概要なんてできるか! 殺せ~、ぶっ殺してやる~‼
本名はウェズ・ジョーンズ。精製所の石油をつけ狙うヒューマンガス様率いる暴走族の一員である黒い鳥の羽で装飾した衣装を纏い、頭髪を赤く染めたモヒカン刈りの男。常に無口な金髪の青年ゴールデン・ユースをオートバイ後部座席に乗せている。
族の中でも際立って好戦的かつ凶悪な暴徒で、ヒューマンガス様ですら手を焼く程凶暴な性格。ヒューマンガス様の演説中でさえじっとしておらず、精製所の人々への見せしめに野生動物を愛用のクロスボウで射殺したり、「奴が話している間に撃ち殺せ!」、「奴らに渡すより爆破しろ‼」と(自らの命も顧みず)精製所の人々に向かって叫ぶ捕虜をトーディーと2人でボコボコにしていた。
さらには、大人顔負けのブーメランの達人であるフェラル・キッド(後のこの物語の語り手である北部族長老)にゴールデン・ユースをぶち殺されて野郎オブクラッシャー状態となり(ちなみにトーディーは、その時にウェズが投げた鋼鉄製のブーメランを、素手でキャッチしようとして右手の指を4本失う重傷を負った)、さらにはヒューマンガス様の「私達は話し合いで解決しに来たのだ・・・」という煮え切らない(?)言葉でとうとうマジギレ、「冗談じゃねえ!話し合いなんかできるか!殺せ~、ぶっ殺してやる~‼」と怒り狂い、制止しようとするヒューマンガス様と強制的にプロレス状態に突入。
「お前の痛みは分かる、皆だって愛する者を失ったんだ・・・奴らは怯えている、ガソリンはすぐ手に入る。それと同時にお前の復讐も果たされる」と、ヒューマンガス様に文字通り言葉と腕尽くで説得され、スリーパーホールドでKO。ようやく取り押さえられた。
イメージ図(違)
その後、主人公マックスがV8インターセプターで石油精製所を離れた際には、またしてもヒューマンガス様の制止を振り切って愛車(6輪車)を勝手に持ち出して追撃。インターセプターを大破させてマックスを窮地に追いやったが、最後にはトーディーら仲間数名の犠牲を出し、ジャイロ・キャプテンの乱入もあってマックスにも逃げられ、一連の失態からとうとう鎖で拘束され行動を制限される。
しかし、マックス達のトレーラー(タンクローリー)脱出作戦の際には、“切り札”として鎖の捕縛を解かれ追撃に加わり、水平4連ダートガンで女戦士を射殺、モーニングスターを手にトレーラーに乗り込みマックス殺害を謀ろうとするも、トレーラーから振り落とされてそのまま死亡……
したかと思われたが、実はゾンビのような恐ろしい姿になりながらもトレーラーのフロントバンパーにしがみついて生きていて、ショットガンの弾を取りに行こうとしたフェラル・キッドに襲い掛かる。
しかし、亜酸化窒素で加速してトレーラーに追いつこうとしたヒューマンガス様の6輪車と正面衝突。
遂に、ヒューマンガス様、ベアクロウ・モホーク(女戦士とフェラル・キッドの攻撃によってマックスの肩に右手の鉤爪を喰い込ませたまま気絶していた)もろともに、木っ端微塵に吹き飛ぶという壮絶な最期を遂げた。
映画史上最高の、悪の手下
上記の通り、ウェズは『マッドマックス2』のみのキャラクターで、続編にも登場しないが、「革鎧(レザー)を身につけたモヒカン男」という印象的なヴィランの造形は、『北斗の拳』や『男狩り』などのように以降のサブカルチャーに大きな影響を与えた。
さらに、イギリスの某映画雑誌によって、「映画史上最高の、悪の手下(henchman)」に選ばれており、今なおファンの間では根強い人気を得ているダークヒーローである。
要するに、もしもウェズましてや『マッドマックス2』がなかったらこのキャラクター達は誕生しなかったというわけ。
ゲイ疑惑?
ちなみに、ウェズのバイクに“タンデム”している金髪の美青年、ゴールデン・ユースは、多くのファンからはウェズの愛人だとばかり思い込まれているが、ウェズの中の人によれば、ホモ関係ではなくウェズに拾われた孤児という設定らしい。つまりウェズの狂態は息子を殺された父親の怒りであり、ヒューマンガス様に対する反抗も宜なるかな。
とはいえ、ゴールデン・ユースの中性的で整った顔立ち、露出度高いコスチューム、さらにヒューマンガス様の「愛する者」という思わせぶりなセリフ等々、腐……、もとい、“クサい仲”と思い込まれてしまうのもやむなしか……。
さらに余談だが、中の人が後に演じたベネット(後述)でも、出で立ち(ぴっちぴちの鎖帷子)などから、またしてもゲイ疑惑を抱かれてしまったとか……。
(念押ししておくと、中の人は全然そっちのケのないめっちゃいい人で、家庭もあり、さらに奥さんは日本人である)
後の野郎オブクラッシャー
ウェズを演じていたのは、後に『コマンドー』の「やろう、ぶっころしてやる」でお馴染みのベネットを演じたヴァーノン・ウェルズ。『マッドマックス2』での熱演がきっかけで脚光を浴び、ベネット役に抜擢されたのである。
ちなみに、日本でベネットの“声(吹き替え)”と言えば、テレビ朝日・日曜洋画劇場版(通称玄田哲章版)の石田太郎氏が有名だが(『コマンドー』の旧盤ディレクターズカット版DVDや「吹替の帝王 第一弾 コマンドー〈日本語吹替完全版〉コレクターズBOX」、新盤ディレクターズカット版DVDにも収録)、石田氏死去後に発売された「吹替の帝王 第8弾〔スチールブック仕様〕コマンドー ディレクターズ・カット<製作30周年記念日本語吹替新録版>」に収録されている“吹替の帝王”版では、若本規夫氏がベネットを演じている。
若本氏は、『マッドマックス2』のテレビ朝日・日曜洋画劇場版吹き替え(ブルーレイにも収録)ではウェズの声を演じていて、ヴァーノン・ウェルズの当たり役2人の“声”を引き受ける格好となった。……狙ってたか?
ちなみに、『マッドマックス2』のTBS・水曜ロードショー版吹き替えでは、若本氏はパッパガーロの声を吹き替えていた。
余談(尻)
相棒のセクシーコスチュームに目を奪われがち(?)だが、ウェズ自身も生尻を出したなかなか大胆な下履きである。実はこの雄尻、撮影の際には大変重要な役目を果たした。
『マッドマックス2』の舞台となった砂漠地帯は寒暖の差が激しく、上は50℃の灼熱から下は氷点下まで、大きく、かつ急激に気温が変化する。一般に冷え込み始めると、人間の皮膚の血管は収縮して血色が悪くなるが、ウェズの尻も気温が下がると、目に見えて紫色に変色した。
なので、ウェズの尻が変色したら撮影中止というローカルルールが自然発生し、生尻温度計として撮影とスタッフ、キャストの健康管理に大いに貢献したという。
……結果オーライ。
関連タグ
スペード(北斗の拳):『北斗の拳』に登場するモヒカン男の中で最もウェズを彷彿させている。