機体解説
北アメリア大陸イングレッサ領はビシニティの北部、過去の文明の遺産が眠るマウンテンサイクルに石像として祀られていたものが再起動した黒歴史の遺産と呼ばれるモビルスーツ。
月のディアナ・カウンターの地球帰還作戦に応じるかのように起動し、その際にロラン・セアックがこれを動かした事から、なし崩し的に彼がメインパイロットを務める事になった。
当初は機体の名称も出自も不明であった為、正式な名称が判明するまではこれを運用するミリシャからは石像の名前を取って「ホワイト・ドール」、ディアナ・カウンターからは「ヒゲ」「白ヒゲ」と呼ばれていた。
ナノスキンと呼ばれるナノマシンで構成された装甲を有しており、生物の新陳代謝の如き自己修復機能を有する。ただし修復出来るのは装甲のみであり、内部メカまでは修復できない。そのため、中破したターンAの修復にはホレス・ニーベンなどのムーンレィス側の力を借りている(※ただし、福井晴敏による小説版『月に繭 地には果実』では、原型をとどめないほど破壊されてもコア・ファイターが無事なら時間はかかるが、完全に機体を再生できるという設定になっている)。
駆動系がIフィールドによって機体を駆動させる「IFBD(Iフィールドビームドライブ)」という駆動システムによって構成されていることも特徴の一つ。
これは機体の周囲を覆ったIフィールドをさながらマリオネットの糸のようにして機体の各関節を動かすというもので、これによって機体構造は極めてシンプルなものとなっており、ジェネレーターやモーターといった駆動装置を機体に内包しない構造は、各種武装コンテナを胸部に収めるという独特な機体構造を生み出している。
脚部は殆ど推進器であり、裏側にその一枚一枚がスラスターとなる二次元ノズルのスラスター・ベーンが密集した形態をとる。このスラスター・ベーンはマイクロエンジンが用いられており、ベーン一枚一枚もさらに小さなベーンの集合体というフラクタル構造となっている。
物語開始当初はベーンにナノスキンの垢が詰まっていたことから性能を発揮できなかったが、第12話で機能を回復してからは重力下での完全飛行や、MSの質量を大きく上回り大気圏を脱出できる宇宙戦艦ジャンダルムを正面から押し返すという圧倒的なパワーを見せた。
胸部が武装ユニット化している事と歩行時の安定性の高さからコックピットは股間部にあり、緊急時にはコア・ファイターとして分離・脱出する事が可能。
一見弱点丸出しに見えるコクピット、実は本編のみならずシリーズ屈指の防御力を誇る。それは強固なIFバリアで守られている事(ズサンとの戦闘時飛んできた破片を軽く弾いている)、スカートアーマーがオートで防御姿勢を取る事が理由である。
この機能、コレン・ナンダーが駆るイーゲルとの戦闘時、コクピットを狙われた際に披露している(イーゲルの全重量を駆使した踏みつけをスカートアーマーだけで防いでいる)。
様々な機能を持ち、また機体スペックも凄まじい物がある。
その正体はかつて黒歴史と呼ばれた時代に於いて、その文明を埋葬した超兵器である。
過去の文明を破壊し尽くした後はその役目を終え地中にて眠っていたものの、長い年月を経て発掘されてからはその本来の能力の大半を発揮していないとされており、パイロットのロランの性格もあって、文明を闇に葬り去ったとされる当時のような「活躍」を披露することはなかった。
またグエン・サード・ラインフォードは黒歴史を作り出したターンAの持つ強大な力に惹かれ、月に大きく遅れを取っていた地球の文明の再構築のためにターンAの量産化というおぞましい計画を企みミリシャを裏切りギンガナム艦隊と手を組んだが、地球での最終戦でギム・ギンガナムの裏切りにより失敗している。
それでもなおターンAの量産化を諦めず工場へ行こうとしたが、愛想を尽かされたミハエルやヤーニにも裏切られ、ターンA量産化計画の白紙化は確定づいた。そもそもギンガナムに裏切られた時点で地球人の技術だけでターンAの量産など雲を掴むような話であったわけではあるが…
デザインの特徴
外見の大きな特徴は顔面の「ヒゲ」である(劇中でも「ヒゲ」と呼ばれるほど) 。
デザインはまず最初にRX-78ガンダムをより「人間的」にリデザインすることから始まった。
「機械としての合理性」を強調し、関節は人間が動かせる極限の範囲まで可動出来るように、フォルムも人間のように丸みを帯びたシルエットを持たせるようデザインされた。
機械ではあるが、キャラクター性を持たせるために一番目立つ頭部のVアンテナは曲線になり、口のヒゲの部分に置かれている(デザイナーのシド・ミード氏曰く「アンテナは必要だが、従来の位置に置きたくなかったので日本の兜を参考に顔の下側に設置した」とのことである)。
本来はガンダムタイプの伝統である頭部バルカンも付くはずであったが、胸部に収納スペースがあること、兄弟機のターンXとの共通点である「内臓武器は極力削り表面をシンプルにすること」がコンセプトであるため、バルカンは描かれていない。
当初デザインが公開された時はファンからの批判が続出したが、劇中での演出や活躍により批判の声は少なくなり、やがて「味のあるデザインのガンダム」として受け入れられるようになる。
また、平面的に描かれたイラストよりも模型や3Dなど立体的に描かれる構図で可動範囲に説得力が出てくる。
なお、シド・ミード氏も最初は「ヒゲのガンダム」が受け入れられるか不安だったらしいが、宇宙刑事シリーズ等のメカニックデザインで知られる友人の村上克司氏に相談したところ、氏が手がけたゴッドシグマを見せてもらったことで安心したとのこと。
「ロボット兵器としてあり得るデザインであり、アニメという絵の中、おもちゃとして立体で動く人形」を目指した∀ガンダムはアニメというジャンル、また子供から大人まで手に取るであろう玩具の「マシン」としての一つの回答であるとも言える。
劇中での活躍
アニメ第2話において、ディアナ・カウンターの砲撃に反応して神像「ホワイトドール」の中から出現。
ロラン・セアックによってムーンレィスの地球帰還作戦を平和的に解決するべく、戦闘だけではなく、物資の運搬・土木作業・洗濯(!)や牛の運送も行った。
また、頭部の髭に関しては作中でも度々言及されていて、特に14話でディアナ・ソレルが言い放った「ガンダムにお髭がありますか?ありません!」というセリフはよく知られている。
最終的にはターンXと相打ちになり、ナノマシンの繭に包まれて再び眠りについた。
武装
ビームライフル
ターンAの主兵装。
重金属粒子を固有振動によって収束させて発射する共振粒子砲(リフェーザー砲)であり、メガ粒子を集束して発射する宇宙世紀時代のビームライフルとは原理が異なる物。
高出力で発射する際にはストック部分をスライドさせ、内蔵された回転式グリップを使用する。モード変換は機体本体とのデータリンクにより、内蔵デバイスが自動的に判断して実行する。
最初に持っていたものは経年劣化により2発撃った後に銃身が溶融して損壊したため、その後は発掘された新品を使用するようになる。
元々ターンAは恒星間宇宙戦争における巨大宇宙戦闘艦との交戦も想定していたため、ビームライフルとは言っても宇宙世紀時代のものとは次元を異にする威力を誇る。また、大気圏内や水辺で使用してもビーム兵器につきものの威力の減衰も起こらない。
ちなみに「重金属粒子を撃ち出す共振粒子砲」という設定は、富野監督自身が手がけた小説版『機動戦士ガンダム』におけるビームライフルの設定でもある。
ビームサーベル
背部のプラットフォームに発生器が2つ格納されている格闘戦用光学兵装。
宇宙世紀のメガ粒子を使ったものとは異なり、プラズマ化した重金属粒子を電磁場で固定して刀身を形成する。他のガンダムシリーズに比べてビームの刃部分が非常に細く描写されているのが特徴。
持ったまま手首を回転させることで簡易的なビームシールドとして使える他、2本合わせると刀身を延ばすことができ、出力調整を行っている様子も見られた。
シールド
楕円形の大型シールド。
強力なIフィールドバリアを展開する機能を有し、ビーム兵器だけでなく実弾兵器や核爆発の衝撃波まで防御することができる。但し、盾そのものの物理的強度は標準的。
胸部マルチパーパスサイロ
ターンAの駆動装置を内包しない構造を利用して胸部に設けられた多目的武器庫。
本来はビーム砲やミサイルランチャー、補助エンジンなどを作戦や戦術に応じて換装・内蔵するためのスペースだが、劇中では牛を運んだり核ミサイルを隠したりといった目的に利用された。
腹部ビームキャノン(ビームドライブユニット)
腹部のマルチパーパスサイロに搭載されていた拡散ビーム砲。
∀が敵に鹵獲された際、ギンガナム艦隊技術者の解析で使用可能になった。
物語終盤にジョゼフ・ヨットが搭乗した際に使用したのが最初で最後であり、この時のジョゼフの台詞にちなんでファンの間でついたあだ名が「やったぜフラン砲」。
Iフィールドバリアを突破することができるため、さすがのターンXもキャラバス(背部ウェポンプラットフォーム)を犠牲にしてでも回避せざるを得なかった。
ガンダムハンマー
ビシニティ地下のマウンテンサイクルから発見されたトゲ付き鉄球。
推進用のロケットブースターが内蔵されている他、Iフィールドを展開して敵の駆動系に干渉したり、トゲが爆発したりとギミック満載。
月光蝶
本機の最大の無差別大量破壊兵器。
機体内で生成したナノマシンを大量に散布し、あらゆる人工物の分子結合を破壊、砂(土)に変えることができる。
物理的にこの攻撃を防ぐことはできず、物質に対しては絶対的な威力を有する。
本編ではソレイユのIフィールドバリアで一時的に防御可能ということが描かれ、また、ゲームのガンダム無双2のムービーではνガンダムがサイコフィールドによって月光蝶を弾いた。
詳細は月光蝶の記事にて。
本編以外での活躍
ビルドファイターズシリーズ
トライ10話にて行われたファッションとガンプラの融合を謳ったイベント「東京ガンプラ・コレクション(通称ガン・コレ)」にて行われた一企画「プロダクション対抗ガンプラ・ラリー」にゲスト参戦した「3代目SGOKKU」のリーダー・TAKUが黒く彩られた∀ガンダムを使用。ビームサーベルやライフルといった本家の武装のほかにシールドをボード代わりに使用して水上移動も可能。
本来はバトルではなくレースなのだがそれを無視して攻撃を仕掛けるといった卑劣な妨害行為を行うが、それがミライの逆鱗に振れ、彼女のプチッガイが放つ次元覇王流・蒼天紅蓮拳をコクピットに受け、レース続行不可能になる。なお、その光景は会場男性陣を恐怖させるのだが、その理由はコクピットの位置からお察しください…。
ゲーム作品では
スーパーロボット大戦シリーズ
「1度文明がリセットされ再スタートした世界」ということが他の作品との組み合わせが難しいと推測されていたのだが、自軍部隊が未来にタイムスリップするというという形で同じく荒廃世界を舞台とした作品らと共に初参戦を果たす。
自軍入りしたての頃は武器数も少なく、地形適応もそれほど良くなく弱い部類に入るが、徐々にパワーアップしていくのが特徴。飛行可能になり、強力な武器も追加されて最終的には月光蝶使用可能になる。(しかもMAP兵器版まである)
また、宇宙世紀系パイロットの乗り換えも可能。そのためあの人やあの人を乗せて月光蝶も可能。
ただし、デフォルトパイロットのロランも負けておらず、ニュータイプではなく能力は平凡だが、成長パターンが大器晩成型のため最終的には非常に能力が高くなり、強力な精神コマンド魂取得可能。
きちんと育成すれば黒歴史がいかに恐ろしいかを表す機体となる。
Another Century's Episodeシリーズ
3作目でいるだけ参戦ながら登場。ナノスキン設定故か徐徐に体力回復する特殊能力を備える。
発動中は周囲の敵にダメージ与える月光蝶と核投擲が行える。(∀は核を機体内に隠したことがあるMSであって核搭載MSではないのが…)
強力な武装を複数持つがそのどちらもリロード時間が絶望的に長い。如何に使うタイミングを見極めるのが肝心である。
ガンダムVSガンダムシリーズ
主人公後期搭乗機が並ぶ3000コストで参戦。原作設定を考慮すると3000では遥かに足らない気がするがそこはゲームと割り切ろう。
二刀流ビームサーベルによるアクロバティックな格闘アクションで戦う格闘寄り機体。そして1出撃につき1回だけ核投擲が行える。(だから核搭載機ではn)
メイン射撃にビームライフルやマシンガンを装備している機体が多い中、∀のメイン射撃はまさかの両手ガンダムハンマー。あのゲームではないので流石に射撃武装は他にもあるにはあるものの、その多くは使用時には足が止まる為に射撃戦をしながら間合いを詰めるのが苦手、距離を離して射撃戦を行う相手には苦戦を強いられる。
しかしそのハンマーが意外に曲者。射程は短いものの、即ダウン力が高く当たり判定は大きい為に、安易に懐へ入ろうとすればぶっ飛ばされる。EXVSではブーストダッシュによるキャンセルを活かして1回でダウンしなかった相手を複数ハンマーで殴るテクニックも生み出された。これはハンマーズンダと呼ばれる攻めのテクとして相手に恐れられることになる。
ガンダムVSガンダムシリーズの∀に関しては理論的に言ってハンマーは主力武装に間違いない。
また、一応は射撃武装をいくつか装備しておりある程度の援護や牽制は行える。確かに近接戦向きではあるが、他の格闘機ほど格闘1本というほどでもない。
ちなみに、∀といえば月光蝶だが、本シリーズではそれぞれのゲームシステムに合わせて実装されている。
- (無印):Gクロスオーバー。ターンXが現れ月光蝶を展開。
- NEXT:特殊能力。体力が一定値以下になると月光蝶を発動させ攻撃力が大幅アップ。
- EXVS:覚醒技。月光蝶を展開しながらタックル。ONではそれに加えて覚醒中は月光蝶が発動し攻撃力UPする特殊能力が追加。
即ダウン力の高さと各種格闘をちらつかせてプレッシャーをかけ相方との連携で制す、その格闘機にしては独特な立ち回りゆえについたあだ名は万能機寄り格闘機。ほかに無い独特の動きとダウンのとりやすさで上手く得意な間合いの戦いに持ち込んで相手の守りを切り崩そう。
Gジェネレーションシリーズ
SDガンダムGジェネレーションスピリッツには、作中で活躍したターンAではなく、この文明をリセットした際のフルスペック・ターンAをイメージしたと思われる極めて強力な機体がラスボスとして登場している。
裏設定
作中では語られなかったが、この機体は作中でその性能の5%しか発揮していなかった。
そもそも本機は地球外から地球圏に漂流してきた機体を元に開発された機体で、外宇宙文明存在の発覚から対外宇宙文明戦用にこの時代の最新の技術が多く実装されている。
機体の動力は縮退炉の一種を二基搭載している。
外宇宙からの地球圏防衛という開発コンセプト上、単機で地球圏をカバーできるように空間跳躍能力も有する(劇中ではメリーベルとの戦闘中に発動。レーダー等の撹乱ではなく物理的に転移する為、ターンXでさえも位置を捕捉できなかった)。
また汎用性を上げるために武装の多くは外付け、または換装式であり、専用のアームドベースから空間跳躍によって換装を行う(劇中では大半の武器、施設が経年劣化で使用不能であった)。
∀ガンダム、ターンAという名称は、「全ての(∀)ガンダム」の他にも、「黒歴史をAに(新たに)ターン(描き直す)する。」という意味もある。
ガンダム史上で最後発のガンダムタイプで劇中で20%しか性能を発揮していないその事から本来の性能をファンが考察し公式設定ではないものが多数語られている
月光蝶が木星まで届くや、ビームライフルがコロニーレーザー並の威力を持つなどそれにあたる。
だが制作スタッフらの説明や発言から歴代ガンダムシリーズの中ではトップクラスの性能を持つ機体だと言う事は間違いないようだ。