した事がある (竹切り狸以外は妖怪四十七士の一員としてであり、団三郎に関しては出身も改められていた)。当シリーズにおいては、一部のキャラクターがエピソードによっては敵だったり味方だったり変動することが見られる。例えばバックベアードですら味方である事もあるのだ。
巨大妖怪
大なまずと「妖怪獣」こと蛟龍が確認されている。八百八狸の切り札とも言え、圧倒的な破壊力を持ち、とてもそうには見えない姿をしているが水陸両棲であり、巨体である。両者とも、鬼太郎が液体化しなければ倒せなかった。
蛟龍
蓬莱島の守護龍である蜃気楼海竜の蛟、「蓮華王国」編での蜃、出世螺とは全く別の存在である。こちらの蛟は、アニメでは4期に登場している。
伝承等を考慮するに、おそらくは八百八狸と関わりのある個体以外にも存在する。少なくとも、南方妖怪と関わりがある個体と妖怪獣としての個体が確認されている。
八百八狸が守護神として崇めている巨大な妖怪で、別名は妖怪獣。月のような形の卵状態で東京湾の上空に浮かび、第二の月と呼ばれて人間たちを驚かせた。地上に降りると卵から孵化するのだが、狸たちも降ろし方を知らなかった。だが自衛隊によるミサイル攻撃で墜落した事で卵から孵化して姿を現した。
二頭身か三頭身未満であり、デフォルメされた類人猿か河童の一種、または水に落ちた狸のような姿をしている。その肉体にはいかなる近代兵器も通用しない。さらに目から光線を放ち、それを受けた相手は蜃気楼のような幻に捕らわれる。
近代兵器を物ともせずに、自衛隊を一掃して瞬く間に東京を破壊しつくし、日本政府を降伏させた。
だが最後は、鬼太郎を踏み潰した際に、鬼太郎の胃袋が破けて溢れ出たなんでも溶かす胃液を浴びてしまい、ドロドロに溶けて骨だけになってしまった。なお、鬼太郎の胃に住む蛇は鬼太郎の胃液にも耐えるというとんでもない耐久力を持つが、この時はどうしていたのかは不明。鬼太郎の原点とも言える『恐怖の遊星魔人』における鬼太郎 (おにたろう)が蛇人間である事から、蛇は鬼太郎と縁がある。
八百八狸と関わりのある蛟龍が、当初は卵の状態で登場したことから、過去にも別個体が八百八狸と関わりがあったのかどうか、または今の個体が休眠していたのかどうか、等の疑問があるが、その正体は不明。
アニメでは、三期のみ複数の活動状態の個体が登場した。南方妖怪の手下の方は歴代と比べても小型であり、幻影能力も持たない。鬼太郎にオカリナ剣で脳天を貫かれてチンポの船に激突したが生死は不明。
四期では、東京湾ではなくて富士山から出現した。
なお、同期の大海獣には、原作の「大海獣」と「妖怪大戦争」を元にしていることもあり、蛟龍のエピソードに由来する描写があるが、根本的に異なる部分が多い。南方妖怪に神として崇められるが、蛟龍と八百八狸の関係とは異なり、神聖な信仰の対象とされている。ちなみに、三期の南方妖怪と同じで、該当期の最初の劇場版である。
とあるムック本には大海獣と蛟龍が戦う姿が描かれている。
また、アニメで本物の蛟が登場したのは四期が初めてである。
アニメ六期では、原典の伝承がシリーズでは初めて紹介された。溶岩のような肌、衝撃波を放ち広範囲を吹き飛ばすなど、某巨大不明生物のような暴れっぷりを見せた。が、頭身は歴代(の妖怪獣としての蛟龍)では一番小さいようにも見える。要石が破壊された後は、刑部狸の怨念が乗り移り、口から溶岩の塊を吐き出して暴れた。指鉄砲を至近距離から受けてもびくともしなかったが、犬山まなの手に宿った要石の力を与えられた鬼太郎の指鉄砲を受けて倒された。
- 鬼太郎シリーズとゴジラシリーズには、様々な部分で関係がある。『恐怖の遊星魔人』や『墓場鬼太郎』等を除けば、作品としての年齢はゴジラと同い年であり、大海獣の前身であるラバンは本物のゴジラの派生個体?であり、鉄の大海獣はメカニコングやメカゴジラに影響を与えたとも言われ、近年にまでガイガンのデザインは鬼太郎シリーズの陰摩羅鬼に由来していると本気で思われていた。大海獣自体はガメラシリーズの方が合っているのかもしれないが。
大なまず
なまず神と呼ばれることも。
地底湖に住む巨大なナマズで、八百八狸軍団の切り札。陸上でも直立しての活動が可能。また、不死身で攻撃が効かないなど、蛟龍にも劣らない圧倒的な戦闘力を持つ。元々は要石によって封印されていたが、刑部狸が念力で要石の位置をずらした事で復活した。大地震を起こす力があり、過去には関東大震災を起こしたとも言われる。また、口から熱風を吐いて地面を温めて竜巻を起こすこともできる (竜巻の発生原因としては実に合理的である)。目から破壊光線を発する事もできる。また、鬼太郎がひげで目を突かれて見えなくなった際は、目玉の親父が左目の代わりとなって補助した。鬼太郎は餌として喰われたこともあるが、鬼太郎親子を食うことは死亡フラグであり、案の定な事になった。
蛟龍が倒された後に刑部狸が呼び出し、米軍艦隊を蹴散らして水爆を使用させた。不死身なので殺すのは不可能だが、鬼太郎を飲み込んだ際に脳を乗っ取られて (「氷流し」)、そのまま北極まで泳いで行って氷漬けになり動けなくなった。ちなみに、鬼太郎は「氷流し」の作用で赤ん坊に戻って数ヶ月程度で元の姿に戻った。
鬼太郎シリーズの大なまずに限らず、化け鯰には歴史上の大地震と関連づけられることがある。また、神々が直に退治するほどの力を持つと、古来の伝承や昔話では伝えられている (人間が食事を提供して力を付けなければ神も容易く勝てる訳ではないというケースも)。
要石
(本来のイメージ)
地下に安置された巨大な石で、元々は上記の大なまずを封印するための物であったが、刑部狸に利用されていた。刑部狸により石化の呪いがかけられており、大なまずを封印するために要石に触れた鬼太郎を石に変えた。
ただし刑部狸の念力が途絶えると石化の力を失うため、刑部狸が一反木綿に首を絞められて気絶した事で呪いが解けて鬼太郎は復活できた。
蛟龍と大なまずが倒された刑部狸が最後の切り札として持ち出し、念力で狸城の上空に浮上させて米軍の発射したミサイルを石化させて城を防衛していた(アニメ三期では強力な磁気を発生させる能力があり、戦闘機を引き寄せて破壊していた)。
だが、米軍により太平洋上空におびき寄せられ、水爆投下を受けて爆破されて海に沈んだ。(実は水爆投下の直前にねずみ男が四国山中の天海上人のお札を修復して刑部狸が再び封印された事で、要石の呪力が失われてただの石になっていた)
アニメ六期ではサイズが小さくなり、八百八狸と蛟龍の力の源となっている。妖怪が触れると石になる呪いがかけられており、霊毛ちゃんちゃんこを巻いて保護した拳で殴った鬼太郎すら石化させた。
だが人間には呪いの効果がなく、犬山まなによって断崖に落とされそうになった。そのため刑部狸は約束のキスの力でまなを狸妖怪に変えるが、一反木綿に首を絞められてまなの呪いが解けてしまい、要石の破壊を許してしまう。
要石に宿っていた力はまなの手に注ぎ込まれ、蛟龍を倒す際に鬼太郎に力を与えた。
アニメ版
一期
声:富田耕吉
人間達が鬼太郎に礼を言うなど原作とラストの展開が違うが、話は概ね原作通り。
三期
声:柴田秀勝
乱開発のせいで地下の生活が脅かされて、爆破工事による落盤事故で大勢の仲間が犠牲になった事から人間への憎しみを膨らませていた。人間による自然破壊の犠牲者という側面が強く、鬼太郎も彼らの主張に同情していた。
四期
声:仲木隆司
竹切り狸が鬼太郎の味方として現れ、狸妖怪全員が刑部狸に従っている訳ではないと描写された。
五期
妖怪四十七士の愛媛県代表となっており、本編では未登場。デザインは水木しげるロードの彫像と同じタイプであり、別の妖怪であるあしまがりにも似ている。団三郎狸も新潟県代表である。
四十七士入りしてる事から、打ち切りがなければ、団三郎共々鬼太郎一行と協力する話になっていたと思われる。後期EDや劇場版には登場している。
六期
声:堀内賢雄
第11話というシリーズで最も早い時期に登場した。アニメでの表記は「刑部だぬき」。
政権を奪った後は原作や他期のように人間を奴隷にして狸城を建設したりはしなかったが、狸蕎麦を頼んだり狸の悪口を言う人間を逮捕して強制収容所に送るという恐怖政治を行っていた。このため、反狸派の人間は狸派から差別される上に発言に気を付けるあまり神経質になってしまい、狸派の人間達は自分達の地位を利用してイジメなど好き勝手する様になり、首都はディストピアと化した。
力の源である要石を破壊されて一族もろとも全滅するが、巨大な怨念の塊になって蛟龍に乗り移り、鬼太郎に復讐しようとした。
部下の玄蕃狸/シルクハット狸/タキシード狸とお富狸/着物狸は団三郎狸に合わせたのか、それぞれ団一郎狸、団二郎狸と改名している。
パチンコ版 (CRゲゲゲの鬼太郎)
狐のようにも思える毛色をしている。
余談
- 元ネタは八百八狸の統領である隠神刑部。「いぬがみ」と読むが、犬神とは全く関係ない。経緯は話によって異なるが、眷属と共に松山藩の守護神であったが、謀反兼御家騒動に利用され、四国に混乱を齎すが稲生武太夫という侍に敗北し、八百八狸諸共に住み家の洞窟に封印されたという。
- 鬼太郎一行や人間社会と対決する刑部狸のデザイン元は、「八豊雲陀伸女」という雌の狸の像である。
- 一時的とはいえ日本全土が狸に支配された事により、人間たちは妖怪が実在する事を身をもって思い知らされたのだった。アニメ三期においても、このエピソード以前までは人間社会において「妖怪なんていない」というのが常識だったが、これ以降は「妖怪は実在する」のが常識となった。その意味でも、八百八狸の存在は大きかった。
- 6期の八百八狸編には、制作スタッフも携わっていた『千年呪い歌』の影響とも思えるような描写が複数見られた。
- 選民思想が非常に強く、アニメ三期ではいつもなら真っ先に裏切るねずみ男ですら「同じ妖怪でもあいつらは俺達と違う。やたらプライドが高いって言うか、あいつらの言いなりになってたら俺達もこき使われる事になるぜ」と彼らの野心に警戒していた。さらにアニメ六期では日本の政権のみならず妖怪界の指導者として君臨しようとしていた(なお六期のねずみ男は真っ先に八百八狸に寝返り最後は勝ち逃げした)。
- これまで八百八狸占領下の日本の様子は四期を除いて描かれて来たが人間が狸に反抗しようとする人間を迫害或いは逮捕し、反逆者と言う理由で火事を放置し、犠牲にあった人達の陰口を叩く等人間の醜さを執拗に描いたのは6期が初めてである。(原作では尻尾の付いた警官が狸の悪口を言った女の子を逮捕したのと首相がラストの演説で鬼太郎を役立たずと言ったくらい)
- かつて四国を征服したというのは、化け狸が四国と深い関係があるだけでなく、様々な化け狸に見られる「◯◯に狐がいないのは狸に負けたから」という伝承に似ている。
- 『平成狸合戦ぽんぽこ』にも隠神刑部や屋島の禿狸や六代目金長を含む沢山の狸が登場した。団三郎は、残念ながら人間に殺されたという設定で言及された。というか、同作には御大御自身が制作に携わっておられ、しかも御本人役で出演なさっている。
- 「火の玉のおろく狸」に近いデザインの化け狸は、御大の作品では、上記のお富狸の他、もっとかわいらしい化け狸もいる。
関連動画
(またはこちら)
(本物の蛟の回)
外部リンク
(なんと公式が八百八狸とおさん狐を結婚させた。)