概要
人権を侵害したり、著作権を侵害したり、宗教的規範に反したり、犯罪などを誘発しかねない表現に対する規制である。日本では日本国憲法第21条第1項において規定されている国民の権利である「表現の自由」と相反することであるため、しばしば論争が巻き起こっている。
なお、暴力表現や性的表現が犯罪を誘発するという証拠はない(むしろ、表現規制が強化されると性犯罪が増加する傾向がある)ものの、アメリカ合衆国では1980年代後半から人種差別や女性差別のもたらす社会的害悪を根拠に、マイノリティに対する差別的な表現規制を正当化する議論が目立つようになってきた。しかし米国ではヘイトスピーチ規制をはじめとしたマイノリティの権利救済のための表現規制が政府による思想の自由市場への介入であり違憲無効だとする判例が出ている(ヘイトスピーチの記事を参照)。
一方で、国家による表現規制には当たらないものの、決済ブランド(クレジットカード会社)から電子書籍などのコンテンツ配信業者に対する成人向けコンテンツなどへの締め付けが厳しくなっており、PixivなどのUGC(User Generated Content、ユーザーによる投稿コンテンツ)プラットフォームもその影響を受けるようになってきている。
主な表現規制
法令による規制
第174条の「公然わいせつ罪」と第175条「わいせつ物頒布等の罪」により規制される。性や裸体を扱った作品で局部への修正が必要な理由にもなっている。
児童ポルノ禁止法
成人していない児童に対する性的虐待や性犯罪を防止するための法律である。日本では二次元の絵に関しては「被害者」が存在しないため、現状は規制対象とはされていないが、今後は諸外国と同様に二次元も規制対象とすべきとする意見も根強い。
著作権法
一次創作において、著作者の知的財産権の一つである著作権の範囲と内容について定める法律。主にコピー製品である海賊版を取り締まる際の根拠となる法律であるが、二次創作が海賊版とみなされることがある。
業界による自主規制
テレビなどでの差別発言を禁止する自主規制。しかし、差別されているとされる側の「この表現が不快である」という主観的感覚にもとづいているため、差別されているとされる当事者の発言は許容されることが多い。
作品を閲覧できる年齢を定めた自主規制。年齢指定。日本では、映画における映倫や、コンピューターゲームにおける「CERO」などの「業界団体によるレイティング」が導入されている。
要は公的機関による検閲が憲法などの法律で禁止されている場合のレイティングは「業界団体による自治」で行なうしかなく、逆に、独裁政権により統治されている国(中国、サウジアラビア、1980年代の民主化前の韓国など)では、日本における映倫に相当する機関は業界団体ではなく公的機関となる。
著作権者側で設定した二次創作に関するガイドライン。詳細は当該記事を参照。
決済ブランドによる表現規制
国際クレジットカードブランドによる自主規制。「決済仲介停止」と圧力をかけてプラットフォームに対して事実上の表現規制をさせる。FANZAやpixivもその影響を受けた。