概要
1993年6月6日発売。
『ゼルダの伝説』シリーズ4作目。シリーズとしては初の携帯ゲーム機タイトルとなる。
ストーリー上は1991年発売の『神々のトライフォース』の後日譚にあたる(『ゼルダの伝説大全』より)。ただし、特に直接関係を示す描写はなく、ストーリーは独立したものとなっているため、続編というわけではない。
システムとしては初代『ゼルダの伝説』に近い。
『ゼルダの伝説』シリーズとしては外伝的な位置付けとなっている。
これまでの作品のオマージュが盛り込まれているほか、地下に潜れば●リボーや●ックンフラワーが、ダンジョンでは星の●ービィが現れるなど、任天堂の他のゲームタイトルからのゲストキャラクターやパロディをふんだんに取り込んでいる。
「ゲームボーイのタイトルとして最高のものを作る」という目標を掲げ製作された本作は、ハードウェアでの表現力を補うべく、前作までの「ゼルダの伝説シリーズに比べるとストーリーに力が入れられている。
コミカルで賑やかな世界観と切ないストーリーに根強いファンがいる。
一癖も二癖もある個性的な登場人物が数多く登場する、というその後の『ゼルダの伝説』シリーズの雰囲気に大きな影響を与えている。
また、初めてゼルダの伝説シリーズでゼルダが出て来ない作品でもある。
1998年にゲームボーイカラー対応ソフトとして『ゼルダの伝説 夢をみる島DX』が、2019年にNintendo Switch対応ソフトとしてフルリメイク作が発売された。
プロローグ
魔王ガノンからハイラルの平和を取り戻した勇者、リンク(※)は、新たな災いにそなえて修行の旅に出た。
異国での修行を終え、ハイラルに向かう航海の途中、リンクの乗る船は嵐に見舞われる。雷に打たれ、彼は意識を失ってしまう。
「あっ!気がついたのね。よかった!」
リンクは少女の声で目を覚ます。彼女の名前はマリン。マリンによると、ここは高くそびえる山の頂上に巨大なタマゴを抱く不思議な島、コホリント島。リンクはその海岸に流れ着いたのだ。
リンクは落としてしまった剣を探して、自分が漂着したという海岸に向かう。そこで出会った1羽のフクロウがリンクの姿を見て謎めいた言葉を告げた。
「ホホウ、なるほどなるほど。魔物どもが暴れ出すわけぢゃ。かぜのさかなの目覚めを告げる使者が現れたのぢゃからな」
フクロウによれば、『かぜのさかな』を起こさぬ限り、リンクはこの島から出られないと言う。
果たして『かぜのさかな』とは何なのか。リンクは無事にコホリント島を脱出し、故郷ハイラルに帰ることが出来るのか。島に隠された謎をめぐって壮大な冒険が始まる。
(※)…正確には取り扱い説明書のストーリーでは「あなた」表記。
登場人物
リンク | マリン |
---|---|
主人公。コホリント島から出るべく風のさかなを目覚めさせる『目覚めの使者』として、ダンジョンを周りセイレーンの楽器を集めることとなる。『神々のトライフォース』のリンクと同一人物。 | ヒロイン。コホリント島に漂着したリンクを助けた心優しい少女。歌をうたうのが大好き。島民からも人気があるアイドル的存在。リンクがゼルダ姫と見紛う容姿をしている。シリーズにおいて初めて登場したゼルダ姫以外のヒロイン。 |
タリン | フクロウ |
画像中央下の中年。マリンの父親(GB版の取扱説明書より)とのことだが、マリンからは呼び捨てにされている。のんびりした性格。ヒゲを生やしており、熱狂的なキノコ好き。 | 主人公の行く先々に現れる謎の存在。次に進むべき道について示してくれる。 |
ほかにも、ゲストとして『スーパーマリオUSA』のヘイホーやマムー、『カエルの為に鐘は鳴る』のリチャード王子(また、彼の居城が「カナレット城」という名前でミニダンジョンとして登場する)なども出演している。
DX版では写真屋さんというネズミが、Switch版ではダンペイが追加キャラクターとして登場する。
アイテム
装備アイテムに関しては前作『神々のトライフォース』から引き継いだものがほとんど。
なお、詳しくは後述するが2019年のリメイク版では装備システムが変化しており、剣や盾は常時装備扱いとなっている。
ロック鳥の羽根
装備するとジャンプができるようになる。作中唯一の新規アイテムにして数々の謎解きに使用する最重要アイテムと言って過言でない。
さらに今作ではジャンプ中の攻撃判定が見た目通り上方にずれるために上に壁を挟んだ敵をノーリスクで攻撃できる・斜め移動がちょっと速いといった便利な仕様(あるいはバグ)もある(『ふしぎの木の実』では修正されてしまった)。
とりあえず何もなければ装備はこれと剣が安定である。
オカリナ
前作神トラとは異なり、複数の効果の異なる曲を選択して吹くシステム。次作『時のオカリナ』にも引き継がれた。
装備時に選択肢が出るので邪魔である。
盾
今作ではシリーズで初めて明示的にボタンを押して使うようになった。
一部の謎解きには使うものの、大抵他の必要なアイテムに押され装備されない。影の薄いアイテムである。
ブーメラン
ある場所で装備品と交換でブーメランが入手できる。スコップの活躍が終わった頃にスコップと引き換えにする人が多かった。
アイテムコンボ
本作ではボタンの少なさから他機種のような剣ボタン・かつぐボタンのような固定機能はなく、アイテムを自由な組み合わせで2つ装備できる。
いくつか特筆すべき組み合わせがある。
★竜巻斬り
ロック鳥の羽と剣のコンボで、ジャンプ中に溜めを放って回転斬りを繰り出す。後にソードカービィも、同名の酷似した技を使えるようになった。
★ダッシュ突き
剣とペガサスの靴のコンボで、走りながら突きをお見舞いする。これでしか倒せない敵もいる。
★ダッシュジャンプ
ペガサスの靴で走りながらロック鳥の羽根でジャンプ。3マスの穴を軽々と飛び越す。
★爆弾の矢
弓矢と爆弾をAボタンかBボタンにそれぞれ割り振って装備すると、ABボタン同時押しで矢の先に爆弾を装着した爆弾の矢が発射される。
発射のコツは、爆弾を置いてすぐに矢を放つこと。
矢と爆弾を両方消費するが、通常の矢を遥かにしのぐ攻撃力になる。
また、着弾後すぐに爆発するので、早く壁を壊したりすることもでき、爆弾単体で使うよりも敵に逃げるスキを与えにくい。
溶岩の先の壁を壊すことで通常想定されていないと思われるルートでのダンジョン攻略も可能。
名所案内
- メーベの村
冒険の拠点となる場所。
- 島の図書館
島で唯一の図書館。冒険の中で必ず、一度は訪れることになるだろう・・・。
- 夢の祠(ゆめのほこら)
メーベの村に存在する謎の多い祠。島の住人たちはその存在は把握しているものの、誰も内部を確認していないらしい。
- 看板の迷路
草原の向こうにある迷路のアトラクション。『スーパーマリオUSA』のマムーが登場する。
- 『いまはやりのゲーム』
いわゆるクレーンゲーム。村にゲームセンターがある。夢をみる島よりも遥か未来にリリースされた『バッジとれ~るセンター』のパロディとの噂。
- どうぶつ村
言葉を話す動物たちの暮らしている村。夢をみる島よりも未来にリリースされた『どうぶつの森』のパロディとの噂。
- きまぐれトレーシーのお店
「元気になれるヒミツ」を売っているとされるお店。
「マーサの入り江」にある、無人の廃屋。いったい誰の家だったのだろうか…。漫画版ではちょっとしたストーリーが補足されている。
- 貝殻の館
手持ちの「ヒミツの貝殻」の数に応じてアイテムが手に入る。
夢をみる島と夢をみる島DXの違い
『夢をみる島』(以下、『無印』)と『夢をみる島DX』(以下、『DX』)には違いがある。
隠しダンジョンの追加
『DX』では、隠しダンジョンが追加された。場所は、島の図書館にヒントがある。
ただし、ダンジョンに入るには、色を認識できるゲームボーイカラーもしくはゲームボーイアドバンス(ゲームキューブのゲームボーイプレイヤーも含む)でプレイしなければならない。
通常のゲームボーイもしくはスーパーゲームボーイでプレイすると、ダンジョンの入口で通せんぼされてしまう。またマリンなど他のキャラクターを連れた状態でも入れない。
内部はゲームボーイカラーの特性を生かした、色のついた仕掛けのダンジョンになっている。
BGMはゼルダの伝説1のダンジョンのアレンジになっている。
このダンジョンをクリアすると、『色の力』が手に入る(入手しなくてもクリアは可能だが、すこし戦いが楽になる)。
写真屋
写真スキスキ! 写真屋さん!
いろいろなシーンで撮影してくれる写真屋さんが追加。もちろんあんなシーンもな……。
またマリンとのイベントも追加されており、像の前で写真を撮ったり、岬で一緒に海を見るシーンがある。
周辺機器であるポケットプリンタを利用すると、撮影した写真を実際に印刷することができる。
バグ関連
『無印』ではバグによってハートの器が無限に入手できてしまうほか、バグったエリアに行けてしまう等の不具合があった。
その為、カラー化かつバグを修正してゲームボーイカラー以降の機種でのみ出現する追加要素がある『DX』がリリースされた。
『無印』にはバグがある為か、ソフト書き換えサービスのニンテンドウパワーでは『DX』がラインナップに入り、以後のバーチャルコンソールでも『DX』のみが配信となっている。
このため、『無印』をプレイするにはソフトを中古で入手かつゲームボーイアドバンスまでの機種を用意する必要がある…が、のちにあるハードで移植版が発売されることとなり、入手がしやすくなった。詳しくは後述。
隠し要素
名前入力で「とたけけ」「ぜるだ」と入力すると、それぞれ異なるBGMが流れる。
ちなみにドイツ語版は「MOYSE」と入力すると日本語版にないBGMが流れる。これは翻訳を担当した人物の名前から。
なお、Nintendo Switch版では「とたけけ」「ぜるだ/ゼルダ」は勿論のこと、「まりん/マリン」でもまた違ったBGMが流れる。
リチャードの別荘の中で何もせずにひたすら待っていると…これまた隠し曲が。ちなみにリチャードの原作である『カエルの為に鐘は鳴る』でも全く同じ方法で聞ける場所がある。
メーベの村の商店であることをすると、名前が強制的に変わってしまい、クリアするまで戻せなくなる。さらに、商店に再度入るとゲームオーバーとなってしまう。
どんな感動シーンも台無しになってしまう上、プレイの進行度によっては詰みになりかねないので注意すること。
NintendoSwitch版
2019年2月14日のNintendo DirectにおいてNintendo Switchで『夢をみる島』のフルリメイクが発表された。内容は『夢をみる島DX』をベースにしている。
基本的なストーリーやシステムに大きな違いはないが、キャラクターやオブジェクトのすべてが「おもちゃ」をモチーフにしたCGで作られているのが最大の特徴で、ドット絵の柔らかいイメージはそのままに精巧なジオラマでブンドドをしているような独特の雰囲気を味わえる。
プレイ中も、基本的には画面の中心にピントが当たり、外側はぼかされるようになっており、よりジオラマ感、箱庭感を味わうことができる。
『無印』のCMの人形劇の雰囲気をそのままゲームに落とし込んだ感じと言えるかもしれない。
使いづらかったUI周りについてはさすがに現代的に改善されており、特にボタンが増えたことで剣と盾は常備装備となり、「それ以外」のアイテムをボタンに配置することになった(『無印』や『DX』では剣も盾も他のアイテムも同じ扱いで、剣と盾のどちらかを外さないと他のアイテムは使えなかった)。
キャラクターボイスが追加されている。リンク:斎賀みつき、マリン:夏吉ゆうこ、タリン:一条和矢の三名のみボイス担当者が公開されている。
BGMはリメイクに伴って永松亮による編曲で新しい演奏のものが収録され、アンサンブルや室内楽を意識した弦楽器や木管楽器の演奏が取り入れられている。また、ハードウェアの機能が上がったことで環境音の再現にも力が入れられている。
マリンの歌は、声優を担当した夏吉による歌唱がそのまま収録されている。
また、ラスボスの最終形態など一部で新規BGMが追加された(今までは中ボス戦のBGMだった)。
2020年3月にはオリジナルとリメイク版両方のBGMを収録したサウンドトラックが発売され、長年非公開であった曲名やそれぞれの作曲担当者が公表されている。なお、オリジナル版のサウンドコンポーザーとして濱野美奈子、石川こずえ、戸高一生の三名がクレジットされているが、戸高によれば全てのBGMは濱野と石川が作曲したとのことである(戸高は効果音や全体のサウンドディレクションを担当)。
ラストバトルのフィールドが「海」を想起させるデザインに変更されている。
『DX』に存在していた「写真屋」のシステムは「ダンペイの小屋」に変わり、「パネルダンジョン」と呼ばれるダンジョンエディットモードが追加された。シリーズプロデューサーの青沼英二によれば「パネダンを作りたくてリメイク版を企画した」ほど力が入っているとのこと。写真屋がオミットされたことについては、そもそもポケットプリンタとの関連で追加された機能であることや、Switch本体にスクリーンショット機能があることを踏まえると致し方ないともいえる。
隠しボスにシャドウリンクが登場。
「リンク【夢をみる島】」のamiiboを読み込むとダンペイからシャドウリンクの+チップがもらえ、パネルダンジョンでこれをセットした部屋で戦える。
名前入力はひらがなしかできなかったが、Switch版ではカタカナ入力も可能となっている。
ゼルダの伝説35周年記念ゲーム&ウオッチ版
なんと、2021年E3でのダイレクトで『ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説』に『ゼルダの伝説』『リンクの冒険』と共に『夢をみる島』が収録される事を発表。しかも長年バーチャルコンソールにすらされなかったオリジナル版。…ただし、バグまで再現されるのかは不明。
漫画版
1994年にGファンタジーにてかぢばあたるによるコミカライズ版が連載された。
詳細は該当記事にて。
他にも別冊コロコロコミック1993年10月号に藤赤正人による読み切りが掲載されている。内容としてはゲームで言う冒頭と終盤のカメイワでの決戦に焦点が当てられており、捕まったマリンとタリンをリンクが助けに行くというもの。戦いが終わった後、リンクはマリンから風のさかなを目覚めさせるように告げられ、「心優しい本当の勇者」として見送られた。
マリンの性格や言動がお姫様を思わせるものなのも特徴。
4コママンガ劇場シリーズでは、4巻目から本作の内容も含まれるようになった。この他にも神々のトライフォースを混ぜた「4コマランド」にも収録されている。
火の玉ゲームコミックシリーズでは、夢をみる島DXを単独で扱った4コママンガ本が発売された。
余談だがゼル伝シリーズのコミカライズを多数行った姫川明も『時のオカリナ』連載時に夢をみる島のコミカライズを依頼されているが、これ以上の掛け持ちは難しいとして断ってしまった。ちなみに作者のツイッターにはマリンのラフイラストが投稿されている。⇒該当ツイート
ゲーム情報
オリジナル版 | 夢をみる島DX | バーチャルコンソール | Nintendo Switch | |
---|---|---|---|---|
機種 | ゲームボーイ | ゲームボーイカラー | ニンテンドー3DS | Nintendo Switch |
ジャンル | アクションアドベンチャー | 同左 | 同左 | 同左 |
発売日 | 1993年6月6日(日) | 1998年12月12日(土) | 2011年6月8日(水) | 2019年9月20日(金) |
価格 | 3,800円+税 | 3,500円+税 | 600ポイント | 5,980円+税 |
販売元 | 任天堂 | 同左 | 同左 | 同左 |
CERO | B(12歳以上対象) | 同左 |
余談
海外版ではいくつか修正されている点がある。
- オープニングでマリンが砂浜を歩くシーンで、背景の並木がヤシの木になっている。
- 主人公を特定の名前にすると未収録のBGMが聞ける。フランス語版では「LOLO」、ドイツ語版では「MOYSE」と入力する。
- わらしべイベントで手に入る人魚の落し物がネックレスに変更されている。日本と比べて海外の方がセクシュアルな表現に厳しい。
- ドイツ語版では、バスブロフに魔法の粉を掛けた時に聞ける台詞が増えている。「コ〇ドーム絶対忘れるなよ!」など下ネタまで入っている。
スイッチ版のグラフィックは5年後の完全新作である『知恵のかりもの』でも活かされる事となる。
関連イラスト
関連動画
日本版
※初代CM
※Switch版CM
風のさかなの歌
Nintendo Switch版のCMでは「かぜのさかなのうた」に歌詞が当てられ、本作のテーマを反映したかのような切ない雰囲気を前面に押し出している。
歌唱とナレーションはシンガーソングライターの青葉市子が担当。
関連タグ
キャラクター
用語
時系列の前後(大人リンク敗北ルート)
神々のトライフォース←夢をみる島→ふしぎの木の実
※『ふしぎの木の実』の物語に関しては当初、この真の結末が夢をみる島のプロローグに繋がるとされていたが、現在ではその設定はなくなり、シリーズの時系列でも両者のつながりは無くなっている。
その他
とたけけ:今でこそどうぶつの森の白い犬のキャラクターであるが、夢をみる島では「ヤシの実を投げつけてくる猿」である。ちなみに今作で名前を「とたけけ」にすると……?
外部リンク
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この先ゲームの重大なネタバレ記載に付き閲覧注意
コホリント島の真実
ユメがさめたら アワになる
マモノもみんな アワになる
だからマモノは じゃまをする
めざめのししゃの じゃまをする
コホリント島は地図に載っていない。そして今後も決して載ることはない。
コホリントに住む人々、コホリントに巣食う魔物、そしてコホリントという島そのもの。それらは全て『かぜのさかな』という神が見ている夢から生まれた世界なのである。。そして、『かぜのさかな』が目覚めるとき、それは、島が泡となって消えてなくなるときなのである。
空を泳ぐ魚『かぜのさかな』は、長き眠りにより夢の中に小さな世界、そしてそこで生きる人々を生み出すこととなった。しかし、いつしか夢の裂け目から生まれた悪夢に囚われて目覚めることができなくなってしまった。やがて悪夢はマモノたちを生み出し、その中でもシャドーと呼ばれる個体は『かぜのさかな』に永遠の眠りを与え、人とマモノが共存するコホリント島という歪んだ秩序を築いていた。
永遠に眠り続ける事など望んでいない『かぜのさかな』は、この悪夢から脱出するため、航海中に雷に打たれ意識を失って海に沈んだリンクと夢を共有。リンクをこの世界を破壊する「目覚めの使者」として取り込んだのだ。
最終決戦の直前にて、旅の途中で助言を授けるフクロウは『かぜのさかな』の心の一部であり、夢の世界を見守る存在として現れたことが明かされている。
リンクがこの島に招かれた本当の理由は、島を救うためではなく、住人もろとも島の世界を滅亡させるため。
神の見る夢から生まれたマモノたちは、だからこそ必死になってリンクの邪魔をするのである。
コホリントの住人からすれば『かぜのさかな』は「眠る事によって自分たちを想像した創造神でありながら、万が一にも目覚めた時には、自分達を問答無用で消滅させる破壊神」であり、逆にシャドーこそ、ある意味では「秩序を築き、自分達の存在を繋ぎ止めている守り神」なのである。そして目覚めの使者リンクは「島を滅亡させて島の者全て皆殺しにする殺戮者」となる。
もっとも作中では、元々島の外に憧れを持ち、島の外からやってきたリンクと密接な関係を築いたマリン以外のキャラクターが「島の外=現実世界」のことを深く考えている様子はなく、またマリンも「『かぜのさかな』が目覚めることは、あくまでリンクが島を出ていけるようになるためのこと」と解釈している、つまり目覚めによる自身の消滅の可能性については気づいていない可能性が高い。このため、マモノ側からすれば悪者であるが、少なくとも作中時点での普通の住民からすれば「伝承にある勇者らしいが、実際に彼の働きで何が起こるのかはよくわからない」存在であるとも言える。
最終決戦では、シャドーの悲痛ともいえるセリフがある。
な、なぜだ!キサマがこなければ なにも、かわらぬものを・・・
これがさいごだ! こぞう! きえるのは、キサマだけでよい!
だがよ、オメエも消えるのさ。
かぜのさかなが起きちまえばな
オメエもオレさまと同じ
ヤツの夢……だ、か、ら、な……
消えてしまう……こわれてしまう
我らの島が、我らの世界が
……わ れ ら の し ま……
……わ れ ら……
今までのシリーズのように「世界を救う」のではなく、「自らの悪夢に囚われた神を解放する」という目的のために「世界を滅ぼす」という異色作となっている。
しかし、真エンディングを見るとまた別の見方ができる。
これは「夢の世界に生まれた一人の少女を現実世界へと羽ばたかせる物語」とも言えるのではないだろうか。「彼女」は泡と消えたのではなく、終わりのない悪夢から救われたのだと思わなければプレイヤーとしてもやってられないだろう……。
終盤のフクロウのセリフでもこれを思わせるものがある。
ストーリーの全貌を知ったプレイヤーが初代CMを見ると伏線が張られていたことに気づくとか。Nintendo Switch版におけるジオラマのような世界観も、コホリント島が「作りもの」であるという真実を反映しているためと思われる。
その設定からか、同じ任天堂のゲームで主人公が見た夢を舞台にした作品である『スーパーマリオUSA』のマムーがゲストで出演している。
関連タグ(ネタバレ込み)
リンクの冒険:本作と同じく永遠の眠りにつかされた者を目覚めさせるシリーズ内作品
ムジュラの仮面:作中で語られない裏設定だが、本作と似たような設定が存在するシリーズ内作品
外なる神の王:かぜのさかなと同じく「夢を以て世界をカタチ作り、目覚めればその世界は消滅する」という性質を持つ外なる神、我々が生きるこの世界こそ彼の神の見ている夢であり、かぜのさかなにとってのコホリントであり、そして夢を見る神が起きたその時こそ、その世界の消える時である。夢の世界の住人である我々は、彼の神にとっての目覚めの勇者が訪れない事を祈るしかない。
赤馬零王:こちらは黒幕ポジションである為、悪役としての描写が目立つが、作中での立場及び行動原理は本作のリンクに近い。