ソナチネ
そなちね
凶暴なヤクザ・村川は、かつての抗争で成果を上げたことから、親分の北島組からシマを与えられ、村川組の組長を務めていた。
そんな折、北島組に呼び出された村川は、北島から新たな命令を出される。沖縄にいる同盟関係の中松組が、阿南組と抗争になっているため、助っ人に行って場を収めてほしいという。
村川は組の構成員とともに夏の沖縄へ飛ぶ。そこで中松組と合流し、夏休みのバカンスのような雰囲気を味わうが、この訪問によりむしろ抗争は激化する。
だが、すべては北島組の罠だった。北島は村川組を処分し、シマを奪い返そうとしていた。
『その男、凶暴につき』の暴力性、『3-4X10月』の突発性、『あの夏、いちばん静かな海。』の自然描写を含む、北野初期の集大成的作品といわれる。
画面全体を覆う青と赤のコントラストが印象的であり、北野の青の使い方が《キタノブルー》として注目を浴びた。
企画段階のタイトルは『沖縄ピエロ』で、これはジャン・リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』のもじりと言われている。また、ヤクザが沖縄へ乗り込んで全滅するというプロットは、深作欣二の『博徒外人部隊』に類似する。さらには、北野が1986年にフライデー襲撃事件を起こして、判決が出るまでの間、沖縄の石垣島で隠居していた実体験が基になっているとも。
タイトルの「ソナチネ」とは、クラシック音楽におけるジャンル・形式の一つで、短縮されたソナタを指す。
映画の国内興行は惨敗で、国内における北野映画の不遇を象徴する結果となった。第67回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画第4位と健闘しており、評論家の反応は悪くなかったようだが、大衆の認知は進まなかった。
打って変わって、ヨーロッパにおける今作の認知度は高く、当時はソナチネショックとも言うべき旋風が巻き起こったという。北野映画が本格的に海外で評価される契機になり、海外で生まれた熱烈なファンを日本のマスコミは《キタニスト》と呼んだ。今作と『みんな~やってるか!』に関しては、日本語版Wikipediaより英語版の方が充実しているほどである。日本が生んだカルト映画といってもいい。イギリス・BBCは、今作を「21世紀に残したい映画100本」に選出した。