解説
特撮などで、登場人物は普通の人間として日常の生活を送っているが、敵が出現した場合など、その敵を倒すために自分の姿を変える。
変身後は超人的なパワーを発揮したり、巨大化が伴ったり、魔法を使えるようになったりする。
普段の姿とは大抵かけ離れるため、正体を隠すための覆面としての役割も同時に発揮する。
変身の掛け声やポーズ・変身までの過程(変身シーン)などに特徴を持たせているものもある。
仮面ライダーG3やブルースワットのように手作業で装着してヒーローになる『変身ヒーロー』もいたりする。
スーパー戦隊シリーズのように、強化スーツ等を装着するだけで肉体そのものが変化するわけではない場合でも、「変身」と称されることが多い。
更に変身ヒロインなどにおいては、着替えや化粧をしただけのように見える場合や、配色が変化しただけの場合も変身と呼ばれたりする。
中には日常の姿が仮の姿で有って、変身後の姿こそが本来の姿である事も少なくない。
ロボットなどがパズル的に姿を変える場合は主に「変形」と呼ばれるが、トランスフォーマーの中には「変身」と叫びながらこれを行う者も多い。
ちなみに、「変身」および「変身ベルト」はバンダイの登録商標である。
返信と混同、変換ミスしないように注意。 例:「返信音」と「変身音」
由来
特撮ヒーローで「変身」の台詞の初出は、仮面ライダー2号(一文字隼人)と思われる。
「仮面ライダー1号・本郷猛」役の藤岡弘氏は、撮影中の事故により重傷を負い、入院を余儀なくされた。
スタッフは急遽「本郷は海外のショッカーと戦うために渡欧し、日本における後事は仮面ライダー2号に託した」という設定を考え、主演俳優の交代と藤岡氏の復帰に備えた。
同時に番組のテコ入れのアイデアを色々と考え、「人間からライダーへ姿を変える際に、ポーズを取らせ、何か掛け声を言わせる」と決まったが、適切な掛け声がなかなか思い浮かばない。
だがTVスタッフの一人が書店で偶然カフカの小説を見て「これだ!」と採用したという。
こうして仮面ライダーは子供たちの間で大ブームを巻き起こし、「変身」が流行語大賞に選ばれる事となった。
これを意識したのか「仮面ライダー龍騎」にて仮面ライダータイガ/東條悟が読んでいる本もまたカフカの「変身」である。
仮面ライダーシリーズでのヒーローの変身の際の口上はほぼ変身で統一されている。(アマゾンなどは『アマゾン!』、響鬼の場合は何も言わずに変身など例外はある。)
一方、戦隊の変身口上は仮面ライダーの差別化などから、それぞれのモチーフを連想させる口上になっている。(例えば手裏剣戦隊ニンニンジャーなら『シュリケン変化!』など。)
なお、先駆者であるウルトラマンは何も言わずに変身しており、『ライダー』と同時期にやっていた『ウルトラマンA』では敵の合体超獣が「変身!」と言うなどのパロディがあった(タロウ以降はヒーロー名を絶叫して変身するのが一般的になるが)。
一応、ウルトラセブンには「デュワッ!」という変身掛け声が存在。平成ウルトラマンなどはウルトラマンの名前を叫んで変身する事が多い。(ただし、そのように統一されている訳ではない。)
ちなみにウルトラマンダイナ/アスカ・シンを演じたつるの剛士も、「モーションがでかい東映ヒーローに比べてウルトラマンは腕を突き上げて叫ぶだけなのでちょっと地味」とネタにしていた。
尚、変身が子供達の憧れである故に、変身ヒーローを演じる俳優が日常で子供達に会うと、よく変身をせがまれるという逸話は有名である。無論キレのあるカッコ良いアクションができるスーツアクターさんがいないし、CGやアニメーション、合成を駆使した映像技術があって初めて完成する変身シーンは再現できない。そこで俳優達は『今は悪人がいないから変身できない』、『変身アイテムは置いてきたんだ』と子供達に話してその場を去るという。しかし、世の中強物はいる者で『僕、今(変身アイテム)持ってるよ!変身して!』と言われた際はやはり『ごめんね、悪人がいないと変身できないようになっているんだ』、『ごめんね、おもちゃ(市販の変身アイテム)では変身出来ないんだ』と説明するという。
小説
『青年グレゴール・ザムザはある朝起きると、自分が巨大な蟲に変わっている事に気付いた』
フランツ・カフカの代表作である小説。
今でいうサラリーマンの主人公は年老いた両親と大学を目指す妹のために必死で働く中、業績不振ゆえついに不正を起こして金を手に入れていった。
彼は苦悩し、外に出ることを拒む気持ちが積もる日々を送る中ついにその願いはかなった!?
巨大な蟲となって部屋にこもる一方、両親は再び働き始め妹も進学を諦め内職に取り組むこととなった・・・
フランツ・カフカは絶対に舞台芝居や映像にする事を拒んでいたとされる。
かってはカフカ自身、小説創作に取り組む中ほぼ部屋にこもりきりとなる日々を過ごした
そこから「変身」のアイディアを発想したとされる。
ちなみに、カフカ自身はチェコの人であるが、この小説はドイツ語で書かれている。
これは、チェコとドイツが隣同士であり、カフカはチェコ国内に一定数いた「ドイツ語を話すチェコ人」だったためである。
イースト・プレス社より小学生にも解る漫画版が出されてる。
続いて双葉社から中堅漫画家による父親の視点から描かれたリイマジネーション版がある。
近年になって映像化もされた。
近代小説家・東野圭吾もまた『変身』なる同名作品を出している。内容は別物。