ポコ……
あんたの一番こわいことってなあに?
概要っていまさ!
ジョジョの奇妙な冒険 第1部『ファントムブラッド』に登場する一般人の少年・ポコの台詞。
これは一人の少年から一人の男へ成長した勇気の現れ。
経緯っていまさ!
ポコの暮らす村には多くの屍生人(ゾンビ)が潜伏しており、目的「宿敵の吸血鬼:ディオ・ブランドーを打倒」遂行の道中で村の救出も兼ね、先を進む主人公たち一行と同行人のポコ。だが、それも宿敵であるディオが仕向けた刺客の猛追から一行は固い石の壁に分断されてしまう。
不利な場所的環境も合わさり、分断されてしまった一行はこれから起きてしまう試合(デスマッチ)の何も出来ない傍観者だった。
だが、その状況下で希望になるかもしれない道筋があった。
固い石の壁の上部には、子どもが通れそうな通気口があり、誰かが中に入って、内側から自分達を分断している扉を開ければ活路を見いだせるかもしれない。
だが、それは熾烈な闘いの場に年端もいかない普通の子どもが行けば、十中八九殺されてしまう、身の毛もよだつ恐怖と立ち向かわなければならない事だった…。
その悍(おぞ)ましい現実を察して、虐められっ子のポコは恐怖してしまうが、同時に彼は姉とのある「思い出」が蘇る。
それは、いつものように複数の相手から虐められていたポコ。その虐め(リンチ)の場に、ポコの姉が現れると虐めっ子たちは逃げていき、姉弟だけが残る。そして「あ…あしたやって…やらあ!」と、弱々しく声を上げる弟に姉は―
ポコ……
あんたの一番こわいことってなあに?
(こんな感じで)
姉は諭す言葉の後に弟へビンタし―
(原作では奇妙な漫画的表現の擬音(オノマトペ)もあってスナップの効いた強い印象、アニメでも強く良いビンタである)
「一番こわいのは この痛みなの?」
「痛いのってこわい?」
「あんた いつまでも…」
「大人になっても ひとりじゃなんにもできない方が もっとこわいとは思わないの?」
その時の姉の「意思」を弟は、ただの言葉でしか理解できなかったようだが、現在の命懸けな場面に直面し、姉の「意思」が言葉でなく心で理解したポコ。
目の前の恐怖に怯えながら、小さな体で希望に通ずるかもしれない通気口へ、傍観しかできない大人たちの制止を聞かない事を貫いて一人進んでいく。
進みながらポコは考える。
もし、デッカイ兄ちゃんと闘っている亡者どもが村に攻めてくる未来(あす)を。
それを食い止められるかもしれない大人たちへ手助け出来るのは、今の自分(おいら)しかいない事を。
目の前の恐怖をあえて強く知ることで、それは絶対に拒否する強い己の「意思」を知ることで、非情な現実に立ち向かう活力(太陽のような黄金に輝く心のエネルギー)に変えて、迷わず這いつくばってでも進む事を止めないポコ。
通気口の出口に辿り着き、高所にあるその場から落ちるように、更に前へ飛び出すポコ。
そこで一人の男は、今たしかに体で感じる気持ちを言葉にして叫ぶ。
ねーちゃん! あしたっていまさッ!
熾烈な死闘の場へ転げ落ちるような場面だが、ポコの表情は恐怖で汗ばんでいながら興奮で生気に漲るような顔つきだった。
結果として傷つきながらも、彼の真実(こころ)からでた真の行動は、明日(みらい)への希望に繋ぐことができた。
備考っていまさ!
一人の少年が勇気を振り絞って立ち向かう場面・台詞は、ジョジョシリーズの中で名場面・名台詞として、その時の印象的な画(コマ)と共に心に残る読者が多いのではないか。
要は、先延ばしにしたくなる現実を乗り越える勇気の言葉と行動であり、転じて行動するなら後ではなく今と己を律する場面。
読者も見習わなければならないと思いたくなる一幕だろう。
関連項目っていまさ!
似た者たち
川尻早人(漫画:JO☆JO_ダイヤモンドは砕けないより)・・・本稿のポコのように特殊な力を持たない少年。だが目の前の悪から家族の明日(みらい)を勝ち取るため、希望となる兄ちゃんのため、勇気と覚悟をもって「運命」に立ち向かった一人の男である。
ペッシ(漫画:JO★JO_黄金の風より)・・・特殊な力をもつが、肝心なところで強気になれなかった小悪党(マンモーニ)。だが彼の兄貴がみせた「覚悟」から、数分で真の悪(ワル)へ成長。対峙した相手から「10年も修羅場を潜り抜けてきたような、凄みと冷静さを感じる眼」と覇気のある様相になったほど。本稿のポコとは対照的に、悪には悪の明日(みらい)がある事を、そこから黒い勇気を見出した人物。