概要
ギリシャの伝統的な料理。典型的な地中海料理であり、同じく地中海料理に位置付けられる南イタリア料理、スペイン料理、ポルトガル料理、レバノン料理、トルコ料理などとの共通点が目立つ。特にトルコ料理によく似ている。
特徴
オリーブオイルを多用し、魚介類と野菜を使った料理が多い。サバやイワシなどの焼き魚料理も親しまれている。肉料理は比較的少ないが、豚肉や羊肉料理が知られる。ブルガリア料理ともよく似ていて、チーズとヨーグルトをよく使う。多彩なサラダ料理で知られ、タラモサラタ(たらことジャガイモのサラダ、日本ではしばしば「タラモサラダ」と表記される)は日本でも人気が高い。ホリアティキサラタは「グリークサラダ」として、アメリカ料理としても浸透している。
食材としてはとくに魚介類の扱いに長け、キリスト教圏やイスラム教圏の諸国では食されることが少ないタコが盛んに使われるが、近年はギリシャ料理やスペイン・ポルトガル料理の影響でヨーロッパ各地でもタコが食されるようになっている。現代ギリシャ料理で多用されるオリーブオイルやタマネギやニンニクは古代ギリシャでも重要な食材であったが、現代の地中海料理に多用されるレモンが普及したのは近世以降で、古代には食されていない。また、現代ギリシャ料理を特徴付ける野菜であるトマトやパプリカ・ピーマン、ジャガイモも、近世に新大陸から伝わったもので、古代・中世(東ローマ帝国時代)にはなかった。
15世紀にトルコ系のオスマン帝国がギリシャを含むバルカン半島南部を征服して以降、トルコ料理とギリシャ料理の融合が進んだ。その一例であるムサカは、西欧では主にギリシャ料理として認識されている。ヨーグルトやチーズなど乳製品は、もともと遊牧民族だったトルコ人やブルガリア人が盛んに利用していた食材だった。ギリシャを代表する肉料理であるスブラキはケバブから発展したものであるが、イスラム教徒は絶対に食べない豚肉を使うことが多い。
逆に、15世紀以降トルコ料理にはギリシャで古代から食されてきた魚介類が盛んに取り入れられるようになった。『世界の食文化 (9)トルコ』石毛直道(農山漁村文化協会)によれば、トルコ料理での魚や魚卵などの呼び名はギリシャ語に由来する物が多いという。ただし、トルコ人はギリシャ人が好むタコ・イカは今でもほとんど食べない。