モビルドール (MOBILE DOLL: MD) は、無人で自律行動可能なモビルスーツ(あるいはモビルアーマー)のことを指す。早い話が現在で言うAI(人工知能)をモビルスーツに組み込んだものである。
概要
モビルドール (MOBILE DOLL) とは、 "MOBILE Direct Operational Leaded Labor" の略称である。
OZの技師長ツバロフ・ビルモンが開発し、ロームフェラ財団の代表デルマイユ公爵が気に入ったことから採用された。後にその生産ラインを奪ったホワイトファングによっても運用されている。
既成のモビルスーツから改造されたものと、最初からモビルドールとして開発されたものがある。
他のパイロットの戦闘データをもとに作られた戦闘アルゴリズムが組み込まれ、完全な自律行動がとれる他、外部からの遠隔操作も可能である。
人体が耐え得る以上の高G機動とが可能であり、人間を遥かに超える反応速度と精密無比な攻撃力と併せ*、登場初期には有人機を圧倒、ガンダムでも悪条件下では、あえなく敗れることもあった。
しかしその反面、命がけだった戦いを、ゲーム感覚に変えてしまうという問題も発生した。
殺戮や破壊を自ら血を流すことなく行うことで戦争責任が希薄となり、その悲惨さを省みなくなるとして、劇中でもOZのトレーズ総帥を始め否定する者も多かった。
第18話でトレーズはモビルドールの実験の際、己の戦争への美学に反するものであるとして、自ら操縦するリーオーで実験に乱入しこれらを破壊、その意思を示した。
実戦投入当初には猛威をふるったモビルドールであったが、機械的な動きが読まれ易い事や想定されていない装備の応用の様な機転の利いた行動(例.アクティブクロークの開く動作で弾き飛ばす、ビーム兵器の質量のある部分で装甲の薄い部分を叩かれるetc)に弱いためか、後半にはヒイロ・ユイ達のような桁外れの技量を持つガンダムパイロットやそれ準ずるパイロットたちには「人形」呼ばわりされ、一蹴されるようになった。
「洗練された戦術プログラムにより有効な戦力となる」ということは、裏を返せば「プログラム通りにしか動けず、それを読まれればただの人形」であることを意味する。
実際、ホワイトファングが修復しガンダムパイロットのデータが組み込まれたはずのヴァイエイトとメリクリウスを同時に相手にしても、デュオ・マックスウェルは先に例示した装備の応用を用いた戦術でほぼ圧勝している。
融通が全く利かないのも欠点で、手動で設定を変更するか味方機の識別信号を出さない限り攻撃目標に設定された対象を見境無く攻撃してしまう。
ヒイロとデュオがOZの宇宙基地から脱出する際にリーオーとアストロスーツを攻撃目標に認識させた為にモビルドールトーラスが基地にある他のリーオーやアストロスーツを着たOZ兵士に対して攻撃し続けるという事態が起こった。
逆に一機でも敵に味方機を強奪された場合まともに攻撃出来なくなるのもかなり致命的で、カトル・ラバーバ・ウィナーが強奪したOZ所有のエアリーズには敵だと識別出来ず攻撃はおろかプラネイトディフェンサーすら完全なフィールドを形成する事もままならないままウイングガンダムのバスターライフルで殲滅されている。
なお、よくネットでは「5機のガンダムの開発者がモビルドールのプログラムに細工を施したおかげで地球国家軍のリーオーが互角に戦えるようになった」と書かれている事が多いが、実際にそれを行ったのはコミックボンボンの漫画版のみでありアニメ本編にそんな描写はない。モビルドール相手に80%と意外に生存率が高かった事を考えると実際にそれくらいはやっていた可能性は十分ありうるが…
しかし、ホワイトファングが主力としていたビルゴⅡは、ゼロシステムを応用したゼクス・マーキス考案の管制システムによって集中制御され、優れた戦術センスを持つ者が操作することで、ガンダムチームをも苦戦させた。
というのも、実は「最も効率の良い作戦を立案できるが、パイロットを含む味方の犠牲を考慮しない」ゼロシステムと、「高度な判断ができないが、パイロットが不要なのでいくらでも替えが利く上に、命令に絶対服従する」モビルドールは凶悪なレベルで相性がいいのである。
ほぼ困った時の万能兵器として使っていたツバロフが指揮を取っていたOZ宇宙軍時代とは違い、ゼクスはあくまで兵士の数を補うべくした配置を心がけていたほか、人間の使う戦術の一部として組み込んでいる。このゼクスの運用方法にはMDを心底嫌っていたトレーズさえも感嘆し、高く評価していた(逆にカーンズはほぼツバロフと同じ運用方法でしか使っておらず逆に戦力を無駄に浪費する結果しか生み出していない)。
後に地球へ宣戦布告するマリーメイア軍は、モビルドールを拠点防衛用システムや陽動撹乱程度にしか使用しておらず、戦闘における主力兵器の座は再び、サーペントやリーオーを始めとする有人MSに戻されていった。
なお、裏設定では『EndlessWaltz』でガンダムの廃棄に使われていた資源衛星は、ozの残したモビルドールのプラント「ウルカヌス」であり、内部には300体以上のビルゴが残されており、元々はこれらの廃棄に便乗する形でガンダムを廃棄しようとしていた(詳細は外伝漫画『BATTLEFIELD OF PACIFIST』で明かされている)。
ウルカヌスは終盤でガンダムと共に地球圏に戻ってきたのだが、ビルゴは使用されなかった。実際に使用すれば、射撃武器主体のサーペント相手なら有利に戦えたはずだが、何故使わずにトールギスやガンダムだけでサーペント500体と戦ったのかというと、「プリベンター・ウインド」ことゼクス・マーキスが
「モビルドールなど使っては前の大戦の繰り返しだ!」
と、断固拒否したため。
主な機種
OZ-01MD トーラス(有人モビルスーツ型もあり、無人型を指揮可能)
OZ-02MD / WF-02MD ビルゴ(初のモビルドール専用機)
OZ-03MD / WF-03MD ビルゴⅡ(生産ラインを奪ったホワイトファングの主力機)
OZ-04MD ビルゴ³(媒体によっては「ビルゴⅢ」とも。ビルゴⅡの出力強化型)
OZ-03MDⅣ ビルゴⅣ(マーズセンチュリー年代に開発されたビルゴⅢの改修機)
型式番号不明 Dユニット(MO-Vで開発された拠点防衛型)
モビルスーツ搭載型
OZ-06MS リーオー(有線誘導によるモビルドールシステム実験機)
OZ-12SMSトーラス(モビルドール型もあり、有人型に指揮される)
OZ-13MSX1B ヴァイエイト(ホワイトファングによってモビルドールとして運用)
OZ-13MSX1B-S ヴァイエイト・シュイヴァン(有人と無人の操縦系統の切り替えが出来る)
OZ-13MSX2B メリクリウス(ホワイトファングによってモビルドールとして運用)
OZ-13MSX2B-S メリクリウス・シュイヴァン(有人と無人の操縦系統の切り替えが出来る)
OZ-16MSX-06X プロトタイプ・スコーピオ(ガリアレストで開発された拠点防衛型)
OZ-16MSX-D スコーピオ(有人と無人の操縦系統の切り替えが出来る)
型式番号不明 キャプリコーン(有人と無人の操縦系統の切り替えが出来る)
似たような機体
スカルガンナー・ターミネーターポリス:『蒼き流星SPTレイズナー』に登場した無人SPT・テラーストライカー(TS)。モビルドールの先人と言える機体で、融通が利かないという欠点も共通している。
ガンダムビルドダイバーズのモビルドール
ガンダムWも作中作として存在すると思われるビルドダイバーズだがシステムを積んでいるわけではない。
ELダイバーであるサラを救うためにビルドデカールと組み合わせて現実世界に身体を移すべく生み出されたガンプラである。
モビルドール元のELダイバーの服装をベースに機械的なデザインとなり顔もデュアルアイの仮面になっている。
モビルドール・サラがこの手段で保護されて以降、安全な保護手段となったようで続編のモビルドールメイを始めとして様々なELダイバーが保護されている様子。
ナナセ・コウイチとシバ・ツカサがこの作業を担当しており、サラはコウイチが作成したものだがメイはツカサがメイン設計を担当している。
現実世界で活動可能な体だがガンプラであるためサイズは小さい。
また、ガンプラなので逆にGBNにも持ち込み操縦することができる。
コウイチ及びツカサのビルダーとしての腕もあってか機体性能も高い様子。
このモビルドールとしての姿は別に本人に似たものである必要はなく、ガンダムビルドダイバーリゼのELダイバーであるリゼはコアガンダムリゼをモビルドールとして採用している。
なお、モビルドールの名称はモビルドールサラをデザインした形部一平によるもの。Twitterで「自立型MSということでGBNが分類”モビルドール”と判定」としているがそのツイートでも述べているように公式ではない。
他作品での関連タグ
スメラギ・李・ノリエガ:機動戦士ガンダム00の登場人物。スーパーロボット大戦Zシリーズにおける基礎理論の開発者
ハシュマル-機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズに登場する無人大型モビルアーマー。ある意味モビルドールが主体となった戦争における最悪の状態を作り出した。
ゼファーガンダム:『アウターガンダム』に登場した自立行動可能なMSでガンダム作品におけるモビルドールの先駆者といえる。ただしゼファーは自己学習型AIを搭載しているため経験を重ねるごとに融通の利く機体となっていく点が異なる。