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ラディオドンタ類の編集履歴

2023-04-06 02:10:09 バージョン

ラディオドンタ類

らでぃおどんたるい

ラディオドンタ目に分類される古生物のこと。アノマロカリス、ペイトイア、フルディアなどが属する。

概要

原始的な節足動物のグループの1つ、ラディオドンタ目学名:Radiodonta、放射歯目とも)に分類される古生物のこと。

一昔前では「アノマロカリス」とも呼ばれてきたが、アノマロカリスだけでなくペイトイアアンプレクトベルアフルディアなどという、アノマロカリスでない種類をも含んだ多様なグループである。


ほとんどの種類は5億年前のカンブリア紀に生息し、カンブリア紀を代表するほど有名なグループであるが、数百~千万年後のオルドビス紀エーギロカシス)とデボン紀シンダーハンネス)に生息した種類もわずかに発見される。


頭部は背面と左右を包んだ甲皮・眼柄に突出した1対の複眼関節に分かれた1対の触手(前部付属肢)・放射状に口を囲んだの無い胴部に数多くのがあるという、現生の動物に見られない独特な特徴の組み合わせを持つ。


体長は多くが30cmから50cm(最小種6cm、最大種2m)で、カンブリア紀の動物にしては大型である。


体の特徴

頭部

正面には本群のアイコニックな特徴である1対の触手(正式には「前部付属肢」)がある。硬い外骨格に覆われ、数多くの関節と棘がある。その構造は種類により様々で、食性や機能に応じて触手状(獲物を巻くように掴む)・ハサミ状(獲物を挟む)・熊手状(籠のように獲物を囲む)・ブラシ状(プランクトンや微小な有機物質を濾過摂食する)など多岐にわたる。


左右には1対の複眼があり、眼柄で突き出している。一部の種類は頭頂部にさらに1つの目も兼ね備え、目が合計3つとなる。

腹面のは名前(ラテン語 Radius 放射 + odoús 歯 で Radiodonta 放射歯)に表れるように、で放射状に囲まれるのが普通である。これは紋章のような形で、そのうち十字方向の4枚か三角方向の3枚の歯が特に大きい。


また、頭部にはヘッドギアのような3枚の甲皮があり、それぞれ頭部の背面と左右を覆いかぶさる。その形は種類により小さなパット状のもの(アノマロカリスアンプレクトベルアなど)がいれば、甲羅のように大きく発達してたもの(フルディアエーギロカシスなど)もいる。


の構造は学説により1節と2節で意見が分かれるが、いずれにせよ今の節足動物(3節)よりシンプルである。


胴部

胴部は十数ほどの体節に分れるが、柔らかくて外骨格はない。部に向けて次第細くなり、前の数節は退化的で「」となっている。遊泳用のは通常体節ごとに1対のみを持つが、背側が更に1対を持って鰭が体節ごとに背腹2対になる種類もいる(エーギロカシス、ペイトイアなど)。


体節ごとに櫛のような構造体に覆われ、これは呼吸用のだと考えられる。尾部の構造は種類により様々で、扇子のような尾鰭(アノマロカリス、フルディア、カンブロラスター)・対になる長い尾毛(アンプレクトベルア、ライララパクス)・1本の棘(シンダーハンネス)・ただの丸い突起(ペイトイア)などが挙げられる。


鰭を操る筋肉は発達で、コウイカエイのように両筋を波打つして泳いでいたと考えられる。の左右には盲腸が並び、これで効率よく食物や栄養を消化・吸収できたと考えられる。


主な種類

ラディオドンタ類は多彩なグループであり、2023年現在、既に40ほどの種が知られている。

以下は有名な種類(属)のみピックアップする。

(「脚のあるアノマロカリスの仲間」として一般に知られるパラペイトイアは、実は全く別系統の節足動物の残骸を誤って本群の形に復元したものであり、注意すべし)


アノマロカリス

Anomalocaris

アノマロカリス

(画像は旧復元)

体長最大約40cm、カンブリア紀に生息。カナダ中国オーストラリアから発見される。

言うまでもなく本群で最も有名な属。長大な触手、三叉槍状の棘と扇子状の尾鰭を持つ。


紛らわしいが、単に「アノマロカリス」の場合は本属のみを示し、アノマロカリス類/ラディオドンタ類全般ではない所は要注意である。


アンプレクトベルア

Amplectobelua

アンプレクトベルア

(画像は旧復元)

体長最大約50㎝、カンブリア紀に生息。カナダ、アメリカと中国から発見される。

鰭は横に長く、ハサミ型の触手と1対の尾毛を持つ。首には3対の顎のような構造をもつ。


ペイトイア(旧名:ラガニア)

Peytoia(旧学名:Laggania

ラガニア

(画像は旧復元)

体長最大30㎝、カンブリア紀に生息。カナダ、アメリカと中国から発見される。

平たい楕円形の体型で、尾部は単調で何もない。


フルディア

Hurdia

フルディア

(画像は旧復元)

体長最大約30㎝、カンブリア紀に生息。カナダ、アメリカ、中国とチェコから発見される。

円筒形に丈夫な体型で、頭部背面はしずく型の巨大な甲皮を持ち、口は多重構造になっている。


ライララパクス

Lyrarapax

体長最大8cm(最小級のラディオドンタ類)、カンブリア紀に生息。中国のみから発見される。

鋸歯のあるハサミ型の触手と、アンプレクトベルアに似た長い鰭と尾毛を持つ。最初に発見された化石は脳の痕跡まで残されることで有名。


タミシオカリス

Tamisiocaris

体長おそらく30cm前後(体は不明)、カンブリア紀に生息。グリーンランドとアメリカから発見される。

ほぼ触手しか知られていないが、「ラディオドンタ類=獰猛な捕食者」という従来の認識を覆し、ブラシのようなの触手でプランクトンを食べたと考えられる。


シンダーハンネス

Schinderhannes

シンダーハンネス

(画像は旧復元)

体長最大10㎝、デボン紀に生息。ドイツのみから発見される。

尖った1対の鰭と剣のような尾を持つ。唯一に知られるデボン紀ラディオドンタ類であり、その発見のおかげでラディオドンタ類の生息時代はカンブリア紀から数千万年にも超えたと判明した。


エーギロカシス

Aegirocassis

体長最大2m(最大級のラディオドンタ類)、オルドビス紀に生息。

体長の半分を占めるほど長大な甲皮と、多重の濾過装置た似た触手を持つ。タミシオカリスと似て、プランクトン食であったとされる。


カンブロラスター

Cambroraster

体長最大30cm、カンブリア紀に生息。カナダと中国から発見される。

カブトガニ甲羅に似た巨大な甲皮をもつ。遊泳能力は他のラディオドンタ類より低く、海底で餌を探していたと考えられる。


スタンレイカリス

Stanleycaris

体長8cm、カンブリア紀に生息。カナダとアメリカから発見される。

上下とも棘だらけな短い触手と2対の尾毛を持つ。3つの目を持つことが最初に判明したラディオドンタ類である。


発見

1892年で最初に見つかったアノマロカリスの触手化石がコノハエビという甲殻類の腹部と誤解されることをはじめとして、様々なラディオドンタ類の歯・触手・その他の体組織がバラバラの状態で発掘され、当時はそれぞれが別の生物の化石として記載されていた(胴部→ナマコの「ラガニア」、歯→クラゲの「ペイトイア」、触手→コノハエビの「アノマロカリス」)。本群の全体像が明らかにされたのはその後の1980年代の事であり、各部位に与えられた名も、うちいくつかそれを持つ各種のラディオドンタ類の正式名称として残された。


しかしこれで全てが確実になったは言えず、特に初期の復元では、実は数種のラディオドンタ類の特徴を誤って1つの種類に足し込んだことが後に判明したケースも少なくない。アノマロカリスとペイトイアを足して二で割るような最初期のアノマロカリスの復元(異なった2種の化石が同種のものと考えられた)や、長い間にアノマロカリスのものとして混同されたペイトイアとフルディアの歯(この3種の歯は実はそれぞれ異なった構造をもつ)などが有名な例である。


従来、ラディオドンタ類はカンブリア紀特有の古生物と思われていたが、2010年代以降では、オルドビス紀のエーギロカシスとデボン紀のシンダーハンネスが発見されることにより、ラディオドンタ類は1億年以上まで生き延びていたことが明らかになった。


分類

ラディオドンタ類は一見で現生のどの動物とも似ておらず、一時期では既存の動物群に分類不可能な「不詳化石」まで考えられた。しかし21世紀末以降では研究が飛躍的に進んでおり、関節のある触手・複眼・腸の構造などの特徴により、節足動物であることが強く示唆される。一方で、本群は胴部に(節足動物において一般的な)外骨格はなかったため、頭部の複眼と外骨格を進化したが、胴部の外骨格をまだ揃っていない原始的な節足動物であることも示される。ラディオドンタ類によく似て、同様にカンブリア紀に生息したオパビニアケリグマケラパンブデルリオンも、共に原始的な節足動物として広く認められる。


「有爪動物/カギムシに近い」という情報はネットで散見しているが、誤解を招くしかねない過度解釈である。柔軟な体と近年において判明した脳の構造はカギムシに似ているが、これらは単にカギムシと節足動物の共通祖先の名残であり、別にカギムシの系統に近いことを示唆するわけではない。また、ラディオドンタ類とカギムシの口は似ていると言われがちけれど、実際には全く別の構造であり、共通でない(ラディオドンタ類のは口そのものに由来する硬質な歯、カギムシのは口周辺の外皮組織に由来する柔軟な突起物)。


系統関係

汎節足動物

┣━有爪動物の系統

┃ ┣━アンテナカンソポディアなど(葉足動物)

┃ ┗━有爪動物(カギムシ

┣━緩歩動物の系統

┃ ┣━?(葉足動物)

┃ ┗━緩歩動物(クマムシ

┗━節足動物の系統

  ┣━メガディクティオンなど(葉足動物)

  ┗┳━パンブデルリオン

   ┣━ケリグマケラ

   ┗┳━オパビニア

    ┣━ラディオドンタ類

    ┗━他の節足動物


関連項目

節足動物 恐蟹綱

オパビニア ケリグマケラ パンブデルリオン

古生物 カンブリア紀 バージェス動物群 澄江動物群 シリウス・パセット動物群

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