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概要編集

1989年8月12日公開の日本映画

北野武の初監督作品であり、自身も主役として出演している。

キャッチコピー「コドモには、見せるな。」


当時は好景気に迎合し、芸能人副業に手を出す事例が多く、映画監督も例外ではなかった。

このため北野もそのクチと目されていたが、いざ公開されると、全編に渡る過激な暴力シーンやカメラワークの巧妙さでたちまち高評価を獲得。

暴力映画の巨匠としての「世界のキタノ」の基礎を築いた。



北野自身は、1998年に松本人志との対談の中で「映画なんかぶっこわしちゃえ」という意気込みで撮影に臨んでいたが、時々弱気になったため最終的に「いいところと悪いところがはっきり出たね」という結果になったと振り返っている。(「頂上対談」95〜96頁)

押井守は本作を鑑賞した当時「いきなりこれができるのか?」と驚愕したという。

(「押井守の映画50年50本」160頁)


ちなみに、監督は「北野武」、主演は「ビートたけし」と別名義を使い分けており、これは後の監督作品にも継承された。


あらすじ編集

捜査の為には暴力も辞さない凶暴な刑事・我妻諒介。その行き過ぎた行動と粗暴な性格から、勤務する警察署内でも危険人物として敬遠されていた。

自身を理解してくれる数少ない同僚の岩城。また、そんな我妻は精神疾患を抱える妹・灯の面倒を観ていた。

ある日、港で麻薬売人の他殺体が発見される。我妻は新人の菊池を引き連れ事件の捜査を開始する。


主な登場人物編集

  • 我妻諒介(ビートたけし):主人公警視庁港南署の刑事。行動力に溢れるが直情的ですぐ手が出るため、同僚や上司ですら持て余している。
  • 清弘(白竜):殺し屋。何の躊躇もなく人殺しを平然と行う。常に無表情で行動が読めない危険人物。
  • 灯(川上麻衣子):我妻の妹。重度の精神疾患を持ち、物語開始前まで入院していた。清弘一味に拉致され、薬物中毒の廃人と化す。
  • 菊池(芦川誠):我妻の部下。キャリアが浅いこともあり我妻に振り回される。
  • 岩城(平泉成):我妻の同僚。はみ出し者である我妻の良き理解者だが実は…
  • 吉成(佐野史郎):港南署の新しい署長。厳格なタイプで、我妻とはそりが合わない。
  • 柄本(遠藤憲一):麻薬の売人。序盤で清弘に殺害される。
  • 進(寺島進):清弘の子分の1人。灯を誘拐し輪姦する。
  • 仁藤(岸部一徳):実業家。表向きはレストランの経営者だが裏社会にも通じており、清弘を雇って殺人を指示している。本作における黒幕

評価編集

本作は監督経験のない北野のデビュー作でありながら、その完成度の高さから各方面より高く評価されている。特に中盤の我妻たちが麻薬中毒者を追跡するシーンについての言及が多い。これは既存の映画におけるカーチェイスの典型的なパターンを外そうとした北野の「ほかの人は何事もないようにしてる街並みの中を、ただひたすら走っていくというのがリアルなんじゃないか」という考えによるものである。


淀川長治は「裸の町」や「フレンチ・コネクション」といった作品と併せて「あんたもカメラ止めないで、ずーっと走るの映してる。あれいいのね。あれ止めたらダメなの。立派でしたよ」と高く評価している。

(「頂上対談」370頁)


押井守は「斬新だった。強烈な印象を残した。『これは見つづけるしかない』と思ったから」と衝撃を受けた旨を語っており、「『なんでいままでの映画はこうなんだ?』という疑問をそのままかたちにしたんだろうね」と分析している。

(「押井守の映画50年50本」158〜162頁)

また後に「ぴあ」の連載の中で「印象に残った映画の走るシーン」で本作を挙げている。


松本人志は本作が最も好きな北野作品だとしており、北野との対談で「一発目からたけし節があったじゃないですか。それがすごいなと思いました。自分流みたいなのが出たら、僕はほとんど成功だと思います。それがありましたもんね」と述べている。また、好きな場面に刑事2人が犯人を追跡する途中で走るのをやめて歩きだすシーンを挙げており「ああいうのが今までないところで、壊してるといえば壊してるし……」と語っている。

(「頂上対談」96頁)


余談編集

  • 作中では「キチガイ」という言葉が多用されている。もちろん現在では放送禁止用語となっており、使用されていない。
  • 本作のタイトルは、後発作品で頻繁にパロディにされている。
  • 警察署長役を佐野史郎が担当しているが、当初は殺し屋役の白竜が演じる予定だった。参照
  • 元々は深作欣二が監督を務める予定だったが、都合がつかずに断念。代役としてビートたけしが監督になった経緯がある。
  • 清弘が柄本をナイフで刺し殺すシーンは地面を見ても分かる通り、雨の中での撮影となった。本来なら雨の日は撮影がストップするが、北野は「せっかくみんな集まってるから、やっちゃおう」と上からビニールを張って撮影し、後から台詞をアフレコしたという。参照
  • 終盤でとある人物が発する「どいつもこいつもキチガイだ」というセリフは、電気グルーヴの『D・E・P』という曲でサンプリングされた。その電気グルーヴのメンバーだったピエール瀧は、28年後に『アウトレイジ最終章』に出演した。

関連項目編集

北野武 映画

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