概要
具体的に含まれた意味としては「いつか自分たちを殺すであろう者達の支持者」。
すなわち、「本来ならば不都合な、対立的する思想を持つ者に好感を抱く」という矛盾した状態を表している。「敵に塩を送る」に近い一種の利敵行為と見ても良いかもしれない。
「対象の実態を知らない、そもそも調べようともしない情弱」という意味が込められる事もある。
発祥は2000年代末のフェイクニュース「肉屋を熱烈に支持するブタたち」という一文とされる。英字新聞の和訳という触れ込みであったが、今日に至るまで一次資料が発見されておらず、完全に日本で作られた造語とする説が濃厚となっている。
一応似たような意味になる表現として「クリスマスに賛同する七面鳥」なることわざはあり、そこから着想を得ている可能性はある。メイン画像はどちらかと言うとこちらに近い。鳥だし。
背景
おそらく「萌え豚」というネットスラングも念頭に置かれていると見られる。
当時のネット上における大きな関心事は「表現規制」であり、特に「先進的」とされた東京都の政策に対してはここpivivでも「青少年健全育成条令改悪反対」なる記事が作られるほど批判が強まっていた。
一方国政においては麻生太郎(2008~09年内閣総理大臣)および自民党への支持が厚く、麻生の側も「オタクの聖地」秋葉原で重点的に選挙活動を行うなど当時の首都圏を中心としたオタクとの相思相愛とも言える関係を演出していた。
しかし、その麻生は単なる漫画好きでしかなく、表現規制に前向きな宗教保守であり、この状態が続けば規制が全国に波及しかねないという危機感がこの言葉を用いる原動力となった事は想像に難くない。
また、「醜く肥え太った資本主義の豚共」というアジテーションが意識されている可能性もある。
元々は冷戦時代に「西側世界」を揶揄する目的で盛んに用いられていた言葉だが、当時の日本を含む西側出身国では新自由主義による格差社会が問題となっており、まさに「肥え太る勝ち組」と「痩せ細る負け組」への二極化が現実のものとなっていた。
少し遅れて「ブラック企業」や「社畜(家畜のように扱われる労働者の意)」という言葉も広まっており、決してネットでも問題意識は低くなかったはずなのである。
麻生はこの解決にも消極的であり、肥え太る勝ち組の極致である麻生を今以上に強くしようとする愚かさが説かれたわけである。
影響
結局麻生政権は直面したリーマンショックに対応しきれず国民の不興を買い、短命に終わった。
後任は自民党ですらない民主党政権となり、この言葉の目的は一応達成されたと言える。
もっとも民主党政権も満足の行く対応を打ち出せず、本格的な景気の回復は安倍晋三と共に再び政権に返り咲いた自民党を待つこととなる。
麻生も失脚したわけではなく副総理兼財務大臣という重鎮に留まり、「アベノミクス」の実行役などとして大いに権力を振るい続けた。
それらも必ずしも評判の良いものではなかったが、選挙で信を問われると最終的に自民党が大勝して追認されるという構図が常態化し、安倍・麻生は空前の長期政権を維持しながらほとんどフリーハンドに等しい状態で政策を進行させていった。
その一因は「豚」と呼ばれた人々が政権の「岩盤支持層」となって支え続けた事にあり、それはすなわちこうした批判がかえって「北風と太陽」式に彼らをより麻生や自民党に懐かせた事に起因していると言っても過言では無い。
また、当初の表現規制問題にしても、結局東京都を含めて大きな混乱には至らず、最早往時のような危機感は消え去っている。
「萌え豚」が自ら「ブヒる」事をアピールし始めたように、この言葉を使われても何の問題ですか?と開き直る人の方がかえって多くなっている。
そのため現在では、「杞憂」や「針小棒大」という意味を込めて使われる傾向が強くなっている。
「豚」の非対称性
では、なぜオタクや社畜は「豚」と蔑まれても強固に自民党を支持し続けたのだろうか。
それは民主党、ひいてはリベラル思想というものがフェミニストや日本教職員組合といった勢力と強固に結び付いている事が大きく関係している。
彼女達もまた女性や子供の人権を守るといったお題目による表現規制を敷きがちであり、支持母体となっている関係上それを民主党が拒否できる可能性は限りなく低い。
仮に長期間押し留められたとしても、「これからの時代はポリティカル・コレクトネスに配慮したオタク文化を」などと「革新」を求め始め、変質は免れない。
すなわちリベラル思想の中ではアダルトビデオだのエロゲだのロリコンだのの話が以前のようにできる望みは無く、差別主義者や犯罪者予備軍のレッテルを押されて糾弾されるというオチが目に見えていたのである。
経済政策にしても、格差の是正や社会福祉の充実それ自体には賛成の声が多かった。
しかしリベラルの基準に則れば、女性や子供、あるいは障害者やLGBT、更には在日外国人(当時は外国人参政権への反対を始めとした、ナショナリズム的な運動が盛り上がった時代でもあった)といった「より弱い」存在を優先すべきとされている。
社畜とは言え職のある男性などはその後か、下手をすると強者判定で助ける側に駆り出される可能性すら考えられ、ならば弱肉強食の方がマシだという勘定が成り立った。
日本教職員組合などは労働組合であったが、それらも政治への関与を図る過程で似たような状況に陥っており、最早労働者のための存在ではないと見做されていた(そもそも企業別に組織される傾向が強い日本の労働組合は、この時期急増していた非正規雇用者などの存在を想定しておらず、それ自体が格差社会や既得権益の象徴にすらなっていた)。
本来嚙み合わない人間をこぞって支持するという不思議な現象は、こうして生じたのである。
同様の事例は後に「ゲーマーゲート論争(参考)」としてアメリカ合衆国でも発生しており、それはドナルド・トランプを大統領にする上で大きな役割を果たしたと総括されている。
余談
現在では後者の用法から派生する形で、特定のメディアコンテンツを利用するファンやユーザーに対し、それらに否定的な考えを持つ層が「こんな質の悪い作品(コンテンツ)とそれの制作元を思考停止で支持、利用し続けている馬鹿な信者」を指すような揶揄的な意味合いで用いてくるケースも確認されている。
精肉店や飲食店などでは、商品としている動物達をシンボルやマスコットにしている所も少なくない。中にはすごくいい笑顔で客引きをしていたりするが、この言葉とは特に関係無いと思われる。
関連
ネット右翼:言う側も言われる側も同じ勢力と認識している節がある。
レッテル貼り 誹謗中傷:そして言われる側は十中八九こうとも認識している。
男性差別:つまるところ彼らが感じていたものはこれであった。
ニコニコ大百科 肉屋を支持する豚:当初から麻生の支持者が多い環境だったという事もあり、付属する掲示板では様々な角度からの否定意見が見られる。