曖昧さ回避
概要
十脚目ザリガニ下目アメリカザリガニ科アメリカザリガニ属に分類されるザリガニの一種。
ミシシッピ川下流域を中心としたアメリカ合衆国南部が原産地だが、南米や日本、ヨーロッパなどに外来種として分布する。赤や褐色の強固な殻に身を包みカニのような大きな鋏を持つことからエビガニとも呼ばれる。
日本ではウシガエル(食用ガエル)の養殖用の餌として輸入されたが(何でも食べて、繁殖力・適応力がとにかく高いので餌用動物として飼育・繁殖させるのにも向いていると見做された)、逃げ出して北海道から沖縄までの全国に定着した。雑食性でなんでも食べ、繁殖力が強いという特性から、都市近郊だけでなく自然豊かな湿地帯や流水域にも広がり、水生昆虫や小魚などを片端から捕食してしまい、水底を掘り返して水草を食い荒らし、水を濁らせるなどして、日本の淡水生態系に大きな悪影響を及ぼした。また、農薬にも強く、水田にも普通に生息するが、田植え時の苗を切断し、畦に穴を開けるなどして圃場を荒らすため農家からは嫌われている。
生命力が非常に強く、生活排水が流れ込むようなドブ川にも平気で生息する。餌が少ない場合は共喰いも見られる。繁殖期は夏で親と同じ形で卵から生まれ、繁殖可能な大きさに育つには2年かかる。体長8~12cmほどだが20cm近く育つ個体もいる。寿命は5年ほど。天敵はオオクチバス、ウシガエル、サギ、カメ、イタチやタヌキなど。
飼育動物として
水域ならどこにでも普通にいる上、経済的な利用価値もないので子供が勝手に捕獲しても咎められることはない。メイン画像のように鋏で外敵に対して威嚇する習性が子供にとっては面白いので、ザリガニ釣りは夏の公園の池などで小学生の格好の遊びとしてよく行われてきた。また丈夫で飼いやすいため小学校などでは広く飼育されている。ペットショップなどでは「ブルーザリガニ」、「白ザリガニ」、「ゴールデンキング」などとして青やオレンジ、黄色などの色鮮やかな改良種も流通していた。
しかし、本種は「緊急対策外来種」として防除対象に指定されているため、輸入は禁止である。2020年に外来ザリガニ類が飼育、販売、放流などが禁止される特定外来生物に指定されたが、アメリカザリガニのみ外された。これは既に広く飼育されているアメリカザリガニの飼育を禁止すると川や池に大量に捨てられる恐れがあるということと、アメリカザリガニがあまりにも日本の環境に定着してしまっているので、現実的に駆除ができないからである。
だがその後の2023年6月1日、遂に特定外来生物に指定された。
ただし、前述の事例から、そのまま指定すると各地で野外に放流される可能性が高い為、商業取引と野外への放出は禁止だが、捕獲、飼育、無償譲渡は認められる条件付き特定外来生物を新たに新設し、アカミミガメと共に指定された。
食用として
ザリガニは本来食用として日本に導入された...という話があるが、食用種として日本に輸入されたのは寒冷地に棲む大型種であるウチダザリガニである(こちらは日本では特定外来生物に指定されている)。
アメリカザリガニもウチダザリガニ同様に食べられるし、正しく処理すれば(3日ほどきれいな水に入れて泥抜きをする必要がある)エビやカニに匹敵する美味しい食材となる。10~15分茹でた上で背ワタを取り除き、殻をむいて鋏の肉と尻尾に詰まった肉を食べる。ただし、肺吸虫という寄生虫が寄生していることがあるため、生食は絶対にやめること。
しかし、アメリカザリガニは殻ばかり大きくて可食部が小さく、決して食べやすい食材とは言えない。もっとも、ザリガニは出汁を取る目的で殻ごと使う事もできることから、日本でザリガニの食用習慣が浸透しなかったのは、ドブ川に棲むザリガニのイメージの悪さが大きく影響しているとも考えられる。国内生産はほぼゼロであるが、フランス料理や中華料理などの食材としての輸入品が少量流通しており、1キロ当たり2000円〜3000円の高級食材扱いである。
原産地のアメリカ合衆国のほか、中国、フランスでは一般的な食材として知られる。このうち中国では2010年代には辛味を付けて炒めたザリガニ料理が人気となり、空前のザリガニブームとなった。
関連タグ
ザリガニ ウチダザリガニ ニホンザリガニ アメリカ料理 中国料理 フランス料理