そして 何かが生き残った…
概要
映画『ジュラシック・パーク』の続編で、マイケル・クライトンの小説『ロスト・ワールド -ジュラシック・パーク2-』の映画化させた作品。1997年に公開された。監督を務めたは、前作と同じくスティーブン・スピルバーグである。
アカデミー賞では視覚効果賞にノミネートされた。
前作の評価が高かったため期待された本作だが、それにこたえたとは言えなかった。主に、登場人物の不可解な行動(重大なトラブルを起こしてしまうのがもっぱら主人公側のメインキャラであるなど)や、ひたすら恐竜に襲われるだけの雑なストーリーなどに批判が集まった。
第18回ゴールデンラズベリー賞においては「最低続編賞」「最低脚本賞」「最低人命軽視と公共物破壊しまくり作品賞」の3部門にノミネートされた(受賞はしていない)。
ただし、いずれの批判についても「スピルバーグが監督を務めた作品にしては」という程度のものであるという声もある。
なお、実はこの作品は、1995年に小説の執筆と映画の製作が同時進行となる事となり、その時原作者のクライトンがスピルバーグ監督に、「私は自分の好きなように小説を書くから、そっちも好きなように映画を作っていい。」と言ったそうだ。原作と映画の設定と内容が大幅に違うのは、そのせいである可能性が高い。
あらすじ
インジェン社による「ジュラシック・パーク」計画が失敗してから4年。
展示用の島であったヌブラル島とは別に、恐竜の再生・育成・研究用に開発されていたイスラ・ソルナで、未だ恐竜が生き延びていることを知ったジョン・ハモンドは、その生態を探るためイアン・マルコム博士を含めた4名の調査隊を派遣する。
時を同じくして、インジェン社の現社長ピーター・ラドローもハンターの一団を率いてイスラ・ソルナへやってくる。アメリカ本土での新たなパーク開園のために、恐竜を島の外へ持ち出そうとしていたのだ。
計画は、どちらも上手くいかなかった。
恐竜の襲撃を受け、調査隊もハンターも装備のほぼ全てを失ってしまう。
島を脱出しようとする人間たちだが、執拗に襲い来る肉食恐竜たちの前に次々と命を落として行く。
そして遂に、その牙はアメリカ本土――サンディエゴにまで及ぶ。
登場人物
演:ジェフ・ゴールドブラム(吹:大塚芳忠)
前作でパークの事件を生き延びた数学者(カオス理論学者)で、今作の主人公。
恋人のサラを救うため、嫌々ながらハモンドの恐竜調査隊に加わる。
皮肉屋なのは相変わらずだが、サラに振り回されるなどヘタレキャラになってしまっている。
- サラ・ハーディング
古生物学者。イアンの恋人で恐竜調査隊のメンバー。前作に登場した獣医ハーディングの娘。
良く言えば勇敢、悪く言えば独善的な性格。恐竜の知識は豊富だが、それが行動に反映されておらず、自身だけでなく周囲の人間も危機に晒すことになる。サラとニックがハンターのキャンプの恐竜を逃がしてキャンプを壊滅状態にしたり、イアンの反対を押し切りT-REXの子供の治療を優先させたせいで(T-REXの接近を知らす電話も無視して治療にあたっていた)、調査隊・ハンターの双方が装備を失い、多くの人命が失われた。ヒロインであるにも関わらず、自身の独善的な行動の結果、多数の犠牲者を出した点で、諸悪の根源といえるキャラである。
原作では動物行動学者で、映画とは逆に有能な人物。
- ローランド・テンボ
演:ピート・ポスルスウェイト(吹:麦人)
ラドローに雇われた恐竜ハンター団のリーダー。冷静沈着な凄腕のハンターで、T-REXを狩ることに情熱を燃やす狩猟狂。
ニック曰く白鯨のエイハブ船長のような人物だが、それゆえに、ラドローの目的にはあまり同調していない。また、心優しく常識人な面もある。
T-REXを一騎打ちの末捕獲するという、シリーズでも類を見ない大金星を挙げたが、目的を果たした後は仲間を喪ったことに落ち込むばかりで、ラドローの元から去っていった。
原作には登場しない。
- ピーター・ラドロー
演:アーリス・ハワード(吹:牛山茂)
インジェン社の現社長。ハモンドの甥に当たる。媒体によってはルドローとも訳される。
恐竜の恐ろしさを全く理解しておらず、サンディエゴに新たなパークを建造するという、ハモンド以上に恐ろしい計画を立て、会社の復活を狙う。
終盤、サンディエゴの船上にてT-REXの幼体に狩りの練習台にされ食い殺される。
演:リチャード・アッテンボロー(吹:永井一郎)
インジェン社の元社長。物語冒頭のある事件のために隠居の身となっている。
島の保護のために世論を味方につけるため、自身の名誉回復と罪滅ぼしのために、そしてラドロー達の計画を潰すために、恐竜の生態調査をイアンたちに依頼する。
原作では既に死亡しているため登場せず、マルコムに「詐欺師だった」と吐き捨てられている。
- ニック・ヴァン・オーウェン
演:ヴィンス・ヴォーン(吹:平田広明)
野生動物専門のドキュメンタリーカメラマンで恐竜調査隊のメンバー。
女目当てで自然保護団体に参加していたと嘯くが、実際には過激な環境テロリスト。
サラとニックの行動のせいで調査隊・ハンターの双方が装備を失い、多くの人命が失われ、さらにローランドの銃から弾を抜いていたせいで結果的にT-REXのサンディエゴ上陸する原因ともなった。
今作の脚本で、サラと共に批判されているキャラだが、ケリー達を先導してT-REXから逃げ延びたり、通信所へ単身乗り込み救助を要請したりと、役に立った場面も多い。
島から無事脱出するものの、それっきり登場しなくなる。これは、当初の脚本ではクライマックスのプテラノドンとの戦いで命を落とすはずだったが、それがまるごと変更されたことで、脈絡なく退場する形をとらざるを得なくなったため。
原作には登場しない。
- ケリー・カーティス
演:ヴァネッサ・リー・チェスター(吹:渕崎ゆり子)
イアンの3人の子供のうちの1人。マルカムの元妻の血を濃く引いているのか、黒人。父のそばにいたいあまり、こっそり恐竜調査隊に付いてきてしまう。体操部に所属しており、得意の鉄棒でラプトルを撃退している。
原作では数学の得意な白人の少女で、レヴィンの助手。イアンの娘という設定はない。
- ディーター・スターク
演:ピーター・ストーメア(吹:神谷和男)
恐竜ハンター団の副リーダー。スタンガンでコンピーをいたぶるなどサディスティックな性格。用を足すために仲間からはぐれたところを、逆襲とばかりにコンピーに集団で襲われ、散々嬲られた挙句死亡する。
原作には登場しない。
- アジェイ・シドゥ
演:ハーヴェイ・ジョンソン(吹:小島敏彦)
恐竜ハンター団のメンバー。ローランドの相棒。媒体によってはアジャイとも訳される。
サラの上着についたT-REXの仔の血の匂いを追ってきたT-REXに襲撃され、仲間たちを連れて逃亡中にラプトルの群れに襲われて死亡した。殺されるシーンがないため詳細は不明だが、ラプトルの縄張りである草むらに入ってしまった直後に投げ捨てた遺品のリュックをニックが拾う描写があり、後になってローランドが「死んじまったよ。アジェイが。」と語っている。アジェイの死はローランドを落胆させた。
当初の脚本では、ハンググライダーで崖から他のメンバーと共に飛び立ちラプトルから逃げのびるものの、直後に現れたプテラノドンに襲われて死亡するはずだった。原作には登場しない。
演:リチャード・シフ(吹:納谷六朗)
精密機械の専門家。恐竜調査隊のメンバー。心優しい性格の中年男性。
崖から落ちそうになったイアンたちを救おうとしたところをT-REX夫婦に襲われる。それでもなおイアンたちの救助に尽力するが、最期は身体を引きちぎられ絶命する。
原作では若い男性で、ラプトルから仲間を庇って戦い無惨な最期を遂げる。
どっちにしても彼の運命は、最後まで良いものではない。
- ロバート・バーク
演:トーマス・F・ダフィ(吹:塩屋浩三)
古生物学者。恐竜ハンター団のメンバー。恐竜の知識でサラと張り合うなど大人気ない性格。
中盤、雌のT-REXに襲われた際に滝に逃げ込むが、蛇に驚いて滝から出てしまい捕食される。
- ティモシー・マーフィ/アレクシス・マーフィ
演:ジョセフ・マゼロ(吹:不明)/演:アリアナ・リチャーズ(吹:不明)
前作に登場したハモンドの孫で、通称ティムとレックス。それぞれすっかり成長して登場。
前作ではマルコムとはあまり絡みはなかったが、命を助けられただけあり、かなり懐いている。
なお、日本語版の吹き替え担当者はどちらも正式に公表されていないため不明となっているが、声の質からして、前作と同じ(ティム役が「大島一貴」レックス役が「坂本真綾」)であると思われる。
- カーター
演:トーマス・ロサレスJr.(吹:不明)
恐竜ハンター団のメンバー。呑気に音楽を聞いていたばかりにディーターの事づけやSOSを聞き逃した。そのため、彼を殺した真犯人とも言える。
中盤、一行を襲撃してきた雌のT-REXに踏み潰され死亡。
演:カミーラ・ベル(吹:不明)
富豪の娘で、冒頭でイスラ・ソルナにクルージングに来ていたところをコンピーに襲われた。
幸い怪我だけで大事には至らなかった模様。しかしこの事件をきっかけに、ハモンドはインジェン社を追われ、恐竜調査隊が島に送られる事となったため、実は非常に重要な人物であったと言っても過言ではない。
原作小説第1作ではファーストネームこそ異なるもののクリスティーナ(ティナ)・ボウマンという少女が登場し、プロコンプソグナトゥスに噛まれてアレルギー反応を起こしている。
原作のみの登場人物
- リチャード・レヴィン
古生物学者。恐竜の調査のためガイドのディエゴとともにイスラ・ソルナを訪れる。
研究者としては優秀だが、自己中心的で人を馬鹿にする性格のため世間からは嫌われている。
彼の、知識はあるが実践では役に立たないという性質は映画のサラに受け継がれた。
- ジャック・ソーン
応用工学の専門家。愛称は「ドック」。職人気質の技術屋。アービーとケリーを可愛がっている。
レヴィンを救うためイアンらとともにイスラ・ソルナへ向かう。
映画ではエディとキャラが統合されている。
- アービー・ベントン
黒人の少年でレヴィンの助手。飛び級するほどの天才で特にコンピューターには非常に強い。
映画でケリーが黒人なのは彼とキャラが統合されたためと思われる。
- マーティン・ギティエレス
前作にも登場したフィールド生物学者。パークの事件の全容を把握している。
- ルイス・ドジスン
バイオシン社の遺伝子学者。前作では映画にも登場した。
恐竜の卵を持ち帰るべくイスラ・ソルナに乗り込むが、T-REXの幼体に狩りの練習台にされ死亡する。
映画ではラドローが彼の役割を担う。
- ハワード・キング
ドジスンの部下。度胸だけは満点のドジスンと違い肝が小さい。
ドジスンを見捨てて島から脱出しようとしたところをラプトルに襲われ死亡する。
- ジョージ・ベイゼルトン
生物学者。マスコミ慣れしているいわゆるテレビ学者。
ドジスンとともにT-REXの卵を盗もうと巣に入るが親に見つかり捕食される。
映画ではバークが彼の役割を担う。
登場する恐竜及び古代生物
体長・体重のデータは当時の映画版パンフレットによる。各個体の個別データではないので注意。
体長12.6m、体重8t。
今作では、夫婦と幼体の計3頭が登場(原作では幼体は3頭登場)。本土に上陸するなど、前作以上の暴れぶりを発揮する。実際の雌は雄よりも大きいとされているが、今作では雄の方が雌より大きく描かれている。
トレーラーや車を崖から落とし、多くの登場人物を捕食・殺害。
雄の方は捕獲されるものの運搬中に覚醒し、サンディエゴでも大暴れを繰り広げ、こちらでも民間人(カメオ出演した脚本家のデヴィッド・コープ)を食ってしまった。このクライマックスについては、スピルバーグ監督が提案したもので、大半のスタッフから反対されたが、彼は最後の最後まで諦めなかった事や、当初予定されていたクライマックスが没となったために実現した。
ちなみに、船員を全員殺害した後なのに船倉に閉じ込められていたり、明らかに攻撃が届きそうにない狭い操舵室の中の船員も殺していたりと、彼がサンディエゴへ乗り込むまでの流れには非常に穴が多い。
また、前作に登場した雌のT-REXは、時速約50キロで走り、ジープに追いつきかけるシーンがあったが、今作以降は時代の流れと共に解明していく事実に合わせて走行速度が抑えられており、どんなに速く走ってもなかなか人間に追いつけなくなっている。
詳細はティラノサウルスバック ティラノサウルスドゥ Tレックスジュニアを参照。
体長75cm。通称コンピー。トリアシクスというのは架空の名前。
ニワトリほどの大きさしかないが、まるでピラニアのように集団で狩りをする。冒頭でキャシーを襲い、ディーターも美味しく頂いてしまう。
体長7.5m、体重2t。
イアンたちが島に上陸後最初に遭遇した恐竜で、群れが登場。幼体にちょっかいを出したサラに怒って襲ってくる。正当防衛なのでエディにも撃たれずに済み、すぐに撤収した。
原作ではドジスンに殺されかけて気を失ったサラの前に現れ、顔を舐めて気付けの役割を果たす。この場面は第5作でシノケラトプスがオーウェン・グラディを起こすシーンでオマージュされた。
体長9m。
ローランド曰く「プレスリーみたいな派手な頭をしている奴」とのこと。ハンターたちと死闘を繰り広げる。
原作ではヴェロキラプトルに襲われる。
体長4.5m。シリーズ初登場の堅頭竜類。実物より小さい。自慢の頭突きでジープのドアごとハンターを吹っ飛ばす。
なお現在では、この強烈な頭突きを疑問視する学説が出てきている(劇中では、パキケファロサウルスがいかに頭突きに適した骨格を持っているかを説明するセリフがあるが、よりにもよってその骨格上の問題から疑問視されている)。
原作ではレヴィンが目撃する他、キングを襲撃する。
体長4m。前作ではT-REXから逃げていたが、今作ではハンターたちから逃げている。
原作には登場しない。
体長22m、体重27t。
大型の竜脚類。バイクに股抜きされるシーンがある。流石にハンターたちもこいつは捕獲できなかったようだ。
原作には登場しない。
体長4~12m(種類によって異なる)。T-REXの巣に頭蓋骨が一瞬だけ登場。「Dinosaur Protection Group(DPG)」の報告によるとイスラ・ソルナに生息していたのはエドモントサウルスだったとされているが、日本語版パンフレットやNewsweekのムックなどではハドロサウルスとされている。
原作には登場しない。
幼体共々ハンターに檻に入れられていた。脱走後に成体はハンターの装備を破壊し、パラサウロロフスやガリミムスなどと共に暴れまわる。
原作にも登場し、マルコムたちと遭遇する。
生体は登場しないが、調査隊のトレーラーにデータが表示されている。
体長1.8m。縄張りである草むらに入ってきたハンターたちを次々と容赦なく殺害する。
しかしその一方で、車のガラスに頭が嵌ったところをイアンに放置されたり、ケリーに蹴り飛ばされたりするなど、前作と違って知識的なシーンよりも意外と間抜けなシーンの方が多い。
そのため、この作品でのラプトルは全シリーズを通しても、最も地味な存在感と作品となった。
原作においても最大の脅威としてマルコムたちの前に立ちはだかる。その一方で、前作での共食いなどの残虐な振る舞いは幼少期に親に育てられず社会性を育まなかったために発現したものだとされ、野生で育った個体には同族に対する過剰なまでの残虐な行動は見られないとされた。この設定は映画第4作におけるラプトル四姉妹及びインドミナス・レックスの設定に受け継がれた。
翼長7.2m。初登場のプテロダクティルス類に属する翼竜。ラストでT-REX親子やステゴサウルスの群れと共に登場し、雄叫びをあげたところで映画は締めくくられる。
本来の脚本ではクライマックス担当のラスボスであり、通信センターに逃げ込んだ一行を襲撃し、パラグライダーやヘリコプターと攻防を繰り広げる予定だったが、その全てがまるごと没とされてしまった。
原作には登場しない。
インジェン社のハンターたちが持っている資料に登場。もっともイスラ・ソルナに本種が生息していたわけではなく、映画公開当時はプテラノドンと本種が同種とされていたため混同されただけである。
原作にのみ登場する恐竜及び古代生物
死骸がコスタリカの海岸に打ち上げられた。この死骸を解剖したエリザベス・ジェルマン博士は、本種はカメレオンのように体色を変えることができたと推測した。
オルニトレステスというのはあくまでレヴィンが推測しただけで、ラプトルなど他の恐竜だった可能性もある。
映画におけるコンプソグナトゥスで、「プロ」とは「原型」の意味。映画公開の時点ではこの恐竜に対する研究が進んでおり「プロ」は除かれた。パラサウロロフスの糞を啄んでいる場面が登場する。
レヴィンが目撃する。
通称ヒプシー。ぴょんぴょん跳ねる可愛い奴。
川辺に登場する。
ラプトルの巣で死骸が発見される。
ドジスンに盗まれた卵を追ってイアンたちの前に現れる。
レヴィンやガイドのディエゴ、ソーンを襲った肉食恐竜。番が登場する。小説版ではラスボス的な立ち位置である。
今作では上記のオルニトレステス同様、カメレオンのように体色を変えられるというオリジナル設定がある。この設定は、映画第4作に登場するインドミナス・レックスに受け継がれた。
関連タグ
イアン・マルコム ジョン・ハモンド エディ・カー キャシー・ボウマン スティーブン・スピルバーグ マイケル・クライトン
ジュラシックパーク ジュラシック・パーク ジュラシック・パークIII ジュラシック・ワールド ジュラシック・ワールド/炎の王国 インジェン社