概要
石油(せきゆ、英語:Oil)は、地面の奥底から湧き上がってくる炭化水素の液体。色々な化学物質を不純物が無いままで合成できる素になるので大変重宝されている。
石油から多種のガス系物質や固形樹脂を生産できるのとは逆方向に、炭素や炭化水素を触媒反応を利用して液体の石油類に加工する技術(C1化学、CTL・GTL)もある。ただし本質が燃焼作用なので、元の3割ほどは失われる。メタンや石炭があれば製造できる為、シェールガス・メタンハイドレート・メタン菌などによるメタン合成やバイオコークスが着目される所以である。
起源
地質時代のプランクトンが地面・海水の圧力を受け、何億年もかけて液化したものというのが有力な説である。古代に浅い海だった地域で多く発見されるのがその根拠の1つとされるが、1877年1月にドミトリ・メンデレーエフが無機起源を提唱した事から、東側諸国ではこれが従来から定説とされていた。西側諸国では1979年1月頃からトーマス・ゴールドがこの説を提示したが、未だに全体を塗り替えるに至っていない。
利用
分留して燃料・舗装材として利用し、他にも他の有機物に合成するなど多岐に亘る。
分留で製造される石油製品
石油から製造される合成品
状況
現在では産油国と呼ばれる国で多く採掘されている。掘削しやすい石油の存在には地域的な偏りがあるので、過去多くの戦争や政治問題を招いてきた。これに対して無機起源説でないと説明が付かない油田は総じて深さが5キロメートル以上もあり、既にある大多数の油田に比べると地域的な偏りが少ないが、深く掘る必要があるのでその分コストが嵩む。
採掘された状態を原油と言い、これを精製して各種の石油製品とする。原油は無限に採取できる訳では無く、約50年後に枯渇する(可採年数)と言われる。これは経済的に掘り出せる石油の量(可採石油資源量)を年間採取量で割ったもので、原油価格の上下で増減する。オイルショックの頃は30年後とも言われていたので延長が著しいが、これは新たな油田が見つかったと言うよりも、原油価格が高騰したので掘削に高いコストを掛けても経済的に引き合うようになった事が大きい。
1999年3月から原油価格が上がった事で、以前はコストが高くて放置されてきたシェールオイルの開発が再開された。アメリカとカナダで生産される石油の一部はオイルシェールを熱分解して生産され、ガスとオイルは事実上北アメリカ1極で生産している状況にある。
価格の推移
1986年3月から1999年3月頃にかけては原油価格が安く、湾岸戦争の前後を除くと1バレル20ドル前後で安定していた。国内のガソリン価格は円高で下がり続け、1999年6月当時でさえも最安値が1リットル当たり91円の安さであった。
2008年7月には1バレル147.27ドルまで上がり、同年8月に日本国内でのガソリンの小売価格は1リットル当たり185円に達した。石油の高値傾向は先進諸国(アメリカ以外)での省エネの取り組みの原動力であり、アメリカとカナダがシェールオイルとシェールガスの大量生産に乗り出す契機となった。ところが開発が過熱したシェールオイルがダブつくようになり、新興国の景気が減速したのを期に、2015年12月に原油価格が66パーセントも急落した。
ハイブリッド自動車などのエコカーが普及し、太陽光発電などの再生可能エネルギーが成長して世界の石油需要が頭打ちになる中、OPECとロシアは協調減産でさらなる価格の下落を食い止めていた。しかし2020年3月にロシアとサウジアラビアが減産交渉を決裂させたのを期に両国が大幅に増産させ、同年4月に新型コロナウイルス感染症による石油の需要が減った事も重なって原油価格が暴落し、北アメリカではシェールオイル事業者の経営破綻が相次いだ。
同年6月頃からは各国が経済活動を再開させる動きが進んだ事から原油価格は上昇に転じ、2021年1月以降は一貫してそれが続いた。同年10月には1バレル80ドル代を付け、国内のガソリン価格も1リットル当たり170円を超えている。この背景には「産油国が感染が再び拡大して再び原油価格が暴落するのを恐れて増産に慎重になっている。」・「アメリカが環境問題からシェールオイルの生産を制限している。」からである。
ヨーロッパでは脱炭素として火力発電所が次々と閉鎖されるも、風力発電所の電力が期待ほどでは無かったので天然ガスの緊急調達に走り、原油も連動して価格が上がっている。原油高は各国の経済の重荷になっており、様々な商品の品薄や値上げの原因になっているが、特に日本は円安が進んでいるので大きな痛手となっている。
環境
不純物を含んだ石油をそのまま燃やすと、強い毒性を有するNOx(窒素酸化物)やSPM(粒子状浮遊物質)が大量に発生して大気汚染の原因になる。更に十分に換気されていない場所で燃焼させても有害物質を発生させる原因になる為、環境基準で適切に精製した石油製品を販売するよう定められている。脱税の目的で混ぜ物をした石油製品(不正軽油など)を使用する事は、大気汚染の元凶にもなるので絶対にしてはいけない。
ちなみに石油を燃やすと大量の水(燃やした石油の量に匹敵する)が発生する為、石油ストーブを使っている部屋は、石炭や薪のストーブがある部屋より湿度が維持しやすい。ただしFFストーブは燃焼した後の空気を排出してしまうので、石炭や薪のストーブと同様に乾燥問題が発生する。
日本の石油事情
大量の石油消費国であるが、その大半を外国からの輸入に頼っており、太平洋戦争を開戦させる理由の1つにもなった。北海道・新潟・秋田・山形に零細ながらも油田が存在し、産出量は年間約86万キロリットルで、自給率は0.02パーセントである。
バブル時代以降は人件費が高騰して中東産に勝てず、この当時には約25万キロリットルほどにまで落ち込んでいたが、採掘条件が良い油田の枯渇・投機による石油取引価格の乱高下・冷戦が終結した後の中東情勢の不安定さから再び増加に転じた。東シナ海の日本の排他的経済水域内には石油もかなり埋蔵されているのでは無いかと言われている。深海底なので採掘は高いコストになるが、現状より更に石油価格が高騰すれば採算が合うようになる可能性がある。